山野井、悲願の優勝!笑顔でアメリカへ

フィギュアスケート

 関東のスケーターが集まるサマートロフィー2016。早大の山野井英未(国教2=千葉・渋谷教育幕張)にとって留学前最後の試合となった今大会。ライバルの選手たちがミスをする中、スケート人生の区切りとして演技に臨んだ山野井は全てのジャンプの着氷に成功するなど完成度の高いショートプログラム(SP)を滑り、優勝という結果で有終の美を飾った。

 堂々とした表情で演技をスタートした山野井は、冒頭の3回転サルコウ-2回転トーループのコンビネーションジャンプを決め、さらに2回目のジャンプを降りると波に乗った。『黒い瞳』の優雅ながらも力強い曲調に合わせ、軸のぶれないスピンや全身を大きく使ったステップシークエンスを披露していく。そして最後に挑むのは2回転アクセル。本番直前の練習で念入りに確認していたジャンプだ。前回の大会で回転不足となったこのジャンプを確実に決めると、ビールマンスピンでフィニッシュ。豊かな表現力に加え、終始滑らかなスケーティングで観客を魅了し続けた。普段の試合では感情を表に出さない山野井だが、見事ノーミスで演技を終えた際には自身も納得の演技に笑顔がこぼれた。

珠玉のラストスケーティングで締めくくった

 国際教養学部に憧れ、早大の門をたたいた山野井。学業やモデル業と両立しながら、スケートを続けた。しかし、ルーキーイヤーの昨季はジャンプが安定せず、苦しい戦いを強いられる。大粒の涙があふれたこともあった。それは、日本学生氷上競技選手権での演技直後。エンジを背負って挑んだ初めての大舞台であったが、ここでもジャンプが決まらず21位に終わる。悔しい表情が目立った1年目だったが、早大に久々に現れたホープはこのままでは終わらなかった。2年目の今季は、練習で重点的に取り組んだジャンプが安定。それに呼応するように表現力にも磨きがかかり、強豪のそろう関東学生フリースケティング選手権では3位に輝く。そして、ようやくたどり着いた表彰台の頂点。この日は演技直前まで高熱に見舞われていたが、それを全く感じさせない滑りを見せた。「11年間で、精神面でとても成長できた」。手にした金メダルが、その言葉を証明していた。

最後は、満面の笑顔で

 この夏、アメリカに渡り人生の第二章をスタートさせる。「スケート以外のことにも挑戦して1年間で変わりたい」。その向上心は、とどまることを知らない。今後の進退は未定だが、氷上で舞う山野井の姿は、ファンの、仲間の、ライバルの心に確かに刻まれた。最高のかたちでスケート人生に一つの区切りをつけ、夢路の続きを歩み出す。

(記事 石黒歌奈恵、川浪康太郎、写真 後藤あやめ、糸賀日向子)

表彰台の真ん中に立つのは久々のことであった

結果

▽シニア女子

山野井英未 優勝(39.07点)

コメント

山野井英未(国教2=千葉・渋谷教育幕張)

――留学前最後の演技ということで特別な思いはありましたか

最後なので自分ができることを全部発揮して、観客の人を盛り上げられるような素晴らしい演技で終わりたいと思っていました。

――6分間練習ではダブルアクセルを何度も確認していましたが、特に意識していましたか

ダブルアクセルは最後のジャンプなので、しっかり決めたかったので確認していました。

――演技終了時には笑顔が見られましたが、どのようなお気持ちでしたか

試合の結果など細かいことはあまり気にしていなかったのですが、一番いいかたちで終われたのでとてもうれしくて笑顔になりました。

――大学に入学してから印象に残っている試合はありますか

前回の関東インカレ(関東学生フリースケーティング選手権)で久しぶりにいい点が出せたので、あの試合は印象に残っています。

――そもそも早稲田大学に入学したきっかけは何かありますか

国際教養学部にとても憧れていて、知り合いの先輩も入っていたので、その先輩を追いかけるように憧れの学部に入りました。

――アメリカでもスケートは続ける予定ですか

ワシントン大学からバスで40分くらいの所にリンクがあるらしいので、下見しに行って確認して、もし行けるようだったら行きたいです。ですが、あっち(アメリカ)で毎日スケートができるとは思えないので、今日の試合が区切りになると思っていました。

――留学中のスケート以外の目標は何かありますか

人生の転機になると思うので、自分が将来やりたいことが1年間で決まってくればいいなと思っています。スケート以外のことにも挑戦して1年間で変わりたいと思っています。

――最後にこれまでのスケート人生を振り返って一言お願いします

11年間スケートをやっているのですが、数年ぶりに優勝ができてとても嬉しいという気持ちがあります。大学生になってから、メンタルの面で落ち着いてきたと思います。練習通りに演技ができるようになってきたというのが、精神的に成長したという自信になりました。実は今日は朝からずっと頭痛がしていて、演技直前まで38度の熱がありコンディションはとても悪かったです。その中でも気持ちが昔よりも強くなったのか、熱を力に変えようとプラスに考えられたので、11年間で、精神面でとても成長できたと思います。