石塚のラストシーズン開幕、女子3名は次戦へ意気込む

フィギュアスケート

 年々出場人数が増え、盛り上がりを見せるげんさんサマーカップ。早大からは石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)、馬場はるあ(社2=東京・駒場学園)、木南沙良(人通1=東京・日大一)、千葉紫織(文構1=東京・筑波大附)の4名が滋賀の地で舞った。

★石塚は悔しさの残る演技、女子3名はフリーに進めず(ジュニア女子、選手権女子、選手権男子S P)

 2日目の10日、ジュニア6級女子(高校生以上)ショートプログラム(SP)に早大生として初めての公式戦となる千葉紫織が登場した。
 「豪華で煌びやかなものになるよう、母が飾りを足してくれました」。お母さんの想いの詰まったエメラルドグリーンの衣装に身を包みリンク中央に立った。SPは『Scheherazade』。1本目、2回転ルッツ+2回転トーループのジャンプを決めると大きくリンクを使いながら演技を進めていく。そのあと2回転アクセルを堪えながら着氷させる。見せどころであるステップシークエンスでは音に合わせてエッジをきざみながら、細かい音を捉えると手元のフリルがひらひらと揺れる。最後のジャンプ2回転フリップは空中での回転、着氷は綺麗だったもの踏切の部分でマイナスを取られてしまう。「憧れだった早稲田大学の所属として見られていると思うと、独特の緊張感もあり、早稲田大学所属の選手として恥ずかしくない演技をしないといけないなとも感じました」。無観客、そして早稲田のスケート部フィギュアスケート部門としてのはじめての演技だったため、緊張の影響もあり持っている力を発揮できなかった。しかし表情を変えながら丁寧に滑り切り、結果は、31・84点で17位。翌日上位6人のみ演技することのできるフリースケーティング(FS)への進出はならなかった。「新しいプログラムを初めて試合で滑るので、緊張しますが、楽しんで滑りたいです。また、東京ブロックのミニマムスコアを超えられるように頑張ります」と試合後の文面インタビューで東京夏季フィギュアスケート大会への思いをつづった。

華やかな衣装で演技を披露した千葉

 千葉と同じく、今年フィギュアスケート部門に入部した木南沙良(人通1=東京・日大一)が3日目の選手権女子SPに登場した。 
 「控室の時計が15分ほど早まっていることに気づかず、大慌てで準備をしてしまいました。(笑)」。トラブルがありながらも、リンクへ姿を現すと6分間練習、そして名前がコールされる演技直前まで、入念にジャンプを確認する。SP『Courage to Change Sia』の曲が始まると1本目のジャンプ、3回転フリップで転倒してしまう。その後、曲が盛り上がる中で迎えるコンビネーションジャンプも、1本目ルッツジャンプで少し体勢を崩し、続くトーループジャンプとともに2回転になってしまったため2本目のトーループがノーバリューの評価に。しかし、試合後「久しぶりの試合ということもあり、前半は緊張してしまいましたが、後半は練習通りの演技ができました」という言葉を残したように、後半で2回転アクセルを美しく着氷し、落ち着きを取り戻す。音楽に乗せて、全身を使って見せる表現力にグラデーションの入った衣装が合わさり、さらにプログラムの良さを引き出す。その後、フライングシットスピン、そしてレイバックスピンをきれいにまとめると、最後手を突き上げて演技が終了した。結果は、37・86点で40位。翌日行われるFSで演技することはできなかった。「独特な曲をSPで使っているので、自分なりの世界観を作りつつ、課題であるジャンプを試合で成功させたいです」と意気込んだ木南は次回、東京夏季フィギュアスケート大会に出場する。

力強い表現力を見せた木南

 60人を超えるエントリーがあった選手権女子SPの最終グループに馬場はるあ(社2=東京・駒場学園)が登場。6分間練習で、ジャンプ、ステップなどの確認をして演技に臨んだ。
 SPは『Within/Nero』。最初のジャンプは空中で体を緩めてしまい、2回転サルコーに。その後迎えたコンビネーションジャンプは、1本目が2回転になり、続くトーループジャンプで3回転を付けカバーしたが、エッジが引っ掛かり転倒してしまう。しかし、芯のある力のこもったスケーティングの中にあるやわらかさを生かしながら演技を進めていく。連戦の疲れが出てしまったのか、序盤ではミスが目立ったが、得点が1・1倍になる後半のジャンプ、2回転アクセルを見事に着氷させる。また前半、後半のスピンはすべてレベル4を獲得。得点は35・40点、43位という順位で、FSに進むことはできなかった。東京夏季フィギュアスケート大会への出場が決まっている馬場。今回の試合を含め直近の2試合でつかんだ感覚をもとに、演技に臨むことができるのではないだろうか。

