松嶋決めた!2年ぶり全日本進出

フィギュアスケート

 東日本の各地区を勝ち上がった実力者が氷上でし烈な争いを繰り広げる東日本選手権。12月に行われる全日本選手権(全日本)の出場権を争うこの大会に、早大からは2年ぶりの全日本出場を目指す松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)がエントリーした。松嶋はショートプログラム(SP)ではジャンプのミスにより10位スタートとなる。しかしフリースケーティング(FS)の好演で得点を伸ばし5位に入り、去年はわずか『1.89』点差で逃した全日本への切符を2年ぶりに勝ち取った。

 女子SP第4グループの1番滑走で登場した松嶋。『サムソンとデリラ』に合わせて滑りだすと、初めは得意とする3回転―3回転のコンビネーションジャンプに挑む。しかし1つ目のジャンプで左に行きすぎてしまい、2つ目のトーループが2回転となってしまう。続くトリプルループは、曲の中では「練習でも入ったことがなかった」というが、ここぞの場面で着氷し、自らの演技に勢いをつける。最後のダブルアクセルもこらえて着氷と、ジャンプでは精彩を欠く場面が多かったが、一方表現面では持ち味を存分に見せた。ステップシークエンスでは一つ一つの動きを丁寧に見せ、観客へアピールする。またスピンも安定してまとめた。得点は45.93点とSPを終えた時点で10位となったが、全日本圏内までは約3点。FSでの逆転が十分可能な位置につけた。

ジャンプのミスをスピンやステップで補った

 SPから1日空けて行われたFS。シーズンを通して好調が続いており、松嶋自身も「自信が付いてきた」という『ラストエンペラー』と『SAYURI』を組み合わせたプログラムで上位を狙った。冒頭の3回転―3回転は高さと幅のあるジャンプで出来栄え点の加点を得る。続くループは1回転になってしまうが、ここから松嶋は遺憾なく実力を発揮する。2つのダブルアクセルを決めると、ウィンタートロフィーからプログラムに組み込んだ3連続ジャンプも成功し、大きな得点源とした。表情豊かに演じたステップやスピンの部分でも高評価を受け、会心の演技を披露。89.23点と高得点をたたき出し、演技を終えた時点でトップに立つ。全日本をかけた独特の緊張感からか後続の選手が思うように点数を伸ばせない。松嶋は第3グループが終わった時点で依然1位をキープし、その時点で見事全日本出場を決めた。最終グループでは昨年全日本2位の樋口新葉(日本橋女学館)などの上位陣が圧巻の演技を見せ、松嶋の最終順位は5位となった。

得意のスパイラルを見せる松嶋

 今回の東日本選手権も選手の実力が拮抗(きっこう)しており、一点の差により悲喜こもごもとなった。その中で全日本出場を決めた選手は松嶋と今井遥(新潟県連)以外は全員高校生と、新世代の台頭を感じさせる大会となった。先日行われた西日本選手権では、松嶋とインカレを共に戦う中塩美悠(人通2=広島・ノートルダム清心)も全日本出場を決めている。全日本で早大から出場する二人がどのような演技を見せてくれるのか楽しみである。

(記事 糸賀日向子、写真 橋本望、冨田千瑛)

★早大から二名出場は8年ぶり

 ことしも数々のドラマが生まれた東西日本選手権。中塩は広島スケートクラブからのエントリーとはなるものの、早大スケート部フィギュア部門に所属する選手から二名が全日本に出場するのは、武田奈也(平23スポ卒=東京・日本橋女学館)と岩城優子(平24スポ卒=愛知・中京大中京)が出場した2008年以来実に8年ぶりのこと。全体的にレベルの上がった今季の女子で複数名が進出したことは、快挙と言えるだろう。

 全日本への道のりは険しい。予想外の出来事が起きることもある。西日本の女子では、加藤利緒菜(中京大)が0.5点足りずまさかの落選。東日本の男子では、村上大介(陽進堂)と宮田大地(法大)の実力者二人がけがで棄権を余儀なくされた。また女子は若手の躍進が目立ち、3年連続の出場を逃した高橋美葉(札幌大)ら多くの大学生スケーターが苦杯をなめた。だが思えば昨季、中塩はけがで、松嶋は数点足りず晴れ舞台への道を閉ざされている。同じ経験をしているからこそ、その思い、悔しさは痛いほど分かるはずだ。進めなかった者、特に、普段共に切磋琢磨(せっさたくま)している大学生スケーターの努力と涙を無駄にしないためにも、大阪で最高の演技を見せてほしい。

