全日本学生馬術大会 10月28日〜11月1日、東京・JRA馬事公苑
※掲載が遅れてしまい、申し訳ありません

学生ナンバーワンが決定する大一番、全日本学生馬術大会(全日本学生)が、今年は都内のJRA馬事公苑で開催された。歴代、強豪校である日大や明大がタイトルを総なめしてきた今大会。早大は過去に賞典馬場馬術競技大会(賞典馬場)や賞典障害馬術競技大会(賞典障害)での優勝があったが、いまだ賞典総合馬術競技大会(賞典総合)と3種目総合では優勝経験がなかった。しかし2022年に3種目総合で初めて2位に食い込むと、その2年後も準優勝。栄冠はいよいよ手の届く場所に見えてきた。そして今年の早大は総合個人3連覇中の絶対的エースである細野光(スポ4=東京・桐朋)をはじめ、各大会で安定した結果を残し続けている中島妃香留主将(スポ4=茨城・水戸葵陵)や中田仁菜(スポ2=東京・東農大一)といった実力者がそろう強力な布陣。創部100年を前に悲願の賞典総合優勝、そして3種目総合優勝へ。選手たちは髪をエンジ色に染め、心を一つに5日間の戦いに臨んだ。賞典障害や賞典馬場では苦戦を強いられた場面もあったが、賞典総合では各人馬がその実力を遺憾なく発揮。3組が個人7位以上に入る活躍で、ついに賞典総合団体初優勝の快挙を成し遂げた。また、3種目総合では頂点に届かずも、3度目となる準優勝を飾った。
本大会は5日間にわたり、初日はMD障害馬術競技大会(MD障害)と賞典障害の第1ラウンド、2日目は賞典障害の第2ラウンドと第3課目A馬場馬術競技大会、3日目は賞典馬場、4日目は賞典総合の馬場馬術競技と賞典馬場の個人決勝、最終日は賞典総合のクロスカントリー競技と賞典総合の障害馬術競技という日程で行われた。団体戦は賞典馬場、賞典障害、賞典総合の3種目で争われ、各大学の出場人馬のうち上位3組の成績によって団体成績が決まる。
大会初日の午前に行われたのはMD障害。この種目には早大から植本裕尊(人4=東京・筑波大付属)とイリス、西岡弘稀(スポ1=三重・高田)とジョルジオ・アルマーニの2組が出場した。植本とイリスのコンビは、1つ目の障害から馬が反抗。さらに3つ目の障害でも反抗があり、2反抗で失権となった。西岡とジョルジオ・アルマーニは落下を1つにとどめ、総減点4で4位の好成績を残した。

障害を飛越する西岡とジョルジオ・アルマーニ
1日目から2日目にかけて行われた賞典障害には中田と稲恋、細野とジャズデミュリエール、中島と稲叶の3組が出場。初日の第1走行、中田と稲恋は中盤の3連続障害で2つの障害を落としたが、規定タイム内で走り切り総減点8となった。コンビ歴1年の細野とジャズデミュリエールは「馬のポテンシャルを出してあげられた」と見事クリアラウンド。早大3組目の中島と稲叶はこの種目で準優勝の実績を誇り、今回も満点走行を期してスタートしたが、「稲叶が苦手なトリプルの障害をカバーしきれ」なかったと、まさかの2落下。それでも団体では1位に4点差の3位につけ、優勝への望みを残した。翌日の第2走行は、前日の成績上位人馬が最後に登場するリバースオーダー。早大からはまず中田と稲恋がスタートした。馬がケガ明け直後というコンディションの中、少しでも減点を抑えたいところであったが、「踏み切りを合わせることができなかった」と落下が相次ぐかたちに。続いて、昨日落下があった中島と稲叶はしっかりと修正し、タイム69・73、総減点0でゴールした。ラストの細野とジャズデミュリエールは序盤順調な走行を見せるが、難易度の高いトリプルの障害で惜しくも1つ落下。その後はミスなく走り切り、総減点を4とした。第2走行まで終了し、早大の総減点は36。この日団体で減点わずか4という成績を見せた関大に逆転を喫し、早大は団体4位に終わった。しかし個人では細野とジャズデミュリエールが5位、中島と稲叶が8位入賞を果たした。

障害を飛越する細野とジャズデミュリエール
