神宮球場で力強いテクを披露するリーダー。その中でも輝きを放つのは幹部の3名であった。代表委員主将として応援席、そして部員をまとめあげてきた関口晃由代表委員主将(教4=東京・東洋)と関口を支えてきた野村隆文(教4=兵庫・六甲)、高橋一弥(人4=神奈川・茅ケ崎北陵)――。集大成となる特別な舞台に何を思うのか。ワセダへの思い、下級生へのメッセージを交えながら早慶戦に懸ける意気込みを語っていただいた。
※この取材は10月11日に行ったものです。
「六大学を盛り上げるのは早慶」
主将として部と客席をまとめる関口
――入学前のワセダとケイオーそれぞれのイメージは
野村 ワセダがバンカラで、ケイオーがハイカラというイメージがありました。ワセダの方が男くさいというか、人情溢れる大学だなという雰囲気がしました。
――そういったところに憧れて入学したのですか
野村 高校3年生の時に関西から東京に一度来て、ワセダというよりはワセダの街を見た時に、この学生街で過ごしたいなと思いまして。すごい街が温かいなと。それに憧れましたね。
――関口主将と高橋さんはいかがです
関口 学生らしい学生がいるのがワセダで、ケイオーは坊ちゃんというかそういう人がいる感じで、位が高い感じでした(笑)。
高橋 入学前はケイオーのイメージ自体が全くなくワセダのイメージしかなかったので、これと言って比べたことはなかったですね。比べたのは大学に入ってからですね。
――大学に入ってイメージは変わりましたか
関口 意外にケイオーも普通というか。関わりがあるのはケイオーの応援指導部なのですが、普通だなと。感覚も結構近い感じがあったので。
高橋 一般学生もワセダに負けないくらい愛校心がありますね。神宮の早慶戦の応援を見ていても、場合によってはワセダよりも外野の開門が早かったりして。(全校学生の)人数が半分かそれよりもちょっと多いくらいにもかかわらず、同じスピードくらいで外野席が埋まっていくのを見ると、ケイオー側も愛校心があるなというのを強く感じましたね。
野村 入る前は、早慶はライバルだというイメージがあったのですが、入ってみるとライバルというよりは良き友というイメージの方が強いですね。
――良き友と言いますと
野村 野球と同じく応援部にも東京六大学(応援団連盟)があって、もちろんどの大学とも仲が良いのですが、ケイオーとは仲が良いですし、波長も合う気がしますね。良き友であると同時に、ケイオーだけには負けられないというのがあります。
関口 六大学を盛り上げるのは早慶だというプライドと意地が共通しているかなと。何だかんだ早慶で新しいことを切り開いていきたいというのは共通した意識だと思うので、そこが何となく仲良くなるきっかけかなと思います。
――応援部同士で会うことはよくありますか
野村 よくありますね。
高橋 (体育会の)42の部活で早慶戦があって、大体早慶戦では校歌を歌ってエールを切るということをやっているので、必然的に他の4大学よりはこの2大学が会うことが多いですね。それは下級生の頃からずっと積み重なってきているので、そういうのもあって早慶応援部は仲が良いのかなというのは感じますね。
――リーダーにもその日によって好不調というのがありますか
関口 下級生時代はあまりないですが、自分としては4年生では何となくありますね。学注で一つでも当たれば「よっしゃ!」となって、一つも当らないと「あれ?」と(笑)。
――学注はいつ考えるのですか
関口 前日です。きょうはまだ考えていないのですが(笑)。(取材日は立大戦の前日)
野村 あとは試合の流れに応じてですね。
高橋 僕は大体持ち回が1、4、9回で、1と9なので大体似通った事しか言えないのがつらいところです(笑)。
――話は早慶戦に戻りますが、4年生になっての早慶戦というのはいかがでしたか
関口 うれしかったですね。一番テンションの上がる早慶戦でした。次迎える早慶戦は最後なので寂しい気もするのですが、春のときは楽しくて仕方なかったです。
