今特集の最終回に登場するのは丸山壮史主将(スポ4=広島・広陵)。東京六大学リーグ戦(リーグ戦)連覇が消滅し、苦しい時間を過ごした早大ナイン。だが主将として、丸山は決して下を向いていない。誰よりもチームを思うこの男が、早慶戦に向けた思いを語った。
※この取材は5月18日にオンラインで行われたものです。
「チームの現状として真摯に」
取材に答える丸山
――今までの春季リーグ戦振り返ってみていかがですか
キャプテンとしても選手としてもとても不甲斐ない結果で、悔しい限りです
――現状5位という結果はどのように受け止めていますか
これがチームの現状であると真摯に受け止めています。
――主将としての重圧は感じていますか
早稲田の10番は重いし歴史のあるものだとは思いますが、ただ自分の力を発揮できていないだけだと思っています。
――まずは春リーグの試合を振り返っていきたいと思います。東大戦第2回戦では引き分けという結果となり、勝ち点1を奪えませんでしたが、振り返ってみていかがですか
引き分けという結果どうこうとかではなくて、一つの大学として優勝を目指すにあたってスタートダッシュを切れないといけない中で、打線がつながらず、そして何も工夫できずに、結果がかたちとして現れずに終わったっていうのが、西垣(雅矢、スポ4=兵庫・報徳学園)が頑張っていたのでとても心苦しかったのですが、野手が何とかできなかったというのが悔しいです。
――その後の立大戦に向けては、東大戦でも引き分けを受けてどのような練習などされましたか
取り切れなかった勝ち点を立教戦で何としても取り返す。もしその引き分けで良かった、引き分けが今後の試合に届いて、東大戦で引き分けたからこそチームが変わったと必ず言わせようと思っていました。結果連敗だったので自分の力不足かなと思っています。
――立大戦での連敗を踏まえて、チームには主将としてどのようなアプローチされていましたか
負けた要因っていうのはもちろん話し合いましたし、ミーティングを重ねました。でも、その空き週がなく次法政戦だったので、ここでしゅんとなっていてダメだと思ったので、空元気でもいいから明るくいこうと。トーナメントと違って、リーグ戦は負けて終わりではないので、必ず前を向いてやっていこうという風には声をかけたりとかはしていました。
――連敗の要因っていうのはチームの中でどのようなお話が出ましたか
チームとしてのまとまり、投打のバランスが他大学と比べて劣っているとは思っていて、立教戦で言えば相手は2アウトからチャンスを作って得点している中で、自分達はチャンスで凡退して、点が入らずに終わってしまっています。そこの差が試合の勝ち負けにつながったかなと思っています。
――法大1回戦はかえって完封勝利となりました。振り返っていかがですか
徳山(壮磨、スポ4=大阪桐蔭)とは二人でよく話す仲なので、立教戦の敗戦ではたぶん今まで経験したことないぐらい悔しがっていましたし、その苦しみをわかっていたので何としても勝たせてあげたいっていうか、それは何点差であろうと勝たせてあげたいっていう風に思っていました。でも徳山がよく修正してくれて、0点で抑えてくれたので、徳山の修正力がすごいと感じました。
――法政では二戦合わせて二桁三振となってしまいましたが、打線の調子はどのように受け止められていましたか
個人としては手ごたえがないまま過ぎていたっていうのが正直なところですね。その積極性ってものを貫こうと思っていたので、それは立教戦、法政戦とできたことかなっていくには個人としては思っています。チームとしてはやっぱり打線が線となっていなくて点となってしまっているとは思います。ヒットは出ているものの、点に繋がっていないっていうのが現状かなっていうふうに思っています。
――打線に関しては小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)とは何かお話しがあったりしましたか
執着心の差と言われました。この一点を取らないといけないって言うかその気持ちの差ですね。何としてもランナーを返すといったりとか、そこの執着心が足りないという風には言われました。
――優勝に向けてかなり厳しい状況となったと思います。4年生の間ではどのようなお話しをされましたか
