【連載】新体制特集 『BE THE CHAIN』 第2回 プロップ佐田涼祐×ロック山口和慶×SO広瀬泰斗

ラグビー男子

 今季、4年生から委員に就任したプロップ佐田涼祐(社4=東京・早実)、ロック山口和慶(スポ4=福岡)、SO広瀬泰斗(政経4=東京・早大学院)。違った立場からチームを見てきた昨季だったが、今季は委員としてチームをけん引する。そんな三人にラストイヤーとなる今季に懸ける思いを伺った。

※この取材は3月17日に行われたものです。

「委員になれば自分の成長にもつながる」(佐田)

委員就任の経緯を話す佐田

――新体制が始まりましたがチームの状況はいかがでしょうか

山口 昨季の結果はそこまで良くなくて。いまはワセダが弱くなっているところで監督も変わったので、ここからまた新しくチーム全体も入れ替わってスタートして、ことしから変わっていけたらいいなと思います。

佐田 新しいことをいまはいろいろやっているので、新しい刺激を受けて良い雰囲気でやれていると思いますね。

広瀬 レスリングの部分だったり、スプリントセッションであったり里さん(里大輔S&Cコーチ)を含め素晴らしいコーチの方々が来てくださって、フルタイムのコーチの方すごく増えて選手一人一人に見てくださる時間が増えたと思いますね。素晴らしい環境でやれていると思うのでスタートとしては悪くはないのかなと思います。

――新体制となり、雰囲気の変化は感じられますか

山口 自分が寮長なので寮についてなんですけど、勝つために一人一人が考えるようになったと思います。いままでは食事や掃除もただの私生活として捉えていた部分も、これからは衛生管理であったり体づくりであったりと何をするにも勝つためにという意識を持ててきているのではないかと思います。 

佐田 前よりも緊張感があるなと思います。ひとつの練習にしても何を目標にしているのかを全員が言えるようにしないとならないんです。なので、軽い気持ちで練習には入ってないなとは思います。あと食事量のことであったり体重管理であったりと前までは先輩ひとりが言うだけだったんですけど、ポジションごとのリーダーを巻き込んでやったりしているので前よりもみんなのことをみんなで考えるようになったというか、チーム全体の認識が強くなったんじゃないかなと思います。まとまっています。

広瀬 学生コーチという立場をつくったというのが新しいことです。ことしから学生コーチとして渡辺大輝(社4=国学院栃木)と山崎海(スポ4=神奈川・桐蔭学園)が4年生から出ました。同じ学生なので同じ目線でコーチングも含めて声掛けをしてくれているので、特に下級生にとって学年コーチの存在が大きいと感じているのかなと思います。まだ始まったばかりでどうなるかは分からないのですが良い傾向にはあると思います。 

――学生コーチというのは初めての試みなのですか

広瀬 ここ数年にはなかったと思います。現役から出るのはなかったですね。

――新しく就任された山下大悟監督(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)はどのような方でしょうか

山口 強気な発言というか、大悟さんの言葉によって大悟さん自身のことが伝わってくるし、僕ら自身も大悟さんの言っていることについていけば勝てるのではないかなという気持ちにさせてくれますね。

佐田 まだ一緒にいる時間が短いのであまり分からないのですけど、カリスマ性は感じられますね。選手としての実績も残されてますし、おっしゃることも説得力があるし僕らのことを本気で考えてくれてるなということが伝わってきますね。

広瀬 緊張しますね(笑)。比較的年齢がお若くて僕らとはそこまで(年齢が)離れてはいないので、話しやすいです。大悟さんからも話しかけてくれるので、良い悪いは別にして後藤さん(後藤禎和前監督、平2社卒=東京・日比谷)よりはよく話していますね。

――予餞会のときに山下監督が「日本一の取り方を教える」ということをおっしゃっていましたが、聞いたときはどう思われましたか

広瀬 すごいなって思いました。始まるなって(笑)。

――現在重点的に行っている練習はどの部分でしょうか

広瀬 ディフェンスの部分ですね。昨シーズン帝京大に92点というあれだけの点数を取られて、間違いなくワセダが一番弱い部分といえばディフェンスだと思います。極論を言えば点を取られなければ負けることはないので、いまは一番の課題であるディフェンスの部分の強化というのを毎日していますね。ワセダ用語でライフラインと呼んでいるのですけど、スキル練習の中でも半分ぐらいの時間はそこに割いてやっています。

