勝てる投手、柱となる投手とはどのような投手だろうか。様々な答えがあるだろうが、今回取材した大津杜都(文構2=東京・宝仙学園)と福川千明(スポ2=兵庫・白陵)の二人も自分なりの理想像を持っている。まだ先輩投手らのような活躍はできていないが、いつかは勝てる、柱となる投手となれるよう、日々鍛錬を重ねてきた。第2回は、成長著しい次世代エース候補の二人に迫る。
※この取材は8月1日に行われたものです。
「いい面も悪い面も体験することのできた」(大津)
東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)最終戦では大学入学後初先発を果たした大津
――関東地区大学選手権を振り返っていかがですか
福川 自分は、あまり出番がなかったのですが、先輩たちが、軸となるピッチャーがしっかりしていた大会だったと思います。何もできなかった自分が情けないという思いもあるのですが、ベンチには入れて、あの雰囲気を味わうことができたので、良かったのかな、と思います。
大津 自分も同じような立ち位置で関東大会に臨みました。先輩の、久郷さん(太雅、創理3=静岡・沼津東)や杉山さん(周平、教3=神奈川・山手学院)が準決勝とか3位決定戦(での登板)を任されて、自分ら二人はベンチでそれを見守る、という感じだったので、悔しかったのですが、(3位決定戦で)中大に勝って3位になれたので、そういう経験値を積むことはできたと思っています。
――春季リーグ戦を振り返っていかがでしたか
福川 リーグ戦(春季リーグ戦)では自分は結構出番がありました。いい時もあれば悪い時もあって、チームに迷惑をかけたことが多かったので、やっぱり悔しさが残ってしまった春のリーグ戦でした。
大津 自分は立大1回戦、2回戦で投げたんですけど、自分が打たれてその試合負けてしまっったことで、全日(全日本大学選手権)への夢が途絶える(その時点では自力優勝が消滅)というか、そういう何だろう、責任を負って投げたのが初めてだったので、そうやって初めて悔しい思いをしました。その後の明大戦、東大戦があったのですが、そこでベンチ入りメンバーを外れて、さらに悔しさが増して、何とかしよう、という気持ちで、練習なり紅白戦なりで結果を残そうと頑張りました。最終的に(最終戦の)法大戦(法大2回戦)で先発することができて、自分なりには精一杯できたので、いい面も悪い面も体験することのできたいいリーグ戦(春季リーグ戦)だったのかな、と思います。
――大津選手は初先発の時を振り返っていかがでしたか
大津 先発(投手)の時は、緊張はしませんでした。しかし、やっぱり、1打者1打者緊張して投げないといつ打たれるかわからないという、身体の疲れというより、脳を使って、神経を使って投げていたので、そっちの疲れが大きかったですね。
――では、春の木村杯新人戦を振り返っていかがでしたか
福川 1戦目のケイオーは、途中から大差になっていたので、いろんなピッチャーを出して継投で勝ち上がりました。決勝では先発するとは思ってなかったのですが、急に先発(投手)をすることになって、すごい、負けられないし、自分は(他の同期の投手と違い)リーグ戦とかにも出ていたので、先発としての責任を果たさなければならないと強く思っていました。初回に3点を取られたんですけど、その後は切り替えることができきました。リーグ戦などの経験も生かせて、1人1人のバッターに、全球集中して投げることができたので、あの試合で成長できたかな、と思います。
――元々決勝ではどなたが先発する予定だったのでしょうか
福川 予定は・・・誰だったかな(笑)。あまり決まっていなくて。知らされていなかったので、自分は1戦目も2戦目もリリーフでいくと言われていたので、自分はないかな、と思っていました。
――では、大津選手はいかがでしたか
大津 準決勝のケイオー戦に先発しました。今までに(早大は新人戦を)3連覇してきていて、準決勝で負けたら終わりなので、責任がすごく重かったのですが、さっき千明(福川)が言っていたように、自分もリーグ戦に出ていたので、普段出ていない同級生の仲間たちが出てきて、自分が引っ張りながらピッチングをして、最終的に勝てればいいな、と思っていました。結果的に勝ったんですけど、(途中は)追いつかれたりしてしまいました。でも、最低限の仕事はできたのかな、というゲームですね。
