1年春から神宮のマウンドに上がり、チームに欠かせない存在となっている伊藤樹(スポ1=宮城・仙台育英)。春季リーグ戦では、火消し役として幾度となくチームのピンチを救ってきた。そんな今季の自己評価、今週末に控えた大舞台への思いとは。早大の未来を担うルーキーの心中に迫った。
※この取材は5月17日にオンラインで行われたものです。
自分の度胸で勝負できている
ルーキーながらここまで圧巻の投球を見せている伊藤樹
――チームとしての今季の振り返りをお願いします
リーグ戦が始まるまではすごく投手陣が試合を崩してしまっていたのですが、リーグ戦中は結果だけ見たら点を取られてはいるんですけど、オープン戦のときよりは投手陣全体で抑えるってところの意識がすごく上がっているなと感じています。負けが続いている状態なんですけどすごく雰囲気が良くて、自分が今まで経験した中では負けているときにチームの雰囲気がすごく下がると感じていたんですけど、負けててもどうにかしようというのとこういう時は明るくいこうぜという雰囲気がこのリーグ戦の中ですごく見られてて、登板するときも楽しく投げれています。チーム全体も負けてはいるんですけど、少しずつ良いところが出ていてミスも出ているんですけど、結果として秋につながるいいリーグ戦だったのかなと思います。
――伊藤選手個人について伺います。今の個人成績についてはいかがでしょうか
今は終盤の方も継投を任されているので、やっぱり同点のケースとか負けているケースが多い中でマウンドに上がっているのですが、7イニング投げて1失点というかたちで自分の中ではいい方かなと思っています。もっとイニング投げればわからないですけど、自分の強みを活かしたボールとピンチとかで登板しても今までの経験とか自分の度胸で勝負できているのかなと思います。本当であれば電光掲示板に載っている防御率とかっていうランキングに載りたいんですけど、まだそのくらいの出番がないので、秋以降はあのランキングの上位に食い込んでいけるようなピッチングができたらいいなと思ってます。
――シーズン初登板となった明大戦についてはどうですか
初登板があのような場面になるとは思っていなかったので、びっくりはしたんですけど、あの場面でしっかり投げられないと任された意味がないと思いますし、自分のピッチングをするだけだなと覚悟を持ってずっとここまでやってきていたので、その成果がうまく出たというかちょっとした緊張とかもうまくボールにのったのかなと思います。
――5つのアウトのうち4つを三振で奪いましたが、いかがですか
そんなに狙っているわけではないんですけど、やっぱりストライクを先行し続けているからこそ三振は取れるものだと思っています。特に意識をせず球数を少なくしようとカウントを稼いでいる中で結果的に三振になっているので、自分としては一番ミスが少なくアウトを取れるため良い結果につながっているかなと思います。
――3回戦では5回からの登板となりましたが振り返っていかがですか
高校のときに途中からロングリリーフするというのは経験していたので、特に驚くことはなく、前の日に途中からいくということは言われていたので、それに備えて準備できたのがすごく良かったのかなと思います。結果的には失点してしまったのでそれは自分の中ですごく心残りです。あの1点がなければ同点で勝ちにつながっていたと思うのでそれはすごく申し訳ないですし、悔しい部分でもあります。
――ここまでのリーグ戦の投球で収穫はありましたか
明大戦では真っすぐで押してくるピッチャーというイメージで相手に見てもらったと思うんですけど、立大戦ではそのイメージを覆すように変化球を多くして投げられたので、良かったです。当然相手チームにはデータを取られている中で、自分の勝負できるボールに相手がどのような反応をしてくれるかがすごくいい経験になりました。
――逆に、ここまでで見つかった課題はありますか
冷静には投げられていると思うので、途中から登板してピンチを押さえてチームにいい雰囲気を持っていけるような気迫あふれるピッチングができるように、まっすぐのコントロールを良くして強いボールを投げられるように改善していかないといけないなと思います。
――対戦した中で印象的だった選手はいますか
バッターと対峙したときにある程度の雰囲気で打たれそうだなとかが分かるのですが、明治大学の宗山さん(塁、2年)は打席の中の雰囲気というか、どう抑えればいいのか考えながら投げてしまって結果的にフォアボールになってしまい、打席の中の落ち着きというか雰囲気がすごく自分としてはすごく投げにくかったです。結果的に打率も残していますし、すごくいいバッターと対戦するチャンスだったんですけど、フォアボールだったので、すごく心残りがあります。
自分のボールを投げることができたのは先輩方のおかげ
高い奪三振率を誇る伊藤樹