美しいスケーティングを見せた馬場

 3日目の選手権男子SPには今年フィギュアスケート部門の主将を務める石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)が第3グループに登場。WASEDAジャージを脱ぐと、青い衣装の前と背中のスパンコールが光る。ジャンプを重点的に確認し、迎えたSPは『The Beatles Concerts』。音に合わせてエッジを鳴らすと無観客の静かな会場に響く。最初のジャンプ3回転フリップはこらえる形となったが次の2回転アクセルはきれいに着氷し立て直す。石塚の魅力の一つであるスピンはレベル4を獲得し、安定感と美しさを見せる。最後のコンビネーションジャンプは、6分間練習では決めていたものの、最初のルッツジャンプが1回転になり、そこに3回転トーループをつける形となった。しかし、その後、渾身のセルフコレオでは手を大きく使い、表情豊かに演技を展開させる。持ち味のスケーティングを生かしスピード感を保ちながら最後のスピンに突入し、力強くポーズを決めた。SPは52・34点。「ジャンプが最後の3Lzで「3Lz+3T」にできていたら意外とまとまった演技になったのでそこで決めきれなかった点が悔しいです」と少し悔しさの残る演技となったが、石塚の良さが詰まった新プログラムの披露となった。そして8位という順位で翌日のFSへ駒を進める。

新しいS Pを披露した石塚

(記事 岡すなを、写真 及川知世、紀洲彩希)

★ガッツポーズの演技で石塚が総合8位(選手権男子F S)

 石塚玲雄がラストシーズンに選んだFSは、『雨に唄えば』。パッと目を引くイエローのジャケットに赤いネクタイを締めて登場する。片手で雨を受けるような仕草を見せてから軽やかに滑り出した。冒頭の3回転フリップ-3回転トーループの連続ジャンプを流れるように着氷する。わずかな乱れはあったものの、決まったジャンプは美しく、出来栄えにおける加点がついた。後半、音楽の緩急にぴたりと合わせた、弾むようなステップでは、下半身は昨シーズンよりもさらに増した安定感が感じられ、上半身は大きくしなやかかつ丁寧に踊り切った。また、石塚が武器とするスピンでは全てが最高レべル4の認定。「普段から皆の手本になりたいと思って練習しています」という言葉の通り熱い想いを持って取り組んできた練習の成果の表れだった。石塚が明るいオーラを放つとともにまるで音楽を紡ぎ出しているような洒落たプログラム。演技後、「なによりも明るく楽しい雰囲気で滑れたので良かった」と振り返った。今シーズン最初のFSでは画面越しの観客の心に、そして石塚のラストシーズンにしっかりと足跡を残す好演技を披露した。目標としている全日本選手権のFSで『雨に唄えば』を披露するための物語が今、始まった。

傘を持つような振り付けを見せた石塚

(記事 中島美穂、写真 及川知世)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

▽選手権男子


石塚玲雄 S P 8位 52・34点、F S 7位 105・92点、総合 8位 158・26点


▽選手権女子SP


木南沙良 40位 37・86点


馬場はるあ 43位 35・40点


▽ジュニア6級女子(高校生以上)SP


千葉紫織 17位 31・84点


コメント

※馬場選手は連戦だったため今回はインタビューを行なっておりません

石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)

――今大会に出場した意図と目標を教えてください

げんさんサマーカップは西日本で試合できる貴重な機会ですし、全日本選手権のようなメンバーの中で戦えるので自分の成長にも繋がると思って出場しています。目標は練習してきたことをしっかりと出すことです。

――ジャンプの調子が良さそうでしたが、この試合に向けてどのように調整されてきましたか

ジャンプだけではなく全てがそうですが、普段から皆の手本になりたいと思って練習しています。

――演技前は集中できましたか。無観客開催の雰囲気には慣れてきましたか

比較的集中できていたと思います。無観客試合ではありますが、配信で沢山の方が応援して下さっているので元気が出ました。

――SP、FSの、演技全体を振り返っていかがですか

SP後は相当悔しかったです。ジャンプが最後の3Lzで「3Lz+3T」にできていたら意外とまとまった演技になったのでそこで決めきれなかった点が悔しいです。ただ、失敗後にも関わらず最後のステップはとても気持ち良く滑れました。演技全体を見て、滑りは良かったかなと思っています。FSは、Lzこそ失敗がありましたが、SPの時よりも入り~跳ぶ直前までの感覚は良かったです。その他のジャンプも練習してきたことが出せた方かなと思っています。スピンもSPの時よりも1つ1つのポジションをしっかりと回ることができたと感じています。演技全体を見て、なによりも明るく楽しい雰囲気で滑れたので良かったです。

――順位、点数に関してはどう捉えていますか

SPもFSも今入っている技の中でもっと伸ばしていけるなと思いました。

――SP、FSの衣装のこだわりなどありましたらお聞かせてください

SPの衣装は生地が斜めになっているところがポイントですし、なんといっても衣装の色がとても好きです。FSの衣装は「明るい色」という点にこだわりました。曲も明るいので衣装も明るく楽しい雰囲気にして頂こうと思って相談させて頂きました。衣装の伊藤さんのセンスに感謝という感じです。

