ついに華の早慶戦がやってきた。東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)早慶戦は、応援部にとって4年間を結実させる場である。1回戦では慶大の優勝を目の当たりにしたワセダナイン。悔しさを乗り越えた2回戦、慶大の91年ぶりの10戦全勝優勝を阻んだ。野球部の秋季リーグ戦全試合を応援席から見てきた応援部。感動的な場面を観客と共有し、秋季リーグ戦をさらに特別なものとしてきた。
試合前の企画や試合後のセレモニーも、入念な準備をして臨んだ。午前の開門から試合開始まで行われる企画では、マスコットキャラクター・わーおくんの寸劇、グリークラブによる『紺碧の空』の合唱など分刻みのスケジュールを正確にこなす。観客や出演団体の誘導も、部員が連携してテキパキと行っていた。バンド合奏ではチアリ―ダーズが『希望の轍』や『GUTS!』など4曲のダンスを放送研究会の司会で披露。3年前のバンド演奏曲を復活させるなど思い出深いステージとなった。また、試合直前には両校の応援部員が相手校の応援席に移動し、『早慶讃歌』や第一応援歌、応援曲メドレーを行う。手旗でタイミングを合わせながらの演奏であった。吹奏楽団や下級生リーダーは、演奏や拍手だけではなく、カラーアクションやビッグフラッグで早大側の応援席をエンジに染め上げた。早大側の観客席は早慶戦開催日程が早稲田祭とかぶり、例年よりも観客数が少ない。そのため早大のみ外野側応援席を開門できなかったが、その状況をうまく使ってより良い応援にしようという努力が、一人一人の応援に取り組む姿勢からうかがえた。
チアリ―ダーズと吹奏楽団によるバンド演奏曲披露
1回戦。司会は浅野太郎(社3=東京・早実)が務めた。2回裏、小野興連盟常任委員(政経4=東京・世田谷学園)の持ち回に加藤雅樹主将(社4=東京・早実)が生還し、1得点。『大進撃』でヒットを獲得、小野がジャンプのアレンジを加えて披露した『コンバットマーチ』の演奏時であった。次の3回表、清水泰貴副将(文構4=東京・海城)が「得点をとった後が大事なんです」との学生注目(学注)。その言葉を悪い意味で裏付けるかのように、慶大下山悠介に適時三塁打を浴び同点に。5回表ではチアリーダーズと吹奏楽団がバンド演奏曲『Runner』を披露した。6回でさらに1点奪われ1-2となった7回表、加藤雄基代表委員主務(政経4=東京・早実)は秋季リーグの他大戦とは一線を画す、圧倒的な気合で臨んだ。「目の前で(慶大の優勝決定の)胴上げを見ることになるぞ!」と発破をかけ、キレのある『Viva Waseda 』を披露した。重心が低く安定したテクを見せる。観客を立たせて迎えた次の8回。4得点で興奮が最高潮に達する慶大側から『若き血』が響いた慶大応援席は、寒さや疲れもあり落ち込んだ雰囲気に。8回裏では5点の得点差を詰めようと『コンバットマーチ』を連続で行う。9回は『紺碧の空』からである。得点時の応援曲に観客が元気づけられる。センターリーダーを務めた清水は既に声が枯れていた。早朝の企画から観客席に向かい、声を出し続けていたからであろう。太鼓に合わせて『ダイナマイトマーチ』をしている間に追加得点される。ついに6点差。3パート一体となった応援で最後まで力をふりしぼる。だが得点はかなわず試合終了。慶大の優勝は確実なものとなった。試合後の校歌斉唱では学年に関係なく涙を流す部員の姿が多かった。春山尚輝副将、吹奏楽団責任者(基理4=茨城・江戸川学園取手)はその時の心境を「ここまでやってきたのに」と悔しそうに振り返った。
得点時『紺碧の空』を歌う応援席の様子
