普段は応援部として選手を鼓舞し支える吹奏楽団が主役となる舞台、定期演奏会。ことしのテーマは『Power of Music~つなげる力~』。全3部のプログラムの中、応援・演奏・ドリルと姿かたちを変えながらさまざまな『つながり』を表現した。先週までの合宿の一週間を乗り越え、見せたいつもの応援時とはまた違った魅力の一面。観客を凝ったパフォーマンスで楽しませ、1年間の集大成をおさめた。
第1部のシンフォニックステージのテーマは、『文化をつなぐ』。演奏曲は『ケルト民謡による組曲』、日本の桜をイメージした『さくらのうた』、中国での実話を元にした映画の劇中音楽『第六の幸福をもたらす宿』の3曲。それぞれ違う文化をイメージした多様な曲だ。勇壮なメロディーから哀愁の漂う切ないメロディーまで幅広い曲をこなし、観客を一挙にその世界に引き込む。第2部では一転、『心をつなぐ』のテーマのもと、ポップなステージに。曲のイメージ・ストーリーに合わせた演技や、キレのあるアクション、スタンドプレーを織り込み、観客を目と耳の両方で楽しませた。第1部・2部のアンコールでは、ワセダおなじみの校歌『都の西北』を披露。しかし、今回はここで終わりではなかった。なんと、ことし大旋風を巻き起こした『アナと雪の女王』のメドレーを隠れたプログラムとして披露。驚きつつも観客はペンライトをかざしながら曲に聴き入った。
演奏と演出両方で観客を沸かせた
後半に先がけ、第3部の前には吹奏楽団責任者の杉崎広太朗(教4=東京・海城)が舞台に登場。「伝える相手、一緒に伝える仲間がいてこその応援部で吹奏楽団。演奏を通してその人たちと結びつき、つながりを強くできたら」との挨拶に、温かい拍手が送られた。ドリルステージでは、大河ドラマのテーマ曲4つを使用したマーチングを中心に披露。そのテーマ『時をつなぐ』のもと、観客の前にその歴史物語を織りなして見せた。特にことしはここ4年間で最も部員数の多い年。それだけに練習も合わせることが大変だったはずであるが、見事にそろったドリル隊のキビキビとした動き、華麗に舞うカラーガードの姿を披露する。動きながらでもなお変わらぬ響きのある演奏、その圧巻のパフォーマンスに、観客のボルテージを最高潮に。例年ならばここで終わりだが、ことしは前半と同様にここでも新たなサプライズが。突如として舞台上に、元吹奏楽団の仁熊佑太代表委員主将(創理4=東京・早大本庄)が登場。自身の吹奏楽団への思いと感謝の気持ちを述べ、「3パートのつながり、見せていくぞ!」と宣言。吹奏楽団とチアリーダーズとリーダー、3パートがそろった舞台で『ワセダ必勝応援曲メドレー』を披露し、観客を沸かせた。
見事なパフォーマンスを披露したドリルステージ
「1日1日ごとにどんどん演出を重ねるくらい工夫をした代」(増子拓哉、教4=茨城・水戸第一)、「何か変わったこと・新しいことをやりたい、という思いから『変新』という造語を作って一年間用意しました」(末次真弓、教4=東京・立川)と話すように、例年とは違う新たな演出の多かった今回の舞台。51回目という、節目からの第一歩としてふさわしいステージとなった。毎年伝統を受け継ぎつつ、新たな試みを見せてくれる吹奏楽団。次なる舞台にも注目だ。
(記事 伊能由佳、写真 三井田雄一)
コメント
杉崎広太朗(社4=東京・海城)
――きょうのステージを終えての感想をお願いします
毎年ここが年の区切り目で一番最後の大きなステージなのですが、ことしは4年目ということで感慨もひとしおというか。何よりも(下級生・新人たちは)自分たちについてきてくれているかたちですので、それでステージをしっかり作り上げられたことが、まずそれだけでも嬉しかったです。
――先週までやっていた合宿の成果は
毎年秋合宿を御殿場で一週間ぐらいしているのですが、特にマーチングは全員居ないとどうしても詰められようにも詰められないところが大きいものなので、そこでほとんどの部員・新人が集まって練習できるということが本当に大きくて。そこで、演奏ももちろんですが特にドリル、マーチングの詰めというのもしっかり行いました。とても寒い環境ではありましたが、しっかり成果を出せたのかなと思います。
