ついに東京選手権が開幕!3人が東日本選手権進出を決める

フィギュアスケート

東京フィギュアスケート選手権大会 9月21日~23日 三井不動産アイスパーク船橋

 いよいよ東京選手権が開幕した。ここで上位に入った選手だけが東日本選手権に進むことができ、さらに東日本選手権で上位に入った選手だけが全日本選手権に出場できる。昨年までとは異なり、今年は南船橋のリンクで無観客開催となったため、観客であふれる客席や歓声はなかったが、選手たちの全力をかけた演技で会場は熱くなった。早大フィギュア部門からは4名の選手が出場し、3人が東日本選手権進出を決めた。

★シニア女子SP

演技をする木南

 東京選手権初日、最初の種目はシニア女子。4年生の木南沙良(人通4=東京・日大一)にとって今年は、「区切りの年」と語る特別なシーズンだ。「緊張はすごいあった」というが、音楽がかかると同時にしっとりと流れるように滑り出し、冒頭から華やかな振り付けで引き込んでいった。曲は『To Love You More』。以前マライア・ベル選手(アメリカ)が使用していたのを見て感動し、自分で選んだプログラムだという。3回転サルコウ+2回転トーループを鮮やかに決めると、続く3回転トーループも着氷。最後の2回転アクセルはやや力んだ様子が見られたが、これも滑らかに成功させた。ジャンプを全て成功させて迎えたステップシークエンスは、緊張から解き放たれたような柔らかな笑顔と細かな足さばきで魅せていく。最後のレイバックスピンはポジション変更の際にバランスを崩したものの、なんとか回転しきり、演技後は苦笑する姿も見られた。得点は43・01点で14位。翌日のフリー進出を決めた。

 


演技をする穂積

 穂積は第5グループで登場。1年生の穂積乃愛(人通1=東京・駒場学園高等学校)にとっては、今回がシニアとして出場する初めてのブロック大会となる。明るい桃色の衣装でリンクに上がった穂積は、『You’re a Mean One, Mr. Grinch』の音楽に乗せ、スピード感がありながら、指先一本一本まで神経の行き届いた丁寧な滑りを見せていく。しかし、後半に予定していたコンビネーションジャンプでミスが。1本目の3回転ループで転倒し、セカンドジャンプをつけることができなかった。「自分が絶対に全日本選手権に進むんだ」という強い気持ちで臨んだというが、その気持ちの強さがジャンプの力みに繋がってしまった。転倒から起き上がった直後もしばらく強張った表情が解けなかったが、ステップシークエンスでは、切り替えて明るい笑顔で演じた。点数は43・22点。演技後は肩を落としたが、それでも全体11位でフリー進出を決めた。

 

★シニア女子FS


演技をする木南

 競技2日目、シニア女子フリースケーティング(FS)の競技に登場した木南は、淡いラベンダー色の衣装でリンクに立った。昨年の「強い女性」をテーマにしたプログラムから一転、今年はしっとりと穏やかな曲調の『New Cinema Paradiso』を披露した。スピードを出しつつ、美しくしなやかな動きでジャンプの軌道へと入ると、冒頭の3回転サルコウからのコンビネーションジャンプを大きなミスなく成功させる。その後も、緩急のあるステップや着氷時の腕の動きなど細かい部分で魅せ、演技全体にわたって高い完成度を見せた。「持ち味」であり「一番の見せ場」だという演技後半は、激しい旋律に合わせて力強く演技。サルコウジャンプでの転倒や回転不足などのミスはあったが、それ以外の要素は大きく乱れることなく滑り切り、演技後は少しほっとしたような表情を見せた。さらに、3つ全てのスピンで最高評価のレベル4を獲得。以前から東京選手権には苦手意識があると語っていた木南だが、「今の自分に対して満足いく結果」になったと充実感をにじませた。FS77・18点、総合120・19点をマークし、最終順位は18位。無事、目標としていた東日本選手権進出を決めた。

 