佐田 残りの半分くらいはユニットの練習をしていて FWはセットプレーを重点的にやっています。全て基礎からやっていて、僕らが目指そうとするスクラムやラインアウトをやるためにゼロからやっている状態ですね。

山口 そのFWを強みとしてやっていくために練習をやっています。

佐田 チームの強みが何かと聞かれたときにスクラムって答えられるチームをつくるためにですね。 

――伊藤雄大スクラムコーチ(平17人卒=東京・国学院久我山)が新しく就任されましたが

佐田 熱い練習の指導を受けています。みんなで手を抜かずにやっているという印象を受けますね。姿勢や身体の使い方とかをやっています。  

――委員に就任された経緯を教えてください

山口 昨年、僕が正式ではなくて仮の副寮長になって。いつも寮にいるし、しっかりしていると思われているみたいで責任感を認められて詠真(桑野詠真主将、スポ4=福岡=筑紫)から選んでくれたのかなと思いますね。

広瀬 僕は最初に4年生になる1月の末くらいに寮に入れと言われて。そうしたら急に詠真(桑野主将)からLINEのグループに招待されたんです。『委員』っていうグループで。え?ってなって、とりあえず入って。それで、お前委員になったからよろしくって言われました。これまで委員の人ってシニアでずっと活躍していた人で、僕は昨シーズン、一応2試合はリザーブからでしたけどAチームで出させていただいたのですが定着はできていなくて。9月とかはEチームで1番下とかだったので委員とかは全く考えていなかったんです。これまで(委員に就任する人は)素晴らしくて、経歴も実力もある方ばかりだったので、まさかとは思っていたんですけど。詠真から下級生中心に私生活を含めて特に下の学年を見てほしいと言われて、そういう下のチームにいたということやこれまで外勤で生活していたっていうのも含めていまの役職についているのかなという感じがしますね。

佐田 僕もほぼ広瀬と一緒で『委員』っていうグループに招待されて、入って、(桑野主将と)話したときにさっきも言ったんですけど体重の管理をしてほしいと言われました。あとは僕ができることはないかなと思ったら、昨季は試合に出させてもらってはいたのですが全然器用なほうではないし、うまいほうではないけど委員になれば自分の成長にもつながるし、あとはしゃべりやすいと思うので。後輩からしたら、山口とかよりも僕のほうが。だから話しとかどんどんできると思うし、チームの話もいろんな方向から聞けるなと。そういうのを委員会とかで挙げて、みんなで話し合えればいいなと思っています。それが役目ですかね。

――委員に就任されてからご自身の中で意識の変化はありますか

佐田 3年生になったときも思ったのですが、やっぱり下から見られる立場になるので小さいところからでもちゃんとしなきゃいけないなと。当たり前のことなんですけど。あとはラグビーをやる時間が少なくなってきたので、よりラグビーのことを考える時間が増えたかなと思いますね。

山口 僕は寮長としていままでは自分のことだけで良かったんですけど、寮長として寮全体の掃除の管理だったり食事の管理だったりいろんな人のことや周りを見て行動しなくてはならなくなったので、僕も自分だけではなくてほかのことを考える時間が増えましたね。

広瀬 そこまで意識の大きな変化はないのですが、最高学年になって委員にもなって役職がこういう立場なので、これまでも下級生とは自然と話していたほうなんですけどコミュニケーションを常に取って情報をもらっておかないと、と思います。指導するにしても「お前何を言ってるんだ」という感じになっちゃうんで。もっと下級生としゃべるというか、情報を交換するように、ささいなことからですけどするようにはしています。

――ファーストミーティングではどのようなことをお話しされましたか

広瀬 まず早稲田大学ラグビー蹴球部はどうあるべきかっていうところからです。何を目的として存在しているかっていう根底の部分から始まって。ことしのチームの強みはこれでっていうところからですね。

山口 自分たちが現在どの位置なのかを現状把握しました。僕らが目指している位置はどれだけ高いレベルのところを目指してやっているのかというのをしっかり自覚してやっていくことは大事だと思いますし、現状把握して具体的にどういうことをしていくのかという、そういった内容もありましたね。

