泥臭く、粘り強く、最後までやり抜いた早大ナイン 『GRIT』体現し10季ぶりの賜杯奪還!/早慶2回戦

野球
TEAM
早 大
慶 大
(早)今西、西垣、山下、徳山、柴田、◯早川―岩本
◇(本塁打)蛭間3号2ラン(9回)

 8回を終えて1-2とリードされ、迎えた最後の攻撃。得点を挙げなければ宿敵の眼前優勝を許すという中、相手エース木澤尚文(4年)の前にあえなく2者が凡退。『あと1人』まで追い込まれてしまう。しかし、それでも、諦める者はいなかった。チームスローガンに『GRIT』を掲げ、1年間泥臭く、粘り強く、やり抜いてきた140人の稲穂戦士たち。その姿勢が、意地が、プライドが、最後の最後にドラマを呼んだ。

 前日の1回戦に勝利し、勝つか引き分けで優勝が決まる早大。大一番の先発マウンドには、2メートル左腕・今西拓弥(スポ4=広島・広陵)が上がった。昨秋の早慶3回戦では立ち上がりから相手打線につかまり、無念の2回途中降板となっていた今西。しかし、この日は走者を許しながらも粘り強い投球を見せる。野手陣も2併殺を奪うなど盛り立て、2回を無失点に抑えた。すると3回、金子銀佑(教4=東京・早実)の中前打と吉澤一翔副将(スポ4=大阪桐蔭)の犠打で2死二塁の好機をつくり、打席には前日先制打の瀧澤虎太朗副将(スポ4=山梨学院)。フルカウントからの7球目を捉えると、打球は中前へ抜ける適時打に。2試合連続で、上位打線の4年生トリオが先制点をもたらした。

先制のホームを踏み、大喜びでベンチに戻る金子

 しかし、勝たなければ優勝はない『陸の王者』が黙っているはずもなかった。3回裏、2番手・西垣雅矢(スポ3=兵庫・報徳学園)はバント安打と盗塁で1死二塁のピンチを背負う。ここで2番・廣瀬隆太(1年)の左前打に瀧澤の失策が絡み、同点とされた。4回表、すぐさま取り返したい早大は、慶大2番手・小林綾(2年)から無死一、二塁と大きなチャンスをつくる。ここで慶大ベンチは3番手・長谷川聡太(3年)、4番手・長谷部銀次(4年)を立て続けに投入。攻めの継投を前に後続が打ち取られ、流れは慶大へ。するとその裏、2死二塁から瀬戸西純主将(4年)に勝ち越し打を許し、1点のビハインドを背負った。

 最低でも追い付かなければならない早大だが、中盤以降打線が沈黙。四死球で走者は出すものの、5番手・増居翔太(2年)、6番手・関根智輝(4年)と小刻みな継投を見せる慶大投手陣をつかまえることができない。さらに8回には7番手・木澤が登板すると、吉澤から始まる好打順がわずか6球で片付けられてしまった。しかし苦境の中、救援陣が希望をつなぐ。5回は山下拓馬(法3=埼玉・早大本庄)、6、7回は徳山壮磨(スポ3=大阪桐蔭)が3人ずつで抑える好投。8回の柴田迅(社4=東京・早大学院)は2死から不運な当たりの安打を続けざまに打たれて無念の降板となったが、6番手のエース早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)が次打者を左飛に打ち取る。我慢の展開の中でそれぞれが実力を発揮し、1点差のまま最終回を迎えた。

9回2死一塁、蛭間は初球を振り抜いた

 最後の攻撃、打点チームトップの丸山壮史(スポ3=広島・広陵)、打率チームトップの野村健太(スポ1=山梨学院)と今季の早大をけん引してきた2人が打席に立つものの、木澤の前に倒れ2アウトとなる。慶大優勝まであと一人。しかし、続く熊田任洋(スポ1=愛知・東邦)は初球を振り抜き、左前打で出塁を果たす。高校時代には4番として東邦高をセンバツ優勝に導き、早大ではルーキーながら春秋通じてフル出場を続けた熊田。数々の修羅場を経て培ってきた強心臓を、この大一番でも発揮して見せた。そして打席には、前日に木澤から勝ち越し2ランを放っている蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)が入った。するとここで、慶大・堀井哲也監督は守護神の左腕・生井惇己(2年)をマウンドに送る。勝利目前でエースを降ろしてまで賜杯をつかみにきた慶大。両校の執念がぶつかる中、早慶戦史に残るドラマが生まれた。生井の投じた初球のスライダーを、蛭間がフルスイングではじき返す。白球は高々と舞い上がり、悲鳴と歓声を浴びながらセンターバックスクリーンへと吸い込まれた。逆転。2試合連続となる2ランを放った蛭間は、涙を流しながらベンチ前で出迎えるナインのもとへ。絶体絶命の状況から、一振りで試合をひっくり返した。その裏、早川は嶋田翔副将(4年)に安打を許すものの、最後は藤元雄太(4年)を空振り三振に仕留めてゲームセット。10季ぶり、46度目のリーグ制覇。ナインは一斉に早川のもとへ集い、歓喜の輪をつくって喜びを爆発させた。