そして迎えた2回戦。早大の使命は慶大の91年ぶり全勝優勝を阻止することだけである。司会は宮川隼(人科3=千葉・市立稲毛)が務めた。チアリ―ダーズ4年生は、野球部のユニフォームを模した『ユニフォームセット』を着用。清水の持ち回であった1回。『紺碧の空』『Viva Waseda』と威勢よくスタートし、『コンバットマーチ』へ。溌溂とした表情で突きをするリーダーの気持ちが届いたのか、檜村篤史副将(スポ4=千葉・木更津総合)が中前適時打で3得点。今瀬憲新人監督(政経4=県立岐阜)の持ち回であった5回。敵失でさらに2得点。5-0とこれまでのリーグ戦からは考えられないような点差に。この2得点に、今瀬を始めとする4年生は喜びを爆発させた。7回表、慶大の満塁作戦によって2得点を許したが、早大の守備を応援するため、泉川創太リーダー主務(政経4=東京・清瀬)を中心に、リーダー4年生が8名で『ダイナマイトマーチ』を8回以上振り抜いた。
『スパークリングマーチ』を振った下田主将、加藤、清水(写真左から)
8回を担当した雲見恭光学生誘導対策責任者(スポ4=茨城・江戸川学園取手)は、序盤からその声量で内野席の観客の注目をも集めた。好きな応援曲だという『早稲田健児』を振り、「コンバットマーチ!」と曲名を叫んだ瞬間に蛭間拓哉(スポ1=群馬・浦和学院)が得点。部員が次々と指揮台に上り、これまでで一番といえるほどの笑顔で『紺碧の空』を合唱した。8回裏に追加点を許したものの、4年生リーダー8人がそろって『ダイナマイトマーチ』を振った。だがその最中にも慶大は1得点。6-4と2点差まで迫られる。雲見は学注で得点のことには触れず、「1アウトとったじゃねえか!」と叫び観客と部員を沸き立たせた。さらに指揮台上の4年生に向けて「4年、気合入れて『ダイナマイトマーチ』いくぞ!」と元気よく呼びかける。9回表の『紺碧の空』ではリーダー新人が4年生と共に指揮台に上る。テクを振る4年生の後ろで、練習し続けてきた拍手をした。そして、主将下田の持ち回である9回。「最後信じようじゃないか」と言って再び『ダイナマイトマーチ』。慶大を無事抑え、試合終了。慶大の完全優勝を阻止するという宿敵としての使命を果たした。校歌斉唱の下田は涙を禁じえなかった。これまでやってきた練習や数々の応援がよみがえっていたのだろうか。試合終了後のセレモニーでは、小宮が「伝統の勝利の拍手」を披露。早慶戦に勝利した時のみ振ることのできる拍手を、3パートの各部員は厳粛な面持ちで見ていた。
涙ながらに校歌を振った下田主将
最後の勝負は3回戦。集大成を披露するだけでなく、応援の力でワセダナインに思いを届けてくれるのだろうか。応援の力は確実にある、と感じさせるような試合展開を見せた2回戦。流れに乗って3回戦でも勝利へと後押ししてくれるに違いない。
(記事 馬塲貴子、写真 中原彩乃、鬼頭遥南、高橋さくら)
コメント
下田隆博代表委員主将(政経4=東京・早大学院)
――2回戦終えての感想をお願いいたします
慶大に勝つというのが目的の試合で勝利出来て、しかも感動的な試合で、もう涙が止まらなかったです。
――喜びの涙でしょうか
そうですね、喜びです。やってくれたなと思いました。
――結果への感想をお願いいたします
野球部も応援部もきのう慶大に目の前で優勝されるという場面を見て全員が悔しい気持ちで臨んだので、それがきょう結果に出たのではないかと思います。
――1回戦後のミーティングではどのようなお話をされたのでしょうか
やはり全員が悔しい思いをしたので、全力でそれをぶつけようという話を自分が中心でしました。
――2回戦では応援が届いたという実感はありましたか
1回から得点したのですが、やはり野球部がここぞというところで気持ちを出してくれたのが一番かなと思いますね。野球部…早稲田全体でつかんだ勝利だと思いました。
――2回戦で記憶に残っているセンターリーダーや学注を教えてください
そうですね…。全部記憶に残っているんですが、秋リーグ今まで一度も自分の(持ち)回で得点を入れられなかった今瀬と雲見ですね、そのふたりがきょう決めたので、そこがすごく印象に残っていますね。
――『ダイナマイトマーチ』が何度も流れていました。何か意図があったのでしょうか