4年生だけに限らず、チームとしてやっぱり下向いてはいけないですから。悔しさはみんな持っていましたし、データであったりとか控えの選手もバッティングピッチャーとかしてくれて、チームのためにと動いていたので、そこに対してはもうメンバーはメンバー外に申し訳ない気持ちというか、でもそこでその悔しさを何としても明治を倒すっていう風に切り替えました。そしてわずかな優勝の可能性に向かって行こうと話し合っていました。
――丸山選手ご自身はその後4試合をどのように戦っていこうと感じていましたか
何かのきっかけが必要かなと思っていました。個人として何か良いきっかけって言うかチームとしていいきっかけをつかめば必ず持っていけるチームと思っているので、そのきっかけや勢いを自分や岩本(久重副将、スポ4=大阪桐蔭)がやっていかないといけないという風には思っていました。そこに向けてただがむしゃらに戦って行こうと思っていました。
――その後2連敗となってしまいましたが、その敗因は主将としてどのように捉えられていますか
明大戦は僕の責任だと思っていて、自分の小さなミスが3点取った中で、気が緩んだわけではないのですが、どこかもう1点いう気持ちがチームとして足りなかった。また、その自分のそのエラーであったりとか、送りバントのミスだったりとか、そこがチームの勝利に繋がなかったと思っています。なので、何としても明治の借りは早慶戦で返したいですし、秋の明大戦で必ず返そうと思っています。
――明治戦からは再び一塁手となったと思うのですが、そこの経緯を伺ってもいいですか
リーグ戦始まる前には自分がセカンドで今井(脩斗、スポ4=埼玉・早大本庄)がファーストでというスターティングメンバーでやっていたのですが、今井のけがもあってファーストがいない状況でした。占部(晃太朗新人監督、教4=早稲田佐賀)とも話しながら、学年でも自身が入って橘内(俊治、教4=東京・早実)がセカンドにいた方が、チーム力が上がるのではないかというふうに思っていました。なので、それを監督さんに伝えて、監督さんがその意見をくのでくれたっていう感じです。
――占部さんとの間で決まったという感じですか
そうですね。どうするべきだっていう話は常に占部とはしていましたし、チームが少しでもいい方向に行って勝つためには橘内がオープン戦で調子が良かったので、力はもちろんあるので自分がファーストに戻って橘内が出た方がいいのではないかっていう話を占部ともしましたし学年の中でも話したりとかしていました。
――初めての失策となってしまったと思うのですがポジションの変更というのが何か影響した部分がありましたか
ポジションの変更が原因ではなくて、ただの自分の気の緩みっていうか、サードを刺しにいくというのは焦りにつながったと思います。それはただの自分の実力不足だと思っています。
――明治戦の連敗を終えてチームにはどのようなお話をされましたか
チームの負けが続いて、勝てない中ですけど次の慶応戦に向けてなんとかチームを立て直すこの慶応戦を何とか勝ちきる。慶応は特別なので絶対勝ちきる、そして秋に必ず繋げるというのはチームの中で話しています。秋に向けて早稲田が先に動くというぐらいの気持ちで、その秋に向けてって中で目の前の慶応を必ず倒すっていうのをもう一度話し合います。
――その上で丸山選手にご自身が何か取り組まれていることはありますか
前監督が言ったように、一球への執着心をもう一度やっていこうと。打撃の質であったりをもう一度見つめ直そうっていうのには話し合いました。ただアウトを取る、ヒットを打つではなくて、アウトの取り方であったりとか、練習から神宮と同じようなプレッシャーをかけてやって行こうっていうふうに話しています。
――雰囲気としては慶応戦に向けて上がっている感じですか
正直まだ明治戦の敗戦を引きずっているところがあります。なので、もう明日からは絶対慶応戦にむけて、自分が中心となって、過去は変えられないので、前を向いてやっていこうと思っています。
――リーグ開幕前は4年生の結束力が大事だとお話しされていたと思うのですが、そこの部分は今どのように感じられていますか
4年生各々はもちろん頑張っています。控えの4年生もバッティングピッチャーだったりデータであったりとかチームのためには動いてくれています。でもメンバーがそれに対してメンバーの4年生がそれに対し答えられていない。また、まだ勝ちにつながっていないので、それ以上にチームのために働くというのが4年生には必要かなと思います。下級生に何を残すのをもう一度秋が始まるまでに軸を作って、もう一度まとまって、とは思っています。