優勝を決め、歓喜の輪をつくる早大ナイン

 「人生の中で一番感動した試合だった」(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)。初代監督・飛田穂洲氏(大正2法卒)が説いた『一球入魂』の精神と、1年間掲げてきた『GRIT』のスローガンを体現し、奇跡の逆転劇を演じてみせた早大ナイン。それができたのも、4年生を中心としたチームの『結束』があってこそだろう。全員が優勝に向けて役割を全うし、チームに欠かせないピースとなった4年生。特に、ベンチを外れた最上級生が献身的にチームを支える姿は、同期だけでなく後輩にも大きな影響を与え、「4年生のために」と一層の奮起を呼んだ。この優勝はベンチ入りした25人だけのものではない。早大野球部140人、全員でつかんだ栄冠だ。

(記事、写真 池田有輝)

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黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
1 (二) 金子銀佑 3 1 0 .189 三ゴ   中安 投犠   遊ゴ    
2 (三) 吉澤一翔 3 1 0 .229 中安   捕犠   捕邪     三ゴ  
(左) 瀧澤虎太朗 3 1 1 .278 四球   中安     空三   見三  
福本翔 0 0 0 .571                  
(捕) 岩本久重 3 0 0 .182 右邪     四球   遊飛   遊飛  
(一) 丸山壮史 2 0 0 .258 一ゴ     四球   四球     空三
6 (右) 野村健太 4 0 0 .286   遊ゴ   右飛   遊ゴ     左飛
鈴木萌斗 0 0 0 .200                  
7 (遊) 熊田任洋 4 1 0 .250   二飛   遊併     空三   左安
8 (中)右 蛭間拓哉 3 1 2 .364   一邪     投ゴ   四球   中本
(投) 今西拓弥 0 0 0 .—                  
太田雅之 1 0 0 .167     中飛            
西垣雅矢 0 0 0 .000                  
村田大誠 0 0 0 .000         死球        
山下拓馬 0 0 0 .—                  
徳山壮磨 0 0 0 .000             捕犠    
柴田迅 0 0 0 .—                  
早川隆久 1 0 0 .235                 遊ゴ
早大投手成績
名前
今西拓弥 3 0 0 2 2 2 1 0 0 3.18
西垣雅矢 5 1 0 2 4 0 3 2 1 1.13
山下拓馬 4 0 0 1 0 0 2 0 0 2.08
徳山壮磨 5 0 0 2 1 0 1 0 0 4.50
柴田迅 6 0 0 2/3 2 0 1 0 0 0.00
早川隆久 7 6 0 11/3 1 0 1 0 0 0.39
東京六大学秋季リーグ戦星取表
順位   早 大 慶 大 明 大 立 大 法 大 東 大 勝ち点 勝率
早 大 ◯3-1
◯3-2
◯7-1
△3-3
◯1-0
△1-1
◯2-0
△6-6
◯7-1
◯8-0
8.5 1.000
慶 大 ●1-3
●2-3
△2-2
◯7-2
◯11-6
◯4-2
◯4-1
△1-1
◯3-0
◯8-3
.750
明 大 ●1-7
△3-3
△2-2
●2-7
◯9-4
◯9-3
◯4-0
◯5-0
◯9-3
◯4-1
.750
立 大 ●0-1
△1-1
●6-11
●2-4
●4-9
●3-9
◯4-2
◯5-0
△1-1
◯6-2
.375
法 大 ●0-2
△6-6
●1-4
△1-1
●0-4
●0-5
●2-4
●0-5
◯4-2
◯10-1
.250
東 大 ●1-7
●0-8
●0-3
●3-8
●3-9
●1-4
△1-1
●2-6
●2-4
●1-10
0.5 .000
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