【連載】新体制始動特集『継承』 第3回 蛭間拓哉×野村健太

野球

 今回登場するのは、ともに東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)で力強い打撃を見せた蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)、野村健太(スポ1=山梨学院)だ。下級生ながらもチームの中で存在感を放つ二人が、優勝の瞬間や来季の目標について語る。普段から一緒に練習をし、仲睦まじい二人。ともに高め合い、ますますチームに欠かせない主戦力としての期待が高まる。

※この取材は12月23日に行われたものです。

師弟関係

笑顔で取材に答える蛭間、野村(左)

――今回は、蛭間選手と野村選手のお二人で組ませていただきました。お二人はどんな関係ですか


蛭間 日ごろからキャッチボールやティーバッティングなど、すべてにおいて一緒に練習をしている間柄です。プライベートでもご飯に行ったりするなど、今まで自分が経験したことすべてを野村に伝えている感じです。

 

野村 練習もすごい面倒をみてくださって、お兄ちゃんみたいな存在です。

 

――続いて、お互いの第一印象はいかがでしたか

 

蛭間 『山梨のデスパイネ』と聞いていて、見た目がとても大きかったので、すごい選手が来たなぁと思いましたね。

 

野村 入部してすぐの時も、ずっと蛭間さんが僕について練習をしてくださっていたので、優しい方だと思いました。

 

――野村選手にとって、蛭間選手の羨ましい一面はありますか

 

野村 決めた目標に対して、熱くひたむきに練習をされているので、自分も見習わなければならないなと思います。

 

蛭間 そうですね、目標がある以上は、その目標を達成したいといいますか、将来はプロになりたいということが目標なのでプロに近づけるように、自分はやることをやっています。

 

――では蛭間選手にとって、野村選手の羨ましい一面はありますか

 

蛭間 みんなとフレンドリーな人柄で、先輩や後輩関係なしにみんなと仲良く接する人柄が、いいなぁと思います。

 

野村 かわいい子ぶってるってことですかね(笑)。人付き合いはこれからも大事だと思うので、それは大切にしながらやってます!

 

――続いて最近のことについて伺います。新チーム発足後一ヶ月ほど経ちましたが、新チームの雰囲気はいかがですか

 

蛭間 優勝したことで、その経験者もいるので、優勝した代のいいところを継続して行っています。特に新4年生が中心となって、後輩がやりやすい環境などを作ってくださっているので、いい雰囲気だと思います。

 

――継続されていることとしては、どのようなことがありますか

 

蛭間 4年生が中心となって声を出すことや、いろいろな仕事に対して、様々なリーダーがキャプテンだけに頼らず、それぞれが持ち場をしっかりやり、その中でキャプテンや新人監督がまとめています。全員が勝つために一人一人役目をしっかり果たしていると思います。

 

――一方で新たに変化した部分はありますか

 

蛭間 優勝の感覚といいますか、連覇したいという気持ちが芽生えています。練習への取り組みという部分では、前よりは意識が変わってきていると思います。

 

――これまでの練習の消化具合はいかがですか

 

野村 新チームが始まってから、蛭間さんと練習後毎日打ち込みをしています。お互いにアドバイスを出し合って、こうした方がいいんじゃないかと自分からも言いますし、蛭間さんもこうした方がいいんじゃないか、と言ってくれます。そういう部分でお互い高めあえる、いい練習ができているんじゃないかなと思います。

 

――丸山壮史主将(スポ3=広島・広陵)と岩本久重副将(スポ3=大阪桐蔭)はお二人から見てどのような主将、副将ですか

 

蛭間 丸山主将は、後輩だからとかは関係なく、いろんな選手にアドバイスを言ってくださるなど、キャプテンでありながらフレンドリーな方です。野球ももちろんですが、人間性の部分で見習う部分が多いと思います。岩本副将は、キャッチャーとしても周りを見なくてはいけないということもあり、丸山主将と同様によくコミュニケーションを取られていて、チームを引っ張ってくださっています。

 

野村 丸山主将はチームの中心となって声を出していて、野球の時は厳しく練習に対して集中されていますが、野球以外ではすごく優しく接してくださるので、メリハリがしっかりある先輩だと感じています。岩本副将はキャッチャーとして大変な部分もあると思いますが、キャッチボールなどでコミュニケーションを取ってくださり、最上級生にもしっかり言える方なので、尊敬しています。

 

「明確な目標を立てられるようになった」(蛭間)

昨秋の慶大2回戦で決勝の2ランを放った蛭間

 

――秋季リーグ戦について振り返りたいと思います。10季ぶりの優勝となりましたが、ご家族やご友人からの反響はいかがでしたか

 

