蛭間が劇的決勝弾! 悲願の10季ぶりVへ王手/早慶1回戦

野球
TEAM
慶 大
早 大 X
(早)◯早川―岩本
◇(本塁打)蛭間2号2ラン(7回)◇(二塁打)瀧澤

 1ー1で迎えた7回裏、1死一塁。蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)が捉えた打球は、歓声と悲鳴を浴びながら左翼席へと消えていく。ぼうぜんと立ちつくす慶大・木澤尚文(4年)をよそに歓喜に沸き立つ一塁スタンド。劇的決勝弾で、早大は10季ぶりの優勝へ王手をかけた。

劇的な決勝2ランを放った蛭間

 ドラフト1位対決として注目を集めた早慶1回戦。試合は初回から前評判に違わぬ投手戦が繰り広げられる。楽天1位の早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)が三者凡退に打ち取って見せれば、ヤクルト1位の木澤は2死一、二塁の場面で5番・丸山壮史(スポ3=広島・広陵)を外いっぱいの真っすぐで見逃し三振に仕留める。その後も両者一歩も譲らず、5回までスコアボードに0を並べ続けた。

 試合が動いたのは6回。金子銀佑(教4=東京・早実)が四球で出塁すると、続く吉澤一翔副将(スポ4=大阪桐蔭)が1球目から送りバントを成功させ流れをつくる。さらに、相手投手の暴投で2死三塁に好機を拡大させると、打席には瀧澤虎太朗副将(スポ4=山梨学院)。『コンバットマーチ』が響きわたる中、追い込まれてからの5球目を右手一本で引っ張った。打球は一塁手の頭上を超えて右翼方向へ。「いろいろな人の顔が浮かんで打つしかないと思った」と瀧澤。均衡を破る適時打に、金子は雄たけびを上げながら、ホームベースを踏んだ。しびれる展開の中、4年生3人の意地でもぎ取った貴重な先制点だった。

右手1本で適時二塁打を放つ瀧澤

 だが、『陸の王者』はそう簡単には勝たせてくれない。先制点を奪った直後の7回、早川が先頭打者の正木智也(3年)に二塁打を浴びる。犠打で三進を許すと、次打者の内野ゴロの間に三塁走者が帰還。瞬く間に試合は振り出しへと戻った。

 次の1点が試合を決める――。誰もがそう確信する中で迎えた7回裏の攻撃。ルーキー熊田任洋(スポ1=愛知・東邦)が右前打で出塁し、打席には蛭間。2球目の外角高めに抜けたスプリットを振り抜くと、打球は値千金の2ランに。それは宿敵に引導を渡すに十分な一打だった。「『先輩、しっかりしてくださいよ』と後押ししてくれるような一発だった」と早川。奮起したエースは8回、9回を無失点に抑え、15奪三振で完投。自身初となる早慶戦での先発勝利を挙げ、リーグ戦通算成績を13勝12敗とした。

勝利を収め、喜ぶ早川(右)と岩本久重(スポ3=大阪桐蔭)

 1敗した時点で優勝への夢が途絶えるというプレッシャーの中、接戦を勝ち切った早大。あすはいよいよ優勝を懸けた大一番、そして現チームの最終戦だ。「最後は気持ちだと思う」(早川)。これまであと一歩で逃し続けてきた賜杯はもう目の前。死力を尽くし、宿敵を打ち倒したその先に、まだ見ぬ栄光が待っている。