高橋 僕は大規模というのを強く感じました。下級生時代は(他のカードで)指揮台に上がることも少しはあったのですが、実際に(早慶戦の)試合中に立っているときとは全然違うので、そこでやはり4年生になって規模や観客の多さの違いというのをすごく感じましたね。
野村 私の場合は旗手をやらしていただいているのですが、校旗入場一つでも私がミスをしたら全て終わってしまうというか、観客の方の気持ちもなえると思うので、責任の重大さは下級生時代と違いましたね。
「明大戦の敗北は決して野球部のせいだけではない」
ワセダについて語る野村
――話は変わりますが、広島での夏合宿はいかがでしたか
野村 お寺での合宿だったのですが、良い意味で俗世間と離れることができて没頭することができました。
――下級生時代、合宿の中で最も厳しかったメニューは
関口 そうですね、やはり最後ですね。きついのは基本的に「おんぶ」で、最初の2日目とかはまだ良いのですが、最終日の「おんぶ」はきついですね、坂とか。坂でケンケンとかするのですが結構厳しいですね。
野村 メニューの名前が「地獄巡り」と言うのですが、名前からしてすごいですよね(笑)。「おんぶ」に限らずいろいろな種目があって限界まで追い込まれるので、体力あるなし関係なく自分の限界を常に更新し続けなくてはならないという感じで、食事のときが唯一の救いです(笑)。
――ことしは逆に下級生をしごいたのですか
関口 やはり全員が満足する合宿にしたくて、誰か途中でけがをしたら意味がないので、そこはとても気を遣いましたね。メニューもだんだんきつくなるような感じにしたのですが、やっぱりその、新人のおデブちゃんがちょっとあの(笑)。それ以外は全員大丈夫で、途中ちょっと車で運ばれるということがありましたが最終日までずるずる引きずることはなかったので、そういう点では良かったと思います。私が一番重視したかったのはやはり全員で合宿を乗り越えるということで、そこを一番重視して練習メニューなども作ったので。毎年主将が何を考えて合宿をするかで変わってくると思いますね。
――その合宿を乗り越えて、今秋はいかがですか
関口 野球部も絶対やってやるという気持ちで。それで明大戦のときも「きょうが山場だから」というような話をしていたのですが、重要なところで1本出なかったりとか、失策が出てしまったりというところもありましたが、私たちの応援もまたギクシャクしてしまうところが明大戦でありまして。それが実際は応援とつながっていないかもしれませんが、そういったことがあると何となく通じてしまうかなというのをすごく感じました。
――場の空気などですか
関口 そうですね、やはり何となく私たちがうまくいっているときは野球部もうまくいったりとかいうこともあるのかなと。明大戦の惨戦という結果の中でいろいろ考えたのですが、やはり明大戦の敗北は決して野球部のせいだけではないと思っているので。今週末の立大戦が本当に勝負なので、立大を倒して後につなげたいというだけですね。(結果は2勝1敗で勝ち点獲得)
――ところで、吹奏楽団からリーダーに3年生の方が移られましたね
野村 あれは本人からやりたいと言ってきましたね、春合宿後に。それでいろいろ議論を重ねた上で吹奏楽団の4年生とも話し合ったりして、当時は小暮(美季、法3=埼玉・早大本庄)しかいなくて一人より二人の方が絶対良いということで、結果的に転籍することになりました。
――ここまで見ていていかがですか
野村 そうですね、頑張ってやろうとしている様子は分かるのですが、吹奏楽団とリーダーではやってきたことが全く違うので、それにはちょっと感覚の差とかがありますね。彼自身が冬の期間でどれだけやってくるかですね。
――「これだけはケイオーに負けられない!」ということは
野村 まずは観客を絶対ケイオーより盛り上げるという点が一つで、あとはやはり早慶で結構新しいことをやっているという部分があるので、ケイオーの後を追うというかケイオーのまねをするのは絶対に嫌で、そうではなくワセダが新しい応援方法を考えて、より観客が盛り上がる新しいことをまず先にワセダがやりたいというのがあります。