野村 家族はもちろんですが、地元の友達や高校の同級生からもラインなどでお祝いのメッセージをたくさんいただきました。応援してくれている方がいるので、これからも頑張らなければいけないと改めて思いました。

 

蛭間 自分も同じく家族や応援してくださる方々、高校の同級生といった様々な方々から、「感動した」といった言葉をいただきました。野球ができることが当たり前ではないコロナ禍で、勇気を与えられたということは自分の中で思い出にもなりましたし、これからもう一段階レベルアップして、強い早稲田を取り戻せるよう、気を引き締めて頑張らなければならないと思いました。

 

――優勝を果たしたことで、ご自身の意識に変化したことはありますか

 

蛭間 優勝するチームといいますか、勝つチームをあまりイメージできていませんでしたが、先輩方のおかげで優勝できたことで、こういうチームに近づけられれば、優勝できるかはわかりませんが勝つチームに自ずと近づけると感じることができました。今後確実に生かせると思います。

 

野村 優勝したことで、応援してくださる方が本当にたくさんいると感じたので、私生活の行動などももう一度改めなければならないと思いました。

 

――引退された4年生の姿から、どんなことを学びましたか

 

蛭間 メンバーに入った選手が勝つために頑張ることは当然ですが、メンバーに入れなかった4年生も、メンバーのためにバッティングピッチャーやバッティングキャッチャー、データ分析、ノックの手伝いなど、様々な仕事を率先してされていました。本来であれば1、2年生がするべきことを、先輩方が率先してされていたので、控えの選手はメンバーのために、メンバーの選手は控え選手のために、という気持ちがチームにありました。ここが本当によかったと思います!

 

野村 蛭間さんと同じです!

 

――様々な制限も伴った異例の一年間となりましたが、モチベーションの点から、成長したなと感じることはありますか

 

蛭間 この一年間でたくさんのことを経験して、たくさんのことを学んだ一年間だったと思います。特に自粛期間で思うように野球ができなかったことや、手首のケガから野球が全然できなかったことなど、目標が定まらずどうしたらいいかわからない状況がありました。後のことを考えることもですが、今の自分に何ができるのかを考え、その中でどうしていたいかを考えると、目標が明確になってきました。自分が何になりたいか、それに対し何をしなければならないのかを、考えることができるようになりました。目標に対して、今はこれをしなければならないといったように、明確に目標を立てられるようになったと思います。自分を冷静になって考え、物事に取り組めるようになったということで、成長できた一年間だったと思います。

 

野村 3月から半年間ほどケガをしていて、その期間で自分がやれることを見つけたり、復帰してからは半年間分の遅れを取り戻せるよう、練習を一生懸命取り組んだり、最近では蛭間さんと一緒に、全体練習が終わった後にバッティング練習を行ったりしました。当初は練習後の自主練はそれほど行っていませんでしたが、蛭間さんとの自主練を始めてからは、蛭間さんが用事でいないときも、一人で行えるようになったので、こういった部分でも成長できたと思います。

 

――春季リーグ戦は無観客、秋季リーグ戦は応援団や徐々に観客数の上限も増えましたが、プレーをされている選手からはどのように感じましたが

 

蛭間 春季リーグ戦はやはり寂しいなという感じがしました。秋季リーグ戦に関しては、たくさんの方々のおかげで応援団や観客が入り、自分にとっては力になりました。モチベーションも上がったので、様々な方々に感謝したいと思います。

 

野村 春季リーグ戦はスタンドから見ていた身ですが、秋季リーグ戦で初めて観客が入った神宮球場でプレーをして、高校野球とは違った大学野球らしい雰囲気を感じられたので、いい経験ができたなと思います。

 

「来季は本塁打を」(野村)

昨秋の東大1回戦で適時打を放ちガッツポーズを見せる野村

 

――では、野村選手にもう少し細かく振り返っていただきたいと思います。野村選手にとって初めての早慶戦となりましたが、早慶戦の雰囲気はまた一味違いましたか

 

野村 早慶戦は伝統ある試合なので自分がプレーできることに、最初は緊張や戸惑いもありましたが、試合に出るからにはやってやるぞと切り替えて挑みました。早慶戦までのリーグ戦は、自分のペースで試合をできていましたが、早慶戦となると試合の重みも感じました。雰囲気に圧倒されてしまったのですが、来季以降はこの経験を生かして、自分のプレースタイルを貫いて試合をしたいです。

 

――早慶戦でのご自身のプレーに関して、どのように振り返りますか

 

野村 早慶戦では何もできなかったです。バッティングに関しては、一本もヒットを打てなかったです。悔しい気持ちが残っているので来年はリベンジしてやる、という気持ちです。

 

――秋季リーグ戦は全試合スタメンで出場されましたが、それに関してはいかがですか

 

