ビルの谷から天下の険へ 応援部の『箱根』に密着

応援

 正月の風物詩、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。総延長100キロを超える戦いだが、戦っているのは競走部だけではない。昨年12月に代替わりを行い新体制となった応援部も1、5、6、10区の4地点で応援を行う。そんな応援部が挑んだ『箱根』の2日間に密着した。

  1月2日、午前6時半。応援部員はまだ薄暗い皇居和田倉門前の日本郵船ビルに集まってきた。中谷篤人代表委員主将(創理=静岡・掛川西)の代へ交替して初めての応援。「緊張よりも楽しみ」(中谷主将)と新たな年への希望を胸に臨んだ。7時になると多くの観客も日本郵船ビル前に集まってくる。応援は平井利彰旗手(商3=東京・郁文館)による校旗掲揚から始まり、次いで中谷主将の指揮による初めての校歌へ。さらに応援曲メドレー、箱根用の応援歌『大地を踏みて』、企画などを行ううちに時間は進み、いよいよスタートの8時。応援部では『紺碧の空』1番を連続して演奏し、選手を後押しする。1区走者の集団は8時2分頃に和田倉門を通過し、沿道から大きな声援が飛んだ。

5区、山本駅伝主将通過の瞬間

 1区での応援が終わると、部員は自動車部の運転するバス2台、機材車などに分乗して箱根へ向かう。車中ではテレビやラジオの駅伝中継が流れ、レース展開に一喜一憂。5区の応援場所となる県立恩賜箱根公園駐車場に到着したのは走者が3区の終盤に差し掛かったころだった。12時45分にこの日2回目の校歌から応援開始。ここは駒大、明大、順大などと並んでの応援になるが、各校のメドレーを続ける他大に対し、早大は選手紹介を行うなどバリエーション豊かだった。そして5区走者の山本修平駅伝主将(スポ4=愛知・時習館)が通過すると、ラストスパートを期待して、『待ってた山本』のプラカードとともに必死の応援が繰り広げられる。レース終了後は恒例の日本酒贈呈式を行い、最後の指揮を執る渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)を激励。逆に応援部の夕食時には山本駅伝主将があいさつに訪れ、復路での巻き返しを誓った。

中谷主将が渡辺駅伝監督へ日本酒を贈呈

 復路、3日は5時半から朝食をとり、7時から校歌でスタート。早朝の箱根は気温が低く、パフォーマンスの合間に吐く息が白く立ち上っていた。6区は応援歌が多く、『幸せの歌』『吼えろ早稲田の獅子』などを披露。定番の『早稲田健児』や『紺碧の空』と合わせて、6区区間賞を獲得する三浦雅裕(スポ3=兵庫・西脇工)の背中を押した。全大学が通過すると再び自動車部のバスに乗って大手町へ。10区のアーバンネット大手町ビル前はややスペースが広く、チアリーダーズのスタンツを組んでの演技も行われた。2日間を締めくくったのはリーダー幹部7人による『紺碧の空』。ことしの応援部はリーダー幹部が多いのが特徴で、昨年までを上回る勇壮な演舞を見せる。1時38分にアンカーが通過すると、その後は校歌を演奏。さらに中谷主将が「ことし一年ワセダスポーツを応援していく」と観客に決意を語り、箱根応援は幕を閉じた。

ことしの注目 リーダー幹部による紺碧の空

 箱根応援は各区で1時間程の応援をしながら、走者が通過する一瞬を見計らうため「かなり特殊」(野島洋一朗副将・吹奏楽団責任者、創理3=東京・学習院)なもの。さらに新体制初ということからかサイン伝達などでミスもあった。しかしことしの色を出す場面も多く見られた。リーダー幹部の多さを生かしながら、3パートで応援をつくりあげていく。「良いスタートを切るためにできた応援としては100点満点」(栗田莉七副将・チアリーダーズ責任者、教3=東京・豊島岡女)という言葉通り、2015年の応援部に期待を持たせる箱根路での2日間だった。

(記事 三尾和寛、写真 豊田光司 三尾和寛)

★呉越同舟の箱根芦ノ湖

 応援部・自動車部は芦ノ湖畔、元箱根にあるホテルに宿泊しているが、ここは競走部にとっても定宿。その縁で山本駅伝主将が夕食時にあいさつに訪れた。さらにこのホテルには東洋大の陸上競技部も宿泊。ロビーには両校の歴代スター選手の色紙が飾られている。レースが始まればライバルとなる両校だが、休息をとるのは同じ建物だった。

箱根応援を終えた応援部員

コメント

中谷篤人代表委員主将(創理3=静岡・掛川西) ※往路終了時

――代替わりしてから初の応援ですね

そうですね。初舞台でした。

――緊張しましたか

緊張というよりは楽しみだなという期待の方が大きかったです。

――(抽選で決まる)応援場所はあまり良い条件ではありませんでした

きょねん、おととしと比べるとスペース的には狭くなってしまったのですが、その環境をうまく生かしてやるという気持ちは変わらないので、そこまで苦だなとは感じませんでした。

