東日本SP 早大勢三人で明日のFSへ

フィギュアスケート

 コロナウイルスの影響で無観客試合が続く中、東日本選手権が開幕した。例年とは違う慣れない状況下で持っている実力を発揮し、ブロック大会を勝ち抜いてきた選手が名を連ねる。女子ショートプログラム(SP)に東京選手権で見事優勝を果たした永井優香(社4=東京・駒場学園)とシードで出場が決まっていた川畑和愛(社1=沖縄・N高)が登場。男子SPでは東京選手権で上位に入賞した石塚玲雄(スポ3=東京・駒場学園)が演技を披露し、川畑は4位、永井は11位、石塚が6位で無事フリースケーティング(FS)への出場が決まった。

今大会でも表現力が光る

 6分間練習が終わると永井は第4グループ第1滑走のためリンクに残る。名前をコールされると何かを確かめるように1度小さくうなずいてから真剣なまなざしでリンクの真ん中に向かった。以前のような大きな声援は聞こえないものの、画面越しに永井を見守る観客の気持ちが伝わっているのか、会場は緊張感に包まれる。SPの「エリザベート」が流れ始めると、緩やかな曲調に乗せて、氷上を大きく使った伸びやかなスケーティングを見せる。3回転トーループでは美しい空中姿勢から着氷で少し乱れが生じたがグッとこらえてカバーした。続く3回転ルッツはスピード感のある中流れるようにジャンプに入ったが、着氷時に手をついてしまった。しかし、その後のレイバックスピンではレベル4を獲得するなど前回の大会から成長した姿も見せた。そして得点が1.1倍になる演技後半へ。最後のジャンプである2回転アクセルは曲に合わせて飛び上がり着氷にも余裕が感じられた。徐々に曲が盛り上がっていくと永井自身の表現力もより際立っていく。「だいぶ動きが硬くなってしまって思うように滑れなかったなと言う気持ちです。」と試合後語ったが、持ち味の流れるようなエッジさばき、そして体を大きく使うことで衣装のフリルがひらひらと揺れる姿はとても美しかった。最後のチェンジフットコンビネーションスピンでもレベル4を獲得。最後の最高音が会場に響きわたり手を大きく広げ演技が終わった。リンクから上がり早稲田ジャージに身を包んだが、今日の演技に対し納得のいかない様子が背中から伺えた。点数は、47.87点。着氷時のミスにより連続ジャンプを決めることができず点数にも響いたが、音を捉えて丁寧に滑る永井のスケートは今日も輝いていた。FSに向けては「しっかり体を動かしてからリンクに降りて、余計なことを考えずに、ただただ一つ一つのスピンやジャンプに集中して諦めずに最後まで滑りきるのみかなと思います。」と意気込んだ。全日本選手権への明暗を分けるFS。永井自身も納得できる巻き返しの演技に期待したい。

(記事 岡すなを、写真 アフロ/JSF)

 永井に続いて第4グループ2番滑⾛で登場した川畑和愛(社学1=沖縄・N⾼)。昨シーズンの全⽇本選⼿権で表彰台に上り、全⽇本選⼿権のシード権を持つ。試合では初めての披露となる『⻩昏のワルツ』の優しい調べに乗って両腕を⼤きく広げる振り付けからスタート。冒頭の3回転ルッツ‒3回転トーループの連続ジャンプは1本⽬の3回転ルッツは⾼さがあったが2本⽬が回転不⾜で転倒。しかし、「⽚⾜で⽴つところまでは気持ちで持っていけた」と意思の強さを⾒せた。続く3回転ループは軽やかに着氷すると、回転速度の安定したフライングキャメルスピンを披露した。演技中盤のレイバックスピンではビールマンポジションの美しさが光る。上半⾝をダイナミックに動かしながらも下半⾝はしっかりと深くエッジを使い、⼀つ⼀つ丁寧にステップを踏んでいく。演技の流れを切らさずに2回転アクセルを難なく決めると演技は終盤へ。柔軟性の⾼さを⽣かしたポジションのコンビネーションスピンを回りきり、顔に⼿を添える印象的なポーズでフィニッシュ。演技後は少し悔しさをにじませたが、よく伸びるスケーティング、⼿先まで神経の⾏き届いた繊細な動き、柔らかな表情といった全ての要素がワルツの優しい曲調に調和しており、演技全体で⼀つの芸術作品のような滑りで⾼い演技構成点をマークした。明⽇のフリーに向けては、「今⽇失敗してしまったルッツ‒トーループのコンビネーションをフリーでしっかりと決めて、⾃信 を持ってノーミスで滑り切りたい」と意気込んだ。

