駒田主将が流した涙 29年ぶりの日本一ならず

準硬式野球
TEAM
甲南大
早大

 まさに雌雄を決する一戦。29年ぶりの『日本一』へ負けられない戦いが続く早大は、甲南大との準決勝に臨んだ。2回、1死二塁と絶好の場面で7番・木藤俊英(スポ3=愛知・時習館)の右前にポトリと落ちる適時打で幸先よく先制。6回まで3安打1失点と奮投していた先発の河合亮太(スポ3=茨城・茗溪学園)だったが、7回に一挙4点を失う。その後も反撃の糸口をつかめなかった早大が5-1で敗れ、無念の準決勝敗退となった。

 球審の腕が勢いよく上がった。駒田開主将(スポ4=福岡・修猷館)の手からバットがスルスルと落ちていく。試合終了。この瞬間、選手たちの壮大な夢物語が幕を閉じた。最終回の攻撃。2死と追い込まれた早大は、途中出場の橋口寛(スポ3=岡山城東)が執念の中前安打で出塁する。早大ナインは駒田主将に全てを託した。結果は、見逃し三振。駒田主将は静かに打席を後にした。駒田主将で始まり、駒田主将で終わる。あふれんばかりの涙をユニフォームの袖口でぐっと拭い、相手校とのあいさつへと向かった。

この試合の最後の打者となった駒田主将

 あと1本が出なかった。今大会攻守にわたって存在感が光った栗田拓磨(人4=茨城・水戸第一)も「それが全てだと思います」と悔しさをにじませる。早大の総安打数は11本。甲南大のそれより2本上回った。6回、先頭の上野雅之(スポ4=県立岐阜)、続く嘉悦崇将(人4=大分上野丘)の連打で好機を広げる。ところが、5番・栗田がまさかの三邪飛。6番・南貴文(スポ3=兵庫・加古川西)が打った三ゴロの際には、三塁走者の上野が本塁を狙うも相手の好守に阻まれタッチアウト。本塁が、遠い。早大はきょうだけで本塁刺殺が3つと相手の鉄壁の守備に泣かされた。

7回に相手打線に捕まった河合

 「このチームで日本一を目指してこれて良かった」。試合直後とは打って変わり、インタビューのときはすがすがしい笑顔でこう答えた駒田主将。惜しくも全日本大学選手権優勝という頂には手が届かなった。しかし、このチームが『日本一』だと見る者すべてに思わせる不思議な魅力が早大にはある。今週末には東京六大学秋季リーグ戦が開幕する。最高の笑顔で、最高の結果を。敗戦の悔しさはもういらない。

(記事、写真 小川朝煕)

★届け、この思い

 試合に出なくてもチームのためにできることがある。三塁側の早大アルプス。そこにはリコーダーやメガホン、エンジ色の応援旗など自前の応援グッズを持つ選手たちの姿があった。アカペラではあったものの、甲子園の定番の応援ソングからNHKの朝ドラ「あまちゃん」のオープニングテーマまでメンバーに合わせたオリジナルの歌詞で試合を盛り上げた。惜しくも試合の勝利につながることにはならなかったが、その熱い思いは選手たちの背中を押してくれたに違いない。ベンチとスタンド。チームの『一体感』が感じられる一コマだった。

スタンドからの声援がメンバーを盛り上げる

コメント

駒田開主将(スポ4=福岡・修猷館)

――惜しくも準決勝敗退となってしまいましたが、きょうまで4日間続いた今大会の総括をお願いします

まあ三回戦までは無失点に抑えてリードを許す場面がなかったので、きょうの試合で初めてリードを許す場面ができてちょっと焦ったとこがあったかなと。そのあたりキャプテンの自分が声をかけて焦らずに目の前の1点にこだわることができたらなと思います。ちょっとそこだけ後悔しています。

――きょうは総安打数が相手よりも多い11安打だったわけですが、1点にとどまってしまった攻撃について振り返ってみていかがでしょうか

そうですね。チャンスで1本が出ないっていうのは課題の一つだと思いますし、それが全日本(全日本大学選手権)で出てしまったなと。早めにそこをつぶしておかないといけなかったんでしょうが…。でもこればかりはしょうがないかなと思いますね。みんな気持ちが入っていたうえで空回りしたことなので。でも気持ちが見えたことが非常にうれしかったですし、あとはほんとにキャプテンとしてその気持ちをうまく抑えられればなと反省しています。

