伝統の一戦で応援が本格復活! 内外応援席をエンジに染める!

応援

 ついに華の早慶戦がやってきた。令和元年秋季以来の一般応援席、学生応援席が復活した早慶戦。両校の応援席には格別な思いが詰まっていた。優勝の可能性こそ無くなっていたが、『打倒慶應』の目標は変わらない。応援席に参加した観客全員を巻き込み、熱狂の渦をつくり上げた応援部の勇志を振り返る。

 試合前の企画も、入念な準備のもと盛り上がりを見せた。試合前企画では、土曜日には観客参加型の早稲田クイズや早稲田の応援グッズ紹介が行われた。応援グッズ紹介では実際に観客にグッズをプレゼントするなどライブ感のある盛り上がりを見せた。日曜日はわーおくんとワセダベアの対談、吹奏楽団の楽器紹介や部員の特技紹介が行われた。部員の特技紹介では、『紺碧の空』の2番が終わるまでに、ルービックキューブを6面全て完成させるなど、部員が各々特技を発揮し観客席を盛り上げた。そして両日ともサークル団体のパフォーマンスが応援席で行われ、盛り上がりを見せた。さらに、チアリ―ダーズがダンス曲『パラダイス銀河』、4年生曲『笑っていたいんだ』、スタンツ曲『天体観測』を両日披露。OBとOGがメドレーを披露するOB、OG企画も両日開催され、現役とOB、OGの共演も見られた。盛り沢山の企画を分刻みのスケジュールを滞りなくこなし、会場を盛り上げる。コロナ禍で失われていた、「ワセダ」全体で早慶戦を盛り上げる空気が神宮球場に帰ってきた。また、試合直前では両校の応援部、應援指導部が相手側の応援席に移動し、陣中見舞いを行い、『早慶讃歌』の斉唱や応援曲メドレーを行った。慶應側の学注(学生注目)と早稲田側の司会の掛け合いなど早慶戦ならではの応援が行なわれていた。スタメン発表が行われると、校歌が演奏され、内外野の応援席にいる全員が愛好心のもと、腕を半月状に振り上げる。

開場直後から応援席を盛り上げるリーダー

 1回戦。初回からピンチを招くといきなり先制2点本塁打を浴び、宿敵相手に先制を許す。その後も序盤は毎回のようにピンチを招くなど苦しい展開であった。それでも、ピンチが訪れる度に、当番のリーダー3年生が主導のもと、客席が一体となって『スピンコール』で加藤孝太郎(人4=茨城・下妻一)にエールを送る。『スピンコール』に応えるかのようにピンチを切り抜けると早稲田に好機が訪れる。4回。永田新代表委員主将(教4=静岡・掛川西)の持ち回。「早稲田を勝利に導くぞ」と闘志を叫ぶ。2死からチャンスを作ると応援席には『コンバットマーチ』が鳴り響く。キレのある『コンバットマーチ』が届いたかのように、小澤周平(スポ2=群馬・高崎健康福祉大高崎)が同点に追いつく適時二塁打を放つ。走者が生還し、『紺碧の空』が応援席に響き渡る。互角の展開のまま、試合は終盤へ、7回。小野泰助副将兼リーダー練習責任者(文4=群馬・沼田)の持ち回。小野は、観客に内外応援席の応援が同じタイミングで同じ曲を演奏していることを観客に呼びかける。内外野の応援が共鳴し応援の声量が2倍となったその瞬間。代打・島川叶夢(スポ4=長崎・済々黌)の打球はレフトスタンドに放物線を描く。この日一番の盛り上がりを見せた『紺碧の空』が球場に響き渡った。この日初めての勝ち越しの展開を迎えた8回の守備。「大事なのは点を取った後の守備の応援」とコールリーダーが観客席に呼び掛けた。その言葉を裏付けるかのように、慶應に好機を作られ、1点を返される。慶應の応援席では『若き血』が流れるが、永田が学注を行い、さらに『ダイナマイトマーチ』を力強く披露。相手の第一応援歌をかき消すかのように、『ダイナマイトマーチ』を演奏し、流れを慶應に渡さない。そして、応援が届いたかのように危機を乗り越える。逆転のピンチを乗り越え、応援席では『紺碧の空』が高らかに響き渡った。応援席にいる全員が肩を組み、『紺碧の空』がフルで3回演奏され応援席が大きく揺れる。そして、響き渡る「慶應倒せ」コール。観客席が一体となっていた。そして、最終回。「抑えるには皆さん一人一人の声が必要」と司会が呼びかけ、アカペラの『紺碧の空』で選手たちを後押しする。内外応援席がエンジに染まり、『アウトコール』がワンアウトを取るごとに大きくなっていく。そして、「樹」コールが届いたかのように、伊藤樹(スポ2=宮城・仙台育英)が最後のアウトを取る。歓喜の声が応援席に響き渡る。そして、早稲田ナインの勝利を祝福するかのように校歌が流れる。両校の校歌が神宮球場に響き渡った後、セレモニーが行われた。『早稲田の栄光』では、間垣皓介旗手兼新人監督(スポ4=宮城・仙台一)と新人が指揮台に上り、勝利を讃えた。続いてリーダー練習責任者の小野が『伝統の勝利の拍手』で魅せる。早慶戦で勝利したときのみ行われる伝統技である。この、荘厳かつ重厚な拍手にセレモニーまで残っていた観客は息をのむ。そして、「勝ったぞ、勝ったぞ、早稲田」の文字切りで会場を盛り上げる。続いて、応援曲メドレー、『紺碧の空』を披露し、「明日も勝つぞ、早稲田」の文字切りから校歌を3番まで歌い切り神宮を後にした。 