――2年生はどのような学年ですか
福川 自分が思うには、それぞれの個性が強くて、束になると強い学年かな、と思います。みんな仲はいいので、雰囲気は良いです。
大津 自分も同じような感じで、個性がそれぞれあるんですけど、新人戦の時もそうだったのですが、皆でやろうとするとチームワークは高いです。自分としてもやっていて、同級生とやって楽しいと思える自分がいるので、そういう面でも、仲はい良いと思います。
――お互いの印象を教えてください
福川 うーん・・・。印象・・・。大津は、普段の生活の時と野球のピッチングをしている時が全然違う人間のようになる人ですね。ピッチングの方から言うと、すごい声を出すんですよ、投げる時。「あー! 」とか言って。気合いががすごいピッチャーで。それに対して、普段の生活は、なんなんですかね、これは。うーん・・・。完全には把握できていないんですけど、たぶん、ふざけた人間というか・・・。人間はふざけてないですけど(笑)。行動というか、発言はなかなかふざけているところもありますね。面白いんですけど、抜けた感じというか(笑)。抜けてはないんですけどね、たぶん。はい。そんな感じで、ギャップがすごいですね。
大津 ピッチャーとしては、やっぱり速球、豪速球というか、140(キロ)近い球を投げられるというのは、嫉妬もしますし、羨ましい。ただただ。あとは、やっぱり出身がどちらも弱小高校から来ていて、強いチームに立ち向かっていく姿勢だったりとか、共通点は多いのかな、と思ったりもしています。人間としては、そんなに話すタイプではないんですけど、たぶん芯があるというか、自分の軸というものがしっかりあるのかな、とは感じています。
――入部してから1年以上が経ちましたが、成長した点は何ですか
福川 まずはやっぱり、球速が速くなった事。で、あとは大学ではやっぱり、ストレートも少し早いくらいのストレートじゃやっぱり打たれるので、それに対応するために、配球、ピッチングの組み立てとかを同じピッチャーの先輩だったり、キャッチャーの先輩だったりにたくさん教えてもらって、試合でもできるようになってきつつもあります。
大津 自分はまず、あんまり変わらないとも言われるんですけど、筋肉はついたのかな、と(笑)。で、あとは、意識が少し変わったというか、今までは、まっすぐで押して押して、三振を取ることが全てというスタイル、というか気持ちでいたんですけど、今は、卒業された黒須さん(裕太、平30人卒=栃木・真岡)のピッチングを見てから、かわすピッチングというか、球数を少なく、取らなきゃいけないところで、アウトを取るという、アウトがほしい時にアウトを取ることができるというようなピッチングを心がけるようにはしています。
――今年のチームのこれまでの投手陣を振り返っていかがですか
福川 そうですね、春のリーグ戦では、エースの杉山さんがケガで出られないという状況で、誰が埋めるか、という状態で、その、軸となるピッチャーがいなくて、たくさんのピッチャーで埋めようとして、たぶん安定した試合運びができなかったと思うので、まあ、頭数はいるんですけど、それぞれがもうひと押しというか、感じですね、今は。
大津 ピッチャーに関しては、やっぱり、先発はこの人、とか、リリーフならこの人、だとか、役割が多分決まってなかったので、調子が良い投手をここで使う、という、付け焼刃というか、そういう感じだったので、自分の役割をあまりわからずにそれぞれが投げてしまったのかな、という感じです。
――今年投手リーダーを務める古賀湧也(スポ4=佐賀西)投手はどのような方ですか
福川 今、ピッチャーは多く、まとめるのがすごく大変だと思うんですけど、頑張ってまとめようとしてくれているので、すごいありがたいですし、そういう所は見習っていかなければいけないな、と思います。あとは、同じスポーツ科学部で、トレーニングのやり方などをわかりやすく教えてくれるので、個人的には嬉しいです。
大津 古賀さんは、なんか、あまりピッチャーらしくないというか、あんまりガツガツしていない方なんですけど、ピッチャーリーダーとして、メニューを組んだり、そういう役割をこなしてくれている先輩だと思います。
「タメ語だったら(関西弁も)出るんじゃないですか(笑)。」 (福川)
バイト先は焼き鳥屋だという福川
――野球を始めたきっかけを教えてください
