今季大ブレイクを果たした山縣秀(商2=東京・早大学院)。持ち前の守備力で開幕スタメンを勝ち取ると、打撃でもチームをけん引し、ここまで全試合でスタメン出場を続けている。飛躍のシーズンとなった今季を振り返ってもらうとともに、早慶戦を前にした思いを伺った。
※この取材は10月24日に行われたものです。
「いい戦いができているかなと思います」
ここまで充実のシーズンを送っている山県
――最近ハマっていることや趣味はありますか
趣味はピアノで、普段は家で弾いたりしています。小学校2年生の時からやっています。
――普段はどんな曲を弾きますか
普段はショパンだったりクラシックの曲を弾いて、息抜きにJPOPを弾いたりしています。
――特に仲のいい選手はいますか
特に仲いいのは薗部(将大、教2=東京・早大学院)ですね。高校の時から同じで、(早大野球部に)誘ってくれたのも園部なので。
――試合前に聴く音楽はありますか
試合前はいろんな音楽を聴くので、これといったのはないんですが、Saucy Dogとかリトグリを聴いたりしています。
――チームとしてここまでのリーグ戦を振り返るといかがですか
明治戦は2個落としてしまったんですけど、そこ以外はかなり良い形で勝てているので、そこは自信もっていい戦いができているかなと思います。
――いい感じに来ているということですが、チームの雰囲気もいいのでしょうか
そうですね。早慶戦に向けてまた引き締めていこうという感じです。
――リーグ戦の中で印象に残っている試合はありますか
僕はデビュー戦が最初の法政戦だったので、それが一番印象に残っています。
――これまで全試合スタメン出場を果たし、レギュラーを勝ち取ったシーズンだと思いますが、個人として振り返るといかがでしょうか
1試合1試合しっかり集中して戦えているというところでは、自分でも自信になりましたし、結果出る出ないに関わらずチームが勝てるようなことが一つでもできればという思いでやってきたので、そこについては良かったなと思います。
――開幕スタメンを勝ち取った時の気持ちは
前日の夜にスタメンが発表されるんですけど、自分はスタメンじゃないと思っていたので、「スタメンなの!? 」という驚きと、そこから「緊張してきたな、でもせっかく出るんだから楽しもう」という感じでした(笑)。
――その日は眠れなかったですか
そうですね。眠りにつくまでは時間はかかりました(笑)。
――オープン戦で出場機会も増えたように思いますが、スタメンは全く予想していませんでしたか
オープン戦でも途中出場が多かったり、最後の練習試合も全部出るといいうのはなかったので、自分は途中からでも出場できればいいなと思っていました。
――では本当にサプライズだったんですね
本当にそうです。
――春リーグでは代走・守備固めの3試合の出場に留まっていました。春のリーグ戦を振り返ると
チームとしてはあまり良い試合ができなくて悔しかったです。特に自分が出てない試合の方が悔しかったんですよね。この相手に負けて、さらに自分が出ていないとなると、出てない人たちよりも力がない訳なので、力の差をすごく感じさせられたリーグでした。
――ではその春リーグから秋リーグに向けて夏を通して取り組んだことはありますか
とにかく「一球を大事にしよう」という思いを大事にして練習してきました。一球の重みというか一個ミスをしたらそのミスのせいで負けるかもしれないという風に思って、一個のボールに対する集中力や執着心というのを大事にしてきました。
――具体的な練習は
練習内容としては春とは変わらないんですけど、中川(卓也、スポ4=大阪桐蔭)主将が普段から雰囲気を良くという風にしていたので、また春とは違う雰囲気でできたと思います。
「中学校くらいから「守備キャラ」と言われていた(笑)」
軽快な守備はもはや代名詞になっていると言えるだろう
――秋リーグの話に戻ります。初戦の法大1回戦で、初打席でいきなり3塁打を記録しました。振り返るといかがですか
あまり覚えてないんですけど(笑)。緊張していて、思い切り振ったら当たったという感じでした。真っすぐを思いっきり振ろうという感じだったと思います。本当にあまり覚えていないです。(笑)
――山縣選手と言えば軽快な守備が売りだと思います。守備について振り返るといかがですか