(記事 望月清香、写真 池田有輝)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
1 (二) 金子銀佑 3 0 0 .176 二ゴ   遊ゴ     四球 見三    
2 (三) 吉澤一翔 2 0 0 .219 四球   三ゴ     一犠    三ゴ  
(左) 瀧澤虎太朗 4 2 1 .273 左安     左飛   右2   見三  
福本翔 0 0 0 .571                  
(捕) 岩本久重 3 0 0 .240 二飛     見三   死球   見三  
(一) 丸山壮史 3 0 0 .276 見三     空三   見三      
6 (右) 野村健太 3 0 0 .323   空三     三ゴ   遊ゴ    
鈴木萌斗 0 0 0 .200                  
7 (遊) 熊田任洋 3 1 0 .250   中飛     中飛   右安    
8 (中)右 蛭間拓哉 3 1 2 .368   空三     空三   左本    
9 (投) 早川隆久 3 0 0 .250     投ゴ     空三 遊ゴ    
早大投手成績
名前
早川隆久 6 5 0 9 5 1 15 1 1 0.40
東京六大学秋季リーグ戦星取表
順位   早 大 慶 大 明 大 立 大 法 大 東 大 勝ち点 勝率
早 大 ◯3-1 ◯7-1
△3-3
◯1-0
△1-1
◯2-0
△6-6
◯7-1
◯8-0
7.5 1.000
慶 大 ●1-3 △2-2
◯7-2
◯11-6
◯4-2
◯4-1
△1-1
◯3-0
◯8-3
.857
明 大 ●1-7
△3-3
△2-2
●2-7
◯9-4
◯9-3
◯4-0
◯5-0
◯9-3
◯4-1
.750
立 大 ●0-1
△1-1
●6-11
●2-4
●4-9
●3-9
◯4-2
◯5-0
△1-1
◯6-2
.375
法 大 ●0-2
△6-6
●1-4
△1-1
●0-4
●0-5
●2-4
●0-5
◯4-2
◯10-1
.250
東 大 ●1-7
●0-8
●0-3
●3-8
●3-9
●1-4
△1-1
●2-6
●2-4
●1-10
0.5 .000
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コメント

早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)

――試合を終えた今の気持ちを教えてください

ひとまずは安心していますけど、明日もまたあるので、切り替えて明日に向けてやっていければなと思います。

――今日の試合を振り返ってみていかがですか

点を取ってもらった後に、自分が点を取られてしまって。その後、蛭間(拓哉、スポ2=埼玉・浦和学院)が勝ち越しホームランを打ってくれましたけど、そこで蛭間に自分に後押しじゃないですけど、『先輩、しっかりしてくださいよ』というような(メッセージを含んだ)一発だったのかなと感じています。

――ご自身の投球に点数をつけるとするならば、いくらになるのでしょうか

65点くらいですかね。さっきも言いましたが、点を取った後に点を取られてしまったので、あそこでしっかり流れをつくるのであればゼロで抑えるのが(エースの)立場として、役割というか、仕事なので。

――慶大・木澤尚文選手(4年)との投げ合いとなりましたがいかがでしたか

彼が相手というよりかは、自分としっかり向き合って、自分らしい投球が出来ればいいかなと思って投げていたので、特に意識することはなく、自分らしい投球ができたのかなと思います。

――お互い5回までは点が入らないゲームとなりましたが

想定内でもあったので、特に何も変えることなく、自分がゼロを積み上げていくということだけに徹していました。

――6回に瀧澤虎太朗副将(スポ4=山梨学院)の適時打で均衡が破られましたが、当時を振り返ってみていかがですか

瀧澤は早慶戦に強い男だと思いますし、4年生が集大成としてこのようなかたちでタイムリーヒットを打って、いい流れで先制できたということで、チームにいい勢いがついたのかなと思います。

――その後、内野ゴロの間に点を失いましたが、振り返ってみていかがですか

さっきも言いましたけど、点を取られたのは申し訳ないと思っていますし、そこで抑えるというのが自分の役割だと思うので、そういう面では申し訳ないなと思います。

――7回に正木智也選手(3年)に二塁打を打たれた球種は何だったのでしょうか

真っすぐがちょっと真ん中に入ってしまったので、真ん中に入った分、長打になってしまったのかなと思います。

――しかしその裏、蛭間選手がが勝ち越しの2点本塁打を放ちましたが、ご覧になっていていかがでしたか

やっぱり頼もしい後輩だなと感じました。自分は次の打者として控えていたので、打った瞬間をネクストバッターズサークルで見ていて「行ったかな」という感覚で見ていました。うれしい2点でした。

――明日の試合に向けての意気込みをお願いします

明日もしっかり出番があると思うので、その出番に向けて調整していければなと思います。最後は気持ちだと思うので、どれだけチームが一体となって勝ちたいという欲が見えるかが大事だと思うので、そこに向けてもう一回、キャプテンという役割も踏まえて、チームを優勝に導ければなと思います。

瀧澤虎太朗副将(スポ4=山梨学院)

――試合を終えた率直な感想をお願いします

今日負けたら終わりだったので、なんとかチーム一丸となって勝ててよかったです。

――今日の試合では早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)を打線が助けることができましたね

このリーグ戦本当に早川には助けられてきたのでなんとか楽にしてあげたいという思いでした。ヒット4本しか打てていないですが、その4本でしっかり点が取れたので良かったです。