福川 大きなきっかけはないんですけど、昔から親がテレビで野球を見ていたので、(その影響で)自然と野球をしていた感じです。
大津 自分はお兄ちゃんがいるのですが、その兄が野球をやっていて、それをどこかで見たことがあって、自分の小学校の野球部に体験に行って、楽しそうだったので始めました。
――早大の準硬式野球部に入ったきっかけは何ですか
福川 準硬式野球部は硬式野球(野球部)と違って練習時間が短くて、野球以外にもいろいろする時間がなくはないので、大学生活をいろいろなことをする四年間にしたいと思い、自分が大好きな野球をしつついろいろな経験のできるこの部活が良いかなって思いました。
大津 自分は今言った「選択肢が多い」っていうのも1つですし、ずっと強いチームでやりたいなって思って野球をやっていたので、全国レベルの高校である早稲田実業の硬式野球部出身の人とかもいる、と聞いてそういう人たちと一緒に野球をやってみたいなって思ったのも1つです。
――今年は甲子園が第100回大会ですが出身地の地方大会や母校の結果は見たりしますか
福川 そうですね、自分の高校(兵庫・白陵高)はすごく弱かったので、とりあえず初戦突破してくれるかどうかをちゃんと見ていました。今年勝っていたのでうれしかったです。
大津 自分は高校時代、軟式野球部だったので、硬式をやって甲子園を目指すっていうのをしたことがありません。なので、高校野球を見ていると憧れというか、やっておけば良かったなっていう後悔が高校卒業してから2年間見ているとありますね。
――福川選手は兵庫県出身ということですが、甲子園の観戦に行ったことはありますか
福川 1回だけ、兵庫県代表が滝川二高だった時に見に行って、兵庫県はホームなのですごく応援も楽しかったし、球場の雰囲気がプロ野球の観戦の時と全然違うなって思いました。
――お二人の趣味を教えてください
福川 最近は友達とかを呼んで映画を見たりしています。
――どんな映画を見ましたか
福川 泣ける映画であったり、怖い映画であったり、まあいろいろです(笑)。
大津 自分も最近は時間があるので、昔の映画を借りて見たりしています。
――おすすめの飲食店はありますか
福川 ちょっとした飲み会とかよくあるんですけど、所沢駅の近くに餃子のダンダダン(肉汁餃子製作所ダンダダン酒場所沢店)ができて、行ってみたらおいしかったので、そこはこれからも行きたいです。
――飲むのは所沢キャンパスの最寄り駅である小手指ではなく、所沢なんですね
福川 小手指は何もないですね。
――大津選手はいかがですか
大津 地元にはせ川って焼肉屋さんがあって、めっちゃ地元なんですけど(笑)、そこめっちゃうまいです。
――お二人は何のアルバイトをされていますか
福川 焼き鳥屋さんです。
――焼き鳥は好きなんでしょうか
福川 焼き鳥好きです。
大津 焼き鳥好きなの
福川 そりゃ好きだろ、みんな好きだよ。だから食ってんだよみんな(笑)。この前鳥貴族行ったんですけど、めっちゃ食って(笑)。みんななんですけど。
――好きな焼き鳥のメニューはありますか
福川 砂肝ですね。
大津 頼んでたなー(笑)。そういうことだったのか。知らなかった。
――大津選手はアルバイトはされていますか
大津 バイト・・・、バイトっていうのかな、母校の、説明が難しいな、チューターっていうんですかね、自習室管理みたいな。
――大津選手は宝仙学園理数インターのご出身ですが、理数インターとは具体的に何をされているのでしょうか
大津 それ(笑)。それは、高校名なんですけど、正式の。理数インターってことで理数系が多いのかなって、まあ理系のほうが人数的には多いんですけど。
――大津選手は文化構想学部ですよね
大津 自分全然文系なので(笑)。自分5期生で、新しいんですよ。だから名前ちょっと奇抜にして、生徒集めたいのかなっていう(笑)、そういうのだと思いますね。
――好きな芸能人はいますか
福川 テレビで見てて、出てきてうおってなるのは広瀬すずさんですね。
大津 好きなお笑い芸人で、天竺鼠っていうのがいるんですけど、と言ってもわからないですよね(笑)。
――名前はわかります。
大津 まあそれなんですけど、そんな感じですね。
――福川選手は普段関西弁を使うと聞きましたが、いかがですか
福川 タメ語だったら。先輩に対して関西弁とか出せないし。タメ語だったら出るんじゃないですか。出とる?