飛んできたボールを確実にアウトにするというのを意識していたので、そこはそつなくこなせてよかったなと思います。でもこの秋を通してノーエラーを目指していたので、この間の立大戦で一個無駄な送球をしてしまったところがあって、そういうところは改善していきたいと思います。
――今シーズンの守備のベストプレーをあげるとしたら
明大1回戦の上田希由翔選手(3年)のショートゴロを二遊間に抜けそうだったのを取ってアウトにしたのは、そこに行くというのを予想して守っていたので、それが実際にできたのは一番良かったなと思います。
――それはチームのデータなどで予想していたのでしょうか
自分で前の試合とかを見ていて、ここに来そうだなというくらいに思っていたんですが、それくらいの予想でした。
――普段からそのような準備はされているんでしょうか
自分はめちゃくちゃ足が速いとかいうのではないので、そういうところでカバーできたらいいなという感じでやっています。
――同じポジションの熊田任洋(スポ3=愛知・東邦)選手や中村敢晴(スポ2=福岡・筑陽)選手は二人ともスポーツ推薦の選手で手強いライバルだと思いますが、どのように思われていますか
熊田さんに関しては自分がショートって決まる前から先にセカンドに移動されていたので、熊田さんから奪ったという感じではないんですよね。熊田さんが先に動いて、ショートを敢晴と争うという感じだったので、熊田さんに関してはあまり関係ないです。
――熊田選手はなぜセカンドになったのでしょうか
監督の意向です。この秋は熊田さんはセカンドにするという感じで。
――そうなんですね
なので熊田さんは自分から奪われたみたいに見えるんですが、全然そうではなくて(笑)。
――空いた部分を争っていたんですね。中村敢晴選手については
入学した時にショートにスポーツ推薦がいると聞いて、結構終わったなという感じでした(笑)。でも二人で教え合ったりとかして、二人で成長できているのはすごいいいかなと思います。自分たちが4年生になった時に、敢晴と二遊間組みたいと思ってやっているので、それは実現できたらいいなと思います。
――昔から守備は得意だったのでしょうか
そうですね。中学校くらいから「守備キャラ」と言われていて(笑)。いわゆるバッティングは置いといて守備でみたいな。中学校くらいからは守備守備という感じでした。
――そのころかショートだったんでしょうか
セカンド、サードはやってたんですけど、主なポジションはショートという感じでした。
――守備をする上で気を付けていることはありますか
守備する上では、基本あんまり考えていないんですよね(笑)。でも練習では段階を踏んでやるようにしています。例えば個人練習では形を意識してやって、全体であるバッティング練習の時の守備では形をある程度崩してもいいから攻めた守備をして、全体練習の守備練習の時はミスをしないようにみたいな。攻める強度を変えて、目的を変えてやるようにしています。
――他の記事で拝見したのですが、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)も「六大学で一番うまいショートになる可能性がある」と語っているように、監督からの期待も厚いようですが、何か言葉をかけられたりしましたか
あの取材を受けたときに初めて言われたので、自分が一番驚いています(笑)。
――練習の時に声をかけられたりは
そういうのはないですね。普段から監督さんと話すことはあまりないので、その時にそんな風に思ってくださるんだという風に思って、少し自信になりました。
――同じ記事で学生コーチの方から、進言があったと拝見したのですが
冨永(直宏新人監督、文4=東京・国学院久我山)さんが推薦してくださったという話があったんですけど、詳しくはわからないです。冨永さんと話したときは、「(中村選手と)どっちで行くかわからないから準備だけはしておいて」という風に前日のお昼に言われたんですけど、スタメンは夜に言われるまで全く分かりませんでした。
――守備をする上で、目標にしている選手だったり憧れの選手はいますか