演技をする穂積

 製氷をはさみ、穂積は後半グループで登場。SPとは違い「落ち着いて臨めた」と、静かにスタートポジションについた。曲は『The Sky and the Dawn and the Sun』。上半身を伏せた姿勢からすっと身を起こすと、滑らかに滑り出す。冒頭の3回転ルッツ+2回転トーループを0・79点の加点がつく出来栄えで完璧に決めると、その後も次々と力強いジャンプを決めていく。単独の3回転ルッツが両足着氷となり乱れたが、直後のスピンですぐに建て直し、柔らかな曲調に合わせた繊細な滑りを見せた。後半は、前半とは打って変わった民族系の音楽。穂積にとって新しい挑戦だと話していた力強い曲調に乗せて、疾走感のあるスケーティングを見せる。最後のジャンプを美しく決めると、それまでの緊張したような表情から笑顔へと変わった。全身を大きく使ったコレオシークエンスで演技を締めくくると、最後はまた満面の笑み。得点はFS91・59点、総合134・81点で10位。東日本選手権進出を決めたが、「東日本選手権は通過点」と前を見据えた。

 

★シニア男子SP


演技をする廣田

 緊張した面持ちでリンクに上がった廣田聖幸(スポ4=千葉・東邦大東邦)は今年4年生。用意したプログラムは、昨シーズンからの継続となる『It‘s gonna be alright』。腰に手を当てて位置につき、明るくダンサンブルな音楽がかかると同時に軽快に滑り出す。のどが渇いて仕方なかったというほどの緊張感に包まれ、最初のエレメンツである3回転フリップは両足着氷に。続くコンビネーションジャンプは6分間練習でも成功させていたが、3回転トーループの着氷が乱れて片手をついてしまい、セカンドジャンプをつけることができなかった。最後の2回転アクセルはふたたび両足着氷となるなどジャンプでミスが続く。それでも、体でリズムをとりながら上半身を大きく使い、踊り心あるステップで魅せた。「3回転ジャンプが戻ったのが1週間前」と、十分な準備ができていない状況だったといい、ジャンプが乱れ、思うような演技とはいかず、演技後はリンク上でうなだれた。得点は33・22点で25位。FSに進むことができず、順位発表後は席からしばらく立ち上がることができなかった。

 


演技をする山田

 廣田と同じグループでSPの演技に臨んだ山田琉伸(人通2=埼玉栄)。スケート仲間や関係者からの大きな声援を背にリンク中央へ向かった。東京夏季大会後は腰のケガで練習ができていなかったというが、2本目に3回転アクセル、演技後半には3回転+3回転のコンビネーションジャンプを組み込む高難度構成に挑んだ。 『戦場のメリークリスマス』の静かで切なげな曲に合わせて、冒頭の3回転フリップは流れるように着氷。続く3回転アクセルは回転不足で転倒してしまうが、後半の3回転ルッツ+3回転トーループは大きな乱れなく決めた。後半、曲調が力強さを増すとステップシークエンスで魅了。しかし、その途中でバランスを崩し、転倒してしまうアクシデントが発生。仕切り直して最後まで丁寧かつダイナミックに滑り切ったが、演技後は片手で頭を抱え、苦笑いを浮かべた。大きなミスなく着氷したように見えたジャンプでも回転不足やエッジエラーの判定を受けたことで得点は53・12点に留まり、SP13位で翌日のFSへ進んだ。

 