高橋 僕は応援の質ですね。やはり応援部である限り観客をしっかり率いることが大事ですので、そこでケイオーに負けたくないと思いますね。僕らがどれだけ選手の結果とか、そういったことに反映できるかはわからないですけれども、そういったもので少しでも選手を勇気づけられたらいいなと思っていますし、「ワセダの応援、ケイオーより良いな」とか思ってもらえた方が絶対良いので。そうですね、やっぱり応援の質ですね。そこは絶対負けたくないですね。
関口 ケイオーもケイオーですごくスマートな応援をするので、野球に限らずケイオーは他のスポーツの応援も結構いろいろ考えてやっているのでそれで良いと思うのですが、やっぱり何て言うんですかね。ケイオーには負けられないというのは、自分の大学を思う心とかは絶対負けたくないというか。ケイオーの方が徒党を組むのが結構うまいというかそういう感じがあるのですが、それでもやっぱりワセダは集まったらそこですごく爆発する力を発揮するので、肝心なところはケイオーにも負けていないと思いますね。ここぞというときの力を発揮できるのがワセダ。そういうところはケイオーに負けませんね。
「最後は4年生と一緒に神宮で校歌を」
「神宮で4年生と校歌を歌いたい」と語る高橋
――今月末には稲穂祭があるということでゲストもいらっしゃると伺ったのですが、気合は入っていますか
関口 気合、入っています(笑)。高橋みなみさん(ゲスト)もすごく気合が入っています(笑)。
――なぜ高橋みなみさんを呼ぼうと思ったのですか
関口 毎年同じようなステージをやっていて、ことし(で稲穂祭は)60回なのでちょっと何か違うことをやりたいなと。あと、広報として大隈講堂を満員にしてやりたいと思っていたので。
高橋 ちなみにAKBの高橋みなみさんというのは、好みです。ただの趣味です(笑)。
野村 昔は恐らく芸能人とか呼ばなくても稲穂祭とか満員だったのですが、いや、早慶戦とかも超満員で。いまやはり野球離れとかでいろいろ…ことしは早稲田祭とも(早慶戦の日程が)かぶるので。まずは(ゲストを)呼んで稲穂祭を満員にして、もしかしたらゲスト目的で来る人もいると思うのですが、結果的にその方が応援部のステージを観て、それをみて早慶戦にも行きたいなと思ってもらえたらいいなという感じですね。
――その早慶戦まで残り三週間ですが、自分たちの活動も終わりに近づいているという感じはありますか
関口 そうですね。もうほぼ終わった…?(笑)
野村 最後は早明ラグビーの応援で終わりなのですが、一大イベントはそうですね。もう最後ですね。
高橋 やはり徐々に下の世代をいままで以上に育てていかないといけないなという思いが日に日に強くなっています。
――気合は入っていますか
関口 もちろんです。
高橋 勝ちたいですね。優勝はこの先どうなるか分からないですけど、あした次第というところですね(笑)。あした、あさって試合で仮に結果が駄目だったとしても、何としても早慶戦だけは勝って、と思いますね。
野村 私はどちらかというと応援しているとき野球をほぼ観ていないんですよ。本当に新人のときからずっと観客の目とかしか見ていなくて。4年生になっても変わらないのですが、4年間ずっと観客の目を見ていたので早慶戦最後本当に(客席と)一体になれたらいいなと思いますね。
関口 そうですね、いや、もう最後まで出し切るしかないというか。悔いのないようにやりたいですね、自分自身が。というのと、あとは集大成として、下級生に「良い早慶戦だった」と思ってもらえたらそれで十分です。あとは4年生ですね。来ていただいた4年生に、「最後来てよかった」、「ワセダでよかったな」と思ってもらって、最後一緒に校歌を歌えたらいいなと。
高橋 4年生に来てほしいですね、やっぱり。OBの方とかともいろいろ話していて、4年生といったら現役の早大生としての最後の早慶戦なんですよ、4年の秋って。ということでやはり、その4年の最後に神宮球場に来て、夕暮れを眺めながら一緒に校歌とか、あとはワセダが勝ったときに歌う『早稲田の栄光』を歌ったりとか、そういうのを早大生の最後の一つの大きな思い出みたいな感じで心の中に取っておいてほしいなというのがありまして。4年生をものすごく呼び込むということは具体的にまだできていないのですが、でもやっぱりこれから先、4年生に「最後に一緒に神宮で校歌、『早稲田の栄光』を歌いましょう」ということを呼び掛けていきたいなと思っています。