――今回の大会の収穫を教えてください

まだまだ練習してきたことが全部出せたとは言えなかったですが、少しずつでも発揮できていたこと収穫です。2つの新プロを披露できたことも収穫です。スピンなども、後輩たちとの練習のおかげで自分も一緒に引き上げさせてもらっているなということが分かってとても収穫でした。

――ファンの方々へメッセージをお願いします

無観客ではありましたが、配信で沢山の応援を頂けてとても嬉しかったです。1試合でも多く楽しんで頂きたいですし、一回一回演技を観て頂ける機会というのが貴重なだけにしっかりと良い演技をお見せしたいです。観て下さる方がいることに感謝してこれからも頑張ります。

木南沙良(人通1=東京・日大一)

――今大会に出場した意図や目標を教えてください

今シーズン初めての試合だったので、新しいショートプログラムでの演技構成面での評価や、新たに挑戦したスピンなどがどのように判定されるのかを試すという意図で出場しました。

――フィギュア部門の部員としてはじめての公式戦はいかがでしたか

学校名を背負ったジャージを着て、名前の後に早稲田大学所属というコールがあるため、部員の一員になれていることが実感でき、とても嬉しく思いました。

――演技を振り返ってみて、いかがですか

久しぶりの試合ということもあり、前半は緊張してしまいましたが、後半は練習通りの演技ができました。

――順位、点数に関してはいかがですか

ジャンプのミスやスピンのレベルを取りこぼしてしまったことが点数に大きく響いてしまったため、点数が伸びず、悔しい結果となりました。

――かなり出場者数が多い大会となりましたが演技前は集中できましたか

グループことに部屋が分けられていたため出場者数の多さは感じませんでした。少し話がずれてしまうのですが、控室の時計が15分ほど早まっていることに気づかず、大慌てで準備をしてしまいました。(笑)

――S Pの衣装のこだわった点や気に入っている点等ありましたらお聞かせください

紺色から裾にかけてピンクにグラデーションのようになっていたり、肩周りが今までに着たことのないデザインになっていて、とても気に入っています。

――今後に向けての意気込みをお願いします

独特な曲をSPで使っているので、自分なりの世界観を作りつつ、課題であるジャンプを試合で成功させたいです。

千葉紫織(文構1=筑波大附)

――今大会に出場した意図を教えてください

去年は受験もあり、しばらく試合に出場していなかったので、試合の雰囲気を思い出すために、ひとつでも多くの試合に出ようという気持ちで出場を決めました。

――今大会の目標を教えてください

今回の試合はコーチ不在だったので、自己管理を徹底しようという目標を立てていました。また自分の演技の目標としては、東京ブロックのミニマムスコア(34点)を突破したいと思っていました。

――早大生としてはじめての公式戦、演技直前はどんな思いでしたか。緊張しましたか

まず早稲田のジャージを着てウォーミングアップをする時点で高揚感がありました。(笑) また、憧れだった早稲田大学の所属として見られていると思うと、独特の緊張感もあり、早稲田大学所属の選手として恥ずかしくない演技をしないといけないなとも感じました。

――今回無観客での試合でしたが、会場の雰囲気などはいかがでしたか。集中できましたか

去年試合に出場していなかったこともあり、無観客の試合は初めてでした。やはり、ジャンプを降りた時の拍手が力となったりするので、それがないと少し寂しいなと感じました。今後もしばらくは無観客試合が続くと思うので、歓声のない試合に慣れなくてはいけないなと思っています。

――S Pの見所や、気に入っているところがあれば教えてください

spではステップシークエンスが一番好きです。ステップ前半の強いシェヘラザードに対して、後半ではシェヘラザードの世界に観ている人を誘うような緩急をつけて滑ることを心がけています。

――今日の演技を振り返ってみて、いかがですか

正直目標として立てていたものは全然達成できず、悔しい気持ちは大きいです。自分の弱さを知ることが出来たという意味では、この大会に出て良かったなと思っています。

――順位、点数に関してはいかがですか

目標としていたミニマムの点数にもフリー進出の順位にも届かず、正直まったく満足出来ていません。悔しい気持ちを忘れずに、今後の練習や試合に活かしていきたいと思っています。

――衣装がとても素敵でした。こだわりポイントがあれば教えてください

ありがとうございます。衣装は王族を意識して、豪華で煌びやかなものになるよう、母が飾りを足してくれました。髪飾りのヘッドドレスとリボンが世界観を表していて好きなポイントです。

――今後に向けての意気込みをお願いします

今回自分がエレメンツに入る時に躊躇してしまう時が多々ありました。プログラムの中でジャンプを跳ぶことを意識して、今後の練習を進めていきたいと思っています。

――次戦が決まっていたら教えてください

来週末にある夏季フィギュアに出場します。新しいプログラムを初めて試合で滑るので、緊張しますが、楽しんで滑りたいです。また、東京ブロックのミニマムスコアを超えられるように頑張ります。