学注で熱い言葉を贈る永田

逆転に成功し『紺碧の空』を歌う応援部

『伝統の勝利の拍手』を披露する小野

 続く2回戦。前日の勢いのまま、試合開始直後から、『紺碧の空』が響き渡る。試合開始のコールから、湧き上がる内外応援席に選手も注目する様子が見られた。そして、活況のまま応援曲『大進撃』が流れ、早稲田の攻撃を後押しする。得点こそ入らなかったが、内外野ともに、盛り上がりを見せ、2回戦が始まった。1回、2回と序盤から大量失点を許し、苦しい展開が続くが、逆転できる展開が来ることを信じ、声を張り上げる。「我々リーダーがつらい顔をしてはいけない」と永田が振り返ったように、逆転を信じて学注(学生注目)やキレのあるテクを披露する。そして、6回。久しぶりのランナーに早稲田の応援席は湧き上がる。『暴れん坊早稲田』『大進撃』が響き渡る応援席。盛り上がりを見せる応援に後を押されたかのように二死から中村将希(教4=佐賀・鳥栖)も安打で繋ぐと『コンバットマーチ』が鳴り響く。そして、熊田任洋副将(スポ4=愛知・東邦)が粘りながら適時打を放つと、この日初めての得点に、応援席が総立ちとなった。観客全員が肩を組み、『紺碧の空』を神宮球場に響かせた。そして、試合は最終回を迎える。序盤から、慶應に大幅なリードを許したこともあり、応援席も驚きを隠せない観客が多かった。それでも、永田が応援席に向かい声を張り上げる。「全員で肩を組んで『紺碧の空』を歌おう」と呼びかけ、『紺碧の空』をフルで2回演奏し、最後まで早稲田の反撃を信じる。残念ながら、試合は大敗に終わったが、観客も応援部と一体となり最後まで応援を続けた。観客の目の前まで行き、一人一人に目を合わせ話しかける下級生部員。そんな応援部の熱意が観客全員に伝染したからであろう。