3日目の賞典馬場も、賞典障害と同じ3人が出場。中田はココドロと、中島はブリタニア7と、細野はフィロソファーとそれぞれコンビを組んだ。中田とココドロは、途中まで得点率約64%を記録。最後は得点率を落とし、「練習を積んできた分すごく悔しかった」と自身の演技を振り返った。中島とブリタニア7は大会直前に組むことが決まったコンビ。動きの硬さやミスは見られたが、人馬で心を合わせて演技を披露した。全出場者の中で最後に登場したのは細野とフィロソファー。このコンビも大会直前に組まれたが、積極的な演技で65%近い最終得点率をマークした。中田のコンビは23位、中島のコンビは17位、細野のコンビは8位の成績を収め、合計得点率186・593%で団体成績は5位となった。また、細野は上位10組で争う翌日の個人決勝に進出。個人決勝は前日の規定演技とは異なり、各選手が馬の得意な経路を自由にデザインし、音楽に合わせて演技する。細野とフィロソファーは弾むようにダイナミックな演技を披露。ミスが続き個人順位を2つ落としたが、「今自分たちの出来るベストで楽しんで」演技することができたと語った。
賞典障害や賞典馬場で満足な結果を残せないまま、最終種目の賞典総合が開幕した。同じ人馬で馬場、クロスカントリー、障害を行い、その総減点で順位が決まるこの種目。早大からは加藤凱也主務(法4=埼玉・早大本庄)も戦力に加わり、4組の人馬が出場。状態のいい馬をそろえ、充実の戦力で勝ちを狙った。4日目の朝、最初の競技である馬場が行われた。早大の1組目は中島とデクスター。息の合った伸びやかな演技で68・33%の得点率を記録する。続いて加藤と稲絹のコンビも「すごくいい始まり方ができ」たとリズムよく演技し、得点率は60%を上回った。流れに乗り、中田とTHムーシェ、細野とジャズデミュリエールも70%に迫る高い得点率をマーク。上位3組が個人7位以内の成績を残した早大は、日大などの強豪校を抑えて暫定トップに躍り出た。迎えた大会最終日、朝の清々しい秋晴れの下でクロスカントリーがスタート。早大で1番出走を切った馬場5位の中島とデクスターは、出場者の中で2番目に速いタイムでコースを駆け抜ける圧巻の満点走行を見せ、個人順位を1つ上げた。加藤と稲絹も中盤まで順調に障害をクリアしていったが、水濠の手前の障害で馬が反抗。再び飛越を試みたが2度目も反抗し、加藤と稲絹はここで失権となった。3走目の中田とTHムーシェはタイム減点を2・4とし、暫定10位に。細野とジャズデミュリエールは規定タイムをわずか2秒超過したが、上位を維持。おのおの実力を発揮するも、この競技では日大が王者の意地を示し、早大は馬場との合計減点約2点差で日大にリードを許した。そして同日午後行われた最終競技の障害。運命は中田、細野、中島の3組に託された。先陣を切ったのは中田とTHムーシェのコンビ。「(馬が)最後まで助けてくれた」と、1つも障害を落とさず満点で走り切った。細野とジャズデミュリエールも、中田のコンビに続き減点0。障害を得意とする中島を残し、優勝への視界は良好となった。チームメイトが祈るように見守る中、中島とデクスターがスタート。実力どおりすべての障害をクリアし、満点でゴールラインを駆け抜けた。ラストで3組とも会心の好走を見せ、早大はこの競技で団体唯一の減点0。日大との点差を逆転し、賞典総合で史上初の団体優勝をつかみ取った。個人では中田とデクスターが準優勝、細野とジャズデミュリエールが3位、中田とTHムーシェが7位と華々しい成績を残した。賞典総合をもって本大会の全種目が終了。3種目総合では、優勝こそ逃したものの2年ぶりの準優勝を果たした。

演技を披露する中田とTHムーシェ

水濠障害を飛越する中島とデクスター
来年で創部100年を迎える早大馬術部の長い歴史に刻まれた新たな1ページ。悲願の栄冠に、細野は「最後にチームで勝っていい結果を残せたのはとても幸せ」と喜びをかみしめた。来年は大エースたちが抜け、新しい体制での挑戦が始まる。しかし後輩たちにとっても今回の優勝の景色は忘れられないものとなったはずだ。この快挙を足掛かりに、早大馬術部は次なる歴史を切り開いていく。