★シニア男子FS


演技をする山田

 第2グループ最終滑走で登場した山田。静かで柔らかな曲調の『New Cinema Paradiso』に合わせ、冒頭から滑らかなイーグルや全身を使ったダイナミックな滑りで魅了した。SPから引き続き挑んだ3回転アクセルは転倒し、回転不足の判定を受けたが、その後のフリップ、ループジャンプは着氷。ケガの影響で練習できていなかったというスピンではやや苦戦する様子も見せたが、足換えキャメルスピンではレベル4を獲得した。演技後半は3回転ルッツ+3回転トーループを含む3本の高難度のコンビネーションジャンプに挑戦。「練習不足で体力が足りてない」と語ったように疲れからか回転不足が目立ったものの、終盤のステップシークエンス、コレオシークエンスまでスピードを緩めずに滑り切った。SP同様細かな減点が重なり点数を伸ばすことができず、FSは101・69点、総合では154・81点に終わり、初めてのシニアの東京選手権は満足のいかない結果となった。しかし、十分な練習ができない中でも、「痛くてもできる」と研鑽を積んできた表現面では大きな成長を感じさせた山田。今後は東日本学生選手権(東インカレ)、そして東日本選手権と大事な試合が続いていく。大舞台、全日本選手権を目指してさらなる向上を誓う。

(記事 吉本朱里、荘司紗奈 写真 荘司紗奈、吉本朱里)

結果

▽シニア女子


木南沙良

 

SP 14位 43・01点

FS 18位 77・18点

総合 18位 120・19点


穂積乃愛

 

SP 11位 43・22点

FS 8位 FS 91・59点

総合 10位 134・81点


▽シニア男子


廣田聖幸

 

SP 25位 33・22点

総合 25位 33・22点


山田琉伸

 

SP 13位 53・12点

FS 11位 101・69点

総合 11位 154・81点


コメント

木南沙良(人通4=東京・日大一)

――今大会の目標を教えてください

  今年は4年生で区切りの年ということで、毎年東京ブロックは他の大会と違ってSPで落ちてしまったり、怖かったりという面で緊張はすごくあったのですが、自分のできることを練習してきて、それが結果になればなと思って。まずはSPを通過してFSで良い演技をして東(東日本選手権)に行くというのを目標に頑張ってきました。

――SPとFS、それぞれの演技内容を振り返っていかがですか

 SPは最後のレイバックスピンなど何個か悔しいミスはあったのですが、自分の中で80パーセントくらい練習してきたものを出せたかなと思うので、結構満足な滑りです。FSは何個かミスはあったのですが、練習に近いかたちで感情を込めて滑ることができたので、両方とも今の自分に対して満足いく結果です。

――プログラムを選んだ理由を教えてください

 SPに関しては元々好きだった曲で。マライア・ベル選手(アメリカ)が以前使用していたプログラムなのですが、演技を見た時にすごく感動したので、同じ曲を使いたいなと思って自分で選んだ曲です。FSは、昨年の『SAYURI』がすごくお気に入りのプログラムだったのですが、2年間使ったので(プログラムを)変えようとなって、先生がどう?と提案してくれた曲です。これもアメリカのブレイディ・テネル選手が使っていて、こういう演技がしたいと思って決めました。

――(FSについて)曲調が変わるところの表情などがすごく素敵だなと思ったのですが、演じる上で意識しているところなどはありますか

 今までずっと強い女性を目標に、強い曲をたくさん使ってきたのですが、今回は両方とも柔らかい曲調(のプログラム)で。あそこ(FSで曲調が変わる部分)からは自分の持ち味だと思って強く演技をしています。一番の見せ場かなと思っているので、自分でもお気に入りポイントです。

――4年生で迎えるシーズンは特別なものだと思いますが、シーズンを通しての目標や、最終的にこんな演技がしたいといったビジョンがあれば教えてください

 今年はオフシーズンも頑張って練習できて、ちょっと自分の中でも成長できたなという部分があったのですが、やっぱり試合前になると練習に波が出てきてしまって。今回はその波がないように試合ちょっと前から練習できていたので、残り何試合かあるものを全部笑顔で、先生とハグして終われるようにというのが一番の目標なので、そのために波がないように練習できていけたらなというのが目標です。

穂積乃愛(人通1=東京・駒場学園高等学校)

――SPとFSの演技、それぞれ振り返っていかがですか

  SPは自分にしては珍しく強気に臨めた試合でした。気持ちの強さがジャンプの力みに繋がったのが悔しいですし、自信を持って滑れていた分、正直終わったときは、なんでこうなってしまったのだろう、という気持ちが大きかったです。FSは落ち着いて臨めたなと感じています。

