個人戦が行われた全日本学生選手権(インカレ)最終日。男女ともに団体戦での悔しさを胸に試合に臨んだ。個人戦は1本でも抜けば脱落してしまう熾烈(しれつ)な戦い。白熱した試合の結果、女子は吉田友理子(スポ3=石川・小松)が6位、光明英夏(法2=東京・桜修館)が10位に入賞し、存在感を見せた。男子は大久保侑(スポ3=岩手・福岡)、橋本和久(先理4=東京・早実)が健闘したが射詰1本目を抜いてしまい、上位に食い込むことはできなかった。
女子は6人が決勝の舞台に立った。団体戦で奮闘した吉田、光明が一手(2射)を通過すると、その後も安定した射で射詰3本目まで的中を重ねる。そして、激戦を勝ち抜いた二人は八寸的へ。通常よりも小さな的での行射となるため、より高い集中力が求められる。まず八寸射詰1本目で光明が抜いてしまうも、9位、10位を決定する遠近競射で底力を見せた。張り詰めた空気の中放たれた矢は、的の右上に的中。光明は続く選手たちの行射を緊張した面持ちで見守っていたが、10位入賞を告げられると喜びをあらわに。「いまできる自分の中では良い方の射がコンスタントにできた」(光明)と、練習の成果を発揮した試合となった。個人戦で「絶対に入賞したい」と前日に語っていた吉田は八寸射詰2本目を外し、5位から8位を決定する遠近競射に挑んだ。集中力を切らすことなく矢を的中させ、6位入賞を手にする。しかし、「悔しさ9割でうれしさが1割」(吉田)と結果には満足していない。獲得できなかった『日本一』をチーム全体で再び目指す決意を新たにした。
10位入賞が決定し、喜ぶ光明
8人が出場を果たした男子だったが、勝負は厳しいものとなった。早々に抜いてしまう選手が見える中、尺二で皆中を果たした大久保と橋本が勝ち残る。ところが、「試合の緊張感に自分の射が負けてしまった」(大久保)というように、射詰1本目で大久保が抜いてしまう。「全く不安がない状態で引くことができた」(橋本)と、落ち着いた射を見せていた橋本も的中させることができず入賞を逃す。本番で普段通りの実力を出すことの難しさが浮き彫りになる形となった。
落ち着いた行射を見せた橋本
全力で戦い抜いた3日間が幕を閉じ、リーグ戦(平成27年度東京都学生連盟リーグ戦)へ向けた新たな日々が始まった。1部昇格、王座奪還という男女それぞれの悲願を達成するには、たゆまぬ努力が求められる。掲げる目標への道は決して平坦ではないが、選手たちは納得のいくまで己の射を追い求めていく。鍛錬の夏を経た早大弓道部のさらなる飛躍に期待したい。
(記事 副島美沙子、写真 市川祐樹)
入賞に喜ぶ光明(左)と吉田
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結果
▽女子個人
光明英夏 射詰4本目で敗退、遠近競射の結果10位入賞
森みのり(商3=東京・頌栄女学院) 一手敗退
吉田友理子 射詰5本目で敗退、遠近競射の結果6位入賞
安宅麻貴(スポ4=徳島・池田) 一手敗退
村田あすか(創理4=東京・早実) 一手敗退
守田稀実(法4=東京・早実) 一手敗退
▽男子個人
清水雄貴(人2=東京・早稲田) 一手敗退
大久保侑 射詰1本目で敗退
島村達哉(スポ3=獨協埼玉) 一手敗退
梅原丈博(社4=神奈川・川和) 一手敗退
河本悠輔(商4=広島・修道) 一手敗退
妹尾遼介(スポ4=愛知・瑞陵) 一手敗退
永山豪朋(文構4=東京・早実) 一手敗退
橋本和久 射詰1本目で敗退
コメント
大久保侑(スポ3=岩手・福岡)
――全日(全日本学生選手権)に向けて、ここまでの調子というのはいかがだったのでしょうか
練習では調子はよかったのですけれども、やはり試合の緊張感に自分の射が負けてしまったのかなと。あとは緊張感がある中でも詰められる射というのを自分の中では目指すものというのがあったのですが、目先の練習での的中にとらわれすぎた結果が今回こういうかたちで表れてしまったのかなと思います。
――きのうの団体戦を振り返って、予選敗退という結果はどう捉えていらっしゃいますか
自分のせいで負けてしまったといっても過言ではないといいますか。弓道は誰が何中したかというのが出てしまうので。自分の責任で。あとは調子が極端に上がっていない選手を最終的には競射に出すということにもつながって。その時点でもう負けてしまっていたのかなと思います。
――きょうの個人戦はどのような目標をもって臨まれましたか
とりあえずはきのうの試合でできなかったことを試合が終わってから少し練習する時間があったので練習して。そこで練習していたのが少しは出せたのですが、やはりそれでも付け焼き刃のようなものだったので。それでは入賞とかまではいけなかったのかなと思います。
――大久保選手自身3年目となる全日ですがことしの全日を振り返って
練習では自分が一番調子よかったので。自分が一番中てなければいけないというプレッシャーはなかったのですけれども、足は引っ張らないようにと思ってやっていたのですが、結果として足を引っ張ってしまって。1番結果が出たのが1年のときで。そこから2年、3年とアリーナでの結果はどんどん落ちてきてしまっているので。取り組むことは変わらないのですが本当にいままで以上に取り組むことに対してもっと熱心にならなければと思います。あとは初心者で始めた島村(島村達哉、スポ3=埼玉独協)とかの活躍も目立ったので。その人たちにも負けないように。そこは高校からやっているので意地を見せたいと思います。
――夏合宿で強化したいご自身の課題はありますか
