全日本選手権―。それは、全国のトップスケーターたちが集結する大会である。早大の期待の新星・松嶋那奈(スポ1=東京・駒場学園)は先月の東日本選手権で、エントリー数25人中5人にしか与えられないこの大舞台への切符をつかんだ。松嶋は2012年にも出場したが、当時はショートプログラム(SP)で点数が足りずフリーに行くことができなかった。SP突破には1日目で30人中24位以内に入る必要がある。2年前の悔しさを晴らす決戦の時がやって来た。
観客8000人が見守る中、SPをスタートさせた。冒頭の3回転トーループ-3回転トーループで勢いを見せ、「1番心配だった」と語る3回転サルコーも成功させる。中盤のスピンではふらつく場面もあったが、最後までやり遂げ減点を許さなかった。ジャンプの点数が1.1倍になる後半でのダブルアクセルもしっかり着氷。エキゾチックな旋律に合わせたステップシークエンスでは観客の手拍子を誘い、最後は美しいレイバックスピンで締めくくった。「いままでで一番いい演技が出来て嬉しかった」。3つのジャンプすべてに加点がつく会心の演技を見せた松嶋。東日本選手権の得点を5点以上上回る51.47点をマークして17位につけ、念願のフリー進出を決めた。
笑顔でショートプログラムを終える
翌日のフリーでは「あまり緊張はしなかったが身体が少し動いていないのを感じた」という。SPでは大成功を収めた冒頭の3回転-3回転では両足着氷となってしまう。続く3連続ジャンプは、着氷はするものの出来栄え(GOE)でマイナスを取られ、3回転ループも両足での着氷となってしまった。しかし、3回転サルコー-ダブルトーループのコンビネーションでは美しいジャンプを披露する。両手をあげてのダブルフリップもしっかり決め会場を沸かせた。ジャンプでのミスが響き最終順位は20位。しかし、SPとフリーの合計は130.61点で、自己最高得点を記録した。
フリープログラムでも丁寧に滑り切った
「こんなに大勢の皆さんに自分の演技を見てもらえるんだ、ということを実感しました」。この大会で得た収穫、そして味わった感動は松嶋をさらに強くするだろう。実力、伸びしろともに十分。今まで以上に良い演技を目指す―。日本学生氷上競技選手権(インカレ)まで残り約1週間、松嶋はどこまでの成長を見せてくれるのだろうか。
(記事 中村ちひろ、写真 末永響子)
キスアンドクライで点数の発表を待つ
結果
松嶋那奈 20位(130.61点)
コメント
ショートプログラム
松嶋那奈(スポ1=東京・駒場学園)
――ショートプログラムを終えて、率直なお気持ちをお聞かせください
練習の中で、いままでで一番いい演技ができたので、うれしかったです。
――今回の全日本選手権にはどんな心境で臨まれましたか
おととしはショート落ちして、3-3(3回転ジャンプのコンビネーション)とかもアクセルが抜けてしまったので、今回はノーミスで終わりたいなと思っていたので、(ノーミスで)終われてよかったです。
――2年前に出場されたときと比べて、気持ちの上で違いはありましたか
そうですね…私にとってはやっぱりおまけみたいな感じで、すごく気楽にできる試合なので、楽しめたらいいなと思っていたのですが、楽しめたのでよかったです。
――普段の試合と重圧はそんなに変わらないですか
東日本(選手権)が一番重い試合ですね(笑)。
――枠などがあるからですか
そうですね。
――では今回は、そんなに緊張されなかったのですね
はい、そうですね。
――演技前にコーチとは何を話されたのですか
いつも落ち着いて跳ぶんだよ、とか、慌てちゃいけない、とか、ここは一つ一つ丁寧にね、とか、話をしました。
――最後の確認のような感じですか
はい、そうです。
――演技の内容についてお伺いします。以前見せ場だとおっしゃっていた冒頭のコンビネーションジャンプが、きょうはとてもきれいにきまっていましたね