『コンバットマーチ』を披露する間垣

 一般応援席、学生応援席が復活し、現役の応援部も経験したことがない、観客と一体になって応援が行われた早慶戦。そんな中で参加した全員が楽しめる応援を作り上げた応援部。3回戦に敗れ、宿敵相手に勝ち点こそ許す結果となった。それでも、応援部は今後、夏季合宿を乗り越えて、秋のリーグ戦(東京六大学野球秋季リーグ戦)にはさらにパワーアップし、勝利の凱歌を神宮球場に響かせる姿を見せてくれるに違いない。

※掲載が遅くなり、申し訳ございません。

(記事 橋本聖 写真 横山勝興)

コメント

永田新代表委員主将(教4=静岡・掛川西)

――応援席が復活して初めての早慶戦でしたが、どのような気持ちで応援に臨みましたか

 伝統の継承というところで使命感はあったのですが、それ以上に早慶戦というのは早大生にとっては「ワセダ」を実感できる場で、「ワセダ」を触れることができる重要な場所だと思っていました。コロナ禍で、早慶戦が3年間しっかりと行えなかったということを踏まえて、「ワセダ」をリードする応援部としては早慶戦でしっかり多くの学生を呼んで、「早慶戦ってこんな楽しいんだ」「早稲田大学に入ってよかったな」と思ってもらえることが大事だと思いました。そのため、そういうところで集客など最も基本的な部分を大事にしようと使命感を持ち、応援に臨みました。

――土曜、日曜と多くの観客が応援席にいらっしゃいましたが、何か感じたことはございますか

 早慶戦は内野、外野ともに満員になって感じたのは早稲田っていいなって感じたことでしたり、早稲田じゃないと早慶戦というところで慶應には対抗できないということを感じました。そして早稲田と慶應じゃないと早慶戦は作れないんだなということを実感しました。さらに、得点が入った時の『紺碧の空』、試合前、試合後の校歌など、そういったところで内外野ともに盛り上がっている様子を聞いて、早稲田の力はすごいなと4年生になって初めて感じる「早稲田の力強さ」です。

――試合前企画やセレモニーが盛り上がりましたがそちらに関しては振り返っていかがですか

 サークルの方々の力が本当に大きかったと思います。合間なく、間髪入れずに企画を入れることができて、早大生が作る早慶戦というものを意識していたので、本当にお世話になったなと思います。試合後のセレモニーも多くの人が見てくれていて、満足でした。

――慶應の応援に関して何か感じたものはございますか

  慶應義塾大学の学生は歌詞をすごくよく覚えているのが印象的でしたね。早大生が歌えない歌も慶應生は歌えるのかなと感じました。

――1回戦は応援が届いたかのような勝ち越し本塁打もありました。どのような心境でしたか

  1回戦は本当に(一般応援席、学生応援席が復活して)初めての早慶戦での舞台だったので、とにかく観客席を盛り上げようと思っていたので、実際に野球の試合が見られたのはほんのちょっとで、気づいた時には点が入っていて、本気で応援すると報われるのかなと実感しました。

――2回戦は苦しい展開が序盤から続いていましたが、応援で意識していたことはありますか

 絶対に苦しい顔をしない。そして苦しい雰囲気にしないということですかね。これはいつものことなのですが、負けていても、晴れていても、勝っても、雨でもどんな時でも楽しい応援席を作ろうということを意識しているので、今回も意識しました。やっぱり序盤の展開に面食らう部分はありましたが、それでも立て直して、楽しいと思ってもらえるよう応援をしました。

――3回戦はどのような思いで応援されていましたか

 3回戦は何でもやってやろうという気持ちでやっていました。とにかく負けられない。加藤さんが出てきて、早稲田にも勝ちが見えているし、慶應もいい選手がそろっていて勝ちが見えているという互角の戦いと思っていました。序盤から拮抗していて、相手の主将(廣瀬隆太)に1点取られてしまってという展開ではあったのですが、泥臭さということを意識していました。数少ない観客の方が平日ながら来ていただいたのですが、どういう状況でも負けないという思いで、結果としては負けてしまったのですが最後まで食らいついて、何でもやってやろうという気持ちで応援していました。