佐田 あとはジャージーが新しくなったこととか。サポートしてくれる方がいて、これだけサポートしてくれるからには結果を残さなければならないという話しをしましたね。

――サポートの面では変化はありましたか

佐田 厚くなったと思いますね。ごはんも変わったので。前までは配膳されたものだったんですけど、まずはご飯の量とかも違くて。バイキング形式でみんなが取れて、いままでの倍くらいの量を食べています。そうなってくると数字見ていれば分かるんですけど体重も増えやすくて。 

山口 その分管理も難しくて。いままでは出されたものを食べていて、決まった量を食べていたので管理は大丈夫だったんですけど、いまは自分で取るので僕らがきちんと見ていかないと好き嫌いで取らないという人もいますし、量を少なく取る人もいますし。 

佐田 栄養士の方もついてくださって。例えばリハビリだけどちょっと動ける人と動けない人でご飯の量も違ってくるし体重を95キロを目指す人もいれば、105キロを目指す人もいて、それも寮とか内容が代わってくるのでそういうのも全員が把握できるようにしているので。より良い食事環境が整っていると思います。 

――最上級生になったと思いますが、どのような部にしていきたいと考えられていますか

山口 僕は規律を守れる集団になっていけたらなと思います。掃除なども人として当たり前のことだと思いますし、当たり前のことをちゃんとできたら、それがプレーとかにもつながってくると思うので。まず人として当たり前の規律をみんなが守れるような集団になっていけたらなと思います。 

佐田 僕も山口と似てしまうのですけど、当たり前のところを当たり前にやれて、人に頼ったりせずに自分からいろいろやっていける集団にしたいというのはありますね。 

広瀬 二人が私生活の部分を言ってくれたので僕はラグビー的な面から言うと、あまり自分から情報を発信する人がいまの状況で少ないと思っていて。スポーツはコミュニケーションが大事だと思うので、特にディフェンスってなったら常にしゃべり続けないと良いディフェンスはできないので、情報を自ら発信する人がまずもっと増えてうるさいチームにしていきたいなと思います。声のボリュームだけではなくて情報の量が多くて、情報が飛び交うチームにしていけたらいいなと思います。 

「やると決めたことを最後まで突き通せなかった」(山口)

昨季を振り返る山口

――昨シーズンについて伺いたいと思います。関東大学対抗戦(対抗戦)4位、全国大学選手権(大学選手権)セカンドステージ敗退、関東大学ジュニア選手権(ジュニア選手権)カテゴリー2へ降格と、悔しいシーズンとなりましたが、振り返ってみていかがでしょうか

広瀬 単純に苦しかった、悔しかったっていうのが正直な感想ですね。ジュニア選手権に関してはこれまで先輩方が優勝したりとかしてやってきたのに、それを僕らが降格させてしまったのが悔しいのと申し訳ないっていうことは感じていますね。昨季のチームスローガンが『Innovation』で、変えていこうって言っていたけど、変わり切れていなかったのかなって。

山口 僕も悔しかったのは当然なんですけど、『Innovation』を最初のほうはやろうとしていたんですけど、秋とか最後のほうは曖昧になってきていて。やると決めたことを最後まで突き通せなかったっていう部分もあると思います。今季はいまやっている体重管理だったりそういったことを最後まで続けて、秋に結果が出るようにつなげていきたいと思います。

佐田 やっぱりぶれてしまったっていうのがありますね。いろんなことにチャレンジしようとして。でも毎日適当にやっていたとかではなくてもちろん一生懸命やっていたし、グラウンドでもやったしいろんなミーティングとかも重ねましたし、足らなかったっていうことはあんまり感じていなくて、やり方があっていたのかも間違っていたのかもはっきりと分からないですけど、まとまっていなかったかなと思います。

――先ほど変わり切れなかったとおっしゃいましたが、変わり切れなかった要因は何だとお考えですか

山口 今は違うんですけど、体重管理とかキャプテンとか1人に任せていたりしていたので、一人一人の負担を減らすために4年生全員に協力してもらって体重管理したりした方が良かったと思います。

佐田 そういうのも考えてまとまりなんじゃないですかね。まとまろうまとまろうって言葉では言っていたんですけど、やっぱ何かバラバラじゃないかなって。4年生の方がおっしゃっていたんですけど、「やっぱ最後までまとまり切れなかったな」って。ことしはそれは絶対に避けたい。