(記事 川浪康太郎)

結果

▽選手権女子

松嶋那奈 5位 135.16点(SP 10位 45.93点、FS 5位 89.23点)

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コメント

松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)

SP

――きょうのショートプログラム(SP)を振り返っていかがでしたか

落ち着いてできてはいました。しかし落ち着きすぎていたのかは分からないのですが、冒頭(のジャンプが)左に大きく行きすぎてしまいました。そのジャンプが決まらなかったのは残念なのですが、全体的に笑顔で滑れたのはよかったかなと思います

――大会に向けてどの部分を重点的に練習されてきたのでしょうか

ウィンター(ウィンタートロフィー)が終わってから時間が全くありませんでした。またジャンプの調子もすごく落ちてしまいました。なので、表現面を重視していこうとかスピンのレベルを落とさないようにしていこうと練習をしてきました。

――表現面で重視していたことはありますか

ずっと先生に「笑顔で滑るように」と言われていました。きょうは結構固まっていなかったので、表情豊かに滑れたかなと思います。

――連戦による疲れはありましたか

今回は休まずにきたので疲れはありました。しかし朝休んだりして練習時間を短くして集中することができてよかったと思います。

――ジャンプはいかがでしたか

(冒頭の連続ジャンプは)一番自信があったので、うまくはまらなくて残念でした。次のループは、曲では練習でも入ったことがなくてずっとパンクしたりダブルになったりしていました。きょうは落ち着いてできていたので、曲だと思わずに練習通りやろうと思いました。跳ぶことができて良かったです。アクセルはちょっと固まっちゃって、跳ばなきゃという気持ちがあったのであまりよくありませんでした。あさって跳べたらいいと思います。

――得点についてどのような感想でしたか

すべてのジャンプに減点が付いてしまったと思います。その中では点数が出たほうかなと思うので、納得はしています。

――フリースケーティングに向けての意気込みをお願いします

今全日本圏内にはいないのですが、フリー(スケーティング)は自信が付いてきました。なので、自信を持って滑っていけたらいいなと思います。

FS

――全日本選手権(全日本)進出おめでとうございます!今のお気持ちをお聞かせください

ありがとうございます。きょうは練習通り滑れたので、全体的によかったかなと思います。

――SP10位からのスタートでしたが、試合前の心境はいかがでしたか

きょうはとりあえずなにも考えずに、練習通りにできたらいいなと思っていて、その通りにできたのでよかったです。

――佐藤信夫コーチからはどんな言葉を掛けられていましたか

「今まで練習してきたんだから、自分に自信を持って滑れ」と言われました。

――89.23点という点数を見た時はどんな気持ちでしたか

まだ上げられるところはたくさんあると思うので、次の全日本に向けてもっと表現力とかスピンやステップを上げられるようにしたいです。

――ジャンプを振り返って

ループは頑張りすぎてしまった部分があって、あとはサルコーも頑張りすぎたので、まだまだ加点を取れるところはたくさんあります。集中的に練習して落ち着いて跳べたらいいなと思います。

――最後の3連続ジャンプはウィンタートロフィーから入れましたが、その意図は

やっぱり、3連続があるのとないのとでは点数がだいぶ違うので、先生に「頑張って入れよう」と言われてつけました。

――ジャンプ以外の要素はいかがでしたか

スピンは落ち着いてできたし、ステップとコレオも笑顔で滑ることができたので、今まで通してきた中では一番よかったかなと思います。

――今季は好調を維持していますが、ここまでを振り返って

夏は練習が全然できなくて不安もたくさんあったのですが、その分短時間で集中することができました。体も絞れて、良い調子で来られたので、このままずっといけたらいいなと思います。

――2年ぶりの出場となる全日本への意気込みを聞かせてください

全日本はすごい選手が多いので、楽しんで滑って、あとはみんなの演技を見て勉強したいです。