今まではピンチの時に気持ちを落して負けてしまったというのがあるので、ピンチの時こそ自分たちで気合のある応援をして選手に届けようということで4年生全員で振りました。
――『ダイナマイトマーチ』を振っている場面では、どのような思いでしたか
やはり負ければきょうが最後だったので、倒れてもいいから振るくらいの気持ちで最後ふりました。その思いが4年生ひとりひとりずっと出ていたので、自分は横で振っていた同期の姿を見て感動していました。
――指揮台上では客席の方を向いて振ることが多かったと思います。試合の戦況を見ずに応援していたことに関してはどのような心境でしたか
もう選手を信じて振る、というのが一番ですね。
――『紺碧の空』を新人と4年生リーダーが振る場面がありました。いかがでしたか
自分たちは4年間、新人は1年間本当に頑張ってきて、それで最後にこうやって一緒に振ることが出来て、感慨深いものがありました。
――その新人にはこの後どのようなお話をされますか
今シーズンとても苦しくて負けが続いたのですがそれでもあきらめずにやれば勝てたという経験を生かして、来年は下級生には絶対優勝してほしいです、自分は優勝できなかったのですが、ぜひ優勝してほしいということを伝えます。
――リーダー3年生の浅野さん、宮川さんの司会はいかがでしたか
とても良かったと思います。それぞれのキャラクターを全面に出してやっていて、盛り上がっていたと思います。
――小宮さんは2回戦での持ち回がありませんでした
ことし10人いるので、きょうの試合は小宮がテクを振らずに戦況などを(指揮台上の部員に)しっかり伝えて勝利につなげようというのを4年生で考えたのでそうなりました。
――試合後の小宮さんの「伝統の勝利の拍手」はいかがでしたか
彼はずっと「気合気合」と言ってきて、形で見せるタイプなので。それをきょうあの場で、お客さんも多い中で見せることが出来たので、4年生一緒にやってきた身として感動しました。
――同期にひとことお願いいたします
もう、きょうは勝ったんですけどあしたもある。あしたは、きょう以上のことをやらないと勝てないので、泣いても笑ってもやり切るしかない、ということを言いたいです。
――あしたへ向けて、意気込みをお願いいたします
絶対勝つしかないです!以上です。
春山尚輝副将、吹奏楽団責任者(基理4=茨城・江戸川取手)
――1回戦、2回戦の早慶戦のそれぞれの結果を振り返ってみての感想をお聞かせください
相手の慶大は本当に全勝優勝がかかってて、早稲田は内野外野ともにお客さんが閑散としているのを見せつけられていてしかも負けてしまって、先に塾歌を演奏されているのを見たときに本当に悔しくて集客でも負けて試合でも負けるとなるとここまで頑張ってきたのに、やってきたのにその思いを果たせなかったということになってしまうと思っていたので、きょうは絶対勝たなきゃなと全員思っていたと思います。だからこそきょうは本当に嬉しくてむしろきのうは負けてしまいましたけどその分きょうの勝利が格別になったのかなと思いますし、2日間良い応援になったのかなと思います。
―春季の課題としてあげられていた演奏の音の小ささはどのように改善されましたか
そうですね、内野と外野で分かれると音も人が少ないので静かになるのですが、逆に外野を開けなかったので内野で全員応援できたのでそこはまぁある意味、吹奏楽団的には良かったかなと思っています。そうですね、あと新人が春より比べて演奏できるようになってきて、かなり戦力になってきてくれているので音的には絶対春よりかは大きくなっているのかなと思います。
――先ほどもお話にありましたが外野を解放されずに中継指揮ができなかったという点で応援に関して何か変化などはありましたらお聞かせください
