春の早明戦 宿敵相手に敗れたものの、成長の片鱗がみえた一戦に

ラグビー男子

関東大学春季大会 6月8日 対明大 岐阜メモリアルセンター長良川競技場

 稲穂とペガサス。大学ラグビーのみならず、日本ラグビーをけん引してきた両雄が激突する。彼らがつなぐのはだ円球だけではない。歴史を紡ぎ、誇りをつなぐ。伝統がタスキとなり、時代の垣根を越えてつながる。そんな伝統の一戦が、岐阜城が見下ろす岐阜県・長良川競技場で幕を開けた。序盤から一進一退の攻防が続く。こう着状態を破ったのは紫紺のジャージーだった。重戦車が早大ゴールを立て続けに叩き割る。このままでは終われない早大は執念の一撃を返すものの、前半終了間際に再び得点を許し、7ー19で試合を折り返した。続く後半、明大の勢いが増していく。プライドを見せたい早大はフレッシュレッグスが一矢を報いるも、反撃むなしく、紫紺の猛攻を止めることができなかった。12ー45でノーサイド、春の早明戦に幕が降りた。

ボールをキックするSO田中大

 明大のキックオフで始まった今試合。序盤から両校のプライドが火花を散らす。蹴り合いが続き、両チームともに堅い試合運びをみせた。明大の強力なスクラムにもPR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)を中心に真っ向から立ち向かう。硬直した攻防をこじ開けたのは明大の重戦車だった。前半10分、早大が接点で反則を犯し、明大がゴール前まで攻め込む。FWでフェーズを重ねて、ゴールラインを明け渡した。その後の前半25分にも追加点を許す。しかし、このままでは終われない早大にチャンスが舞い込んだ。自陣ゴールを背にし、明大の連続攻撃を守り切った。SO田中大斗(教2=東京・早実)のキックで敵陣まで攻め込むと、ラインアウトから大外まで展開し、WTB池本晴人(社3=東京・早実)がラインブレイク。再び大きく展開し、ライン際でWTB田中健想(社2=神奈川・桐蔭学園)が起点を作ると、田中大からのパスを受け取ったCTB黒川和音(人4=茨城・茗渓学園)が次々とディフェンスをかわしていき、インゴールに飛び込んだ。その後のキックもFB島田隼成(スポ2=福岡・修猷館)が冷静に沈め、7ー14。流れに乗りたい早大だったが、前半終了間際にも失点を許し、7ー19とリードを許して試合を折り返した。

ラインブレイクするFB植木

 続く後半も立ち上がりから苦しむ展開に。開始直後に再びスコアを許し、点差はさらに広がった。何とかして流れを引き寄せたい早大。流れを変えたのは途中から投入されたSO服部亮太(スポ2=佐賀工)とWTB植木太一(人2=神奈川・関東学院六浦)だった。服部が相手ディフェンスの背後に絶妙なキックを蹴り込み、敵陣へと攻め込む。明大のキックに対して「自分の強みでチームに勢いをもたらしたかった」と語った植木が素早く反応。カウンターを仕掛けると次々とタックルをかわしていき、一気にビッグゲイン。徐々に早大が息を吹き返し、試合の流れが変わり始める。迎えた後半20分、早大は敵陣深くで得たスクラムから田中大が起点を作る。勢いをそのままに、服部がボールを受け取り、ゴールラインを駆け抜けた。スコアは12ー24に。しかし、その行く手に立ちはだかるのはあまりにも高く厚い紫紺の壁だった。早大は果敢に攻め込むものの、得点圏にボールを運ぶことができない。この後、明大の猛攻に耐え切れず、3トライの追加点を許し、12ー45。伝統の一戦は、悔しさを残してノーサイドを迎えた。

バックフリップパスを放るSO服部

 「早稲田プライド」を胸に挑んだ一戦。だが宿敵を前に突きつけられたのは、悔しさという現実だった。それでも、昨季の躍進を支えた堅牢なディフェンスは随所に顔を出した。あとは、試合終了まで早大のラグビーを貫き通し、訪れたチャンスを確実に仕留め切る力だ。今回は敗戦に終わった早大だが、これはまだチーム野中の序章に過ぎない。目指すはただ一つ、頂へ。『One Shot』。狙いを定め、受け継いだ伝統と誇りをその一撃に込めて。勝利を、好機を、撃ち抜いてみせる。

(記事 大林祐太、村上結太 写真 安藤香穂、髙木颯人)

コメント

◆FL田中勇成(教4=東京・早実)

ーー今試合のチームとしてのゲームコンセプトはありましたか
 早稲田プライドです

ーーこの早明戦にどんな思いで臨みましたか
 自分たちにフォーカスして臨みました。

ーー今試合のチームのディフェンスはいかがでしたか
 粘り強くディフェンスできたところとそうでない時があった試合でした。原因を探して、見つめ直して取り組んでいきたい。

ーー今試合での敗戦を次戦の帝京戦にむけてどのようにいかしていきたいですか
 今日このような試合をしてしまって、もう一度チャンスがあるのであと2週間、勝つ準備をしていきます。

◆PR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)