――全く思い入れが違うと思うのですが、3年前の全日本大学選手権でのベスト4と今回のベスト4を比べるとどういった違いがありますか

あのときも4年生を中心にいいチームができていたと思うんですけど、あの当時は何とか先輩たちのためにっていう思いでやっていました。ことしは今までの悔しい気持ちを結果で残したいなと思っていて。ただほんとにその分ここで負けたのが悔しいですね。やり直しが利かない一発勝負なので仕方ないんですけど。悔しいですね。ほんとに。

――試合終了後は駒田さんも涙を浮かべていたと思うんですけど、ベンチに帰ってからは畑中監督(秀之、平元教卒=和歌山・耐久)と笑顔で握手を交わしておりましたが、それは自然と感謝の思いが行動に表れたということでしょうか

こういうとき4年生は意外とすがすがしく「よくここまでやってきたな」という思いになるんですけど、負けて後輩たちが泣いていると当然こっちも悔しいし、やることはやったかなという気持ちがあるので笑顔になれたのかなと思います。

――きょうも緊迫した試合展開でしたが笑顔になれたということは楽しんで野球をできたということですか

そうですね。楽しんで野球ができたと思います。このチームでできて良かったというか。このチームで日本一を目指してこれて良かったなと思います。

――9回裏の攻撃のときでもベンチ、スタンド一体となって盛り上がっていたと思うのですが、最後ミーティングでどういった言葉をメンバーの皆さんに掛けたのでしょうか

この大会始まる前に全日本(大学選手権)を経験している4年生が今までの経験を結果で残すということで新チームが始まって、それを残せなかったことが本当に申し訳ない、と。後輩たちにはまた来年以降頑張ってほしいということを話しました。

――今週末からはまたリーグ戦が開幕しますがチームをどういった方向に持っていこうとお考えでしょうか

今は終わったばっかりでこれからのことについてあんまり考えることができないのですが、4年生にとっては最後になるので悔いが残らないように自分たちらしく一球一球楽しく野球ができればいいのかなと思います。あとは3年生には来年最終学年になるのでもっとチーム作りに主体的になってもらいたいなと思いますね。

栗田拓磨副将(人4=茨城・水戸第一)

――決勝進出をあと一歩のところで逃してしまいました。きょうを振り返って

再三チャンスはあったんですけど1本が出なかった。それが全てだと思います。

――チャンスであと1本が出なかった印象ですが

打つべきボールを打てていなかったり、簡単に行き過ぎていたかなと思います。

――相手の香川投手(甲南大)も非常に気合が入っていたように感じましたが印象はいかがでしたか

ストレートは速いっていうのは聞いていたんですけれど、その通りで。それプラス気合もあって、気持ちの面で負けていたのかなと思います。

――その中で栗田選手は2安打を放ちました

チャンスメイクの役割はできたんですけれど、クリーンナップを任されている以上はやっぱりチャンスで1本打ちたかったので。そこは悔いが残っています。

――全日本大学選手権での優勝、そして五冠を目指して臨んだ今大会だと思うのですが、ここで敗退ということでチームとして足りなかった部分はあると感じましたか

やるべきことは全部やってきたつもりで、臨んだつもりではあったのですけれど、負けた以上は何かが足りなかったというわけなので。いまはちょっとそれが何かというのはなかなか思いつかないですけど。それを見つけて潰していかないといけないなと思います。

――ベンチやスタンドからの声援も日を追うごとに大きくなっているように感じました。そういった存在は力になりましたか

本当に大きくて。うちの武器の一つだと思っています。

――チームもどんどん一つになっているように感じました。この大会でチームワークというのは強くなりましたか

そうですね。試合に1つ勝つごとにどんどんベンチの中もメンバー外も一つになっているなというのは実感していたので。これを継続していけるようにしていきたいです。

――この敗戦を切り替えて次は秋のリーグ戦(東京六大学秋季リーグ戦)が待っています。最後に意気込みを聞かせてください

経験というのはもう十分してきたので。あとは残すのは結果だけなので。本当に全日本(全日本大学選手権)優勝しようと思ってきたのですけれどそれができなかった以上は次のステージでぶつけるしかないので。秋は全勝で優勝したいなと思います。