――きょうはどういう気持ちで臨みましたか

選手の目の前で応援するというのは一瞬なのですが、その一瞬をどう生かせるか、どう輝かせるかということを、1時間前からステージの上でパフォーマンスしているのでそこの1時間をどのように生かせるかというのをとにかく考えていました。あとは見に来てくださっているお客さんを常に楽しませるように、感動を与えられるようにというのを意識しました。

――それはどれくらいできましたか

こう言ってはあれなのですが、思っていたようにはいかなかったというのが正直なところでありまして、もっともっと完璧が求められると思うので、あしたはきょう以上に良い応援ができるように頑張りたいです。

――応援部主将として校歌をふった感想は

ワセダの応援を見に来てくださるお客様がたくさんいて、その中で校歌をふって、歌っていただきました。校歌をふるというのは憧れでもあったので、それはすごく気持ちが良かったですね。

――駅伝は苦戦となっていますが、あしたへ向けて

あした、まだまだ挽回できると信じています。結果が何位であろうと全力を出して応援したいです。

中谷篤人代表委員主将(創理3=静岡・掛川西) ※復路終了時

――2日間の箱根駅伝応援を終えてどのように感じていますか

応援に関しては、代交代してから初の応援でした。その中で色々不安はあったのですが最後に一丸となって応援できたことは良かったと思います。

――5位という結果に関してどのように感じていますか

やはり優勝してほしいという気持ちもあり、残念ではありました。ただワセダの選手が走っている姿を見て、多くの感動をもらいました。今回はそれだけでも応援に来て良かったと思っています。

――これから新体制での応援がスタートしていきますが、ことしの抱負をお聞かせください

ことしはリーダーの幹部がとても多いです。そこに関しては、いままでとは一味変わった応援を皆様にお見せすることができると思います。周りの方々の期待に添えられるような応援をしていきたいと思っています。

野島洋一朗副将・吹奏楽団責任者(創理3=東京・学習院)

――きのう、きょうと応援してきての感想をお願いします

箱根駅伝応援というのは応援部の応援の中でもかなり特殊で、長い時間応援するのにも関わらず、選手の方が通るのはほんの一瞬です。そこに向けてどう応援をつくっていくかというのがすごく大切なのですけれども、そういう応援を下級生が頑張っていろいろ考えてくれて。きのう、きょうと長い応援だったのですが、いい応援がつくれたのではないかと思っております。

――今回は5位という残念な結果でしたが

選手の方々が優勝目指して頑張っておられたのですが、そちら残念だというふうに昨日宿の中で選手の方にもお話を伺いました。そうした中でも復路で順位を一つ上げられて、5位という形で終われたというのはすごく選手の方々の頑張りが伝わってきたなと思いました。

――新体制になってから初めての応援だったと思うのですが、練習はいつごろから始められたのですか

箱根駅伝の準備自体は代交代してすぐ12月の中旬から続けておりました。12月の24日に、総合練習という通しの練習を東伏見の体育館で行いまして。年末は各自で譜面をさらったりなどしてイメージトレーニングをしておりました。

――新体制での初めての応援でしたが、今後の抱負をお願いします

吹奏楽団というのは普段応援だけではなくて演奏とドリルという、合わせて3つの柱を中心に活動しているのですが、そちら3つの活動にしっかり取り組んで。応援はもちろん、演奏とドリルの方もしっかりと力を入れて頑張って参りたいと思います。

栗田莉七副将・チアリーダーズ責任者(教3=東京・豊島岡女)

――初の応援ですが、緊張しましたか

新体制となって初めての応援で、こんなにたくさんのお客さんが来てくださる応援で注目されていて、ワセダの新しい応援を毎年毎年見せる場なので、全員が気を引き締めて臨むという意識があったのですが、緊張というものもありました。成功させたいという思いと、その成功を1年間続ける良い流れにしたいという思いがありました。

――どのような気持ちで臨まれた2日間でしたか

早稲田大学の競走部の方々が優勝できるようにという思いで全員で取り組んできました。全員が気持ちよく演技や応援を楽しんで、その中で選手の方の応援や後押しをできればいいなと思って2日間過ごしました。

――考えていた応援というのはどれくらい達成できたと思いますか

新体制ということで、まだまだだなと思った改善点、これから直していかなくてはいけない点もたくさんあって、100というわけではないのかもしれないですが、これから良いスタートを切るためにできた応援としては100点満点だったかなと言いたいです。ただこれで満足せず、これを機にどんどん上の、良い応援をつくっていきたいと思いました。

――良かった点はどこでしょうか

チアリーダーズの事ではありませんが、ことしはリーダー幹部が8人もいて、今までと違う見せ方ができる年です。そういうところで、チアも吹奏楽団も3パートで一緒になって応援がつくれたというのが良い点だと思います。

――逆に課題点はどこでしょうか

3パートのまとまりを見せるというのが目標だったのですが、そこでずれが生じていたり、応援として未完成な部分が個人個人であったのでそういった点はこれから詰めていきたいと思います。

――これからの意気込みを教えてください

たくさんあるワセダの部活動を後押しするような応援と、ことしの色を出していきたいと思っています。新体制のメンバーでできる最高の応援を目指していきたいので、これからの応援部もよろしくお願いします。