――続いてチームの話なのですが、投手陣全体の雰囲気はいかがですか
結果だけを見るとほとんどのピッチャーが球速のマックスをリーグ戦で更新しているので、それに関しては調子を合わせるということと練習の成果を出せているという意味で良い練習ができているのかなとは思います。ピッチャー陣で何とか勝たせようっていう雰囲気を原さん(功征、スポ4=滋賀・彦根東)含め上級生が引っ張ってくれていてそれについて行っているだけなのですが、一人一人が自分の役割を投げきろうとしっかりやれている中でこういった結果が出ているのかなと思います。
――加藤選手(孝太郎、人3=茨城・下妻一)が防御率トップと好投していますが、どのように感じていますか
加藤さんは自分が投げない試合でも相手のバッターを見て、自分でメモのようなものを残していてすごく尊敬できて、そういった部分が結果に結びついているのかなと思ったのですごく頼れるピッチャーです。
――初登板で活躍した中森選手(光希、文構2=大阪・明星)や鹿田選手(泰生、商2=東京・早実)についていかがですか
中森さんに関しては今住んでいる寮も同じで仲良くさせていただいていて、先発から中継ぎまですごく大変なポジションをしていただいている中で、すごく良いボールを投げていて本当に良いピッチャーだと思います。鹿田さんもマックスを更新していて、1個上の先輩たちからそういった良い刺激を感じながら投げられているので、すごく頼もしいピッチャーだと思っています。
――何か先輩からアドバイスなどをいただいたりしましたか
神宮のマウンドに関してすごく教えていただいて、今までやってきた球場と段違いにマウンドに硬さがあるのでその対策というかどういった感じで投げた方がいいということを教えていただいて、リーグ戦ではスムーズに自分のボールを投げることができたのは先輩方のおかげかなと思っています。
投げる機会があればしっかり投げたい
早慶戦ではリーグ屈指のスラッガーたちと対戦する
――入学して初めての早慶戦となりますが、早慶戦についてはどのようなイメージをお持ちですか
テレビでしか早慶戦を見たことがないので、球場の雰囲気とかはわからないんですけど、大観衆の中で一球一球に歓声が沸いてというところが甲子園と似ているように感じていて、その一戦にかける思いっていうのが両チームとも違うと思うので、そこに自分の気持ちとのギャップがでないようにしたいなと思っています。早慶戦は一球一球に歓声が沸いて、すごく両校の思いが強く出る試合だと思っています。
――早慶戦に向けたチームの雰囲気はどうでしょうか
優勝はない状態で早慶戦に向かうので、とにかく慶大には負けてられないというプライドはメンバーに入れてもらっている以上1年生とかは関係なく背負っていくものなので、もし出番があればそういった思いを背負って一球一球投げたいなと思っています。
――今年の慶大のイメージはいかがですか
安定したピッチャーがいることと、一発がでるバッターがすごく多いという印象です。
――意識している選手などいますか
そうですね、バッターを見る限りだとやっぱり萩尾選手(匡也、4年)かなと。広瀬選手(隆太、3年)とかの方がイメージは強いかなって思うんですけど、キーマンは萩尾選手かなと思っているので、打たれて雰囲気が悪いまま広瀬選手とか下山選手(悠介、4年)を迎えないようにしたいなと思っています。
――勝利のキーパーソンとして注目している選手はいますか
ピッチャー陣だと原さんかなと。原さんは左サイドですごく特殊なポジションにいて、右ピッチャーの速い人たちがそろっている中で、原さんをどういったところで使って、どのように抑えるかというのが大事になってくると思います。守備陣の方だと、だれが打ったらということはないですけど、個人的に松木さん(大芽、スポ4=石川・金沢泉丘)が好きなので頑張ってほしいです(笑)。
――最後に早慶戦に向けて意気込みをお願いします
早慶戦でこのリーグ戦はラストになるので、投げる機会があるのあれば任されたイニングをしっかり投げ切りたいって思うのと、優勝というかたちはないんですけど、チームとして勝ち点を挙げて秋につながる良い結果として締めくくりたいと思います。個人の成績としては登板イニングを長くして0に抑えたいということと、チームとしては勝ち点を挙げることを大事にしてやっていきたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 小澤慶大)
◆伊藤樹(いとう・たつき)
2003(平15)年8月24日生まれ。176センチ、78キロ。宮城・仙台育英高出身。 スポーツ科学部1年。投手。右投右打。春季リーグ戦では21個のアウトのうち10個を三振で奪った伊藤選手。早慶戦では愛用している青と赤のグローブを使い、慶大打線を封じ込める姿に期待が寄せられます!