――下級生の選手も活躍されている選手多いと思うのですが、4年生に対して下級生の雰囲気はいかがですか
頑張ってくれています。やりやすいようにというふうには、自分も3年生の時に4年生にはそのようにしていただいたので、自分も3年生以下にはやりやすいようにと思っています。4年生だけの力だけでは絶対勝てないので、3年生以下チーム全員で勝てるようにというのは思っています。
チャンスでの集中力
打席に入る丸山
――次に春季リーグ戦での丸山選手のご自身の成績について振り返っていきたいと思います。東大戦では安打が出ずに苦しい時間だったと思うのですが、立て直しはどのようにしようと考えていましたか
東大戦ではなかなか打てなかったので、打てない時は絶対フォアボールを選ので、いかにアウトにならないかっていうのにこだわってやりました。立て直しの面では齋藤コーチ(慎太郎、平3社卒=埼玉・秀明)や鈴木コーチ(浩文、平5社卒=東京・関東一)を始め、バッティングフォームの見直しを一緒に取り組んでやっていきました。
――リーグ戦途中では構えの力みや足の踏み込みなどを改善したという話がありましたが、その後バッティングに生きましたか
前足の踏み込みっていうのはまだまだですけど、良くなってきているかなと思っています。力みに関してはまだ昨年ほどの柔らかさであったり、自分の持ち味がまだ全然出し切れていないというか、自分のスイングをできていないと捉えています。
――コーチからは具体的にどのようなアドバイスをされたのですか
軸で振る、下半身主導のスイングっていうのをもう一度というのを指導していただきました。
――その後立教1回戦から法政2回戦までは毎試合安打を放たれていたと思うのですが調子は徐々に改善されていた感覚はありましたか
いい方向にいっているなと思っていました。でもやっぱりチャンスで一本っていうのが、勝負強さっていうのが足りなかったので、やっぱりそこにはやっぱり不甲斐なさもありましたし、なぜなんだというところは考える要因の一つでもありました。
――去年と違う部分は特に何だと考えていますか
結果として打点を稼げてないというか、やっぱりチャンスでの一本、チャンスへの集中力というのが、やっぱ結果として出ていない以上集中力の無さがあると思います。相手も抑えにくる中でどれだけ打つかが野手の宿命だと思っているので、その気持ちの部分であったり、どの球を打つべきか、打つべき球をミスショットしている自分がいるのかなと思います。
――得点圏打率や打点について、その数字の部分に関してはどのように捉えられていますか
全然だめだと思っています。やっぱりチャンスで打つことが得点になりますし、チームの士気も上がるので、自分が打てば絶対士気が上がっていくと思います。自分が打たない限り勝てないというぐらいで気持ちを持っているので、必ず慶応戦では取り返したいと思っています。
――明治戦での打撃はご自身振り返ってみていかがですか
打たされているというか、自分のスイングができていないというのが正直なところです。自分の中ではこうしていこうとか、こういう風に試合を入っていこうと決めて試合に入っている中で、思いっきり行く勇気が足りていないのかなって思います。
――ここまでのリーグ戦を通して攻守においてご自身の課題は何が一番だと感じられていますか
特に打撃面で課題だらけだと思っています。数字として表れていない以上、自分自身も点数をつけられないくらいだと思っているので、この夏に自分自身のかたちを取り入れた上で秋に向かってやっていけたらと思っています。
「慶応に勝てる雰囲気を」
立大2回戦で同点に追いつき、笑顔を見せる丸山
――春季リーグ戦を通して主将としての意識は何か変わりましたか
やっぱり勝てないのはキャプテンの責任でもあると思うので、いろんなチームがあると思うのですけど、どっちにしても勝つという結果を得られない以上キャプテンの役割は果たせていないと思うので、そこに関してはキャプテンとしてまだ足りないことだらけというか、まだまだできることが沢山あるのかなって思っています。
――主将としての勝利の難しさっていうのを感じたシーズンになりましたか
勝つことの難しさっていうのは改めて感じるシーズン、まだ終わっていませんけど感じていますね。
――リーグ戦前は劣勢になった時の盛り上がりが課題とおっしゃっていましたが現在はどのように感じていますか