――早慶戦後、約1カ月で代交代ですが、下級生に伝えたいことは
関口 そうですね、ことしよりもさらに来年、来年よりもさらに再来年と良い部にしていってもらいたいなと思います。つらいことが多いよりは、楽しいことが多い部になってほしいなと思っているので。上に立つ、マネジメントする人間がもっと本当に上の目線になれるような、4年生の声掛けになっていってほしいと思いますし、また、反動的になる者もいるのですが、そういうことがないようにしてほしいなと思います。早稲田大学応援部とはそういう部だと思うので。あとは「模範学生として活動するんだ」という気概を持ってやってもらいたいですね。そのヒット枠は4年生なので、4年生がどのような部を作れば下級生がもっと楽しく応援活動ができて、良い4年間だと思ってもらえるかということをすごく考えてやってほしいなと思いますね。ただ単に下級生に優しくするとか、そういうことではなくて、上下関係は絶対あると思いますし、合宿の最低限のルールはあると思いますけど、そうではない部分でやっぱり優しさというのを考えてやってほしいなと思います。
野村 4年生がしっかりするとかそういうことは当然なんですけど、新人、2年、3年、4年、全員それぞれ一人一人が自分の個性を最大に発揮してほしいですね。4学年いてそれぞれが同じことをやっていても仕方ないと思いますし、人それぞれ長所、短所があると思っていて、それぞれの学年の一人一人が本当に自分の最高の価値とか個性を発揮したら、本当に来年の応援部はもっと良くなると思うので。常に自分の価値を見出してほしいと思っています。
高橋 僕は学年関係なく常に考えながら活動してほしいなと思いますね。やっぱり何も考えずにただ漫然と活動していては何も生まれないので。いろいろ考えて考えて考えて、どうしたらもっと良くなるかということを下級生のうちから考えていくことが、この応援部が成長していく鍵にもなっていくと思いますので。学年関係なくしっかりと考えて活動してもらいたいなと思います。
――では最後に、早慶戦に向けて意気込みをお願いします
野村 4年間の感謝と恩返しを早慶戦でしたいと思っているので、ぜひ早大生全員来てください。早大生だけじゃなくて、早稲田を愛する人全員に恩返しをしたいと思っているので、ぜひ神宮へ!
高橋 勝ちます!!
関口 (早慶戦は)平成25年度がどのような代であったか、どのような1年の応援部であったということの全てなので、平成25年度の応援部、3パートの160人のメンバーで「これが平成25年度の応援部なんだ」というのを見せる場は早慶戦しかないと思っていて、そういった意味でそれに向けて「良かった良かった」で終わらしては意味がないと思うので、最後しっかり締めくくって、「これが自分たちの目指した応援部だったんだ」という結論をしっかり出したいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 三尾和寛、伊能由佳)
幹部集合
◆関口晃由(せきぐち・あきよし)(中央)
東京・東洋高出身。教育学部4年。校歌の指揮を執り、常に厳格な雰囲気を漂わせている関口主将ですが、お茶目な一面も。部室では高橋さんのスリッパを勝手に借りて履いているそうで、「早く返せよ(笑)」と突っ込まれていました。
◆野村隆文(のむら・たかふみ)(左)
兵庫・六甲高出身。教育学部4年。早稲田の定食屋に大盛りメニュー完食の記録が残る野村さん。実は慶大のお膝元、三田のラーメン二郎の大食いランキングにも名を連ねているとか。食でも慶大を圧倒しています。
◆高橋一弥(たかはし・かずや)(右)
神奈川・茅ケ崎北陵高出身。人間科学部4年。関口代表委員主将にスリッパを履かれている高橋さん。仲が良いのかという記者の問い掛けに「仲良くないです!」と否定していましたが、色紙の意気込みを書く際には関口主将と仲良く突っ込み合っていました。