国体予選のときも決まって、それがすごく自信になって。今回もこっちに来てすごく練習の調子が上がってきて、もう絶対決められるっていう自信があったので、決められて本当にほっとしています。
――残り2つのジャンプであるサルコーとアクセルも両方成功されていましたね
サルコーが一番心配だったんですけど、最初の3-3(トリプルトーループ-トリプルトーループ)が決まったので、落ち着いていこうと思って、先生に言われた通り一つ一つ丁寧にして、やったので、よかったと思います。
――スピンなど、他の要素に関してはいかがですか
1つ目のスピンでちょっとふらついてしまったんですけど、最後までやらないといけないと思ったので、落ち着いて、ちょっと手直ししちゃったんですけど。一つ一つ丁寧に全部、スピン、ジャンプ、ステップとか、できたかなと思います。
――演技を終えた後には笑顔が見られました。あのときのお気持ちはいかがでしたか
いままでにない演技で、すごくうれしかったのでほっとして笑顔が出ました。
――東日本選手権を終えてからいままでの練習で、意識してきたことはありますか
やっぱりジャンプのミスとかいっぱいあって。調子も上がらないときがいっぱいあったんですけど、リラックスしていこうと思って、いつも通りやればいいかなと。練習は試合みたいに練習してきたので、試合は練習通りっていう感じで、逆の立場にして練習していました。
――点数を受けていかがですか
いままでで一番いい点数が出たので、本当にうれしかったです。
――キスアンドクライ(演技を終えた選手とコーチが採点の発表を待つための場所)があるのは、全国規模の大会ならではですよね
そうですね。あまりないです。
――久々のキスアンドクライはいかがでしたか
先生(佐藤信夫コーチ、佐藤久美子コーチ)もすごい方なので、一緒に座れることがうれしかったです。
――最後に、フリーではどんな演技をしたいですか
(この時点では)まだフリー行けるかわからないんですけど、あしたもいい演技ができるように、一つ一つ丁寧にやっていけたらと思っています。
フリープログラム
松嶋那奈(スポ1=東京・駒場学園)
――この全日本の舞台を終えて今の率直な気持ちを教えてください
ミスが所々あって悔いは残りましたが楽しく滑れたので良かったです。
――演技直前にはコーチとどのような会話を交わしたのですか
いつも通り落ち着いてやるんだよ、と言われました。
――昨日のショートを終えて今日のフリーに向けてはどのような気持ちで臨みましたか
ショートより落ち着いて滑ろうということを心がけました。
――全日本での初のフリーの演技でしたが緊張しましたか
あまり緊張はしなかったのですがちょっと身体が動いてなかったな、というのを感じました。
――6分間練習では調子が良さそうに見えましたが
練習はすごく良かったので、良い時ほど落ち着いてやらなきゃいけないということを改めて思いました。
――技術面について振り返ってみていかがですか
練習通りいかなかった所がたくさんあったのでこれからインカレに向けてミスがないように練習していきたいと思います。
――ミスとは具体的にどういうところですか
所々両足着氷だったり、回転足りなかったりという所ですね。
――表現面についてはいかがですか
昔よりは踊れるようになったかなと思ったのですが、やっぱり皆さんの演技を見ているとまだまだだなと思いました。
――今回の点数をどのように受け止めていますか
やっぱりミスがいっぱいあったので納得のいく演技ではなかったのですが、結構良い点数をくれた方かなと思います。
――ショートとフリーの合計では東日本選手権を上回りましたね
そうですね。今回が一番良かったです。
――この全日本という大舞台で得られた収穫はありますか
こんなに大勢の皆さんに自分の演技を見てもらえるんだということを実感しました。
――インカレまで約1週間ほどですがインカレへの意気込みを最後にお願いします
インカレは一人での出場なので学校で優勝することは出来ないですけれど個人で今まで以上に良い演技が出来たらと思っています。