――追い込まれてから先制打を打った打席を振り返っていただけますか

打席に入るときに色々な人の顔が浮んだというか。やはりバントをした吉澤(一翔副将、スポ4=大阪桐蔭)や、4年生だったり三塁コーチャーの杉浦(啓斗、文構4=東京・早実)の顔など本当に色々な人の顔が浮んでこれはもう打つしかないと思いました。最後は追い込まれてからどんなかたちでもいいから点を取りたいと思って右手一本でなんとかボールを拾ってくれたのでよかったです。

――塁上ではライトスタンドにもガッツポーズをする姿が印象的でした

あれはライトスタンドの野球部にガッツポーズをしました。本当にこの1年間、下級生の仲間がたくさん補助してくれましたし、本当にメンバーに入っていない同級生の仲間も本当に裏方に回ってくれていて。そういう人たちのおかげで打てた一本だったので自然とガッツポーズをしていました。

――瀧澤選手のその一打でチームが勢いづいた印象を受けました

先制点は本当に欲しかったので負けられない早稲田からすればあの一点は本当に大きかったと思います。

――今日は守備でもチームを救いました

ちょっと早川も数本(安打を)打たれ出してきていたのであそこでぎりぎり(左翼ファウルグラウンドへの飛球を)捕れてチームに流れを持ってこれたのではないかと思います。

――明日は優勝のかかった大一番でもあり学生最後の試合です。どのような戦い方をしたいですか

まず明日は勝って優勝するというのと、野球部の仲間や家族だったり色々な人の思いを背負ってあす約3時間半楽しみたいと思います。

――では最後に意気込みをお願いします

明日はきょう以上に苦しい戦いになると思うのでチーム一丸となってチームの代表として一生懸命戦いたいと思います。

蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)

――初戦を勝利しました。率直な今の気持ちをお願いします

本当に早川さんを始め、チームが一つになって勝てた勝利だと思います。

――大方の予想通り、試合は序盤投手戦となりましたが、ベンチはどのような雰囲気でしたか

とにかく徹底事を徹底しようという声掛けと。常に前向きな言葉が飛び交っていて、負ける気はしなかったです。

――どのような言葉がベンチでは飛び交っていたのですか

徹底事の声掛けであったり。こっから行くぞという前向きな言葉であったり。打てなくても大丈夫だから、落ち込むなという声掛けをしてくれていました。

――金子銀佑選手(教4=東京・早実)、吉澤一翔副将(スポ4=大阪桐蔭)、瀧澤選手の力で先制をしましたが

さすが4年生という感じです。本当にかっこよく見えました。

――7回までの2打席を振り返ると

変化球のボール球を全部振らされていました。そこに意識をしすぎて逆に振ってしまっていました。(7回の第3打席は)低めのボールを振らないと意識しすぎずに、しっかり狙ったボールをと意識をしていました。

――狙ったボールとは

低めではなく外の真っすぐを踏み込んで打ちにいこうという気持ちで打席に立ちました。

――7回は慶大に同点にされての打席でしたが、どのような心境で打席に入りましたか

とにかく熊田(任洋、スポ1=愛知・東邦)が前に出てくれたので、つなごうという意識でした。初球から打ちにいくのではなく自分の狙った球を絞って。いろいろな攻撃があの場面はあるかもしれないので、じっくりいこうと思っていました。

――打った球種は

多分抜けたスプリットだと思います。

――本塁打を打った打席を振り返ると

初球変化球で入ってきて。自分は変化球が合っていなかったので、多投してくるかなと思っていたのですが。基本的には外の真っすぐに対して踏み込んで打とうと意識はしていました。木澤選手は球も速いし変化球も鋭いので、バットを短く持ってコンパクトに振ろうという意識でいた結果だと思います。

――打った瞬間はどのようなことを思いましたか

とにかくいってくれという感じでした。

――一塁ベース辺りで、大きくガッツポーズしていましたが

興奮状態でしたね。興奮していましたね、非常に(笑)。

――ベンチではどのような声を掛けてもらいましたか

ありがとうとか。そういう、ありがたい言葉をいろいろいただきました。

――明日は優勝の懸かった試合となりますが、最後に意気込みをお願いします

このような舞台に立てていることに感謝をして、とにかく4年生と試合ができるのが明日で最後なので悔いの残らないように。今までしっかりと準備をしてきたので、1年生から4年生まで一つになって、必ず早稲田の代表として絶対に優勝したいと思います!