広瀬 あとはまあ戦術面でいろいろあるんですけど、根底の部分は学生のそういった部分だと思います。別に4年生のせいとかではなくて、1年生から4年生までまとまってチームなのでそこは一人一人に責任感が足りていなかったのかなって。4年生を助けられなかったのかなって思いますね。そこが全ての原因だったと思います。そこがずれちゃうと何やってもぶれるねっていう。

――先ほどにもありましたが、帝京大に大敗、ジュニア選手権2部降格と現実を突きつけられたシーズンだったと思うのですがいかがですか

佐田 しんどかったですね。帝京に勝つためにシーズンを通してやってきて、その試合があれだったので。ちょっと、空気が良くなかったですよね。

広瀬 甘くないなって。考えが浅かったのかなって感じました。

山口 さっき言いましたけど、ことしのファーストミーティングでもそこの現状を大悟さん(山下監督)に突き付けられて、今どんな位置にいるのか、僕らが目指しているのはどれだけ高い目標なのか、人並みの努力では到底届かないレベルのところを目指しているんだなって感じましたね。

――東海大戦で4年生の引退試合となりましたが、4年生の最後の姿はどのように目に映りましたか

佐田 最後は一平さん(岡田一平前主将、平28スポ卒=現クボタ)とかガンガンいってたと思うんですけど、それについていく人が少なかったような。誰か1人に頼るんではなくて、僕らは4年全員で向かっていけるようにできたらなと思います。

山口 僕その試合リザーブだったんですけど、この人たちとやるのも、もうこれしかないと思うと、もうちょっと上手いやり方があったんじゃないかなとか、もうちょっとあそこで頑張れたんじゃないかなとか、やり残したこととか思い出したりして、悔しかったですね。

広瀬 僕はスタンドから見ていたんですけど、後藤さんも言っていたんですけど、最後の藤田さん(藤田慶和前副将、平28スポ卒=現パナソニック)のトライがことしのワセダのトライだって言っていたんですよ。そのトライが4年生の気持ちが入っていたのかなっていう感じでした。東海大戦で結構(スコアを)離されてしまって、時間もなくてラストワンプレーだったんですけど、そこは4年生の意地っていうのを見せてもらいました。あと、話は変わるんですけど、あの試合の入場するときにメイジの選手が花道を作ってくれて。上から見ていたんですけど、メイジのロッカーが反対側だったのにこっちまで来てくれて。そういう関係っていいなっていう印象をあの試合で受けました。

佐田 (明大とは)FW合同練習とかさせてもらって、スクラム練習とかもしてボロボロにされてるんで、そういう面では好きじゃないんですけど、ああいうことされたら熱い気持ちになりますね。

山口 僕らが逆の立場だったらそんなことができるかっていうとちょっと分からないですけど、すごいなって思いますね。僕らもそういったチームになれればと思います。

――後藤前監督のラストイヤーということで、監督の集大成の年だったと思うのですが、出し切れなかった部分はありますか

佐田 山口が言っていた通り、最後までやり通せなかったっていうのがあります。例えば内からのディフェンスだったりだとか、終盤疲れてくると1対1になってしまったり。早明戦だったら、セットプレー絶対安定させるって思っていたんですけど、スクラムから崩してしまったりして。

広瀬 僕らの1年生のときには4年生に素晴らしい先輩方がいて、そこから周りからも言われるし自分たちも思っていたんですけど、スタープレーヤーがいない。きょねんでいえば藤田さんや、一平さん、穣司さん(佐藤穣司前副将、平28スポ卒=現トヨタ自動車)がいましたけど。そこから比較してプレーの一つ一つの精度の部分ではやりきれなかったのかなって。(レベルを)高くやろうって言っていたんですけど、特にBKのセットプレーサインプレーの精度を高めようって言ってて、そこはやり切れなかったなって思います。自分BKなんで。

――昨年の春には村上貴弘ハイパフォーマンスコーディネーターが新しく就任されてS&Cの部分を重点的に鍛えていたと思うのですが、それは手応えを感じましたか

山口 探り探りじゃなかった? そうでもない?

