全関東学生選手権(全関)二日目は女子の決勝が行われた。事前に実施された団体予選で3位に入りシード権を獲得していたため、2回戦から出場した早大は安定した的中で勝ち上がる。しかし3回戦では明大を相手に試合を自分たちで展開させられず、前回大会と同じくベスト8で競技を終えることとなった。その後行われた個人戦では山﨑琴葵(社3=東京・早実)が、6本目まで的中を続けて戦いを制し、早大女子初となる個人優勝を決めた。
早大にとって初戦となる決勝トーナメント2回戦は、創価大との対戦だ。早大は予選からメンバーを変えることなく臨んでいた。1本目を大前の山﨑と中の内藤碧(商4=東京・桜修館中教校)が入れるが、落の不藤奈々(創理4=埼玉・早大本庄)が抜いてしまう。しかし、「焦る気持ちもあったのですが、前の二人がしっかり当ててくれたので、自分も今までやってきたことをしっかりやれば絶対に当たる」(不藤)と気持ちを切りかえ、不藤が3中で試合を締める。山﨑も3中、内藤が2中をあげて8中-3中で早大の3回戦進出が決まった。準決勝進出を懸けた3回戦の相手は、予選6位の明大だった。前半に的中差を付けられ追いかける展開となった早大は、不藤が3本目まで的中を続けるなど粘ったが、最後まで試合の流れを引き寄せることができず5中-10中で敗退。前回と同じくベスト8で射場を去ることとなった。
不藤は団体戦でチームで最多の的中を出して貢献した
1本ごとの勝負となる個人決勝では、山﨑の射が会場から感嘆のため息を誘った。早大からは個人戦に4人の選手が出場していたが、山﨑以外の3人は1本目を外してしまう。山﨑は順調に的中を重ねていき、的が小さくなって難易度が上がる八寸的の1本目を的中させる。これによって4位以上が確定し、5位以下の入賞者決定戦のためしばらくの待機時間に入った。山﨑は次の行射に備えてアリーナの中で待機中にも、客席で応援している早大の部員たちに笑顔で手を振るなど、リラックスした表情を見せていた。そしていよいよ優勝決定のための行射に入っていく。八寸的の2本目でもまだ優勝者が決まらず、迎えた八寸的3本目。山﨑の矢が的に吸い込まれて的音を会場中に響かせると、呼応するように会場中から驚きの声がこぼれた。先に退場し、他の選手の結果を待つ。山﨑を除く3選手が全員外したため、山﨑の全関個人戦初優勝が決まり、山﨑は笑顔でそばにいた介添えのメンバーと抱き合った。
個人で初優勝を果たした山﨑
今回の全関では山﨑が早大女子部としては初めての、個人戦制覇を成し遂げた。山﨑は団体戦では3回戦で2中を出すなど思うような射とは言えなかったが、個人戦では「気持ちを切り替えて、落ち着いて引けたので良かった」と振り返る。一方早大チームは団体戦では的中を先行され、自分たちの射をさせてもらえなかった。「流れをもっとうまく作っていかないといけない」(不藤)と、課題は明確だ。この課題を克服するためには様々な要素が必要で、決して容易ではない。しかし今大会で山﨑が見せた、外すことができない1本をしっかり決め切る強さも、これからの早大の戦いに大きな推進力をもたらしてくれるはずだ。
(記事、写真 新井沙奈)
※掲載が遅くなり申し訳ありません
結果
〈団体〉
2回戦
大前 山﨑 4射3中
弐的 内藤 4射2中
落 不藤 4射3中
○早大8中-創価大3中
3回戦
大前 山﨑 4射2中
弐的 内藤 4射0中
落 不藤 4射3中
●早大5中-明大10中
〈個人〉
鈴木 ×
内藤 ×
山﨑 ○○○○○○
渡邉 ×
コメント
不藤奈々(創理4=埼玉・早大本庄)
――今日の射の振り返りをお願いします
1本目を外してしまって焦る気持ちもあったのですが、前の二人がしっかり当ててくれたので、自分も今までやってきたことをしっかりやれば絶対に当たると信じて、その後は続けて当てることができました。
――調子自体はどうでしたか
今日はすごく調子が良かったです。昨日の調整から、今朝の練習も良かったので、この調子でいけばという気持ちはありました。
――団体戦での全関出場は初めてでしたが、どのような気持ちでしたか
昨年の全関東で個人戦に出て、1本目を外して終わってしまったので、すごく悔しい思いがありました。この大会に戻ってきたら次はやっぱり団体戦で出たいという昨年の思いがあったので、今年はまず出ることができてとても嬉しかったです。
――チーム全体として良かったところ、悪かったところはどこでしたか
良かったところは、予選のメンバーを変えずにずっと調子を上げてきて、目標の9中には届きませんでしたが、1回戦目で私たちのできる全力が出せたところだと思います。悪かったところとしては、やっぱり流れをもっとうまく作っていかないといけないと思いました。他の選手を安心させられるような射を練習のうちからできるようにしておかないと、こういう大きな舞台ではなかなか勝つことができないのではないかなと感じました。
――学生最後のシーズンですが、これからに向けて意気込みをお願いします。
今日の結果にはまだいろいろな気持ちが混ざり合っているのですが、これから先は練習のうちから確実なものを自分で見つけて、こういう場所に立った時に焦ることがないように、しっかりと自分の中で射と気持ちを固めて挑みたいと思っています。
山﨑琴葵(社3=東京・早実)
――今の気持ちをお聞かせください
うれしい気持ちでいっぱいです。
――今日の射を振り返ってみていかがでしたか
そこまで大きく緊張することはなかったのですが、団体戦では自分のやろうと思っていたことがうまくできなくて、外すことが多かったので悔しいです。個人戦では気持ちを切り替えて、落ち着いて引けたので良かったかなと思います。
――今日の調子はいかがでしたか
感覚というよりは的中の面で、ここ最近で一番悪かったです。羽分けを出したのがとても久しぶりだったので、団体戦が終わった後は動揺が隠せなかったです。
――個人戦に向けてどのように修正しましたか
試合前に精神統一をするタイプではないので、色んな人と話をしたり歩き回ったりしながら気分転換をして、気持ちを入れ直しました。
――周りからの声掛けや声援も多くありましたが、その時には緊張と楽しむ気持ちとではどちらが大きかったですか
ここまできたらやるしかなかったので、応援してくれる気持ちを受け入れながら楽しんで引きました。
――これから大事な大会が続いていきますが、意気込みをお願いします
個人戦では優勝できたものの、まだまだ自分の中ではできていないことも多く、反省することがたくさんあるので、団体戦でもいい結果を残せるようにもう一度調整していきます。