東日本選手権から一週間。今度は福岡の地で全日本選手権(全日本)をかけた戦いの火ぶたが切られた。中京大勢や関西大勢など実力者が集う西日本選手権(西日本)に早大からはただ1人、中塩美悠(人通3=広島・ノートルダム清心)が出場。上位12人に入り、12月に行われる全日本への進出を決めた。
4日に行われたSP。冒頭のトリプルトーループ-トリプルトーループを着氷する。続くジャンプは、今季ここまでトリプルループを組み込んでいた。しかし西日本では「確実に、自信を持つため」とトリプルサルコーに変更した。着実にサルコーを加点が付く出来で成功させると、残るダブルアクセルも降り、ジャンプはノーミス。ステップはレベル2に留まったが、全てのスピンでレベル4を獲得した。全日本への切符を手繰り寄せる好演技でフリースケーティング(FS)へ折り返した。
ステップには中塩の魅力がふんだんに詰め込まれている
翌日行われたFS。最終グループには坂本花織(シスメックス)、新田谷凜(中京大)、松田悠良(中京大)と世界で活躍する強豪が顔をそろえ、中塩は二番滑走で登場した。強気で臨むことを意識しスタートポーズをとる。滑り出し、指揮をする仕草で物語へ観客をいざなうと、冒頭はトリプルトーループの連続ジャンプ。「一本目で多分少し外れてしまった」と振り返ったが、身体を締め成功させる。続くフリップ、ループはそれぞれ回転不足、2回転になってしまう。しかし、ここで流れは止まらなかった。いたずらっぽい仕草が所々に織り交ぜられたステップで盛り上げ、会場の雰囲気を一体にする。その後2回の連続ジャンプを含む3つのジャンプとコレオシークエンスを実施した。残るジャンプは予定ではダブルアクセル。しかし中塩はダブルアクセルにダブルトーループをつけ、まさかの4回目の連続ジャンプに。「強い気持ちで滑ろうとしすぎた」と振り返り、着氷時には頭を抱えるような仕草も見せた。しかし幸いにもノーカウントになるのはダブルトーループだけ。全日本に行きたいという気持ちが強く出過ぎてしまったがためのミスだったといえよう。その後は美しいスピンで演技を無事締めくくった。プログラムを終えた後再び頭を抱えるような仕草を一瞬見せたが、笑顔であいさつをした。FSは95.03点で9位であったが、SPと合計した総合順位は8位。目標であった大舞台へのチケットを手にした。
笑顔で4分間を演じきった
今季は平昌五輪シーズン、有力選手は多いが五輪に出場できる女子選手はわずかに二人だ。宮原知子(関大)、三原舞依(シスメックス)、樋口新葉(日本橋女学館高)を筆頭に五輪の激しい代表枠争いが予想され、全日本は注目を集める。そんな四年に一度の大舞台へ、早大勢からは中塩、そして東日本を1位で通過した永井優香(社1=東京・駒場学園)が登場する。特別な大会で早大コンビが会場を魅了し、銀盤で輝く姿を今から心待ちにしたい。
(記事、写真 糸賀日向子)
結果
▽選手権女子
中塩美悠 8位 総合 150.82点(SP 5位 55.79点、FS 9位 95.03点)
コメント
中塩美悠(人通3=広島・ノートルダム清心)
囲み取材
――全日本(選手権進出)を決めた感想は
とりあえずほっとしています。とりあえず目標は達成なので良かったです。
――フリースケーティング(FS)は最終グループでプレッシャーもあった中の演技だったと思うのですが、どのようなことを考えて滑っていましたか
昨日LINEが来て、「美悠ちゃん絶対に強気でやってきて」って言われて、ずっと自分に「強気で、強気で」と言い聞かせてやっていました。
――ショートプログラム(SP)の3(回転)-3(回転)は納得のいく出来でなかったということでしたが、FSの3(回転)-3(回転)は文句なしの出来だったのではないですか
1本目で多分ちょっと外れちゃってやばっ!と思ったんですけど、でも強気で!と思って頑張って締めたので良かったです。
――プログラムはどのようなことを考えて滑っていますか
私のイメージは「普通の女の子、熱心に頑張る女の子なんだけどちょっといたずらしちゃう女の子」って先生に言われて。それで私は『のだめカンタービレ』が好きで、のだめが大好きなので、私はのだめを思いながらよく滑っています。
――どこの部分が一番自分でお気に入りですか
やっぱりステップで、「あ、間違っちゃった」という振りがあるんですけど、なかなか曲が速すぎて入らなかったんですけど、きょうはできて良かったです。
――本当にピアノのメロディーに合わせて笑顔はじけるナンバーだなと思うのですが、滑っていていかがですか
すごくはじけてやりたいんですけど、得点を獲るために一個一個気をつけながらやらないといけないのでそこは(長光)歌子先生に教えてもらったことを考えながらやっています。
――全日本に向けてどのようなことを伸ばしていきたいですか
やっぱり21歳になってベテランの域に達してきて、20歳過ぎた人にしか出せないような空気感というか世界観を出せたらいいなと思います。
――どのような感じの世界観ですか
同じ曲、振りで滑っても美悠ちゃんだからこんな作品になるんだよねという作品を作りたいと思います。
――アピールポイントはどこですか
感情がすぐ顔に出ちゃう人なのでそこは欠点でもあるんですけど、長所に変えられるように。私のアピールポイントは顔です。
――全日本での目標を
今までやってきたことを全て出し切れるように、3(回転)-3(回転)もだし心配なことは多いけど一番の舞台で一番の演技ができて笑顔で帰れる事が目標です。
個別取材
――まずSPを振り返っていかがでしたか
SPはちょっと難易度を下げました。いつもSPを全力でやってしまってFSに体力を残すことができないことが課題でした。そこを改善するためにここ(西日本選手権)は通過するところなので確実に、自信を持つためにサルコーにしたらと言われました。それでやったらノーミスだったので、確かに自信を持つことができたし、体力も残すことができたので良かったです。
――初めの何かをたたいているところはどのようなイメージですか
私のイメージはミッキーが指揮をするじゃないですか。そんな感じで始めるよって指揮を始めにしています。
――コンビネーションジャンプを4本跳びました。4本目を跳んだ後、頭を抱えていました。どんな心境でしたか
強い気持ちで滑ろうとしすぎました。いつもサルコーの二本目にコンビネーションをつけるので、ダブルになっちゃったので、「あ、トーループつけなきゃ」と思ってつけちゃって、「あ、そういえば跳んでた!」と思って。前のシステムだったらジャンプ(の得点)自体全部消えちゃっていたんですけど、今回はトーループだけ(点数が消える)みたいなのでまだ良かったです。
――永井優香選手(社1=東京・駒場学園)が一週間前に全日本選手権(全日本)進出を決めていましたが何か連絡は取られましたか
すごい(連絡を)取りたかったんです。でも(連絡を)取って「優香ちゃんおめでとう」と言ったら多分優香ちゃんも「美悠ちゃん頑張ってね」とは言うけど複雑だと思いました。それに私も落ちたときに嫌だったので、ちゃんと(全日本進出が)決まってから一緒に行こうねと思って連絡は取ってないです。
――それではこれから連絡を取るのですね
はい。