佐田 村上さんが入ったことによることかは分からないんですけど、今まで僕らが1年のころと違ってオフっていうかリカバリーが週2日になったり、そういう新しいことがいろいろありました。

――それぞれ立場が違って、悔しさの中身も違うと思いますが、個人としてどのような思いで一年間やってきたのでしょうか

広瀬 僕の場合は2人と全然違くて、春ちょっとだけBにいて怪我して、結局秋シーズン入るときには一番下からで。意識の部分では2人とちょっと違ったのかなって。昨年のシーズン開始当初は英国遠征を目標にしていたんですけど、全然届かなくて。それでどうしようかなって考えて。でも、自分のやるべきこと、求められていることをやるだけっていうか。やるだけっていうとちょっと語弊がある感じがするんですけど、あんまり欲張り過ぎずって感じでやってましたね。

佐田 僕はまずもう赤黒着て1番で出るっていうのが2年のときもあったんですけど、スタメンってことは初めてで、自分のレベルとしては、最初は正直追い付くのが精一杯でした。いろんなミスもいっぱいしたし。そうやっていく中でも積み上げられたものはスクラムで、スクラムには正直自信があったので、そこで戦っていこうと思っていて、やっていくんですけど、さっきも言ったんですけどメイジにやられたりして、ここしか強いところがないのにこんなんじゃ全然チームに貢献できないなって。いろんなことをやればやるほど負の方向にいきました。それこそ、早明戦とか典型なんですけど、ダメなほうにいっちゃって。チームを助けきれなかったなって思いますね。

山口 僕は春も怪我でほとんど出ていなくて、復帰したのが、秋の筑波大戦だっけ?

広瀬 いや、知らないよ(笑)。

山口 筑波大戦でAチームに出させてもらったんですけど、そこからずっともうベンチで、ほとんど変えてくれることもなくて、それが単純に悔しかった。ベンチでアップだけやって試合見て終わりみたいな。赤黒着てるのに、目の前でやってるのに、僕は出ることができなくて悔しかったですね。

――モチベーションの維持で苦労することはあったのでしょうか

山口 ベンチメンバーが務まるのは僕しかいないと思っていたので、そこに関しては自分にできることを全うしてやりきるようにはしていました。

佐田 さっき言い忘れたんですけど、悔しいことがありました。昨年の4年生の寺川さん(寺川賢太、平28スポ卒)に、部室で「お前スクラム強いけどフィールドプレーはBチームだよな」って言われて。それを引きずっています。それが一番悔しかったです。本人にも「めっちゃムカつきました」って伝えたんですけど(笑)。それを糧に頑張っています。

――広瀬選手は、Eチームから赤黒を着るまでに上がっていきましたが、逆に良かったことはありましたか

広瀬 良い意味で開き直りましたね。しょうがないし。そのとき、みんなイギリス行ってて、こっちは上井草でひたすら走るみたいな。Eチームだけって人数もあんまりいなくて対人でやるとかもあんまりなくて、メニューとかもそうだったんですけど、正直ラグビーがあんまり楽しくないような感じでした。いまのチームが自分に求めているものって何だっていうことだけを考えていて。バランス良く、いい意味で淡々とこなしたっていう。こなしたっていうとあんまり良くないイメージありますけど、僕は自分に求められていることをやり続けた。そしたら、運も良かったんですけど、ジュニア選手権でケイオーとやった時にEの試合がなかったので、Dチームの後半から出たんですね。本当はその日はそれで終わりの予定だったんですけど、運も重なってCの試合に出られました。そこでぽんぽんって上がれたので、運も重なったんですけど、自分がやることをやっていたから上がれたのかなって。

――悔しいシーズンになったと思うんですけど。その中で得たものはありましたか

佐田 スクラムで多くの本数を組ませてもらって、どういうふうにしたらいいとかずっと考えますし、2番の貝塚さん(貝塚隼一郎、平28政経卒)が怪我でいなくなったときが僕の中で一番良かった時でした。貝塚さんがスクラムリーダーでずっと考えてくださっていたんですけど、あの人がいなくなったら僕がスクラムのこと考える立場になって、全体で考えたりとかしたらどんどんスクラムのこととか理解できるようになりました。どうしたらいいのかとか、こういうやつにはどう組んだらいいかとか見えてきますし、自分の強みを引き出すっていうことができたたことが良かったなと思います。