ウイニングランでWポーズを見せる中島(写真左)と細野
(記事 田邉桃子、写真 大竹瞭、川田真央、田邉桃子)
結果
▽MD障害競技大会
4位 西岡、ジョルジオ・アルマーニ タイム減点0 障害減点0 総減点4
植本、イリス E
▽3種目総合
準優勝 早大
▽賞典障害馬術競技大会
団体4位 早大 43ポイント
個人5位 細野、ジャズデミュリエール 総タイム149・35 総減点4
個人8位 中島、稲叶 総タイム142・19 総減点8
個人22位 中田、稲恋 総タイム151・90 総減点24
▽賞典馬場馬術競技大会
団体5位 早大
個人8位 細野、フィロソファー 最終得点率64・852%
個人17位 中島、ブリタニア7 最終得点率61・482%
個人23位 中田、ココドロ 最終得点率60・259%
▽賞典馬場馬術競技大会個人決勝
10位 細野、フィロソファー 最終得点率63・200%
▽賞典総合馬術競技大会
団体優勝 早大
個人2位 中島、デクスター 馬場減点31・7 クロスカントリー減点0・0 障害減点0・0 3種目総減点31・7
個人3位 細野、ジャズデミュリエール 馬場減点31・3 クロスカントリー減点0・8 障害減点 0・0 3種目総減点32・1
個人7位 中田、THムーシェ 馬場減点32・2 クロスカントリー減点2・4 障害減点0・0 3種目総減点34・6
加藤、稲絹 E
コメント
中島妃香留主将(スポ4=茨城・水戸葵陵)
ーー3種目総合は団体2位、総合は団体初優勝を飾りました。チームとして今大会を振り返っていかがですか
今回私たちの代にとって最後の全日本学生ということで、少し前の時期はトラブルもありましたが、10月の間選手と部員みんなで一丸となってこの大会に向かってくることができました。最初賞典障害と賞典馬場が少しうまくいかない中ですごく不安が募っていましたが、一番馬がそろっている賞典総合で結果を残すことができて、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。
ーー以前はチーム状況への不安を口にしていました
今回はみんなの意識が一つになっていて、しっかり3種目総合の優勝を狙えました。いい状態でスタートを切れました。
ーー個人として出場した各種目を振り返っていかがですか
まず賞典障害について、私は障害が一番得意で、稲叶とは一昨年も準優勝していて、今年も当然2日間満点でジャンプオフに行くと思っていました。ですが稲叶が苦手なトリプルの障害をカバーしきれず2つ落下してしまった時、私の全日本学生はここで終わったんだなと、すごく悔しい思いをしました。馬場は 1週間前に急きょコンビが変わり、すごく難しい馬で全く乗りこなせませんでした。あまり状態も良くない馬でしたが、1週間という短い時間でとにかく仲良くなることを意識して、ずっと声をかけながら一緒に時間を過ごしました。とりあえず無事に演技を終えることができ、結果は良くありませんでしたが、自分では納得しています。
ーー来月の早慶戦への意気込みはありますか
この後学生戦を1回挟んで、早慶戦で私たちの代は引退になります。早慶戦が最後の試合なのでいい終わり方をできるように、全種目早稲田が勝つつもりでこれからまた1カ月間下級生の指導に力を入れながらトレーニングしていきたいと思います。
細野光(スポ4=東京・桐朋)
ーー個人総合4連覇はなりませんでしたが、チームとしては初優勝を果たしました
今まで個人で3連覇してきて、ここまで来たら4連覇したいと思っていました。結果的には3位でしたが、チームは勝つことができました。勝った瞬間は今まで味わったことのないような喜びでした。自分より後の出番だった中島が減点0だったら優勝という場面は、いつも自分が味わうことのない緊張感で新鮮でした。個人は負けてしまいましたが、やり切ったという達成感はあります。
ーーご自身にとって最後の全日本学生を終えて今のお気持ちはいかがですか
