TEAM | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |||||
慶 大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 | |||||
早 大 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | |||||
(早)徳山、西垣―岩本 ◇(二塁打)岩本2、福本 |
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皆の希望を乗せた飛球が、慶大二塁手・古川智也(3年)のグローブに収まる。その瞬間、『奇跡』の逆転優勝の夢は無情にもついえた。逆転での東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)優勝に向けて、勝利が絶対条件の早大は、初回に岩本久重副将(スポ4=大阪桐蔭)が走者一掃の3点適時打を放ち、試合の主導権を握る。先発・徳山壮磨(スポ4=大阪桐蔭)は、力強い直球を中心に慶大打線に得点を許さない。しかし、5回に1点を失うと、7回には守備のミスも絡み、同点に追いつかれる。勝ち越しを狙う早大は、8回には2死一、三塁、9回には2死二塁の好機をつくるも、快音は響かず。東京六大学リーグ単独最多47回目の優勝は、来年以降に持ち越されることとなった。
絶対に負けられない一戦は、初回から大きな山場を迎えた。徳山は、連打と盗塁でいきなり無死二、三塁のピンチを招く。しかし、エースは持ち味の粘り強さを発揮する。3番・下山悠介(3年)を左飛に打ち取ると、続く正木智也(4年)、廣瀬隆太(2年)にも安打を許さず、初回を無失点に切り抜けた。するとその裏、打線が二死からつながりを見せる。二つの四死球と安打で満塁のチャンスをつくると、打席には6番・岩本副将。2球目のチェンジアップを捉えた打球は、右中間を破る走者一掃3点適時打となり、いきなり3点を先制した。
先制の3点適時二塁打を放つ岩本
先発・徳山は2回以降、走者を出しながらもストライク先行の投球を見せ、慶大打線に得点を与えない。5回には、2死二、三塁から2番・渡部遼人(4年)の遊撃手への内野安打で1点を失うも、2点リードで試合の後半を迎える。
しかし迎えた7回、好投を続けていた徳山が乱れる。二死走者無しから古川に中前打を許すと、代打・若林将平(4年)にも四球を与え、迎えるは前の打席で適時打を放った渡部遼。6球目の変化球を捉えた打球は右前適時打となり、1点を失う。さらに、本塁タッチアウトを狙った右翼手・蛭間拓哉(スポ3=埼玉・浦和学院)の送球が逸れ、慶大ベンチに入ってしまう。これで慶大に安全進塁権が与えられると、一塁走者・若林の生還が認められ、同点に追いつかれた。引き分けすらも許されない早大にとっては、痛恨の1点となった。
8回3失点の力投を見せた徳山
一方の打線は、慶大救援陣の前に5回から3イニング連続三者凡退に抑えられるなど、初回以降沈黙が続いた。その中で終盤の8回、千載一遇の好機が訪れる。先頭の鈴木萌斗(スポ4=栃木・作新学院)が出塁すると、2死後、2番・福本翔(社4=東京・早実)が左前打を放ち、一、二塁の好機をつくる。打席には、昨秋の劇的弾が今なお記憶に新しい蛭間。昨秋の再来が期待されたが、慶大守護神・橋本達弥(3年)の前に、空振り三振。決定機を逃した。
8回、好機で三振に倒れ唇をかむ蛭間
9回表のマウンドには、前日119球の粘投を見せた西垣雅矢(スポ4=兵庫・報徳学園)を送る。西垣は1死三塁とされるも、連続三振で切り抜け、早大に流れを呼び込んだ。そして迎えた最後の攻撃、先頭打者は今季躍進の原動力となった今井脩斗(スポ4=埼玉・早大本庄)。6球目を振り抜いた打球は、三遊間を破るかと思われたが、慶大遊撃手・朝日晴人(3年)がダイビングキャッチ。相手好守に阻まれ、貴重な走者を出塁させることができない。丸山壮史主将(スポ4=広島・広陵)も三振に倒れ、絶体絶命の状況を迎える。この場面で6番・岩本が、バットを折りながらも三塁線を破る二塁打を放ち、一打サヨナラの場面をつくる。『まだ試合は終わっていない』。この日一番の盛り上がりとなる早大ベンチとスタンド。打席には代打・小野元気(人4=千葉・芝浦工大柏)。しかし、願いはかなわず、小野は二飛に倒れる。早大ナインは、マウンドにできた歓喜の輪を見つめるしかなかった。
『強い早稲田を取り戻す』。この言葉のもとに、現体制は幕を開けた。そして、掲げたチームスローガンは、早大野球部の精神そのものである『一球入魂』。小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)が「十字架」と語るものを背負ったチームは、苦難の連続であった。連覇を狙った春季リーグ戦は、まさかの5位。徳山、西垣の『Wエース』の状態は上がらず、打線も好機での一本を欠いた。逆襲を期した夏、小宮山監督が出した指令は、「自分の人生に於(お)いて、最も忘れられない夏にせよ」。猛練習のかいもあり、夏季オープン戦では「後半の強さ」(丸山主将)を発揮し、順調に勝利を重ねていった。