山口 怪我人で下級生と関わる機会が増えたことですかね。僕自身がそんなに下級生と関わるほうではなくて、接点とかあんまりなかったんですけど、怪我人になったことで怪我人の後輩と話す機会が増えました。あとは、チーム全体を外から見ることができて、層が薄いなっていうことを感じましたね。僕が復帰してすぐにAチームに上がれたのもロック陣の層が薄かったからで、下のほうになるほど身体も小さいし、Aチームと差が開き過ぎている。帝京大とかは上のチームと下のチームでそんなに差はないと思うんですけど、そこの差とか、外から見てて結構感じることがあって。ことしは下のチームから強くなって、もっと競争を激しくやっていったらお互い強くなろうと思うし、もっと高められるんじゃないかなと思います。

広瀬 さっきと同じような話になっちゃうんですけど、9月に一番下のチームにいれたことで、いまの自分を知る能力というか、現状を把握できる能力を得ることができました。悪く言えば、今まではやりたいことをやっていただけっていう感じだったんですけど、自分の強みを残しつつ、チームに求められていることは何だろうなっていうのはしっかり考えられるようにはなって、スキルを身に付けるために、継続できる能力は昨シーズンで得られたことかなって思います。

――昨年の戦いから、新シーズンにつながる点はありますか

広瀬 S&Cの部分で言えば、村上さんがついてくれているので、きょねんやってた上澄みっていうのは昨シーズンから引き継げると思います。さらにプラスアルファってところでスプリントセッションやったりレスリングやったりっていうところは継続してやっていきたいです。

佐田 スクラムからの反省で言えば、また違うんですけど、昨シーズンと近いような組み方をするんじゃないかと。なので、それをより高いものにしてことしはやります。スクラムの話しかしてない…。

一同 (笑)。

山口 昨季はケガをしてつらい思いをしたので、その反省として、ことしは身体のケアを続けていきたいです。

「チームでまとまりのある鎖になりたい」(広瀬)

今季に懸ける思いを話す広瀬

――それではこれから始まるシーズンに向けてお聞きしていくのですが、激化するポジション争いにおけるご自身のアピールポイントはなんでしょうか

佐田 またスクラムの話になっちゃうな(笑)。

一同 (笑)。

佐田 僕は足が速いとかパスがめっちゃうまいとかじゃないので、やっぱりスクラム、モール、ラインアウトのセットプレーで自分の強みを出していきたいと思いますね。

広瀬 僕はディフェンスですかね、やっぱり。隣の選手とコミュニケーションを取って簡単に破られないように、自分のポジションの周りでは絶対にブレイクされないようにもっと精度を高めていきたいですね。あと、ことし自分の中で求めているFWに対してのタックル、ディフェンスを強化していければなと個人の目標として掲げています。

山口 僕が挙げるとしたらアタックですかね。器用なほうなので、チームがきついときに僕から前に出るプレーをアピールしたいですね。

――山口選手はどこのポジションで勝負していくことになりそうですか

山口 大悟さんと話した感じはロックですね。ロックが強いチームは強いって、ロックのOBが言っているだけかもしれないですけど(笑)。

広瀬 絶対そうじゃん(笑)。

山口 それを高校とか大学でも聞くので、そういうロックにことしはなります!

――それぞれライバルと捉えている選手はいますか

広瀬 注目プレイヤーとするなら、新1年生の岸岡くん(岸岡智樹、教1=大阪・東海大仰星)ですね。東海大仰星は強いので注目ですね。下級生を含めてみんな良い感じでやっているので、特に誰がというのはないですが。でもまだしゃべったことないんだよね、(寮部屋が)1階と2階だから。

山口 おれでもしゃべったことあるよ(笑)。

広瀬 ほんと?

山口 すごい良い子だったよ。

佐田 僕は「絶対に負けないぞ」というよりは自分のことをちゃんとしたいですね。ライバルは自分なんじゃないんですかね。

広瀬 良いこと言う。

佐田 やっぱ今の切ってもらっていいですか(笑)。・・・ライバルですか?