――最後に早慶戦を作り上げた観客の皆様に一言お願いします

 秋も来てください! 早慶戦だけでなく通常リーグ戦も来て欲しいです。

小野泰助副将兼リーダー練習責任者(文4=群馬・沼田)

――応援席が復活して初めての早慶戦でしたが、どのような気持ちで応援に臨みましたか

  自分としては、観客が入って観客に対して、近い距離で応援できる早慶戦というのが我々の代や下級生一同にとっても初めての経験で、非常に大事な早慶戦だと思って臨みました。コロナ前の、早稲田と慶應にとって特別で盛り上がる本来の早慶戦を取り戻すという意味ですごく重要な出来事であったと思います。

――土曜、日曜と多くの観客が応援席にいらっしゃいましたが、何か感じたことはございますか

 春の通常のリーグ戦の時から、感じていたことではあるのですが、ワンプレー、ワンプレーに対する観客の声ですね。例えば、投手が三振を取るたびに起こる歓声は早慶戦の舞台では全然違うなと感じました。守備回の時もセンターリーダーは指揮台に立っているのですが、そういった時も後ろからくる観客の声が物すごく、「これが、早慶戦なんだな」とすごく興奮しながら観客の歓声を背中に受けていたことが印象深いです。

――試合前企画やセレモニーが盛り上がりましたがそちらに関しては振り返っていかがですか

 サークルに関しては、今回の早慶戦で楽しかった部分で、応援企画補佐がサークルとのやり取りを進めていたのですが、サークルの皆さまが指揮台上での演技のレベルがすごく高く感じました。サークルの皆さんは3年生以下でやっていらっしゃって、全く早慶戦の経験も少なく、リハーサルや練習の時間も限られている中で、レベルの高いものを見せていただき、サークルの企画で雰囲気を盛り上げてくれたので非常に感謝しています。今後もぜひやりたいと思っています。

――慶應の応援に関して何か感じたものはございますか

 抽象的なのですが、慶應らしいなと感じました。ある意味はっきりとした応援で、慶應らしさを感じたということが印象的でした。

――1回戦は応援が届いたかのような勝ち越し本塁打もありました。どのような心境でしたか

 1日目は応援席の運営に追われていたところが多かったというところが正直な感想でした。1回表から9回裏まで、完全に試合展開を把握しながら応援するというところは難しかったのですが、観客の皆さんの応援がすごかったので、点が入った時の観客席の盛り上がりはこれが早慶戦なんだなと感じて、(応援を)作ってきてよかったなと感じました。

――2回戦は苦しい展開が序盤から続いていましたが、応援で意識していたことはありますか

 劣勢になったときに応援席が沈まないことが重要だと思っていたので、応援席を盛り上げる応援部が静かにならないことですね。点が入ってしまって、「ダメだな」って声が聞こえてくる時こそ部員から声を出そうということを意識していたのと、4年生のサインを出す立場としては、いくら点を取られても、取り返せる早稲田打線であったので、応援自体は焦らずどっしりとした応援を意識していました。

――3回戦はどのような思いで応援されていましたか

 3回戦になって、土日とやってきたことで(一般応援席、学生応援席が復活して)初めての早慶戦ながらも早慶両校、早慶戦の形が慣れてきていたと感じていました。だから、ここまで来たら試合に勝つ気持ちが応援部、應援指導部、どちらも強いなと思っていたので下級生にも「気合で負けるな」と言ってその部分を意識していましたね。試合自体は負けてしまったのですが、3日目の応援は3年生をはじめ、下級生にもそれまでとは違う気持ちも見えたので、応援としていい部分があったなと思います。

――最後に早慶戦を作り上げた観客の皆様に一言お願いします

 チケットが売れるかどうかも心配していたのですが、当日蓋を開けてみたら、満員という形になってすごくうれしかったです。そのおかげで、スタンドが盛り上がっていたので、秋は観客数と声量で早慶戦に勝ってかつ優勝を神宮球場で皆さんと味わいたいので秋も応援よろしくお願いします。