自信を胸に臨んだ今季、開幕カードの立大戦でまさかの連敗。続く東大には連勝するも、法大戦は痛恨の2試合連続の引き分け。この時点で優勝は、絶望的となった。しかし、早大はここからはい上がる。明大1回戦では、9回2死から2点差をひっくり返しての大逆転勝利。『一球も無駄にせずに、次の打者に何としてもつなげる』。その思いが、選手たちからはひしひしと伝わってきた。続く明大2回戦、慶大1回戦を連勝。2回戦で勝利を収めれば、逆転優勝という状況に持ち込んだ。そしてこの日も、どんな状況であっても誰一人諦めることなく、目の前の一投一打に全力を尽くす。その姿はまさに、『一球入魂』を体現するものであった。一方で、優勝を逃したという事実は変わらない。この日の悔しさを晴らすために――。『強い早稲田を取り戻す』ための戦いは、まだ道半ばだ。
試合後、応援部やベンチを外れた部員らとともに写真を撮るナイン。王者・慶大に対しあと一歩のところまで迫った
(記事 杉﨑智哉、写真 山崎航平)
早大打者成績 | ||||||||||||||||
打順 | 守備 | 名前 | 打 | 安 | 点 | 率 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | (三) | 中川卓也 | 4 | 0 | 0 | .333 | 中飛 | 一ゴ | 二ゴ | 二ゴ | ||||||
2 | (左) | 福本翔 | 4 | 2 | 0 | .400 | 右飛 | 左2 | 左飛 | 左安 | ||||||
3 | (右) | 蛭間拓哉 | 3 | 0 | 0 | .220 | 四球 | 中飛 | 遊ゴ | 空三 | ||||||
4 | (一) | 今井脩斗 | 4 | 1 | 0 | .471 | 左安 | 空三 | 空三 | 遊直 | ||||||
5 | (二) | 丸山壮史 | 3 | 1 | 0 | .237 | 死球 | 中安 | 見三 | 空三 | ||||||
6 | (捕) | 岩本久重 | 4 | 2 | 3 | .220 | 右2 | 空三 | 一邪 | 左2 | ||||||
走 | 西田燎太 | 0 | 0 | 0 | .000 | |||||||||||
7 | (遊) | 熊田任洋 | 3 | 0 | 0 | .114 | 遊ゴ | 遊飛 | 投ゴ | |||||||
打 | 小野元気 | 1 | 0 | 0 | .000 | 二飛 | ||||||||||
8 | (中) | 鈴木萌斗 | 3 | 1 | 0 | .220 | 三飛 | 空三 | 中安 | |||||||
9 | (投) | 徳山壮磨 | 2 | 0 | 0 | .273 | 二飛 | 遊飛 | ||||||||
打 | 小西優喜 | 1 | 0 | 0 | .000 | 空三 | ||||||||||
投 | 西垣雅矢 | 0 | 0 | 0 | .308 |
東京六大学秋季リーグ戦星取表 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | 慶 大 | 早 大 | 明 大 | 立 大 | 法 大 | 東 大 | 勝ち点 | 勝 | 負 | 分 | 勝率 | |
1 | 慶 大 | ※ | ●3-5 △3-3 |
△4-4 △2-2 |
○8-5 △2-2 |
○11-2 △0-0 |
○15-1 ○4-1 |
6.5 | 4 | 1 | 5 | .800 |
2 | 早 大 | ○5-3 △3-3 |
※ | ○8-5 ○3-0 |
●0-4 ●2-5 |
△0-0 △0-0 |
○23-1 ○19-0 |
6.5 | 5 | 2 | 3 | .714 |
3 | 明 大 | △4-4 △2-2 |
●5-8 ●0-3 |
※ | ○2-1 ○5-4 |
△4-4 △6-6 |
○9-0 ○22-0 |
6 | 4 | 2 | 4 | .667 |
4 | 立 大 | ●5-8 △2-2 |
○4-0 ○5-2 |
●1-2 ●4-5 |
※ | ○8-3 ○4-1 |
○15-6 ●4-7 |
5.5 | 5 | 4 | 1 | .556 |
5 | 法 大 | ●2-11 △0-0 |
△0-0 △0-0 |
△4-4 △6-6 |
●3-8 ●1-4 |
※ | ○11-1 △0-0 |
4 | 1 | 3 | 6 | .250 |
6 | 東 大 | ●1-15 ●1-4 |
●1-23 ●0-19 |
●0-9 ●0-22 |
●6-15 ○7-4 |
●1-11 △0-0 |
※ | 1.5 | 1 | 8 | 1 | .111 |
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※選手のコメントは後日別記事にて掲載いたします。