ーー個人としてどんなプレーを意識していましたか
 大きい相手に対して、セットプレーを安定させ、スクラムでプレッシャーをかける事、また、ボールキャリーの部分でチームに勢いを生み出すことを意識していました。

ーー早明戦をどんな思いで臨みましたか
 小さい頃からテレビで見ていた、早明戦に自分も出場できる事はとても嬉しかったのですが、そこで舞い上がるのではなく、自分の役割をいつもの試合と同じように遂行しようと思いました。


ーースクラムの手応え、課題点を教えてください
 回数を組んでいくと相手に対してアジャストできたのが今回の収穫だと思います。しかし、ファーストスクラムからも流れを掴む為にも、もっとプレッシャーをかけることが今後必要になると思いました。

ーー何度か明大のモールを止めるシーンも見られました。モールディフェンスを振り返っていかがですか
 モールディフェンスは春シーズンを通して課題の部分だったので、そこで守り切ることができたのは自信になりました。

ーー今後の意気込みをお願いします
 次のターゲットゲームに向けて、今週出た課題を活かして、上井草で勝利に貢献します。

◆PR山口湧太郎(スポ4=神奈川・桐蔭学園)

ーー前半から急遽の出場となりましたが、どんな意識でプレーしていましたか
 突然の出番にはなったものの、自身の強みであるスクラムからチームに良い流れを呼び込む事を意識してプレーに取り組みました。

ーースクラムの手応え、課題点を教えてください
 何本か良い形で組めたスクラムもあるものの、80分を通じてムラが見受けられたので、試合中を通じて自分たちの形でスクラムを組むことが課題だと思います。

ーー実際に明大と身体を当ててみて、フィールドの部分での収穫はありましたか
 フィジカルでは通用した部分も多少あるものの、まだまだ自分の物足りなさを痛感しました。

ーー今後の意気込みをお願いします
 今回の試合で出た反省点を修正しつつ次戦の帝京戦、そして秋シーズンで試合に勝てるよう日々上井草で努力を積み重ねていきます。

◆SO田中大斗(教2=東京・早実)

ーー個人としてどんなプレーを意識していましたか
 アタックテーマがコミュニケーションだったので自分から仕掛け、発信し、アタックに勢いを持たせようと思っていました。

ーーこの早明戦にどんな思いで臨みましたか
 伝統ある早明戦に10番として出場する人間としてアタックを引っ張り必ずチームを勝たせるという思いを持っていました。

ーー前半はキック中心のゲームとなりましたが、キックゲームの手応えはいかがでしたか
 キックゲームは自分が強みとしていて負けてはいけないところと思っていましたが、相手にうまくスペースを見られ後手に回ってしまったので反省点です。

ーー明大の圧力、フィジカルに苦しんだ展開だったと思いますがアタックではどんなことを意識していましたか
 明治のプレッシャーは想定していてバックスラインの幅の部分は意識していましたが、個人のキャッチなど基本のところでミスが多かったのでまだまだ練習不足かなと思います。

ーー今後の意気込みをお願いします
 この試合は内容も良くない負け試合でしたが、春はまだあと1試合あるのでここからの2週間、取り組みを変えて必ず帝京を倒せるよう頑張ります。

◆SO服部亮太(スポ2=佐賀工)

ーー途中からの出場でしたが、どんなプレーを意識していましたか
 アタックのテンポがあまり良くなかったのでアタックテンポを出すことを意識しました。

ーー点差をひっくり返すためにアタックで意識していたことを教えてください
 外側のスペースが見えていたので、外側にボールを運ぶことや、ランプレーを意識しました。

ーー今試合の敗戦から見えるチームの課題は何かありますか
 ディフェンスのシーンが多くアタックがあまりできていなかったのディフェンスでボールを取り返すこと、アタックでは、しっかりとボールを継続することを意識していきたいです。

ーー今後の意気込みをお願いします
 再来週が春シーズン最後の試合なので今日出た課題を2週間でしっかりと修正し、勝ちきりたいです。

◆FB植木太一(人2=神奈川・関東学院六浦)

ーー途中からの出場でしたが、どんなプレーを意識していましたか
 自分の強みであるランニングで、チームに勢いを与えることを意識してプレーしました。

ーー早明戦をどんな思いで臨みましたか
 伝統のある試合で赤黒を着てプレーできることに誇りを感じつつ、楽しむ気持ちも忘れずに臨みました。

ーー点差をひっくり返すためにアタックで意識していたことを教えてください
 自分がトライやビッグゲインでチームに勢いを与えられるよう、思いきったアタックを意識していました。

ーー今試合の敗戦から見えるチームの課題は何かありますか
 プレッシャーのかかる試合で、自分たちのプレーをどれだけ出し切れるかが、今後の課題だと感じました。

ーー今後の意気込みをお願いします
 『荒ぶる』に向けて、一回一回の練習を大切にしながら、日々成長していきたいと思います。

写真ギャラリー

ディフェンスに仕掛けるHO清水

ヒットするFL粟飯原

タックラーを外すCTB黒川

ボールを持ち出すSH糸瀬

ヒットするLO小林

メンバー表