今まで個人で賞典総合3回、賞典馬場1回の合計4回優勝しましたが、最後にチームで勝っていい結果を残せたのはとても幸せなことだなと思います。これは学生生活最後の贈り物であり、みんなが頑張った賜物として勝てたことは率直にうれしいです。
ーー出場された各種目を振り返っていかがですか
賞典障害は馬がフレッシュすぎて調整に苦労しましたが、競技本番はまとめることができました。2日目で1つ落としていなければもっといい結果が残せたと思うので、納得はしていませんが、馬のポテンシャルを出してあげられたことは良かったと思います。賞典馬場は、直近で出ることが決まったコンビだったので、うまくいくか不安もありました。細かいミスは少なからずありましたし、決勝ではミスが続いて順位を落としてしまいました。ただ、今自分たちの出来るベストで楽しんでいこうということで後悔はしていません。
ーーミスが続いたあとの気持ちの切り替えはどうされましたか
賞典障害で5位、賞典馬場で簡単なミスをしてしまったなど悔しいことはありました。ですが、チームとして勝つことが自分たちの最後の目標で、それに向けてオーダーを組んでいました。悔しい日もありましたが、切り替えて最後まで集中していました。
ーー閉会式後にチームメイトから胴上げされました
気持ちいいですね。生まれて初めてされました。
ーー今後への意気込みをお願いします
大学生としては早慶戦が残っているので、勝ち切って気持ちよく引退したいと思います。自分は今後も競技を続けるので、努力して社会人になっても活躍できるライダーになりたいです。
中田仁菜(スポ2=東京・東農大一)
ーー大会を終えて今のお気持ちはいかがですか
賞典障害と賞典馬場はあまり結果で貢献することができませんでしたが、賞典総合では、7位という成績を残すことができてうれしいです。
ーー3種目全てに出場し、総合では見事な活躍で団体優勝に貢献されました。各種目を振り返っていかがですか
賞典障害は馬がケガ明け1週間で出場して、練習時間がない中で本当に頑張ってくれました。自分が踏み切りを合わせることができなかった結果落下が多かったですが、馬がすごく頑張ってくれて、感謝しています。賞典馬場は練習を積んできた分すごく悔しかったですが、途中まで平均64%くらい出せて、最後で結構落ちてしまいましたがそれまでは練習の成果を出せたと思います。ですが願はくは63%くらい取りたかったので、少し悔しい部分もあります。賞典総合は、THムーシェが自分の力不足を補ってくれるすごい馬なので、馬場もクロスカントリーも障害も全部馬に引っ張られながらというかたちになりましたが、本当に最後まで助けてくれて、そのおかげで7位をとることができてうれしいです。
ーー今後への意気込みを聞かせてください
私は最高学年にはなりませんが、4年生の上手な先輩たちが抜けて、競技面では引っ張っていくことが多くなると思うので、後輩や同期のお手本のような選手になりたいと思います。
加藤凱也主務(法4=埼玉・早大本庄)
ーー大会を振り返って今の率直な気持ちを聞かせてください
自分は総合に出させてもらって、結果的にはクロスカントリーで失権してしまいましたが、初日の馬場では自分が目標にしていた60%を超えることができて、すごくいい始まり方ができました。クロスカントリーも、馬は雰囲気もよくて頑張ってくれたのですが、水濠に入るところで止まってしまって、自分自身はとても悔いが残る結果になりました。その後残り3人の障害のときには祈るような気持ちでどうにか優勝してほしいと思っていました。
ーー初めての総合団体優勝を受けていかがですか
自分たちは3種目総合で勝つことを目標にしていましたし、その中でも当然賞典総合で結果を出すことを目標にしていました。中島と細野と中田の3人はとても尊敬する選手たちですし、頑張ってくれてうれしかったです。
ーー早慶戦が引退試合となります
早慶戦が最後の試合になるので、そこでもまた総合優勝することを目標に、どの種目に出ることになってもその中で結果を出しつつ、早稲田の勝利に貢献できるように頑張っていきたいと思います。