『六旗の下に』 早稲田が魅せた応援への想い

応援

第71回 「六旗の下に」 6月9日 横須賀芸術劇場

 完全優勝で終えた、東京六大学野球春季リーグ戦終了後。東京六大学の応援部、団、指導部が一堂に会する『六旗の下に』が71回目の開催を迎えた。その名の通り「六旗」が立ち並ぶオープニングステージ(オープニング)。そして各大学の演出、そして六大学が共演するフィナーレで会場を大いに沸かせた。「早稲田らしい」応援で魅せたパフォーマンスを振り返っていく。

 オープニングでは六旗紹介が行われ、各校の第一応援歌に合わせ順番に校旗が掲げられた。早稲田大学が掲揚を行った校旗は、令和2年、コロナ禍により、キャンパスに通うことができない状況の中、「早稲田の新たな心の拠り所」として、作成された『大校旗』。吉田成ノ真旗手(法4=埼玉・早大本庄)の掲揚により威風堂々と『大校旗』が掲揚した。吉田も「華の旗手」として雄大荘厳な校旗の存在感を更に高めた。そして、全大学の校旗が掲揚される。各大学が誇る校旗がステージ上にそびえ立つ様子はまさに圧巻そのものであり、『六旗の下に』の始まりを告げる。

オープニングで旗が並ぶ様子  

 オープニングが終わると、各大学の校旗紹介。そして、校歌、応援歌、応援曲、拍手が披露された。東京大学運動会応援部に続き2番目のステージとなった早稲田大学応援部。初めに校旗の紹介が行われ、吹奏楽団の演奏する『早稲田の栄光』に合わせ、吉田により堂々と大校旗が掲げられる。吉田自身、こだわりを持って行ったという、『昇り竜』と呼ばれる左右に大きく振りながらの校旗掲揚は、まさに圧巻であった。続いて披露されたのは早稲田が誇る第一応援歌、『紺碧の空』だ。連盟常任委員を務める園木俊成(社4=千葉・県立船橋)により、早稲田の代表として、堂々たるテクを披露した。

『昇り竜』を披露する吉田

続いて、地本大晴リーダー練習責任者(社4=愛知・東海)により、『伝統の勝利の拍手』が披露された。『伝統の勝利の拍手』は早慶戦にて、早大が勝利したときのみ行われる伝統技であり、海のうねりを思わせる小刻みな乱打から、3拍子、4拍子、1拍子、2拍子を挟んで、最後に勝鬨(かちどき)の声を上げる。荘厳かつ重厚な拍手に思わず観客も息をのむ。情熱あふれる拍手を披露しきった地本に大きな拍手が送られた。続いて、応援曲メドレーがリーダー執行委員8名により行われる。『大進撃』『スパークリングマーチ』『コンバットマーチ』といった早稲田が誇る応援曲に合わせ、リーダー4年生8名が順にステージに登場し、テクを振った。早稲田らしい、数の多さが特徴のテクは六大学のどこよりも迫力があり、圧巻のステージで見るものを唸らせた。

伝統の拍手を披露する地本

  最後に披露されたのは、『早稲田大学校歌』だ。星野聖敬代表委員主将(政経4=東京・早大学院)により校歌が披露される。主将が全身を使って指揮を全うすると、下級生のリーダーも星野の指揮に応えるようにステージの後方から声を張り上げる。司会の豊島悠(教3=神奈川・桐蔭学園)が順調に司会を進行し、30分間の「早稲田らしさ」が存分に詰まったステージが終了した。

 各大学のステージが終わると六大学の応援部が一挙に集うフィナーレ。『六旗の下に』でしか見られないスペシャルステージに観客が沸き立った。各大学が第一応援歌、そして各校の応援曲が次々と披露され、早大のリーダーも清々しい表情でテクを披露する。六大学の応援部、団員が演奏に合わせ、テクを披露し、そして肩を組みながら熱唱した。目を輝かせながら想いをはせる団員たちの姿は言葉にできないほどの感動を巻き起こした。会場は観客による熱気、六大学の団員たちによる熱い思いで満ち溢れていた。

テクを振る園木

 各校の個性が存分に発揮された『六旗の下に』。立大や東大で女性リーダーの活躍も目立つなど多様なステージの中、存在感を発揮した早稲田大学応援部は、今後も応援を通してさまざまな人に力を与えるだろう。

※掲載が遅くなり、申し訳ございません

(記事 井口瞳、写真 橋本聖)

コメント

園木俊成連盟常任委員(社4=千葉・県立船橋)

――『六旗の下に』(『六旗』)を終えての率直な感想をお願いします

 楽しみにしていたのですけれども、本当にあっという間に終わってしまったかなというふうに思います。大変楽しかったです。

――『六旗』に臨むにあたって何か意識したことはありますか

 早慶戦が終わった次の週のあの週末だったので、練習の時間とかですね、なかなか私たちにとっても下級生にとってもすごくむずかしいスケジュールでした。その中でしっかりこだわりを持ったステージになるように、細かいところでしっかりこだわりを持ったステージにするようにしました。ステージの内容で言えば、事前準備の時点で、ステージ自体にも30分間という制約があるのですが、制約がある中でしっかり王道のリーダーの格好よさみたいなものがしっかり伝わるような、全面に出せるようなステージの内容にするように心がけました。実際ある程度達成できたかなと思います。