――東京選手権は、東日本選手権・全日本選手権と進んでいくための重要な試合ですが、気持ちの面などはどのように準備されてきましたか

 自分が絶対に全日本選手権に進むんだ、という気持ちは、上位の選手に負けないくらい強く持っていると信じています。その強い気持ちと、スケートを滑るときの気持ちをうまく噛み合わせていくことが、今後自分の中での課題だと感じています。もうルッツまでしっかり跳ますし、プログラムの中に跳べないジャンプは入っていないので、強い気持ちと集中力の噛み合わせが東日本選手権での課題だと思います。

――気持ちの噛み合わせ、というお話もありましたが、今回のFSについてはどうでしたか

 SPが終わった時点で気持ちの分析はできていて、自分が自分がという気持ちを前に出すよりも、落ち着きを前に出した方が私はうまくいくと思っているので、落ち着いて跳ぶことを1番に意識して頑張りました。

――東日本選手権に向けての意気込みをお願いします

 東日本選手権は通過点だと思っているので、気持ちの噛み合わせ方を明日からの練習で死ぬ気で練習したいと思います。

廣田聖幸(スポ4=千葉・東邦大東邦)

――演技を振り返っていかがですか

 朝の公式練習と直前の6分間練習は結構調子が良かったのですが、緊張もあって直前に喉が渇いてしまって…飲んでも飲んでも乾きっぱなしで。結局足をつってしまいました。力が出せなかったので、悔しいは悔しいですが、そういうところも普段の練習が出てしまったのかなと思います。

――試合前のコンディションや準備の面はどうでしたか

 3回転ジャンプが戻ったのが1週間前で、そういう意味では準備が足りなかったのかなと思いますが、出せるものは出したかなと思います。

――練習の調子は良かったとのことですが、本番ミスが出てしまった原因はどのように考えますか

 終わった直後は、何をしたのかな、という感じで。虚無感というか、頭が真っ白になってしまっていて…。振り返ってみると、本当にジャンプが入らなかったのが全ての原因だと思います。あとはスピンやステップの取りこぼしがちょこちょこあったのも、点数に響いたのかなと。

――まだまだシーズンが続きますが、今後に向けての意気込みをお願いします。

 メンタル的にも身体的にも落ち込んでいる状態で、今は何もできる状態ではないのですが、そうも言っていられずにすぐに試合はやってくるので。次の試合に向けて、まずは東インカレをきちんと通過できるように。あとは国体予選で、今回でできなかったことを少しでもできるように挑戦していきたいなと思います。

山田琉伸(人通2=埼玉栄)

――SPとFSの演技、それぞれ振り返っていかがですか

 点数は正直どちらも満足いっていなくて、回転不足やエッジの判定など、ジャンプで減点がたくさん取られていたので、そこで点数が伸びなかったのかなと思います。表現については、前回の東京夏季よりも、より演技ができていて、演技構成点も伸びていたのでそこはよかったです。

――東京夏季から3週間ほどですが、どのような部分に力を入れて練習してきましたか

 東京夏季の後ずっと腰が痛くて練習ができていない状態で、1週間前に練習を再開したので、そこからよくここまで戻せたかなと思います。スピンがほとんど練習できなくて、スピンは東京夏季からあまり変わっていないですが、表現は、痛くても練習できるので、そこを強化してきました。

――FS後半は少し疲れた様子にも見えましたが、練習状況も影響がありましたか

 そうですね。練習不足で体力が足りてない部分がかなりあったかなと思います。

――SPではステップ中に転倒がありましたが、そのときの状況を少し詳しく教えていただけますか

 シンプルに失敗しました。特に疲れて足がもつれたとかではなく、バランスを崩してしまった感じです。(怪我なども)特に大丈夫です。

――東日本選手権に向けて、意気込みをお願いします。

 このままでは全日本選手権にいけないと思うので、ジャンプの減点を少なくして、さらに点数を稼いでいけるようになりたいです。