――今回のテーマは『Power of Music~つなげる力~』ですが、個人的にはどのような気持ちを込めましたか
責任者挨拶でも言った通り、やはり伝える相手や一緒に伝える人たちがいてこその、この応援部ですし吹奏楽団ですので、演奏を通してその人たちとの関係や結びつき、つながりが強くなることができたら、と思いながら演奏しました。
――4年生にとって応援部の活動ももう最後ですが
やはりここまできて、やりたかったことが全部できているわけではないのですけれども、しっかりそれをらいねんのことに伝えていきたいと。私たち4年生ははこれで終わりなのですが、この4年の新陳代謝を毎年繰り返してこその大学体育会ですし応援部だと思うので。これをただリセットするのでなくらいねん以降にもしっかり段階としてつなげていくことができたらと思っています。
増子拓哉(演奏会運営責任者)(教4=茨城・水戸一)
――演奏会運営責任者ということですが具体的にどんなことをされてきたのですか
1部2部は指揮、3部はドリルでそれぞれやりたいことがあったのですが、照明業者だったりホールだったり音響だったり、いろんな外部の方とつないで、橋渡しをしてやりたいことを実現させる役職を担っていました。
――全体のマネージャーのような役職ですね
そうです。主務をやっているので、外部との連絡は基本的にやっていました。
――今回のテーマはどのように決めましたか
今回は51回目なのですが、私たちの音楽がどんな特色があるか考えたときに、一つに専念するというよりもいろいろな音楽のかたちで人々に思いを届ける団体なのだなと気づきました。なので、思い切ってそれを推す演奏会にしたらどうだと思ってやりました。
――バラエティに富んだ構成になりましたね
はい。新しいこともどんどん取り入れてしまったので、賛否両論はあると思いますが(笑)。
――とても工夫のある演出になっていたと思います。多くの準備をされてきたのではないでしょうか
そうですね。1日1日ごとにどんどん演出を重ねるくらい工夫をした代だと思います。
――ご自身はパーカッションですが、今回はかなり見せ場も多かったですね
おいしい構成にさせてもらいました(笑)。
――その演奏面ではいかがでしたか
マネージャーという仕事で自主練習がほとんどできなくて、1回1回の練習で集中してやるしかなかったのですが、それは絶対やれたという自信があるので本番も成功できたと思います。
――4年間を出し切る場になりましたか
なったと思います。
――応援部での4年間を振り返ってみて、どういう4年間でしたか
まだ4年間続けてきて良かったとは言い切れないのですが、後々このつらい経験などがいい思い出になるという事を信じています。それを祈っていますね。
末次真弓(演奏会企画責任者)(教4=東京・立川)
――定演を終えていまのお気持ちは
まだ実感が沸かないです。終わってしまったことは何となく理解しているのですが、きょうもあしたも練習がありそうな気分です。
――演奏会企画責任者とはどのような役職ですか
皆がやりたいことを最大限に引き出してできる限り実現に向かわせる仕事をしていました。まず、スタッフ(指揮やDM、GC)の相談相手です。具体的な企画はスタッフがやるので、それは客観的に見たらどう思うか、という視点を与えます。また、1~3部を通して見たときに食い違いがないかを確認します。いちプレイヤーでありながら、少し引いた姿勢でいます。実現させるために必要なものを確認し、準備して貰ったり準備したりして、本番を迎えました。
――企画を立てる上で一番力を入れたところは
演奏会運営責任者の増子と、何か変わったこと・新しいことをやりたい、という思いから「変新」という造語を作って一年間用意しました。先に述べたように、具体的な企画はスタッフがやるので、スタッフに「変新」を意識して貰い、今回のステージに至ります。
――定演のテーマが『Power of Music』でしたが、末次さんの考える音楽の力とは何ですか
私は中学生の時から吹奏楽を始めたので、吹奏楽だけでも10年、音楽と関わり続けてきました。私にとって音楽は生活と切り離せない存在です。傍にあるのが当たり前だけど、それは奇跡かも知れない。「友人」と同じような力があると思います。
