東日本選手権から約2週間後、ジュニア日本一を決める戦い、全日本ジュニア選手権(全日本ジュニア)が滋賀のリンクで開催された。早大からはジュニアラストシーズンの山田琉伸(人通1=埼玉栄)が出場。昨年よりもレベルアップした熾烈な戦いが繰り広げられる中、ジュニア構成の自己ベストを更新する演技を披露し、自身初のフリースケーティング(FS)進出、総合12位という成績を残した。
★ジュニア男子ショートプログラム(SP)
山田はジュニア男子の出場者29人中、19番滑走で登場した。笑顔で大島淳コーチらと拳を合わせた後、観客の声援を全身で受けながらリンクイン。肩で息をしながらやや緊張した面持ちでスタートポジションにつく。直前の6分間練習で何度も確認していた冒頭のコンビネーションジャンプは、1本目の3回転フリップがわずかに耐えるかたちでの着氷となったものの、2本目の3回転トーループは回転不足を取られることなく回り切った。続く2回転アクセルと、後半に組み込んだ3回転ルッツも余裕をもって成功。疲れからか後半はややスピードが落ち、ステップシークエンスもレベル1の評価に留まったものの、イナバウアーなどを組み込み、多彩な動きで魅了した。最後は自転車のハンドルを握るようなポーズでフィニッシュ。『Bicycle race』の音楽に合わせ、ジャンプはノーミスで滑り切った。得点は東京選手権の56・03点を上回り、59・84点。目標に掲げていた60点にはわずかに届かず少し悔しさを見せたが、自己ベストを更新。全体14位で自身初のFSに進出した。
SPで演技をする山田
★ジュニア男子FS
ジュニア男子はまれに見るハイレベルな戦いとなり、S Pで59・84点をマークした山田も前半グループ、11番滑走でFSの演技を迎えた。プログラムは前日のロックナンバーとは打って変わった王道のクラシック、『チャイコフスキーピアノ協奏曲第一番』。音のキメに合わせたポージングが印象的な振り付けから演技を始め、重厚感のあるゆったりとしたワルツのリズムにスケートの一蹴り一蹴りを合わせるようにし、流れのある3回転ループを力感なく決める。次の3回転フリップは着氷が乱れてしまったが、直後の3回転ルッツ-3回転トウループの高難度のコンビネーションは問題なく決めた。徐々に激しくなるピアノの旋律に合わせた足換えキャメルスピンと2回転アクセルはどちらも加点の付く出来でまとめると、演技は中盤の見せ場のコレオシークエンスへ。荘厳なオーケストラの音を全身にまとうように腕を大きく使いながらのイーグル、そしてリンクを斜めに横切る雄大なレイバックイナバウアー。ノービスから推薦出場の中学生スケーターも近い滑走順で演技を行なった中、最年長の最長身は周りと一線を画す存在感を放った。
後半のジャンプではやや着氷の乱れが見られ、本人も「普段しないようなミスが出てしまったので悔しい」と振り返る。それでも、3連続ジャンプではラストジャンプをしっかり3回転締め切り、単独のルッツジャンプも着氷をステップアウトで耐えるなど、取れる点数は確実に取るという姿勢が見られた。最後のスピンも、ニースライドから出る難しい出方でレベル4を獲得し、片膝を立てたポーズでフィニッシュ。しばらくその姿勢で息を整えた後は、リラックスした様子で四方の客席に一礼。リンクサイドでコーチに笑顔で迎えられると、やっと笑顔が見られた。得点は115・25点でFS、総合ともに12位。目標としていた120点には届かなかったが、ジュニアとして出場する最後の大会で、ジュニア構成での自己ベスト更新となった。
FSの演技を終えた山田
演技を振り返り、「今できる精一杯のことはできた」と語った山田。一昨年はSP落ち、昨年は出場が叶わなかった大舞台で、大きなミス無くSPとF Sを揃えられたことに対しては、充実感をにじませた。来季からはシニアの舞台に挑んでいくことになるが、今季、東日本学生選手権ではシニア構成でのFSを披露し表彰台に乗っているように、力はシニア選手と比べても既に遜色ない。次の試合として控える1月の全日本学生選手権(インカレ)では、日本トップレベルで活躍する選手とも多く相見えることになる中で、どこまで存在感を示せるか。そして来季、本格参戦するシニアの舞台ではどんな活躍を見せてくれるだろうか。今後に大いに期待だ。
(記事 荘司紗奈、及川知世 写真 吉本朱里)
結果
▽ジュニア男子
山田琉伸
SP 14位 59・84点
FS 12位 115・25点
総合 12位 175・09点
コメント
山田琉伸(人通1=埼玉栄)
――最後の全日本ジュニアでした。どのような気持ちで臨まれましたか
最後なので、出来ることはやりたいと思っていました。やることはできたかなと思います。
――フリーの演技を振り返っていかがでしたか
自分の中では悔しい点は2つ、いつもできているジャンプができなかったので、その点は良くなかったかなと思います。ただ、点数は自分が思った以上に出てくれて、ジュニアの自己ベストも更新できたので、その点は良かったと思います。
――ショート、フリーともに目標としていた自己ベストを更新しましたが
目標はショート60点、フリー120点、合計180点越えだったので、目標には少し届きませんでしたが、今できる精一杯のことはできたかなと思います。
――演技直後に首を横に振るような仕草もありましたが、悔しさは
全日本ジュニアという緊張する舞台でこれほどの演技ができたことには、結構満足しています。しかしやはり普段しない様なミスが2つ出てしまったので、少し悔しいです。