広瀬 いや、聞いたから(笑)。

佐田 ライバルはみんなだと思います。全員がフラットな状態でスタートするので、誰が(試合に)出ていたとか関係ないと言われているので。

一同 (笑)。

山口 僕が気にするのは加藤(広人、スポ3=秋田工)ですね。昨季はずっと加藤の控えでベンチにいたので、ポジションも被りますし。そういう意味では一番気になりますね。

――春シーズンにおける個人の目標はありますか

佐田 セットプレーはもちろんなんですけど、ディフェンスで目立てる選手になりたいと思いますね。体を当ててターンオーバーのチャンスをつくれるように。

山口 僕自身の課題もディフェンスなんで、チームがそこに重きを置いている中で、それを自分の強みに改善できるくらい改善していきたいです。あと、今までは自分のことだけだったんですけど、ことしは4年生としてチーム全体を見なきゃいけないのでもっと周りのことを考えてできるようになりたいです。

広瀬 僕はいま重点的にやっているのがハイパントで、ことしは戦術でハイパントを多用していくので何回蹴っても同じところに落とせるような精度までに春シーズンの内で高めて、高いレベルで100%狙ったところに落とせるようにしていきたいですね。

――日本一を目指す中、委員という立場で果たしたい役割はなんですか

佐田 食事管理でみんなの体を大きくして、当たり負けしないために必要な体造りを僕がサポートしたいですね。あと、チームのまとまりをいかにつくれるかという部分ですね。

佐田 特に横山(陽介、スポ3=神奈川・桐蔭学園)と加藤としっかり話しながら下級生にしっかり目を向けて、その上で下級生に見られているんだという意識を持ちながらグラウンド内外で背中で見していかないとなと思います。

山口 僕は寮長なので寮生活の管理、ごはんの管理や掃除とかの私生活の面で寮生全体をしっかり管理することですね。

――桑野主将、本田宗詩副将(スポ4=福岡)をどのようにサポートしていきますか

佐田 僕らはもう普通に仲が良いので私生活からしゃべるし、サポートというよりは普通にそばにいる状態ですね。一緒にいるので、言いづらいことがあっても話しやすい環境にして、抱え込ませないようにしたいですね。僕らがいつでもしゃべって全体に共有できればなと思います。

山口 僕も似てるけど、やっぱキャプテンとか主務って自分のことできついから一つのことしか考えられなくなると思うので、「そこは違う」とか言ってあげられるようにしたいです。

広瀬 宗詩に関して言えば、あいつは気を遣わなくてもうまいこと柔軟にできるタイプなので、詠真よりは気を遣わなくてもいいのかなと思います。良い意味でね(笑)。詠真はやっぱり主将となると選手からの意見も聞かなくちゃいけないしコーチからも言われたりして、板挟みになることもあると思うので、愚痴とかも含めていろいろ聞いてあげられればと思います。部屋が近いので何気ない日常の会話から話を聞いてあげられれば少しでも負担は軽くなってやりやすくなるかなと思います。

――では最後に新シーズンに向けての意気込みをお願いします

広瀬 意気込みは『BE THE CHAIN』、チームでまとまりのある鎖になりたいなと思います。練習を見にきてくれたり、スタジアムで声を掛けてくださるファンの方がたくさんいるので、そういう方も含めて全員で一本の鎖になれればなと思います。

山口 僕らの代から強いワセダをつくっていく、僕らの代から変えてみせます。

佐田 環境も整えてもらっていますしチームとしてのやることも決まっていますけど、やるのは僕らなんで。やるからには勝ちたいので、ぬるいことしないでみんなで刺激しあって頑張ります!

――ありがとうございました!

(取材・編集 黒田菜々子、佐藤諒、桝田大暉)

今季への意気込みを書いていただきました!

◆佐田涼祐(さだ・りょうすけ)(※写真左)

1995年(平7)1月16日生まれのO型。178センチ、106キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。ポジションはプロップ。対談中はスクラムについて熱く語ってくださった佐田選手。佐田選手を中心に、最前線で体を張るプロップ陣に注目です!

◆山口和慶(やまぐち・かずよし)(※写真右)

1994年(平6)6月14日生まれのA型。181センチ、100キロ。福岡高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはロック。委員のほかに寮長にも就任した山口選手。「規律を守れる集団にしていきたい」と意気込んでいました!

◆広瀬泰斗(ひろせ・たいと)(※写真中央)

1994年(平6)12月6日生まれのA型。174センチ、85キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部4年。ポジションはSO。昨季はEチームからAチームまでを経験した広瀬選手。今季もその不屈の精神でチームに勢いを与えてほしいですね!