9月9日に開幕した東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)。第2週から登場する早大にとっては、16日の東大戦が初戦となる。昨シーズンは開幕から2カード連続で勝ち点を獲得し順調な滑り出しを見せたが、中盤以降失速し4位に終わった早大。昨春からの巻き返しを誓い、南魚沼での夏季キャンプや夏季オープン戦でチーム力の向上にいそしんだ。6季ぶりの賜杯奪還に向けて勢いをつけるべく、東大戦では夏の成果を発揮して勝ち点を獲得したい。対する東大も第1週に行われた明大戦では、投手陣が底力を見せ2戦とも接戦に持ち込んでおり、注意が必要なチームである。
エース・加藤の投球で勢いづけられるか
東大の投手陣を引っ張るのは、松岡由機(4年)と鈴木健(4年)の2人だ。今春から二枚看板として活躍する2人は、秋の開幕カードでも力を存分に発揮した。開幕戦を任された松岡が7回1失点、鈴木健はロングリリーフでの起用となったが5回無失点と、ともに強力・明大打線を相手に好投。また両投手とも昨春の早大戦に先発して、中盤まで粘りのピッチングを見せているだけに、早大としても両投手を攻略できるかが試合のポイントになるだろう。この2人の他に平田康二郎(3年)も控えている。明大2回戦では先発に抜てきされるなど着実に実力をつけてきており、投手陣により一層の厚みをもたらしている。
リードオフマンとしての活躍を期待される尾瀬
対する早大打線。今春の対戦では2戦合わせて23点を奪い、東大投手陣を攻略してみせた。打線のキーマンとしては、まず不動のリードオフマン・尾瀬雄大(スポ2=東京・帝京)の名前が挙がる。今年に入って1番打者として起用されると、昨春はチーム内の最高打率とリーグトップの得点数をマークして、その地位を確実なものにした。六大学オールスターゲーム(オールスター)や夏季オープン戦でも好調を維持しており、指揮官からの信頼も厚い。早大の斬り込み隊長として、今秋も尾瀬の活躍に期待がかかる。打線の中軸を担う、熊田任洋副将(スポ4=愛知・東邦)の打撃も勝利には不可欠だ。昨季の東大戦では鈴木健から本塁打を放ち、勝利に貢献している熊田。オールスター、侍ジャパンU-18壮行試合でも限られた打席数の中で適時打を放っており、得点圏での勝負強さは健在だ。リーグ戦でも塁上のランナーを返すバッティングで勝利を手繰り寄せられるか。加えてオープン戦で好調ぶりをうかがわせたのが、森田朝陽主将(社4=富山・高岡商)だ。社会人チームから本塁打を放つなど状態の良い打撃を見せている。リーグ戦序盤は代打での起用が予想されるが、主将としてチームをけん引する森田朝のバットからも目が離せない。
一方、昨春はチーム打率が1割7分5厘と貧打にあえいだ東大打線。前節の明大戦でもわずか1得点と、一見好調のようには見えないかもしれない。しかし2戦合わせて14安打を放っており、打線のつながりが生まれれば怖い存在となるのは間違いない。打線の起爆剤として注目されるのが、トップバッターの酒井捷(2年)だ。昨季は早大のエース・加藤孝太郎(人4=茨城・下妻一)から本塁打を放つ活躍を見せている。今季も開幕から2試合連続安打と、チーム唯一の得点を記録している酒井捷。選球眼にも優れており、足を使った攻撃もできるため、早大投手陣としては、まずはこの酒井捷を抑えて相手の攻撃の芽を摘みたいところだ。
リーグ戦デビューが期待される香西
早大にとって優勝の鍵を握る投手陣。長らくチームを支えてきたエース・加藤もついに最後のリーグ戦を迎える。東大に対しては、3年春から4年春にかけて3季連続完投、通算対戦防御率も0.53と圧倒的な成績を残している。直前のオープン戦では、制球に苦しみ安打や四球で走者をためる「らしくない」投球も見られたが、有終の美を飾るべく得意の東大戦で本来の調子を取り戻したい。加えて早大にとって課題となっているのが、2回戦の先発だ。これまでのシーズンでは、1回戦で加藤が好投を見せるも、2戦目以降に投手陣が打ち込まれ勝ち点を逃すカードが目立った。優勝に向けては加藤の他にもう一人安定した先発が必要になる。候補に挙がっているのは、伊藤樹(スポ2=宮城・仙台育英)と越井颯一郎(スポ1=千葉・木更津総合)の2人だ。伊藤樹は1年時から抑えとして起用され、安定した成績を残してきた。越井はルーキーながら春の早慶戦で神宮デビューを飾り、オープン戦でも先発を任されるなど首脳陣からの期待は大きい。中継ぎ陣には経験豊富な齋藤正貴(商4=千葉・佐倉)のほか、精密なコントロールが武器の香西一希(スポ1=福岡・九州国際大付)らが控えている。抑えだった伊藤樹が先発に回れば、抜けた穴をどのような継投で埋め合わせるのか。10シーズン目を迎える小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)の手腕と合わせて注目だ。
春は東大に快勝して幸先の良いスタートを切ったが、結果的に栄冠には届かなかった。春の悔しさを糧に、収穫と課題をつかんだ夏。秋を迎えて、成長した姿を見せることができれば賜杯奪還は近づくはずだ。東大戦の翌週には、4連覇を狙う明大との対戦が組まれている。リーグ優勝そして日本一に向けて、まずは東大を相手に連勝を飾り良い流れをつくることができるか。
(記事 廣野一眞)