 永井は先⽉の東京選⼿権ぶりに、川畑は初めて披露したショートプログラムでそれぞれ安定したスケーティング技術でしなやかに美しく舞った。ジャンプ⾯で⾒つけた反省点を⽣かし、明⽇のフリーではそれぞれが納得のいく演技を披露し早⼤勢が笑顔で終えられることを期待したい。

(記事 中島美穂、写真 アフロ/JSF)

結果

▽東日本選手権女子SP

川畑和愛 4位 58.35点 永井優香 11位 47.87点

▽東日本選手権男子SP

石塚玲雄 6位 55.28点

コメント ※石塚選手に関しては後日、別の記事でインタビューを掲載します。

永井優香(社4=東京・駒場学園)※Zoomでの囲み取材より抜粋

――今日の演技を振り返っていかがですか

 

だいぶ動きが硬くなってしまって思うように滑れなかったなと言う気持ちです。

 

――緊張していたのですか

 

緊張していたかはあまりわからないんですけど、6分間で氷に降りてみてちょっと違うなと思ってしまって、それをそのまま引きずってしまいました。

 

――違うと言うのは具体的にどのようなところが違うなと思ったのですか

 

調子がいい時は重心が真下に降りてて、滑らかに滑れるんですけど、今日はどうしても重心が上の方になってしまって、パカパカするというか。ちょっと氷に吸い付く感じみたいなのが全然掴めなくて滑るのが難しかったです。

 

――今シーズンは集大成のシーズンということで東日本選手権にどのような気持ちで挑みましたか

 

集大成ではあるんですけど、綺麗な演技をしようというよりかは、あまりジャンプの調子が良くなかったので、とりあえず、良くやろうとか考えずに今できることをやろうということだけを考えてきました。

 

――今日の反省点も踏まえてどんな演技をしたいですか

 

明日は、しっかり体を動かしてからリンクに降りて、余計なことを考えずに、ただただ一つ一つのスピンやジャンプに集中して諦めずに最後まで滑りきるのみかなと思います。

 

――エリザベートはお母様が好きな曲ということで、お衣装なども再現率がすごいですが、舞台を見に行かれたりしたのでしょうか

 

はい。見に行きました。去年使おうかなと思っていて、去年見に行っていました。

 

――そのエリザベートを見て、どういう女性を演じたいと思いましたか?

 

自分が話を理解しきれてるかは不安なんですけど、すごく芯のある、自分を持っている主人公だと思うので、自分の人生は自分で決めるんだという強い気持ちを表現していきたいなと思いました。

 

――振り付けの鈴木明子さんからはご指示があったのでしょうか

 

そうですね。はい。まさに今言ったようなことをもう少し細かく教えていただきました。曲の最初と最後でこういう心情の変化があるよねみたいな話をしました。

川畑和愛(社1=沖縄・N高)※Zoomでの囲み取材より抜粋

――演技を振り返ってみていかがでしたか

 

ルッツトーループのコンビネーションがルッツを降りたときの感覚では跳べるって思っていたんですけど、(トーループの)上がりのときに軸に持っていけなくて回転不足で転んでしまったんですけど、片足で立つところまでは気持ちで持っていけたと思うので転ぶっていう失敗がフリーではでないようにしたいです。

 

――練習のときの感覚はいかがでしたか

 

6分間練習は、朝の公式練習よりは身体もよく動いていてジャンプの全体的な感覚的にはすごく良かったです。

 

――この東日本に向けて特に重点的に練習してきたり意識してきたりしたことはありますか

 

ジャンプはけっこう単独ジャンプは安定してきていて、トリプルトリプルのコンビネーションが練習でも回転不足になってしまうことが多いので東日本に向けてそこは練習してきたんですけど、まだ100%の自信は持てていないです。

 

――今シーズンは試合が少ないシーズンでしたが、この東日本選手権の位置付けを教えてください

 

樋口先生からは、東日本とNHK杯と全日本選手権を全日本が3回あるつもりでやりましょうって言われていたので今日のショートの出来はやっぱりもっとしっかり自信を持ってノーミスできるようにしていかないといけないなと思います。

 

――明日はどういった演技をしたいですか

 

今日失敗してしまったルッツトーループのコンビネーションをフリーでしっかりと決めて、自信を持ってノーミスで滑り切りたいです。

 

――ショートプログラムを試合で滑るのは今回が初めてですか

 

試合で滑るのは今日が初めてです。

 

――滑ってみてご自身の手応えと点数など全体的なショートプログラムの手応えを聞かせてください

 

ショーで滑らせてもらう機会は今シーズンの中であったので試合では初めてだったんですけど、初めてっていう意識はなく落ち着いて滑れたと思います。