――早稲田のステージを振り返っていかがでしたか

 4年生に比べると下級生が今年は少ないのですが、言ってきたこととかをステージ本番の場面で短い練習時間だったのにも関わらず、ある程度実現してくれてよかったです。下級生が自覚を持ってやってくれたっていうのが特に見えたかなっていうふうに思います。特に2年生が、ステージに上がったことのない新人に1週間で『六旗』に出るところまでしてくれて頑張ったかなと思います。4年生についても、代を交代してから神宮球場の応援などでテクや発声を今年は特に気をつけてやっていこうと言ってやってきたことが、ステージの場で分かりやすい形でしっかり発揮できたんじゃないかと思います。

――『六旗』で印象的な瞬間があれば教えてください

 (他大学に関しては)明治大学が応援団連盟の当番校で春のリーグ戦を通じても『六旗』の運営を通じても、大変な苦労を重ねて華々しいステージを作っていただけたと、明治大学応援団の人たちには本当に感謝しています。他大学のステージそのものに関してはどの大学も個性があって良かったのではないかなと思います。

 (早稲田に関しては)旗手の吉田が他大学に負けないようなこだわりと技量の高さを見せたということ。そして、こだわって揃えたいと思っていたところがある程度揃えられたこと、とあと1つあるすれば私たちリーダーにとってはずっと憧れてきた舞台なので4年生として舞台に8人全員がしっかりそれぞれが役割を美しい形で果たしたことが印象に残っています。

――『六旗』において、連盟常任委員の活動で印象に残っていることはありました

 下級生の屏風(後ろで拍手をする下級生)が本当に少ない練習の回数で、回を重ねるごとにしっかり練度が上がっていってくれたかなっていうことがまず1つと、3年の豊島君が司会を務めたのですが、内容が冗長でなく、決められた30分という時間で、一番伝えたいこと、リーダーのテクと拍手と旗ですね、なんといってもそこの格好よさというのをアピールするようなこだわりを持った演目構成にしっかり下級生と同期が答えてくれたということと、あとは連盟常任として舞台で『紺碧の空』のテクを振れた、その3つです。

吉田成ノ真旗手(法4=埼玉・早大本庄)

――『六旗の下に』(『六旗』)を終えての率直な感想をお願いします

 やりきった気持ちがすごく強くて、本当に『六旗』と早慶戦に全部懸けていました。旗手ということもあって体をすごく大事にする、筋トレの体作りとかもそれに向けて全部調整したりして食事も調整したりしていて無事やり終えたっていう安心感がありました。

――『六旗』に臨むにあたって何か意識したことはありますか

 『六旗』は題名通り、旗をメインで、だからこそオープニングで六本の旗が上がるし、僕たちのステージ(早稲田のステージ)では旗が上がってからスタートするのでそういう意味で、旗は『六旗』においては重要で旗手っていう役割だからこそ全力をそこに向けました。

――早稲田のステージを振り返っていかがでしたか

 テクの話をさせていただくと、すごく合わせたことを重視していて、例えば『スパークリングマーチ』では僕が真ん中なのですが、3人でテクを合わせる練習をして『コンバットマーチ』もリーグ戦から合わせる練習をして、大勢いるからこそ合わせることに着目してバラバラでやるのではなくて代全体として、4学年全体を通して統制された応援っていうのを意識しました。

――『六旗』で印象的な瞬間があれば教えてください

 印象的な瞬間は3回あって、オープニングで旗が上がって自分のファンファーレが流れるのですが、その時に、ついに4年になったのかという実感と同時に僕ここに立っていいのかなっていう、ちゃんとやり切れてそこに立たせてもらっているのかなっていう不安もあって、少し泣けてきてしまってその瞬間についにここまでやってきたのだと感じました。もう1つは自校ステージで僕が旗を揚げ終わって降納して、帽子をとるのですがその時に感情が溢れてきてしまって、でも(六旗の模様が)撮影されているので、泣くとすごくみっともないと思って隠していたのでなかなか帽子がとれませんでした。3つ目はフィナーレのシーンで、六大学のメドレーが流れるときに、「オールスター感」があって、自分たちのやっていることにちょっと違和感を覚えてしまって、でも楽しくて、4年間他大学とはいっても同じ思いをしてやってきた仲間と一緒のステージに立てるっていうのがすごく嬉しかったです。

――自身の校旗掲揚に関して、心がけていたことはありますか

 園木が今年のステージは旗の時間を長くすると言ってくれて、通常は2分くらいなのですが、今年は3分半ぐらい取ってくれました。それは僕が旗礼にこだわりを持っているので、神宮でも旗礼を長くしたいって言って(少し反発された時もありましたが)、自分たちなりに『昇り竜』の動きを研究したりしていました。当日は安全に気をつけて普段通りやることを意識しました。リハーサルから含めて4回も旗を挙げたので、練習でも4回挙げたことはなかったので、緊張しました。

――残りの期間への意気込みお願いします

 この半年間でいろんな経験させてもらって神宮で全部、僕が旗をあげたり、優勝パレードをさせていただくことができました。しかも早慶戦では大雨の中で無理矢理「揚げさせてほしい」と言って、旗を揚げさせてもらったり、『六旗』でもいい位置に置いてもらったり、旗手としてすごく充実していました。自分でもまだまだ足りないなと感じていて、成長できる期間ですので、次の半年はその成長を活かせられるように、より筋トレをしてより体を柔らかくなって下級生の指導にもっと熱中して、自分の伝えられるものはこの半年間でしっかり伝えたいです。