ちょっと前の選手になるんですけど、ロッテの 小坂誠選手(元千葉ロッテマリーンズ)というんですけど、本当に守備が上手い選手で。参考というよりは、こんな感じになれたらいいなという風に思っていました。
「早慶戦はドキドキとワクワクとどっちもある感じです」
時折見せる勝負強い打撃にも注目だ
――打撃の話に移りたいと思います。打率はチーム1位で、ほぼ毎試合で安打が出ています。打撃は好調なのでしょうか
好調だと思います(笑)。でも本当になんか自分が打っているという印象はなくて、本当にたまたまみたいな感じが続いているので。「は!たまたまヒットになってくれた!」みたいな感じがずっと続いている感じです。なので調子が良い悪いとかではなくて、持ってるなという感じで思っています。
――打撃フォームを変えたり具体的に何かを変えたとかではないんですね
リーグ戦の直前にフォームをコーチの方から言われて変えました。
――ではそのフォームで結果が出せている
フォームを変えたから結果が出ているのかは分からないんですけど、このフォームで打てているということは今はそれでいいのかなと思っています。
――立大1回戦では延長10回に勝ち越しの二塁打を放たれました。あの場面を振り返ると
打席に入る前に吉納(翼、スポ2=愛知・東邦)が息を吸え、リラックスをしろというジェスチャーをしてくれたのでそれで結構落ち着けたかなと思います。
――狙っていたのでしょうか
あそこはホームランを打ちたいなと思っていました(笑)。
――打撃ではどのようなところを心がけていますか
普段から言われているのは「相手から見て嫌なバッターになれ」というので、そこを一番意識しています。でも自分の持ち味は積極性だったり、初球から振りに行くといったところなので、そこは忘れないようにして嫌なバッターになれたらいいかなと思います。
――今のところそのような目標に対して何点くらいつけられるでしょうか
バッティングは少し三振が多いので、70点くらいですね(笑)。
――反対に打撃面での課題はありますか
速いボールに対するときにボール球を振ってしまうというか。そこはすごいもったいないのでストライクとボールを見分ける選球眼が課題かなと思います。
――早稲田の攻撃について
自分が出たときにほとんど返してもらっているという印象なので、そこはすごい心強いですし、 あとはカバーし合うというか前の人が出られなかったときに次の人が一本出すみたいな、そういうカバー力が出ている試合も多いなと思います。
――一方、投手陣についてはどう思われていますか
本当に投手陣には毎回助けられているので。本当に出来すぎなんじゃないかというくらいに思っています。
――どのような選手になりたいという目標はありますか
バッティングで「嫌な選手になりたい」と言ったのもそうなんですが、守りでも走塁でも「ここに打ちたくないな」とか「こいつ塁に出したくないな」と思われる選手になりたいです。
――早慶戦についてはどのようなイメージがありますか
自分が高校3年生の時に蛭間(拓哉副将、スポ4=埼玉・浦和学院)さんが逆転2ランを打った印象が強くて。あんな舞台で活躍している選手は凄いなという風に思っていたので、早慶戦はドキドキとワクワクとどっちもある感じです。
――現地で見ていたんですか
自分はその時は試験前で勉強していました(笑)。その勉強をしつつスマホで見ていました。
――慶大というチームはどのようなチームだと思いますか
とにかく強いなという印象です。バッター陣はしっかりとらえてきて足も速いですし、ピッチャー陣も今シーズンは特に抑えている印象があるので、怖いなという印象ですね。
――早慶戦に対する意気込みをお願いします
自分はまだ2年生ですけど、4年生とやるのは最後になる可能性があると考えると、自分はまだ長くやりたいので、その先の全日本選手権だったりにつなげていけるような活躍ができたらいいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 玉置理沙子)
◆山県秀(やまがた・しゅう)
2002(平14)年5月1日生まれ。176センチ、74キロ。東京・早大学院高出身。商学部2年。内野手。右投右打。試合中のはじける笑顔が印象的な山縣選手。対談でも終始にこやかに、気さくに質問に答えてくれました。早慶戦でも山縣選手の笑顔が見られるか注目です!