昨年、ルーキーながら東京六大学リーグ戦(リーグ戦)フル出場を果たした中川卓也(スポ2=大阪桐蔭)。しかし、成績は到底満足のいくものではなかった。未完の大器は、悔しさをバネにどのような冬を過ごしたのか。2年目を前にした率直な思いを伺った。
※この取材は3月25日に行われたものです。
『振り切る力』
質問に答える中川卓
――早大での1年を振り返っていかがですか
いいところとしては環境にしっかり順応できていますし、本当に早稲田でしかできない経験というのをさせてもらいました。やっぱり経験を絶対に殺してはいけないと思うので、2年目にしっかり結果としてこの1年間をつなげていきたいなと思います。
――普段の大学生活にも慣れましたか
授業はちょっと(単位を)落としたんですけど(笑)。学校のサイクルにもだいぶ慣れてきているので、今学期はフル単目指して頑張ります。
――東京での生活はいかがですか
東京に来てからちょっと体調が悪いことが多くてちょっとした病気にかかったりとかあったのですが、だいぶ慣れてきたのでやりやすい環境です。
――環境の変化が体調に表れやすい方なのですか
やっぱり大阪が恋しいですね(笑)。
――オフシーズンはどのようにして過ごしましたか
とにかくスイングスピードを上げるというか、うまく当てようとし過ぎていたりうまいバッティングをしようとし過ぎていた部分があったので、冬は量を振りました。あとは、振り切らないとボールは遠くへ飛ばないので、振り切る力というのをテーマに置いてやっていました。
――以前、瞬発系のトレーニングを取り入れたいとおっしゃっていましたが、その部分については
ウエイトトレーニングで11、12、1月くらいまでは筋肉を大きくするメニューをずっとやっていました。2月くらいからは瞬発系を取り入れて、軽い負荷でジャンプしたりするようにメニューを変更しています。
――そのようなトレーニングの効果は守備面や走塁面で表れるのでしょうか
そうですね。キレを出すことによって1歩目が違います。守備に関して言っても走塁に関して言っても、1歩目がトレーニングするしないによってかなり違ってくるのでそういうところを大事にしたいです。細かいところかもしれないですけど、そういった細かいところをしっかり意識してやれるようにしています。
――体重管理はどのようにされていますか。少しすっきりされたように見えますが
12月から落としていて7キロか8キロくらい落としました。腰の回転とかは結構違ってきます。
――オフシーズンに一番強化した点はどこですか
ウエイトトレーニングと振り切る力をテーマにやっていたのでそこにはかなり労力と時間をかけたつもりです。
――新型コロナウイルスの影響で沖縄キャンプが中止となりましたが、調整の難しさはありましたか
もちろん沖縄に行けばモチベーションも上がりますし、「よし、やってやるぞ」という気持ちにはなるんですけど、それは東伏見でも一緒だと思うし、野球ができるってことは1日1日気持ちを持ってやらないと意味がないと思います。そんなに自分の中では大きなズレとかはないです。調整の難しさはもちろんあったのですが、そんなに関係なく1日1日を大切に過ごすということだけを考えてやっていました。
――後輩が入ってきましたが、心境の変化はありますか
そこまではないのですが、下が入ってくることによってより一層しっかりと見本としてやっていかないといけないと思いますし、熊田(任洋、スポ1=愛知・東邦)なんかに関しては結構言ってきてくれるので、お手本の先輩というか鏡になれたらなと思っています。
――清水大成選手(スポ1=大阪・履正社)との対戦経験はありますか
自分が高校2年の時の秋に1回対戦しました。多分抑えられたと思います。
――ここからは春季オープン戦について伺います。打撃面での手応えはいかがですか
冬にテーマとして置いていた振り切る力というのに関してはしっかりと振り切れるようになりましたし、その結果長打もあると思うのでそこはいいとして、やっぱり変化球の対応力だったりまだまだ目が慣れていないというかどうしても実戦が空くとズレてしまう部分があるので、そこを感覚的に直していければ大丈夫なのかなと思います。
――駒大戦では本塁打を放ちました
あれは甘めのスライダーだったのですが、自分の読み通りの球が来てしっかり振り抜けた結果です。
――本塁打は意識して打つものなのでしょうか
自分はホームランバッターではなくて、ホームランはバットがボールに対してちょうどいい角度に入れば勝手に上がってくれるので狙っていないです。強いて言うならセンターラインの意識でやっています。
――粘った末に四球で出塁する場面も見られましたが、選球眼に自信はありますか
そうですね。自分は高校の時から次につなげるということだけを意識してやっていたので、粘って粘ってのフォアボールはヒット以上にうれしいかもしれないです。