そうですね、やっぱり内野と外野合同で演奏して得点入った時とかに紺碧の空とかがすごい観客の声も揃うとすごく感動的になるので是非やりたかったのですがそれができなかったので・・・まぁただ自分的には良い応援はできたと思います。
――慶大の演奏はいかがでしたか
きのうはすごく『突撃のテーマ』とかすごいこちらまで音が飛んできて、すごい恐怖だったのですが、きょうはそれ以上に守備中だったら『ダイナマイトマーチ』とか早大の人が声を出してくれていたのでそんなに相手の音が気にならなくて、むしろ早大の方が音は出せてたのかなと思うので良かったと思います。
――1回戦、2回戦を終えてのそれぞれの心境をお聞かせください
4年目の秋の早慶戦は本当にかけている思いが違うのでここまで本当に辛いこともありましたし、その中で頑張ってきてきのうを迎えていたので、なんとしても勝ちたいと思っていました。それなのに勝てなかったのは、ここまでやってきたのになと思いました。ただ、そこで気持ちが負けてちゃうと次の日に影響するかなと思ったのでしっかり帰って気持ち切り替えてやろうと思っていました。きょうは、試合を終えて本当に格別な試合だったなと、早慶戦で勝てたというのは、本当に4年生が本当に最後になるかもしれなかったのでその中で明日にまたできるというのは、神宮で吹けるというのはすごく嬉しいです。
――明日の意気込みをお願いします
慶大の全勝優勝は阻止したので、明日は完全なる優勝を阻止して、自分たちの代は早大は優勝しなかったのですがそれを取り返す勢いで勝ち点もぎ取って打倒慶應を果たしたいと思います。
黒澤真紀子副将・チアリーダーズ責任者(教4=埼玉・早大本庄)
――きょうの試合結果について感想をお願いします
きょうは1回から全員が全力の応援ができたと思いますし、厳しい場面でも誰も絶対に諦めないで応援できたことがこの勝利につながったのが本当に嬉しく思います。
――2回戦、9回はどのような気持ちで臨みましたか
慶応義塾大学も完全優勝がかかっていますし、お互い絶対的負けたくないという気持ちはあるんですけど、その中でたとえ先制点を取っていても、さらに9回で点を取って慶応義塾大学を引き離してやろうという、そういう強い気持ちで臨みました。
――集客ではどのような点で工夫をしましたか
1人1人が、お客様に明治神宮球場に来てもらえるように広報したことは1人1人が集客をするために全力でやっていたことだと思います。
――1回戦後のミーティングではどのようなお話をされましたか
ミーティングではなくて、応援部全体でコーチングスタッフの方からお話を聞いて、そのうち4年生の1部から下級生に対して話す場面があるんですけど、そこで、昨日の応援はまだまだ1人1人がやりきれていないと感じていて、明日は絶対に1人1人が活躍してやりきっていきたいから出し切ろうというふうに話していて、それが本日は体現できていたのかなと思います。
――試合後、4年生のチアリーダーズの方々が涙を流していました
言葉に表せないくらい本当に嬉しくて、自分たち4年生にとっては最後のシーズンで、最後の試合になる可能性も、絶対ないと思ってはいたんですけど、あるので、あしたもう1度、大好きな同期や下級生と応援できるというのもあって涙がこみ上げました。
――リーダー1年生による『紺碧の空』はいかがでしたか
新人というのは応援部にとって本当に宝のような存在で、新人が頑張っているから私たちも頑張れているというように、場の原動力なので、その新人が頑張っているのを見て、私たちもさらに気が引き締まりましたし、より頑張らないとな、と思いました。
――あすにむけて意気込みをお願いします
昨日負けてしまった際に、きっと1番つらいのは野球部の皆さんだという話がコーチングスタッフの方からあって。絶対にその通りで、その野球部を後押しできるような応援をする、それが使命だと思うので、あしたは1回から野球部が勝利を掴み取れるような応援を絶対にしますので、あしたも必ず勝ちたいと思います。