応援席もオール早稲田! 3年ぶりの全早慶野球戦応援

応援

 東京六大学野球秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)が早稲田の2連勝で幕を閉じてから3週間。応援部が再び打倒慶應を目指し、応援席に集結した。しかし、今回集ったのは全早慶野球戦(全早慶戦)。現役部員だけでなくOB、OGも参戦すると、全早稲田となって全慶應との総力戦を繰り広げた。「学生野球の父」と称された野球部初代監督・飛田穂洲氏をはじめ、歴代の数々の野球部の監督が育ったこの地・茨城。早稲田の野球、そして学生野球ゆかりの地で行われた3年ぶりの全早慶戦で全早稲田が応援活動を創り上げた。試合は序盤から苦しい展開となったが、「泥臭さ」は全世代の早稲田人共通。試合は敗戦となったが、最後の一球まで魂の応援をグラウンドに送り続けた。また、水戸第一高校吹奏楽部との合同演奏が行われたほか、観客とのコミュニケーションも密に行い、茨城とのつながりを感じさせる応援となった。

 試合開始2時間前。応援席では第一応援歌・『紺碧の空』とともにこの日の応援活動が開始された。観客と試合前から結束を深める試合前企画である。まずは『大進撃』『スパークリングマーチ』『コンバットマーチ』による早稲田おなじみの応援曲メドレーで観客を歓迎。メドレーを終えると、選手紹介企画が行われた。リーグ戦では注目選手紹介企画が行われるが、今回は開催地にちなんで茨城県出身選手紹介企画を実施。2年生部員が全早稲田の茨城県出身選手を全力で紹介した。続いては新応援曲『暁』と『かっせコール』の練習。この秋から登場した応援曲と定番のコールを観客とともに復習した。そして最後は再び応援曲メドレー。全早稲田の必勝を実現するため、試合前の予習を万全に行った。試合前企画が終了すると、応援席で奏でられたのは『早慶讃歌』。早慶戦の幕開けを告げるこの学生歌は陣中見舞いを経て、両校応援席の全員が斉唱する。全早稲田の応援席では乃坂龍誠応援企画責任者(慶應・4年)が指揮を振る。最後の歌詞「レッツゴー」を歌い切ると、開会式を経て試合開始を迎えた。

当番を務めたリーダー3年生・小野泰助(文3=群馬・沼田)

 全早稲田は苦しい出だしとなった。1回、マウンドには地元出身のエース・加藤孝太郎(人3=茨城・下妻一)。しかし、全慶應打線に相次いで出塁を許すとすぐに先制を許す。応援席は苦しむ加藤をコールと『WASEDAモーション』で勇気づけた。特に全早慶戦のハリセンはリーグ戦で配布されているものよりも大きなサイズ。一斉にハリセンを掲げるたび、応援席はエンジ一色に染まり、加藤へ大きなエールを届けた。ところが、加藤はこの後も相次いで失点。全早稲田は4点を追いかける展開となった。まずは反撃の1点が欲しい全早稲田。2回、指揮台に立ったのは佐川太一氏(令3スポ卒=栃木・大田原)。学注(学生注目)を経て、先頭打者の主砲・蛭間拓哉副将(スポ4=埼玉・浦和学院)を『ソラ蛭間』『F4~大進撃』で後押しすると、蛭間副将がすぐに二塁打で応える。するとここで、伝家の宝刀『コンバットマーチ』をかけ最初の1点を狙った。全早慶戦の『コンバットマーチ』は現役部員、OB、OGが入り混じって突きを続ける。ゴロの間に1点を返すと、オール早稲田の応援席が『紺碧の空』を合唱した。4回は明石慶希氏(令4文卒=東京・都立白鴎)を中心に『吼えろ早稲田の獅子』から『スパークリングマーチ』『暁』でムードをつくっていく。特に『スパークリングマーチ』ではOBが3人そろってセンターリーダーを務める場面も見られ、指揮台ではかつての体制が復活を遂げた。相手の失策も絡み、1死二塁。この日2回目の『コンバットマーチ』で印出太一(スポ2=愛知・中京大中京)を後押しする。印出がレフト前にはじき返し、1点を返すと、応援席は再び『紺碧の空』とともに歓喜に沸いた。しかし、これ以降は両チームともに得点に結びつかない膠着(こうちゃく)状態に。オール早稲田による『コンバットマーチ』は『紺碧の空』へとなかなかつながらなかった。

2回裏、センターリーダーを務める佐川氏

 しかし、このまま全早稲田が終わることはなかった。迎えた最後の攻撃、9回裏。指揮台に上ったのは地元・茨城へ凱旋を果たした髙橋幸太リーダー練習責任者(教4=茨城・竜ヶ崎一)。現役部員としての最後の指揮台は故郷の球場となった髙橋。「気持ちよかった」と振り返るように「知っている! 皆さんの力がこんなもんじゃないと知っている!」「茨城の故郷に錦を飾りたい」と威勢よく学注を叫ぶ。その勢いのままに『紺碧の空』を経て『コンバットマーチ』が始まった。「腕取れそう!」と声を上げながらも突きを続ける。現役部員からOB、OGに「頑張ってください!」と激励の声が飛ぶのも全早慶戦ならではであった。振り絞った最後の闘志はグラウンドにも届き、5イニングぶりに走者が生還、『紺碧の空』を響かせた。直後に試合は終了となったが、最後の最後まで諦めない早稲田の精神は健在であった。