――2番という打順ですと3番や4番に球筋を見せるためにあえて見送ることもあるのでしょうか
自分もそう思っていたのですが、データの人とか瀧澤さん(虎太朗、スポ4=山梨学院)からも「初球から全然打っていいから」と言われているので、そこは好き勝手やらせてもらっています。2番だからというのはそんなに。自己犠牲するときはしないと駄目ですけど基本的には自分の好きなようにやらせてもらっています。
――打順には関係なく『つなぐ』ことを意識していると
そうですね。ホームランは少ないですし、自分の役割として何が取りえかというと出塁率とか打率だと思うので、そこを突き詰めていかないといけないなと思います。
――打撃でお手本にしている選手などはいますか
動画とか見ているのは日本ハムの近藤さん(健介、北海道日本ハムファイターズ)とか。自分が理想としているのは巨人の阿部慎之助さん(読売ジャイアンツ)とかです。ちょっと別のタイプかもしれないですけど、シンプルにバットを出しているのでそういうのは動画を見て結構参考にしています。
――春季オープン戦中にバットを変えましたが
秋に山田さん(淳平、令2教卒)からもらったバットがすごくいい感じだったので秋のリーグ戦が終わった後にそのバットと同じようなものを作ってもらいました。今はそのバットと違うモデルのバット2本を打ち比べてという感じです。
――先日の試合ではマウスピースをしていましたが、いつごろに作ったのですか
年明け、2月くらいからです。監督(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)の友達というか知り合いが作ってくれるとなって作ってもらいました。
――早大の選手の皆さんで一斉に作られたのですか
はい。ワンピースといって上の歯全部の型と奥歯だけの型があのですがそのどっちかを5、6人くらいは付けていると思います。
――どのような効果があるのでしょうか
飛距離が伸びるとか球が強くなるとかとかそういうのではないのですが、(打球を)捉えるときにぐっと噛むのでそこはいいのかなと自分は思います。これからリーグ戦でも使っていきたいです。小西さん(優喜、文構3=東京・早実)とか西垣さん(雅矢、スポ3=兵庫・報徳学園)、岩本さん(久重、スポ3=大阪桐蔭)、銀佑さん(金子、教4=東京・早実)も付けていると思います。自分的には噛むのでその噛み合わせがしっかり矯正されます。
――今季から三塁手に転向されましたが、三塁守備の難しさはどのような点ですか
やっぱり距離が近いというのが一番です。あとは土と芝の切れ目があってそこに当たったときにどうしてもバウンドが少し変化するので、そこは怖いという感覚があります。
――では、魅力は
ホットコーナーということでチームの守備を盛り立てるのはサードなのかなと思っています。やっぱりソフトバンクの松田選手(宣浩、福岡ソフトバンクホークス)が、「熱男」って言っているようにサードは熱男というかガッツマンというところが魅力かと思います。
――声かけも意識しますか
声かけは基本自分はどこでも。(三塁手は)特にピッチャーに近いのでピッチャーが苦しいときに一声掛けられたらなと思います。
――遊撃手との連携はいかがですか
自分は高校時代にやっていてある程度は自分の距離というか守備範囲を分かっているつもりなので、これくらいは自分がやるけどあとはお願いしますみたいな感じでコミュニケーションは取れています。
――中川選手が出場した試合は全て真中直樹選手(教4=埼玉・早大本庄)が遊撃手としてスタメン出場していますが、リーグ戦では熊田選手と三遊間を組む機会もあるかと思います。その点はいかがですか
熊田とも大体のやりとりは練習を通してできていて、フライの確認とかゴロの確認もできています。あとは実戦でどう動くかというところだけだと思います。
――練習やオープン戦が続く中でリラックス方法はありますか
アイスを食べることです(笑)。セブンイレブンにガーナのチョコのアイスがあって今はそれにハマっています。チョコが好きなんで(笑)。
中学時代、実は・・・
――話題は変わりますが、中川選手が投手をやっていた頃の話を伺ってもいいでしょうか
中3までピッチャーとセカンドという感じでやっていました。
――二刀流は考えなかったのですか
元からピッチャーはいいかなと思っていたので。元々バッティングの方が好きだったので高校からは野手でいこうと思いました。ピッチャーはピッチャーで(三振が取れると)もちろんうれしいですけど、野手の方が魅力的だなと思いました。
――投手として臨んだ試合で思い出に残っている試合はありますか