まだ改善されてないかなと思っています。やっぱり試合に出ているメンバー、ベンチ入りメンバーがそれぞれいると思いますが、勝てる雰囲気、ここから勝つぞという雰囲気がまだ足りないかなと思っています。
――そこの点に関して丸山選手と占部新人監督が大きな声で鼓舞している印象があります。何か意識されていますか
特にキャプテンの姿はみんな絶対見ていると思うので、キャプテンが前向いていれば必ず皆前向きと思います。とにかく明るく、勝てる雰囲気が自然と出るチームが出るのが強いと思うので、まだ自分達は勝てる雰囲気を作ろうとしているので、そこがまだ足りないと思います。その勝てる空気の中心にいるように意識しています。
――改めて主将としての役割を伺おうと思ったのですが、勝てる雰囲気の中心にいるという部分が大きいでしょうか
勝てるチームよりも負けないチームを作るというか、自然と勝てる雰囲気には空気が出てくると思うので、それが自然と出せるチームを作っていけたらと思います。その中に自分が中心となっていれば、それがキャプテンの役割かなって思っています。
――多くの部員が同じ熱量で同じ方向を向くことは難しいと思います。主将としてその難しさは感じていますか
例えば高校であったり、人それぞれバックグラウンドが絶対違うので、チームとしての勝ち方も人それぞれ違うと思うのでそこはやっぱりまとめるであったり、一つの方向を向かせるというのは難しい部分もあります。その中で自分が大切にしようとしているのは、その厳しさの中に必ず優しさがあると思うので、厳しく言う時は言いますが、優しさがないと一つにはまとまらないと思うので、難しさを感じていますが、それがキャプテンとしての役割だと思うので、そこがやりがいだと思うので何とかチーム一つにまとめたいと思っています。
――現在のチームは敗戦も重なり苦しい状況ではあるとは思います。ですが、その今年のチームの中でも良いところは主将としてどこだと感じていますか
負けた時こそチームの素の姿が出ていると思うので、負けて苦しい中でもやっぱ一人一人が考えて練習しています。監督さんには伝わってないかもしれませんが、変わった選手が多い、成長を感じた選手が多いというのは感じています。そこをさらに伸ばせるように、秋に向けて成長して優勝できるようにと思っています。
――早慶戦まで残り2週間となっていますがどのようなことを詰めていきたいと考えていますか
ここから技術が上がるとかはもうあり得ないと思うので、チームとして勝つきっかけであったりとか、慶応を必ず倒せるという根拠のない自信を持てるぐらいの練習であったりとか、それに限ると思います。気持ちの面でどうにか前を向けるように、また勝てる雰囲気を自然と出せるように練習をしていきたいと思います。
――カギとなる部分は
気持ちの部分かなと思います。負けが続いている中で、技術がどうこうよりも勝つ気持ちが慶応を上回らないと勝てないと思います。
――いつも対談で書いていただく色紙にもし文字を書くとしたら、何を書きますか
前回と同じ『為』だと思っています。やっぱりチームのため、また途中で緊急事態宣言もあって応援部が入れなかったりとか、早稲田を応援してくれるファンの皆さんのためにも、またメンバーに入れなかったみんなのためにも必ず勝つという結果で、慶応を倒すという結果で恩返ししていきたいなって思っています。
――早慶戦に向けて意気込みの方をお願いいたします
負けが続いて5位という結果で、慶応は1位という結果で勢いに乗っています。もしかしたら1勝もできないかもしれません。でも必ず神宮で、次の早慶戦で、それを出すという気持ちだけだと思うので、万全の準備をして慶応を倒しに行きたいと思います。必ず2勝して、いいかたちでリーグ戦を終えたいと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 小山亜美)
◆丸山壮史(まるやま・まさし)
1999(平11)年6月8日生まれ。179センチ、83キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。試合前はお風呂にゆっくりつかるなどして体をメンテナンスしているのだとか。早大主将として戦い抜く難しさを痛感した今シーズン。誰よりもチームの『為』を考てきた丸山選手が、宿敵を打ち破るここぞの一打を放ちます。