9回裏『コンバットマーチ』を突くリーダー

9回裏、1点を返し『紺碧の空』を合唱したリーダーとチアリーダーズ

 いくつもの代を超えた新旧応援部員が一つの応援席で創り上げた野球応援。センターリーダーのOBの背後でリーダー4年生が拍手をし、チアリーダーズ4年生が踊る姿は4年生の下級生時代を彷彿(ほうふつ)とさせるものであった。また、応援席で現役部員とOB、OGが交流する様子は全早慶戦ならではの光景であった。そして、応援を通じて観客との絆を深める「原点」の姿もあった。紡がれてきた歴史と伝統を感じさせる全早慶戦。10年、50年、100年先も全力で応援する景色が続いていくことを願うばかりだ。

※掲載が遅くなり、申し訳ございません。

(記事 横山勝興、写真 横松さくら、横山勝興、橋本聖)

コメント

髙橋幸太リーダー練習責任者(教4=茨城・竜ヶ崎一)

――3年ぶりの全早慶戦開催となりましたが、まず試合の応援を終えての率直な感想を教えてください

 すごくいい試合だったと思うので、自分の地元で早慶戦をいい形でやることができて充実感や周りの皆様への感謝の気持ちがあります。

――地元茨城で全早慶戦が開催されたというのは特別な思いは強かったですか

 そうですね、やはり私自身も現在茨城県から毎日大学へ通学をしていますので、やはり郷土愛といったものが自然と身についております。

――リーグ戦とはまた違った雰囲気の中で、OBの皆さんもいらっしゃいましたがOBの皆さんとの応援はいかがでしたか

 当時の懐かしさがこみあげてくるといったこともありますし、実際一緒に応援すると当時の感覚や表情や感情が直ぐに思い出されて、絆って深いなと思いました。

――再会されたのは久しぶりでしたか

 そうですね。早慶戦などリーグ戦の時はいらっしゃっていましたが、一緒に応援をするのは久しぶりでした。

――9回に最後の学注を叫ばれて、今の気持ちはいかがですか

 気持ちがいいですね。ただそれだけですね。

――そのあとの最後の『コンバットマーチ』はいかがでしたか

 やはりやっている中でこれが最後だなと思いながらやっておりましたので、悔いが残らないようにできるところまでとことんやろうという気持ちでやりました。

――茨城にたくさんの観客がいらっしゃいましたが、観客の皆さんとの一体感はどのように感じましたか

 地元ネタを挟んだりすると、どっと沸いてくれたりそういった部分でやはり茨城だなと思うところはありました。

――最後に茨城の球場まで来てくださった観客の皆さんにメッセージをお願いします

 本当にお越しいただき、誠にありがとうございました。皆さんの応援のおかげでいい試合になったと思いますし、皆さんのおかげでいいかたちで終われたと思います。今後とも早稲田大学をよろしくお願いします。

木部昌平応援企画責任者(教4=埼玉・昌平)

――3年ぶりの全早慶戦開催となりましたが、まず試合の応援を終えての率直な感想を教えてください

 代が被っていても当時の4年生の方と一緒に『コンバット』(『コンバットマーチ』)を突けたり、上下関係があって純粋に楽しめなかった方とOBになって関係性が変わって応援を一緒に純粋に楽しめて良かったです。すごく楽しかったです。

――再会されたのは久しぶりでしたか

 そうですね。佐川さんとはこの前お会いしましたが、久しぶりの人は多かったですね。

――久しぶりに再会された感想は

 うれしかったです(笑)。

――応援企画責任者として、リーグ戦の応援との感覚も違ったかと思います

 全然違いましたね(笑)。まず高校生との演奏で使える曲も限られていたので、そこも考慮しつつ応援活動をしたのは僕としてけっこう違うところでしたね。

――今回のサイン出しで意識されたことはありましたか

 全早慶戦であることは関係なく最初からどんどん攻めていこうと思っていたので、初回に『Fanfareメビウス』を入れたりしました。

――水戸第一高校による演奏はいかがでしたか

 全然違和感がなくてちゃんと対応してくれたので良かったです。最後も『コンバットマーチ』をほぼエンドレスで演奏していましたが、(演奏の勢いが)落ちなかったので、力強い演奏だと思いました。

――茨城にたくさんの観客がいらっしゃいましたが、観客の皆さんとの一体感はどのように感じましたか

 けっこう一体感はあったかなと思います。リーグ戦では拡声器が使えませんでしたが、今回は使わせてもらえて、観客の方を向いて応援を促すことができたので、一体感ある応援ができたと思います。

――最後に茨城の球場まで来てくださった観客の皆さんにメッセージをお願いします

 まずは来てくださってありがとうございました。あとは早慶戦の興奮はもっとすごいので、ぜひ来年以降は神宮球場で早慶戦や通常リーグ戦を見ていただきたいと思っています。