――早大応援部の吹奏楽団は「気持ちのバンド」と他の部員さんからよく伺いますが、きょうはどなたにどのような気持ちを伝えたいと思って演奏されましたか
4年間一緒に活動してきた同期に、気持ちを届けようと思っていました。本当に濃い4年間を過ごしてきた仲間で、言い表せないほど、大好きなみんなです。
――4年間の経験を今後どのように生かしていきたいですか
「吹奏楽」だけをやっていた高校以前とは異なり、本当に色々なことをやらせて貰った4年間でした。全てのことを、把握出来る力を求められたことは今後に生きてくる経験だと思います。
福井みな美(指揮)(文構4=東京・立川)
――きょうの演奏会を振り返って
1年間やってきたことがいろいろあったのですが、私は指揮で1、2部ステージの演奏を担当させていただいたのですが、そちらはすごく出し切れたかなという感じがあります。
――1曲目から指揮台に上がられましたが、どのような思いで指揮をされましたか
正直すごく緊張していたのですが、直前にリハーサル室で部員に、緊張しているので是非視線を投げたら返してくださいという風に言ったところ本当に一体感というか、がっと気持ちが集まっている感じが1曲目で感じられて、それ以降すごくリラックスしてすることができました。
――演奏会のテーマは『Power of Music』とのことですが、このテーマを福井さん自身はどのように捉えられていましたか
この早稲田大学吹奏楽団でやっている活動というのがけっこう何も知らない人には分かりづらいと思うのですけれど、演奏もマーチングも応援もやっているという私たちの団体の特徴を全部伝えたいなと思っていて。そういう風にテーマを選んで、いろんな側面をお見せできたかなと思っています。
――ワセダの吹奏楽団で過ごした4年間を振り返って
正直いろいろ悩むことがたくさんあったんですけれど、やっぱり4年間続けて素敵な仲間に本当にたくさんの仲間に出会えて、それが1番の財産かなと思います。
――後輩に向けて一言
一言では言えないのですけど、活動を全部楽しんで応援部らしさを、応援部の活動を愛してもらって頑張ってほしいと思います。
谷岡実奈(DM)(文4=愛媛・松山東)
――きょうの感想をお願いします
いままでの練習のように上手くいくことばかりではなかったのですが、みんな最後に泣いて感動できたということは、いままで頑張った成果なのかなと思いました。きょうまでみんなで頑張ることができて本当に良かったです。
――きょうに向けて合宿を行ったと思いますが、どのようなことを中心にやりましたか
合宿前に全体を通していたので、中身を詰めていく練習を合宿ではやりました。
――合宿の成果は出せましたか
完璧ではありませんでしたが、みんなの身体にしっかり練習の成果が染み付いていたので、とても良いステージになったと思います。
――動きを合わせていくうえで、難しい部分はありましたか
ポイントというシールが貼ってあるのですが、そのシールだけを見ていたら、ラインはできません。全員が周りを気にして、隣の人に合わせようと思わなければ、隊形ができないということが難しいところです。
――構成ではどこに1番力を入れましたか
どこと細かくは言えませんが、お客様を大河の世界に引き込めるように、全体的に演出をいろいろ考えました。
栗原弓枝(GC)(人4=日大一)
――きょうの感想をお願いします
すごくやりきったという感じでいっぱいでして。先週まで一週間ほど合宿に行っていたのですが、そこまで全然詰まっていなかったのが、ここまできょう練習を詰めてきた成果が出てきて、すごく感無量です。
――今回自分が担当した中で一番力をいれたことは
いままでのここ4年間で一番人数が多かったので、旗をいかに合わせるかという事にすごく力を入れました。
――一番苦労したところは
一番苦労したことも、旗を合わせることですね。なかなかみんな授業とかがあって、いつも毎回練習に出れるわけではないので、そんな中で開いた旗の交換などは、相手がいないとできないことなので、すごく大変でした。
――応援部としての活動ももう最後ですが
色々苦しいことも辛いこともあったのですけれども、最後はやはり、「やって良かったな」というふうにこのステージを経てすごく思いました。