早大が圧巻の完封勝利を収めた早慶アイスホッケー定期戦。その勝利に華を添えたのが、両校のスケート部フィギュア部門によるエキシビションに登場した山野井英未(国教2=千葉・渋谷教育幕張)だ。大学2年目に突入した若きヒロインが、持ち前のエレガントなスケーティングで至福のひとときを演出した。
男と男の激しいぶつかり合いから一転、会場の雰囲気がガラリと変わったのは第2ピリオド終了後のことだった。深緑の衣装をまとった山野井が選んだプログラムは、宮本賢二氏が振りつけを担当した『黒い瞳』。昨季からショートプラグラムで使用している曲ということもあり、緊張を感じさせない穏やかな表情でリンクへ向かった。冒頭から光ったのは、深みを増した表現力。要素のつなぎ一つ一つを丁寧にこなし、音楽に合わせたステップシークエンスで視線を一点に集める。早大が誇る銀盤の美女が描く世界観に、満員に埋め尽くされた東伏見の観衆が酔いしれた。
美しい滑りで熱戦のピリオド間を盛り上げた
一方、技術面でも手応えをつかむ。この日はトリプルサルコー-ダブルトーループのコンビネーションと、両手を上げた2つの単独ジャンプを完璧に着氷。大舞台で課題としているジャンプを決め、取り組んできた練習の成果を発揮した。「スピンや踊ることが得意だと自分で思っている」。本人がこう語るように、最大の武器であるスピンでも魅了する。レイバックスピンからのビールマンスピンで華麗なフィニッシュを飾り、会場は自然と沸き起こる大歓声と拍手に包まれた。現在の実力にジャンプの安定感が加われば、目標としているフリーでの「80点台」も夢ではない。
得意のスピンは今季も健在だ
今夏からアメリカへ留学することが決まっている山野井。6月の関東学生フリースケーティング選手権が、エンジを背負って戦う渡米前最後の大会となる。今回のエキシビションで共演した鈴木星佳(慶大)をはじめ、実力者がそろう大学界の女子シングルは群雄割拠の時代を迎えた。そんな中、渾身の演技で大学生活に一区切りをつける山野井の姿が、いまから楽しみでならない。
(記事 川浪康太郎、写真 辻本紗支子、久野映)
コメント
山野井英未(国教2=千葉・渋谷教育幕張)
――普段の試合とは雰囲気の違う大観衆の中での演技はいかがでしたか
緊張感はやはり試合以上くらいあったのですが、周りの声援があったおかげで自然と笑顔で滑ることができました。
――今回使用した曲について教えてください
この曲は昨季からずっと使っているショートプログラムのタンゴの曲なのですが、宮本賢二先生に振りつけていただきました。
――今回のプログラムの一番の見どころはどこですか
私はスピンや踊ることが得意だと自分で思っているのでそこが見せ場だったのですが、ジャンプもきれいに決まったので、全体的に、という感じです(笑)。
――きょうはジャンプがすべて決まりましたが、今季の試合ではどのジャンプがカギを握るとお考えですか
昨季はあまり調子がよくなかったのですが、だんだん調子が上がってきたのでトリプルサルコーとトリプルトーループ、トリプルループ、ダブルアクセルの四つをきちんと試合で決められるようにしたいです。
――今季の試合ではどのようなプログラムを予定していますか
いまのままのプログラムでやろうと思っています。
――慶大からエキシビションに出演した鈴木星佳選手は今後ライバルとなると思いますが、なにか意識することはありますか
昔からの知り合いで仲もいいのでライバルという感じではないのですが、自分に足りないところはやはりジャンプなので、星佳ちゃんみたいな高くてきれいなジャンプを跳べるように頑張って練習したいです。
――最後に、関東学生フリースケーティング選手権に向けた意気込みをお聞かせください
80点台を目指して、しっかりと回転の足りたジャンプを決めたいと思います。