日本学生氷上競技選手権(インカレ)3日目から行われた女子Aクラス。真の女王を決めるべく、全国屈指の学生スケーターが一堂に会した。中塩美悠(人通1=広島・ノートルダム清心)をケガで欠いた早大からは、松嶋那奈(スポ2=東京・駒場学園)と山野井英未(国教1=千葉・渋谷教育幕張)がエントリー。ともに実力を出し切ることはできず、悔しさのにじむ大会となった。
インカレ初出場の山野井。ショートプログラム(SP)は、西野友毬(明大)や大庭雅(中京大)ら強豪がそろうグループの最終滑走で登場した。難しい滑走順であったが、ルーキーらしからぬ強心臓ぶりを発揮する。序盤の3回転トーループで転倒するも、「全部完璧な演技ができる選手は少ない」と気持ちを切り替えすぐに修正。後半はジャンプ以外の要素で魅せ、ミスを補った。SPを17位で通過し迎えた翌日のフリースケーティング。前日から一転、プレッシャーに苦しみことごとくジャンプが決まらない。「最初から最後まで上の空な状態で滑ってしまった」。演技後、21位まで順位を落とした山野井に笑顔はなかった。それでも、合計得点は東日本選手権を上回る104.04点。多彩なスピンと、長い手足を生かしたエレガントなステップシークエンスに磨きがかかった証拠と言えるだろう。明確になった課題を克服し、再び笑顔で氷上を舞う姿が待ち遠しい。
ピンク色の衣装でフリーに臨んだ山野井
2年連続の出場となった松嶋は、表彰台を目指し落ち着いた表情でリンクに向かった。SPでは、懸念材料であった3回転サルコーの回転不足が響き得点が伸びず。思わず天を仰いだ。フリーでは得点源である冒頭のコンビネーションジャンプでつまずくと、またしてもサルコージャンプを決めきれない。それでも、前日に「ミスが出ても気にせず全力で跳びにいけたら」と語った通り、その後は立て直しを図る。後半に3回転サルコー-ダブルトーループや片手を上げたジャンプを組み込み、加点につなげた。しかし、得点は5位入賞を果たした前年より10点少々低い125.18点。巻き返しはかなわず、11位で大会を終えた。インカレデビューから1年、『チーム』の一員として滑る意識が芽生えたという松嶋。松嶋の復活なくして、早大の復権なし。若きエースは、その日までたゆまぬ努力を続ける。
早大フィギュアスケート部門の大黒柱、松嶋
実績の少ない選手が上位に食い込むなど、近年まれにみる波乱の展開となった今大会。今季早大を引っ張ってきた2人にとっては厳しい結果となったが、独特な緊張感に包まれた大舞台での経験は必ずや成長の原動力となるはずだ。若い選手が年々力を増し、また日本トップレベルの実力を持つ中塩が加入した早大の未来は明るい。大学フィギュアスケート界に旋風を巻き起こすべく、一歩一歩前へ進む。
(記事、川浪康太郎 写真、井上莉沙)
結果
▽女子Aクラス
松嶋那奈 11位(125.18点)
山野井英未 21位(104.04点)
コメント
松嶋那奈(スポ2=東京・駒場学園)
――きょうのフリーのポイントは
やはり最初のコンビネーションがポイントだったのですが、1つ目が上がりすぎて2つ目ができなかったので悔しいです。
――練習での感触はいかがでしたか
きのうより体が動いていていい感じだと思っていたのですが、本番では動きが固まりすぎて張り切りすぎてしまったかなと思います。
――冒頭のコンビネーションは失敗に終わりましたが、どのように気持ちを切り替えましたか
コンビネーションが成功すれば次のループでトリプルを跳ぼうと思っていたのですが、きょうは一度も練習で跳べなかったのでダブルでいこうと思っていました。それ以外のジャンプも落ち着いて飛ぼうと思ったのですがいつもの感覚と違って、それでも後半でこれ以上失敗はできないと思い、思い切って跳ぼうとやっていました。
――アクセルの場所を変更しましたが、その意図は
東日本選手権が終わってから変えたのですが、後半だと入らなかったので3つ目のジャンプに持ってきました。
――ショートプログラムでは失敗したサルコーはいかがでしたか
1つ目はきのうと同じ跳び方で落ち着いてやろうと思ったのですが、色々と考えすぎて失敗してしまいました。2つ目は思い切って飛ぼうと思ってやって、コンビネーションもつけられて良かったなと思います。
