永井、大舞台で『オペラ座の怪人』を披露 多くのファンに自らの演技を届ける

フィギュアスケート

 五輪代表2枠をかけて熱戦が繰り広げられた女子フリースケーティング(FS)。女子ショートプログラム(SP)で24位以内に入り、見事にFS進出を決めた永井優香(社1=東京・駒場学園)が全体の一番滑走で登場した。

 第1グループの六分間練習が終わると1人リンクに残る。自分の演技に向けて何度も胸に手を当て、心を落ち着けた。名前がコールされると、会場全体から声援がわき、「素直にすごくうれしかった」という。スタート位置に付くと会場を静寂が包み、『オペラ座の怪人』を観衆が固唾(かたず)をのんで見守った。プログラムが幕を開けると冒頭のトリプルルッツ、ダブルアクセル-トリプルトーループを見事着氷。勢いに乗ったかと思われたが、続いて予定されていたトリプルループはダブルループとなり、重ねて回転不足を取られてしまう。しかし、SPでも最高レベルを獲得したレイバックスピンで、再びレベル4を獲得し流れを引き寄せた。そしてコレオシークエンスでは、曲の盛り上がりと共に勢いのある演技で魅了した。

一番滑走で登場した永井

 技の基礎点が1.1倍となる演技後半。力強い曲調に音楽が変化した直後のトリプルループはきれいに決める。続くトリプルトーループも成功させたように思われたが、こちらは回転不足を取られてしまった。また、次に予定していた三連続ジャンプではが最初のサルコーが1回転になる。「後半のジャンプは東日本選手権の後にすごく重点的に練習してきていたので、ものすごく悔しい」と振り返った。終盤の『The Point of No Return』の柔らかな曲調に合わせたステップとフライング足換えコンビネーションスピンではしなやかな動きを見せ、多くの人々へ自分の舞を届けた。FSの得点は97.01点。ジャンプにミスがあり、実力を存分に発揮することはできなかった。しかし1年前大粒の涙を流したキスアンドクライでは、笑顔を見せた。

壁を乗り越え再び全日本の舞台に立った

 上位5人が200点超えと、今大会ではハイレベルな戦いが繰り広げられた。永井も「他の選手を見ていて刺激を受けました」という。全日本選手権を終え、「もっとできることを増やしていきたい」と新たな決意を語った。スケートを一からやり直し、自分の滑りを着実に取り戻していった今季。この1年で体験したことを糧に、これからさらに強くなった姿を見せてくれることだろう。

(記事 糸賀日向子、写真 石黒歌奈恵)

結果

▽女子

永井優香 22位 152.26点(FS 24位 97.01点)

コメント

永井優香(社1=東京・駒場学園)※囲み取材より抜粋

――フリースケーティング(FS)を終えていかがでしたか

終わってすぐ思ったのが、二つパンクしてしまったことがすごく悔しいということです。特に後半のジャンプは東(東日本選手権)の後にすごく重点的に練習してきていたので、サルコーが抜けてしまったのがものすごく悔しいです。

――FSは鈴木明子さんの振り付けなのですか

はい。

――以前鈴木明子さんも『オペラ座の怪人』を滑られていましたが、お願いしたのでしょうか

曲を選んだのは先生です。自分は他の曲とか「こういうのどうですか」とか言っていたんですけど、先生が「オペラ座が良いんじゃない」と言っていて、自分も気に入ったので『オペラ座(の怪人)』にしてもらいました。(鈴木)明子さんの方には、明子さんが前滑られていたので、同じような編曲だったらちょっと、という風に言われていました。でも編集が結構違ったので「良いよ」と言ってもらえて、振り付けてもらうことになりました。

――振り付けの時間はいかがでしたか

4月頃に作ったんですけど、一緒に滑っているとすごく楽しいと思えました。シーズン前にスケートに対してすごく良い気持ちになれたかなと思いました。

――(鈴木明子さんは)優しいですか、それとも厳しいのでしょうか

すごく本当に素敵な方で指導はすごくきちんとしてくれます。できていないところはビシッと言ってもらえるんですけど、すごく一つ一つの言葉が優しいです。一緒に滑ることができて良かったな、と言う気持ちになりました。

――明子さんに振り付けてもらいたいと思ったのは永井さんご自身なんですか

私はまだあまりどなたにやってもらうとか今まで先生が結構決めてくれていたので考えていませんでした。中田(誠人)先生が頼んでくださって、すごく良い経験ができたと思います。

――ショートは太田由希奈さん振り付けですか

はい。

――これまで交流はありましたか

私のリンクに滑りに来ていたりしていて、元々知ってはいました。本当にすごくきれいに滑る方で、振り付けをしてもらったときもものすごくきれいでした。自分は全然上手くできなかったのでちょっと恥ずかしかったんですけど、SPもFSも違うタイプのすごく素敵なスケーターの方に振り付けしてもらえて、すごくいろいろな収穫がありました。

――演技の前にものすごく大きな歓声を受けていましたが、演技
前はどのような気持ちでしたか

素直にすごくうれしかったという気持ちでいっぱいです。SPの時も思ったんですけど、全日本の舞台に1人で立ったときにうれしいと思えることが幸せだなと思いました。

――ルッツは朝も重点的に取り組んでいましたが、いかがでしたか

本番は降りたんですけど、出来栄えのほうは見ていないのでまだ分からないんです。でもとりあえず降りたのは良かったなと思っています。朝は先生方がたくさん立っていてちょっと緊張してしまって、そこがまだまだ甘いなと思いました。

――表現面はいかがでしたか

表現面は正直まだまだかなと思っています。まずは曲の中でしっかりジャンプを回転することをしなくてはいけないなと思いました。

――今大会を通して得た収穫はありますか

自分が滑り終わっていろいろ直さないといけないところも見つかりました。それと、他の選手を見ていて刺激を受けました。とりあえず大きな大会が一つ終わったので、まずはインカレ(日本学生氷上競技選手権)なんですけど、来季も含めて自分が何をしたいかを考えて一からやり直していきたいと思います。

――今季をここまで振り返っていかがでしたか

今本当にいろいろな気持ちがあります。一番大きいのはもっと頑張りたいなと思えるようになりました。きょねんから今年にかけては楽しんで滑ることが一番の目標だったんですけど、今年から来年にかけてはもっと自分の中でできることを増やしていきたいなという気持ちが大きいです。

――SPとFSをやってみて思ったという感じでしょうか

いつも次の目標を立てるのにひとつのことを終えないとあまり立てられないのでとりあえず今は大きな試合が終わって多分次の目標ができたのではないかなと思います。