大津 「出とる?」って(笑)。それが出てるから。「出てる?」だから(笑)。
福川 いいツッコミ(笑)。
夏は飛躍を誓う
仲良く話す二人
――清瀬杯の位置付けは
福川 関東大会と春のリーグ戦と2つともチームのためになれていないので、清瀬杯こそは力になったぞ、と誰もが思えるような活躍をしたいです。
大津 人生初めての全国規模の大会なので、やはり名だたる高校出身の選手がいると思うんですけど、そういう人を1人1人倒していければ良いと思います。
――今のご自身の課題を教えてください
福川 山ほどあって、まず、フォームが安定していないので、フォームを固めて、それからやはりとりあえずはどの球種でもある程度狙った所に投げられるコントロールを身に付ける事が今1番大事だと思います。
大津 課題は多いのですが、先輩にも言われた事なのですが、マウンドに立つと気持ちが上がってきてしまい、逆にそれが空回りして、失投につながったりだとか、というのが度々あるので、冷静さを失わないような心持ちで投げられていない事が課題ですね。
――初戦は近大でしたが、トーナメント表をご覧になっていかがでしたか
福川 そうですね、近大です。相手の実力がまだ良く分からないので、強い相手であると想定して、自分がどれだけ大会までに調整していけるか、成長できるか、が大切だと思いました。
大津 お互いに(早大と近大は)知らない相手なので、データなどもほとんどないですし。本当に実力勝負になると思うのですが、自分のできることをしっかりとやっていきたいです。
――今のご自身のアピールポイントを教えてください
福川 やはり、ストレートのスピードというよりは、打者が思っているよりもノビてくるボールというのを意識しているので、分かっていても捉えられないストレートというのを、まだ完成してはいないのですが、それが自分の1番のアピールポイントだと思います。
大津 物怖じしないというか、ピンチの時もあまりピンチだと感じた事がないというか。そこですね。
――最期に今後に向けての意気込みをお願いします
福川 大学で野球をやるのが最後になると思うので、可能な限り上達したいと思っています。無駄な時間を過ごさないように、意味のある練習を積み重ねていきたいです。そして、高校の時からあまり試合では勝てていなかったので、惜しいところまでいって良し、とするのではなくて、しっかり勝てるピッチャーになりたいというのが今の自分の1番強い気持ちなので、これからも大事な試合で勝てるようにしていきたいです。
大津 自分は、四年間ケガをせずに投げきる事が目標ですね。3、4年生の時にピッチャーの中で柱と言われるようなピッチャーになりたいと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 金澤麻由、池田有輝)
明るく、謙虚なお二人でした!
◆大津杜都(おおつ・もりと)(※写真左)
1998年(平10)年6月4日生まれ。178センチ、65キロ。A型。東京・宝仙学園高出身。文化構想学部2年。投手。右投右打。宝仙学園理数インター出身ながら、戸山キャンパスの文系学部に在籍する大津選手。高校までは硬式ではなく、軟式野球部に所属していたそうです。軟式出身の選手は硬式と比べ少ないのですが、皆さんご活躍されているのが特徴です。大津選手のこれからにもご注目下さい!
◆福川千明(ふくかわ・ちあき)(※写真右)
1998(平10)年7月1日生まれ。176センチ、70キロ。A型。兵庫・白陵高出身。スポーツ科学部2年。投手。右投右打。「最近、僕の口癖だったらしいのですが、やばいっしょ、ってのが先輩方の間で流行りつつあるので、もっと流行らすためにも試合ではやばいっしょと言ってもらえるような凄まじいピッチングを披露できたらいいなと思っています」。頑張ってください!