「あっという間に終わってしまった」 紀平2年ぶりの全日本SPは悔しい11位発進/女子SP

フィギュアスケート

 2年ぶりの全日本選手権(全日本)となった紀平梨花(人通2=東京・N) 。 ノーミスの演技での上位進出を狙っていたが、本番に一番良い動きを持ってくることができなかった、とジャンプに精彩を欠き、60・43点の11位。24日に行われるフリースケーティング(FS)に向け、課題も見える結果となった。

SPで演技をする紀平

 昨年はケガのために試合への出場が叶わなかった紀平。復帰を待ちわびていたファンの前で披露したのは2年前から継続のショートプログラム(SP)、『The Fire Within』。昨季から師事しているブライアン・オーサーコーチに送り出されリンク中央へ。片膝をつき片腕を頭の後ろで曲げ、もう片方の手で靴のエッジを掴む独特なポジションを取ると、鼓動のような重低音からプログラムが始まる。曲に合わせて加速し、迎える最初のエレメンツは2回転アクセル。以前の紀平は3回転アクセルが代名詞であったが、復帰シーズンの今季は2回転を選択。流石とも言うべき余裕のある着氷を見せ、0・75の加点を得た。

 1本目のジャンプを美しく決めたことでここから波に乗っていくかと思われたが、続くコンビネーションジャンプの前にエッジが氷の穴に引っかかってしまうアクシデントが。その結果、コンビネーションの1本目、3回転サルコウが傾いての着氷となり、2本目には、予定されていた3回転トウループではなく2回転トウループしかつけることができなかった。予想外のアクシデントに焦りもあったと言う紀平。最後の3回転ループは回転不足でこらえるようなかたちになり、「もっと良いものができた」、「集中力をもっと最後まで持って行きたかった」と反省を口にした。

演技を終えた直後の紀平

 演技後のインタビューでは、悔しいという言葉を何度も発した紀平。朝の練習では動きもよく、クリーンなジャンプを何本も着氷していたが、「動きが完全にその時(演技の時)に合わせられたわけではなかった」と、本番にベストな状態を持ってくることの難しさを語った。FSではSPでの修正点を生かし、もっと良い状態で迎え、もっと良い演技をすることを誓う。

 その一方で、紀平の演技を見守る観客からは、一つ一つのエレンメンツに対して温かい拍手が送られた。特にステップシークエンス冒頭の片手側転では会場が大いに湧いた。最後は、紀平が力強いフィニッシュポーズを取ると同時に多くの観客が立ち上がり、スタンディングオベーションをした。試合に出られない期間で、日本のスケート界の構図も変わり、紀平自身の練習環境も変わったが、国内の試合には変わらず紀平への温かい声援があった。FSに向けては、「いろいろな方に成長したと思ってもらえるような姿をお見せできるように頑張りたい」とも話す紀平。FSでは第4グループからの巻き返しに期待だ。

(記事 及川知世 写真 吉本朱里)

結果

▽女子SP


紀平梨花

 

11位 60・43点


コメント

紀平梨花(人通2=東京・N)

※囲み取材より抜粋

――演技を振り返って

 練習でももっといいジャンプがたくさん跳べていて、本番の時にはあまり動きが良くなかったのですが、それでもノーミスできる状態ではあったので、すごく悔しい演技でした。動きが完全にその時(演技の時)に合わせられたという感じではなかったので、フリーではそこを改善して、しっかりと一番の動きを出せる状態にしなきゃいけないなと思います。

――セカンドジャンプが2回転になったコンビネーションジャンプについて

 サルコウの前にびっくりするハプニングがあって、そこで傾いてしまって(後ろに)ダブルしか付けられない状態になってしまいました。そこは仕方ないかもしれないですが、ループはもっと良いものができたかなと思うので、集中力をもっと最後まで持って行きたかったなと思っています。

――演技後はコーチからどのような言葉をかけられましたか

 「まあまあ」、「明後日だね」という感じです(笑)。やはり試合のその瞬間に良い状態を持ってくるというのが難しくて、朝練ですごく良い動きができても、試合本番で上手くいかなかったら意味がないので、そこは自分の中で大きな課題かなと思っています。

――フリーに向けて

 フリーでは全ての自分のベストのジャンプを決めて、その他でもスケーティングもベストの状態にしたいです。試合の瞬間のために今まで頑張ってきているので、いろいろな方に成長したと思ってもらえるような姿をお見せできるように頑張りたいと思います。

――終わった瞬間あまり表情が変わらないように見えましたが、終わった瞬間はどのようなことを考えていましたか

 演技している間に全て受け入れたような感じで、あっという間に終わってしまったな、というか、練習みたいに終わってしまったなというのが率直な感想です。少し疲れた日の練習のような出来にしかできなかったのが悔しいです。サルコウは穴にハマってしまって、多分自分の6分間練習の時にできた穴なのですが、やはりすごく悔しいです。その時点で焦りを見せないようにはして、次のジャンプのことを考えたのですが、ループもあまり良いジャンプができなかったので、とりあえずまた切り替えたいと思います。