――ステップなどの表現面についてはいかがでしたか
ステップはスローのところはスローなりの顔をしようと思っていて、明るいところや最後のサーキュラーステップのところは笑顔でできたらいいなと思っていました。
――初出場のきょねんとことしの違いはどういったところでしょうか
きょねんは1人ということもあり落ち着いて自分の演技ができればいいなと思っていたのですが、ことしはペアがいて早稲田大学として上の方を狙えたらいいと思っていました。相手が調子良くなくて落ち込んでいたのですが、その分頑張ろうと思い気持ちを高めていけたかなと思います。
――今回は中塩美悠選手(人通1=広島・ノートルダム精心)が棄権されましたが、今後ともに戦うスケーターとして意識することはありますか
すごく有力な選手なので、邪魔にならないよう、自分のできることができるようにらいねんまた練習していけたらと思います。
――今回のインカレで得たものはなんですか
今回はスピードスケートの方も応援してくださったので、無表情になることがあるのですがきょうは笑顔で滑ろうと思うことができてよかったです。
――国体に向けた意気込みをお願いします
きのう、きょうで色々な失敗があったので、あと一ヶ月もないのですがジャンプとステップの調整をして、スピンもレベルを落としがちなので落とさないように練習してリカバリーできるように表現力をつけていけたらなと思います。
山野井英未(国教1=千葉・渋谷教育幕張)
――本日を振り返って
公式練習で調子が上がってきていて、本番までは自信を持てていたのですが、氷に上がってから頭が働くなってしまって、最初から最後まで上の空な状態で滑ってしまったので、練習が活かせなくてすごく残念です。
――緊張されていたということでしょうか
きのうのSPよりは、「自分ならもっとできるから、もっと頑張ろう」という思いが強かったので、逆に精神的にプレッシャーになってしまったというか、正直自分でも今は気持ちの整理がつかない状況です。
――きのうのSPが終わってから何か具体的な目標は立てられたのでしょうか
(FPに)残れて、点数も今シーズンでは良い方だったので、FPは(練習では)ジャンプをクリーンで降りれるようになってきていましたし、一つでも二つでも出そうと思っていたのですけれど、本番では全くできませんでした。
――ジャンプに悔しさが残ったということでしょうか
スピンはうまくやれたつもりなのですけれど、今回のフリーは自分的に良いところがなかったかなと思います。
――衣装を今回新しくされていましたが、このタイミングで変えたのはなぜですか
ずっと着たかった衣装なのですけれど、きつかったので、インカレに向けて少し体重を落として、すんなり入ったのでこれで出ようときょうの練習で決めました。友達にも似合っていると言われて急遽この衣装で出ることに決めました。
――本大会に向けてしっかりと体作りもされたのですか
そうですね。体重管理にも気をつけていたのですけれども、思うような滑りができなくてとても悔しいです。
――今シーズン全体を振り返っていかがでしたか
やる気がなくなってしまって、練習があまりできなかった時期もあったのですけれども、インカレに向けて調子もすごく上がってきていて、モチベーションも上がってきていたので、頑張った時に限ってこんな結果になってしまって、今はまだ気持ちの整理がつかないです。ですが、この悔しさをどこかで挽回できるようにしたいですし、この結果にも意味があったと思って、落ち込みすぎないでこの失敗を活かせるようにしていきたいです。
――次に出場予定の試合がありましたら教えてください
次の試合は少し期間が空くと思うのですけれど、ことしはもしかしたら夏から留学してしまうかもしれないので、しばらくは大きい試合もありませんし、ホームリンクで小さな試合に出ることになると思います。次の関カレは出ると思いますが、インカレの時期には留学していると思うので、自分的には今回のインカレが区切りでもありました。今のところ次の試合のことはあまり考えていいない段階です。