野村 1年生から試合に出させてもらって、いい経験を積むことができました。今後につながるので良かったなと思います。

 

――秋リーグではチームトップの打率を残された一方、打ちたいと話されていた本塁打はまだ生まれていませんが、それに関してはいかがですか

 

野村 本塁打を打ちたい気持ちもありますが、まずは後ろにつなぐことを意識したバッティングをすればいいと思っていました。1年目はあまりうまくいかなった部分もあるので、もっと練習して来シーズンは本塁打を打てるようになりたいです。

 

――この冬に克服していきたい課題はありますか

 

野村 現在蛭間さんとのバッティング練習で、とにかく振り込んでスイングスピードを速くすることを目指しています。六大学のピッチャーはレベルが高いので、そのスピードに振り負けないように、今の時期からしっかり振り込むようにして負けないスイングスピードを身につけたいです。

 

 

――蛭間選手に伺います。早大として10季ぶりの優勝となりました。2試合連続で値千金の本塁打を打ちましたが、改めて早慶戦の2日間はどうでしたか。

蛭間 そうですね、もう早慶戦がすごく伝統のある試合で、本来だったら緊張すると思うのですが、自分は緊張というよりかはとにかくこの時期に、そして優勝の懸かった早慶戦で、4年生、3年生、2年生、1年生と、ベンチに入れない人もいる中で、代表としてグラウンドに立てるということで感謝をしてとにかく思い切りプレーしようと思っていたので、特に緊張することもなく平常心でできました。そこは昨年の1年間の経験を生かせたかな、と思います。

――本塁打の感覚は残っていますか

蛭間 そうですね。今でも左手にその感覚が残っていますね。

――普段はどのように相手ピッチャーの研究をされていますか

蛭間 データをもとに、自分に対してどのように攻めてくるのかな、というのを考えてという感じですかね。

――三冠王を目標にしていると伺いましたが、達成のためにこの冬、どのようなところを伸ばしたいですか

蛭間 三振が少し…(笑)。

野村 (笑)。

蛭間 三振が少し多いので、一発で仕留めるというところと、ボール球を振らないという基本的なことです。六大学の良い投手に振り負けないようにスイングスピードを速くして、目標の三冠王を達成したいなというふうに思っています。

――来年の個人としての目標を教えてください

蛭間 優勝というのがチームとしての目標としてあって、個人としては三冠王というのをずっと目標としています。あとはベストナインを目標にして頑張っていけたらな、と思います。

野村 チームとしては優勝を目指していて、個人としては秋の成績より落とさないように、1年の時が一番良かったとは言われないように頑張っていきたいです。

――チームの中でどんな存在になりたいですか

蛭間 先輩にも頼りにされる後輩になることと、自分が3年生になったら、1、2年のお手本になれるように、野球の姿で引っ張るのもそうですが、私生活の部分であったり、一人の人としてのあり方というか、そういう部分を尊敬してもらえるというか、後輩の見本となれるように、そして早稲田の野球部として、見本になれるように頑張りたいと思います。

野村 自分は…(笑)。

蛭間 なんでそんな笑ってんの(笑)。

野村 すみません、ツボっちゃいました(笑)。そうですね。来年、初めて後輩が来るのですが、蛭間さんをとても尊敬している部分もあるので、蛭間さんが自分に教えてくださったことを、後輩にも伝えられるようにしたいです。

――来季に向けて意気込みをお願いします

蛭間 やっぱり優勝したということで早稲田を警戒してくると思うので、とにかく優勝というのを目標に置いて、監督さん(小宮山悟監督、平2教卒= 千葉・芝浦工大柏)をもう一度男にしたいというか、もう一度またみんなであの優勝を味わえるように厳しい練習を乗り越えて頑張っていきたいと思います。

野村 今年の成績もそうなのですが、来年は今年の成績を越えられるように、またひと冬越えて蛭間さんとともに高め合っていきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 樋本岳、中原彩乃)

◆蛭間拓哉(ひるま・たくや)

2000(平12)年9月8日生まれ。176センチ、84キロ。浦和学院高出身。スポーツ科学部2年。外野手。左投左打。野村選手とは普段からご飯に行くことも多いそう。この冬、さらに磨きをかけ、念願の三冠王とベストナインに名を連ねることができるか、期待が高まります!

◆野村健太(のむら・けんた)

2001(平13)年8月27日生まれ。180センチ、97キロ。山梨学院高出身。スポーツ科学部1年。外野手。右投右打。蛭間選手のことを「お兄ちゃんみたい」と話す野村選手は対談中も蛭間選手のことが気になって仕方がない様子。笑いのつぼが浅いというところも蛭間選手とだから見えた一面かもしれません!