東京六大学野球秋季リーグ戦の早慶戦を前に行われる稲穂祭。早慶戦の前夜祭として、早稲田大学の早慶戦勝利を祈願する欠かせない儀式である。早慶戦120周年の年に行われ、節目の70回目を迎えた稲穂祭。平日の夕方に開催され授業後の学生、早慶両校のOB、そして応援部に所属している高校生。多くの観客が大隈記念講堂に集った。最後まで「打倒慶應」の熱気を大隈講堂全体に感じさせたステージとなった第70回稲穂祭。応援部の勇志を振り返っていく。
18時30分。講堂の照明が落とされると注目は一気に舞台上へ。舞台上に現れたのは「華の旗手」を務める間垣皓介旗手兼新人監督(スポ4=宮城・仙台一)。『昇り竜』と呼ばれる左右に大きく振りながらの迫力満点の校旗掲揚で稲穂祭の始まりを告げる。そして、今年度の稲穂祭実行委員長を務める井原遥斗学生動員対策責任者兼稲穂祭実行委員長(教4=埼玉・熊谷)が挨拶を行い稲穂祭の幕開けとなった。第一部はサークルコラボステージである。『放送研究会』の司会により、第一部が進んでいく。冒頭では、各サークル団体による野球部への応援メッセージ動画が流れ、その後にサークルコラボ応援曲メドレーが始まる。応援曲に合わせて、各サークルがパフォーマンスを披露し、盛り上がりを見せる。そんな中、間垣が学注(学生注目)を披露。「早稲田を応援するのは応援部だからじゃない。早稲田が大好きだからだ!サークルや応援部は関係ない、みんな勝ちたい気持ちで繋がっている!」と勝利への決死の思いを伝える。早稲田の第一応援歌『紺碧の空』のテクを振るリーダーの後ろではパフォーマンスを見せたサークルのメンバーが肩を組んで『紺碧』を歌う。その後は体育各部による野球部への応援メッセージ動画も流れた。間垣の言う通り、活動する場所は違えど、早稲田を応援する気持ちで繋がっていることが現れたシーンであった。
第一部のサークルコラボステージにて、『一丸』を強調する間垣
第二部では早稲田大学応援部と慶應義塾大学應援指導部による応援合戦が始まる。始めに、両校の校旗が舞台上へ入場。『早稲田の栄光』に合わせて舞台上に掲揚されたのは最も雄大で最も力強いといわれる新前川旗が堂々と入場をする。続いて、慶應義塾の塾旗が掲揚される。稲穂祭で入場した塾旗は最も秀麗で、最も鮮やかであるとされている慶應義塾新世旗だ。両校誇りの校旗が舞台上に所狭しと並ぶ様子に、講堂は荘厳な空気に包まれる。続いて両校の応援歌が交互に披露される。『若き血』『紺碧の空』『我ぞ覇者』『ひかる青雲』が披露されると、『早慶讃歌』が両校の応援部、指導部により披露される。丸尾隆三郎リーダー庶務(商4=広島・尾道北)と村井祐樹(4年)の「早稲田の友と、慶應の友と」から始まる口上で歌が始まると両校の部員が肩を組んで斉唱。互いに「華の早慶戦」の健闘を祈った。第二部も佳境を迎えると、「慶應義塾大学チャンスパターンメドレー」がスタート。メドレー中に壇上が真っ青になる演出も見られ、会場のボルテージが上がる。これに対抗するように披露されたのは「早稲田必勝応援曲メドレー」だ。壇上のスクリーンでは、『勝利の讃歌』と共に、リーダー4年生の下級生時代の様子と現在の様子が映像で回顧され、宮下陽三代表委員主務兼連盟常任委員(社4=長野・屋代)が学注へ。既にボルテージが最高潮に達している観客席からは、宮下が出てきた途端に歓喜の声を上げる観客も多く、魅せる準備は整っていた。「早稲田必勝応援曲メドレー」ではお馴染みの応援曲が、リーダー執行委員7名が次々と登場し、テクを振る。終盤では井原の稲穂祭と早慶戦に懸ける思いと覚悟が伝わる学注で、秋の涼しさを感じる講堂内は熱気に包まれる。最後にリーダー執行委員7名による『コンバットマーチ』の突きを見せ応援合戦を締めくくった。
第三部では、野球部壮行会が行われた。野球部・熊田副将が「ともに慶應を倒し優勝の喜びを分かち合いましょう」と早慶戦への意気込みを語ると、永田新代表委員主将(教4=静岡・掛川西)から野球部にペナント、応援部からのメッセージが入ったユニフォーム、フォトモザイクアートを贈呈。「全早稲田と野球部が一体となった思いを早慶戦でよりいっそう近く感じられるように」と永田が熊田をはじめ野球部に熱い思いを込めて、贈呈が行われた。最後は永田を中心として、校歌を三番まで応援部、野球部、観客が愛校心のもと起立、脱帽の上腕を振り続けた。斉唱を終えると、大盛況のもと、第70回稲穂祭は幕を閉じた。
第一部から第三部まで、余すところなく応援の魅力を発揮した早稲田大学応援部。野球部の後押しはもちろんだが、「稲穂祭を通して一人でも多くのお客さんを早慶戦に呼びたい」と力強く井原が語ったように、エンジに染まった一塁側応援席がみられるかに注目だ。
(記事 橋本聖、写真 雲田拓夢、西村侑也、横山勝興)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません。
コメント
井原遥斗学生動員対策責任者兼稲穂祭実行委員長(教4=埼玉・熊谷)
―― 稲穂祭を終えての率直な感想をお聞かせください
正直ほっとしました。昨年の12月から稲穂祭実行委員長という役職を拝命して以降、この1日のために全て準備をしてきたので、正直なところを言うと、ほっとしているというのが一番大きいですかね。
―― 稲穂祭実行委員長としてどのようなお気持ちで当日を迎えましたか
色々なところで言っているのですが、稲穂祭は早慶戦前夜祭として、早慶戦に行ってみたいと思わせられるようなステージにしないといけないので、自分のテクであったり下級生の拍手であったり、太鼓であったり、出演に関係する全てが、そう思わせる要素になるように準備を徹底してきました。当日は、「これだけやってきたのだから、絶対に早慶戦に行きたいと思わせられるステージにできただろう」という気持ちを持って、朝を迎えました。
―― 学注に込めた思いを教えてください
早慶戦を優勝決定戦という好位置にしているのは野球部の努力のたまものであり、これだけ野球部がいい成績を残したということなので、早慶戦に行きたいと思わせて、その上で一緒に応援して野球部のために全力を尽くそうという一心で、学生注目をやりましたね。
―― 稲穂祭に来ていただいた観客や、早慶戦にこれから来るであろう観客の皆様にメッセージをお願いします
来てくださったことは感謝しかないです。でもやはり稲穂祭はあくまで前夜祭なので、「これから」なんですよ。学注でも言ったように、早慶戦で絶対に2連勝して、パレードを神宮から早稲田までして、それでようやくこの令和5年度が締めくくられるのかなと思うので、ぜひ稲穂祭のみならず、早慶戦にもお越しくださって、一緒に早稲田優勝の瞬間を見届けてくれたらと思います。