連日の猛暑が続く中、滋賀の地では熱い氷上の戦いが繰り広げられた。新天地・西宮で練習を重ねてきた中塩美悠(人通2=広島・ノートルダム清心)は、フリーで新プログラムを披露。ジャンプに苦しみ5位に終わったが、課題を見つけるとともに不調の中でも持ち味を発揮した。
総勢44名が出場した選手権女子のショートプログラム(SP)。直前の6分間練習では次々とジャンプを決め、好調ぶりをアピールした。使用曲は昨季から持ち越しの『ゴファーマンボ』。期待を一身に背負い、まずは冒頭のコンビネーションジャンプに挑む。高さのある3回転トーループを着氷するも、セカンドをつけられず。気持ちの整理がつかないまま、2本目の3回転フリップは転倒。思わぬミスが相次いだ。一方、曲調に合わせたスピード感あふれるスケーティングは健在で、演技構成点は全体3位の24.16点をマークした。しかし、ジャンプの失敗を補うことはできず、合計得点はまさかの40点台。SP8位と出遅れ、翌日のフリーでの逆転を狙うこととなった。
SPの演技は、本来の実力には程遠かった
フリーでもジャンプの不調は続いた。最初の3回転ルッツがステップアウトとなると、そこから波に乗ることができない。中盤、決まれば大きい2回転アクセル-3回転トーループに挑んだが、ここもセカンドで転倒し失敗。最後の単独ジャンプ3つは降りたが、結局今大会では得点源となるコンビネーションジャンプを1つも成功させることができなかった。それでも、中塩は笑顔を忘れなかった。「暗い顔をしていても仕方がない」。応援してくれるファンがいる限り、魅せるスケートは消えない。新プログラムに選んだのは、ジャズの要素も含むクラシック音楽『ラプソディ・イン・ブルー』。ステップでは明るい表情とはつらつとした動きで、中塩らしさを全面に押し出した。得点は伸びず順位を3つ上げるにとどまったが、その美しい滑りが観客の心を奪ったことは間違いない。20歳を迎える節目の年。目指す『普通の女の子』が見せる、本当の笑顔が待ち遠しい。
中塩にしかできないコレオとステップは最大の武器だ
表彰台は中京大勢が独占。優勝した新田谷凜(中京大)には45.52点という大差をつけられた。同世代のライバルたちの後塵を拝する結果となったが、シーズンはまだ始まったばかりだ。来月、全日本選手権への第一歩となる中四国九州選手権で連覇を狙う。群雄割拠の女子フィギュア界で生き残るため――。復活へのシナリオは、ここから始まる。
(記事、写真 川浪康太郎)
次は必ず表彰台へ
結果
▽選手権女子
中塩美悠 5位 132.21点(SP 8位 45.65点、FS 5位 86.56点)
コメント
中塩美悠(人通2=広島・ノートルダム清心)
SP
――今季初戦でしたが、どのような意気込みで臨みましたか
まとめられたらいいかなと思っていました。
――SPの演技を終えていかがですか
6分間練習では普通によかったので、そのままできるかと思っていたのですが、最初のジャンプで予想外なことになってしまって、そこからパニックになってしまいました。落ち着いてやればよかったかなと思いました。
――ジャンプ以外の表現面などの要素はいかがでしたか
あんまり覚えていないのですが、表現とかそういう問題ではなかったです。
――SPは昨季から持ち越しとなりましたが、昨季と比べて
昨年どうこうではなく、今までで2番目に悪かったです。
――あすのフリーへ向けた意気込みをお願いします
とりあえずまとめて、見せられるものにしたいです。
FS
――今大会を振り返って
先週選考会があって、その疲れが取れないままやってしまったので、ギリギリまで休んでいました。ですが、筋肉痛とかも取れなくて、転倒とパンクは防ごうと意識して頑張って締めました。何かがかかっている試合ではないし、とりあえず終わったという感じです。
――コンビネーションジャンプを決めきれませんでした
コンビネーションは自分で数えてなかったので、今大会で学んで次に生かせるようにしたいです。
――『普通の女の子』を演じたいとおっしゃっていましたが、そのあたりはいかがでしたか
演技というよりも体のコンディションの方に考えがいってしまっていたので、そのことをあまり考えられなかったのは悔しかったです。
――ただ、きのうと比べて明るい表情が目立ちました
跳べない時もあるので、そういう時に暗い顔をしていても仕方がないし、来てくださっているファンの方もいるので、楽しませられたらなと思っていました。顔くらいは演技できるので(笑)。
――『ラプソディ・イン・ブルー』を選んだ理由を教えてください
本当はもっとジャズ系の曲をしたかったのですが、SPと被るし、今までタンゴとかをやってきたので、もう20歳になるということでクラシックをやってみたいなと思いクラシックを聞いていました。ですが、クラシックが大人っぽすぎて滑り切れないかなと思い、クラシックの中でも遊び心のある曲を選びました。
――今回の衣装は何かこだわりがありますか
あれは正規のものではなく、前のエキシビションの衣装です。
――今後の課題、取り組みたいことは何ですか
連戦になってきたら疲れたとか筋肉痛とか言ってられないので、体力をつけて、どんな状況でもまとめられるようにしたいです。
――来月の中四国九州選手権に向けた意気込みをお聞かせください
シーズンのはじめはブロックからだと思っているので、最初に好スタートを切れるように頑張ります。