「主将としても選手としてもふがいない限り」。ここまでの東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)を、丸山壮史主将(スポ4=広島・広陵)はこのように振り返った。丸山の個人成績は現在打率.154、打点は2と、昨年から数字を大幅に落としている。一方の守備では念願の二塁手へ再転向を果たしたが、明大戦では一塁手に戻り、痛恨の失策を喫した。チームとしては2勝5敗1分で現在5位。丸山は選手としても、主将としても、その成績に満足することができていなかった。
広陵高校時代は甲子園で準優勝を経験し、大きな期待を背負って早大に入学した丸山。1年春から二塁手としてリーグ戦に出場するなど、前評判に劣らない活躍を見せた。1年秋以降はリーグ戦出場ができない時間が続いたが、迎えた3年。その実力が再び開花する。春には代打出場ながら打率.333という結果を残すと、一塁手としてレギュラーをつかみ取った秋には打率.258、さらにはリーグトップの10打点をマークし、リーグ戦優勝に大きく貢献して見せた。
この優勝で、丸山が感じたチームの強さがあった。それは「4年生のまとまり」だ。早川隆久前主将(令3スポ卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)をはじめとした4年生ひとりひとりが役割を果たし、チームを先導したことが昨年のチームの強さだと感じていた。主将を任され臨んだラストイヤー。丸山は前年で感じたその強さを受け継ぐため、部員全員が同じ方向を向くために様々な工夫をこらした。中でも4年生のまとまりを深めるため、今年から『一球入魂ノート』という学年内の交換ノートを作った。このノートはメンバーやメンバー外問わず毎日回され、そこには選手一人一人が1ページずつ今の思いを綴ったもの。そこで、丸山は「自分たちの代で優勝したい」「日本一を取りたい」というチームメイトの思いを目にした。同期の熱い思いに触れ、丸山は連覇への気持ちをより一層高めていた。
立大2回戦で適時打を放ち、『マルポーズ』を見せる丸山
そして始まった今シーズン。しかし、決して順風満帆にいかなかった。春季リーグ戦最初のカードである東大戦では2回戦でまさかの引き分け。立大戦では2連敗を喫し、法大1回戦こそ完封勝利を飾ったが2回戦では黒星となった。わずかな優勝の可能性を信じて臨んだ明大戦だったが、あえなく連敗。連覇の可能性が完全に消滅することとなった。「勝利することの難しさを感じています」。個人としてもクリーンアップを任されるも、好調のきっかけをなかなかつかむことができない。1勝、1安打が遠い苦しい時間が続いている。
だが、丸山は主将として前を向き続けている。「キャプテンの姿はみんな絶対に見てくれている」。不振に苦しみ、1勝が遠い中でも、丸山は誰よりも声を出し、チームを鼓舞することをやめなかった。主将の背中はチームの姿。劣勢に立たされている時だからこそ、とにかく前向きに、とにかく明るく。勝てる雰囲気を作るために努力を怠らなかった。そして迎える早慶戦。リーグ戦開幕前に掲げていたリーグ戦連覇という夢はついえてしまった。今季目指すべきは伝統の一戦制覇のみ。「早稲田を応援してくれる皆さんの為にも、メンバーに入れなかったみんなの為にも、必ず慶大を倒す」。秋季リーグ戦にむけて希望をつなぐためにも、連勝してリーグ戦を終えることができるか。チームの為に努力を怠らない背番号『10』が、全てを懸けた一振りでチームを勝利へと導く。
(記事 小山亜美)
◆丸山壮史(まるやま・まさし) 1999(平11)年6月8日生まれ。179センチ、83キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。試合前はお風呂にゆっくりつかるなどして体をメンテナンスしているのだとか。早大主将として戦い抜く難しさを痛感した今シーズン。誰よりもチームの『為』を考てきた丸山選手が、宿敵を打ち破るここぞの一打を放ちます。