誰が見ても納得できる中て方で中てる射というのをとにかく目指していきたいです。
――ことしこそリーグ戦(東京都学生連盟リーグ戦)での1部昇格というのが部員の皆さんにもあると思います。部内での士気というのはいかがでしょうか
意識として毎年毎年それは思っていることだと思うのですけれども、ことしこそはという思いもありますし、あとは4年生に中る人たちが結構いるのですけれどもその人たちもいなくなってしまうというのを考えると、ことし上がっていっただけでは来年落ちてしまうという可能性もあるので。来年も1部で優勝とかを目指すために、自分の課題でもある誰が見ても納得できるような中て方というのを部としても取り組まないといけない部分もあるのかなとちょっと思っていたので。そのあたりも含めて合宿で部として練習していければなと思います。
橋本和久(先理4=東京・早実)
――きょうの射詰1本目で敗退という結果についてはいかがでしたか
やはり上を目指していたので悔しいという思いがあります。
――団体戦も出場されていましたが、団体戦と個人戦で気持ちの変化などはありましたでしょうか
向き合っているのは自分と的だけという点で団体戦も個人戦も同じなので、気持ちの大きな変化というのはなかったです。
――個人戦へ向けて調整した部分はありましたか
団体戦でいつもやっていることを個人戦でも出せるように、気持ちの面で整えていきました。
――昨年も個人戦に出場されていましたが、昨年から成長した部分というのはありましたか
昨年は緊張で頭が真っ白になってしまって外してしまったのですが、ことしは周りのサポートが本当に心強くて、こんなことがあるのかというくらい一切不安がない状態で引くことができました。
――きょうが最終日ということで、今回のインカレ全体を振り返ってご自身、またチームについていかがでしたか
先ほどもお話ししましたが、私自身全く不安がない状態で引くことができたのでその点に関しては悔いはありません。でも、そのような状況で中てることができなかった、頑張り切れなかったことが一番悔しくて、サポートしてくれたみんなに申し訳ないという気持ちでいっぱいです。またリーグ戦に向けて頑張っていこうと思います。
吉田友理子(スポ3=石川・小松)
――6位入賞おめでとうございます。今の率直なお気持ちを聞かせてください
悔しさ9割でうれしさが1割といった感じです
――団体戦を終えてからの個人戦ということで、意気込みはいかがでしたか
団体戦で日本一を取りたかったのでそこまでモチベーションは上がらなかったのですが、せっかくアリーナに立たせてもらえるのでとにかく一本一本大事にして楽しもうという気持ちで臨みました。
――試合中非常にリラックスされていた印象があるのですが
そうですね。緊張はなく、楽しんで試合に参加していました。
――その楽しみの要因というのは
この大会中、自分が成長しているなと実感していて。どんどん課題に取り組んでそれを達成することができていると感じることがすごく楽しかったです。
――八寸的と的が小さくなっても安定した行射をされていましたが、的が小さくなったことで気持ちの変化というのはあるのでしょうか
八寸だとしてもいつも的中を狙って引いているので気持ちの面であまり変わらず、とにかく大きく引くことを意識していました。
――光明選手の10位入賞が決定した後の射詰や遠近競射はやはり気合の入り方というのは違いましたか
そうですね。光明が頑張ってくれていたので私ももっと頑張ろうと思って引きました。それが少し空回りしたという面もあるのですが(笑)
――今後はリーグ戦や王座(全日本学生女子王座決定戦)と大切な試合が続きますが、個人としても、チームとしても今後改善していきたい点というのはありますか
やはり安定した的中を出すことですね。また部員みんなが日本一を意識していないと絶対に達成できないので、全員でモチベーションを上げていきたいなと思います。
光明英夏(法2=東京・桜修館)
――きょうの試合の感想をお願いします
きょうの個人戦は、きのうよりは落ち着いて引けたのは良かったかなあと思っています。
――10位入賞という結果を受けていかがですか
まさか入賞できるとは正直思っていなかったので、それは本当にうれしかったです。
――きのうの団体戦を終えて、きょうの個人戦で心がけていたことはありますか
きのうはあまり自分の射に納得できていなかったので、一本一本ちゃんと引こうと思っていたので、そういう面では一本一本きちんと引くことができたと思っています。100パーセント納得しているかと言われればそうではないのですが、いまできる自分の中では良い方の射がコンスタントにできたかなと思っています。でも、八寸が詰められなかったのはやっぱり悔しいなあと思いましたし、日本一というのは遠いなということを思いました。
――遠近競射にはどのような気持ちで臨まれましたか
いっぱい人がいたので、真ん中真ん中と思うとたぶんずれるかなと思って、とりあえず中てることだけ、同じことをすることだけを考えて引いていました。
――きょうの試合を受けて、今後に生かしていきたい部分はありますか
落ち着いて一本一本引くというのはきょうできたので、これからももっと緊張する場面もあると思うのですが、そういうところでも深呼吸をちゃんとして、落ち着いてやろうと思います。
――今後の目標をお願いします
チームとしてはことしも絶対に王座に行きたいなと思います。自分はもっと安定した射を追求していきたいと思っています。