自分が中学3年生の時の夏の最後の大会です。枚方ボーイズというすごく強いチームに藤原(恭大、千葉ロッテマリーンズ)と小園(海斗、広島東洋カープ)がいてそこに投げたのはよく覚えています。
――お2人は中学時代から有名だったのですか
そうですね。元々は自分も枚方(ボーイズ)にいて、そこを辞めて違うところに移りました。1年の冬までいたので古巣という感じで、そこに投げて勝てたのは覚えています。
――投手時代の経験が野手として生きることはあるのでしょうか
配球とかは読みやすくなっているのかな。自分だったらこう投げるなとかはイメージ的にはあって、どういうスイングしていたらどう投げるというのは大体頭にあるので、自分のスイングとピッチャーの特徴を照らし合わせて考えるというのはあるかもしれないです。
「ガッツのあるプレーを」
昨秋の慶大2回戦で適時打を放つ中川卓
――ここからは春季リーグ戦について。開幕を控えた今の心境を教えてください
延期だったり中止だったりというのはあるんですけど、自分たちは4月11日の明治戦に合わせてずっと調整し続けているので、そこはブレることないですし、そこを目指して今は練習とか試合をやっているのでそこを意識してしっかりやっていきたいと思います。
――新型コロナウイルスの影響で不透明な部分も多いですが、モチベーションへの影響はありませんか
早明戦にピークを持っていくということでみんなでやっているのでそんなにモチベーションが下がることはないです。
――2年目となりより結果が求められると思います
より結果が求められるのは当然のことのなので、正直に言うと今めちゃくちゃ不安ですけど、その不安にどうやって打ち勝ってその不安をどうやって自分のエネルギーにしていくかというところだと思います。不安に打ち勝てばいい結果が出ると思うのでそこは自分との戦いです。相手との戦いもあるんですけど、自分との戦いもあると思います。
――不安に打ち勝つためには
練習をやるしかないです。練習をやって自信を持ってリーグ戦に臨むことしかできないと思います。あとはデータとかを見てやりたいなと思います。
――チームの雰囲気はいかがでしょうか
声も出ているし練習自体にすごく活気もあるので、そこにプラスして緊張感というか張り詰めた空気を作って行こうというふうにみんなでやっています。すごくいい練習ができているのかなと思います。
――カード順はあまり気にしないですか
開幕カードがどこでとかはあまり気にしないです。目の前の試合に全力で100%を出すだけだと思っているので相手どうこうというよりは自分がどうするべきかということを考えています。
――優勝を目指す上でカギとなるカードはどこだと思いますか
やっぱり初戦のカードと2つ目のカードの明治と法政です。去年の秋も法政と明治で落としていてそこで勝っていればという、たらればが残っているので初戦の2カードは大事にしていきたいと思っています。
――昨秋の開幕3連敗は打線が沈黙してしまったことが原因として挙げられるかと思いますが
やっぱり自分が2番になって3試合連続で完封負けして機能しなかったというのが事実なので春はしっかりと自分の役割を果たせたらなと思います。
――警戒している投手はいますか
慶應の木澤さん(尚文、4年)です。真っすぐもいいですし変化球も速くてキレのあるボールですが、ある程度割り切ってしっかり自分のスイングをすれば打てると思うので、自分のスイングというのを心掛けてやっていきたいなと思います。
――ファンの方にどのようなところを注目してほしいですか
多分サードを守るので元気はつらつとしたプレーというかガッツのあるプレーを見てほしいと思います。2年目はバットでも結果にこだわっていきたいと思うので食らい付いてヒットを打つだとか食らい付いてフォアボールを取るとかそういうところを目指してやりたいし、そういうところを見てほしいなと思います。
――こだわりたい数字はありますか
やっぱり打率と出塁率です。打率というよりは出塁率かな。自分の役割はそこだと思うので。出塁率が高ければ高いほど自分としても納得いくというか、ヒットが打てなくてもフォアボール2つ取れればヒット2本打ったことと一緒なので出塁率にこだわってやっていきたいなと思います。
――春季リーグ戦に向けた意気込みをお願いします
1年目を経験したことによって悔しいとか情けないことばっかりだったんですけど、その経験を生かして2年目は結果にこだわってやっていきたいなと思っています。首位打者取るくらいの気持ちでやっていきたいなと思います。
――チームとしての目標は、ずばり優勝ということで
まずはリーグ優勝というのを目標にやっていきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 望月清香)
1年目の悔しさをばねに、今年は『結果』を残します!
◆中川卓也(なかがわ・たくや)
2000(平12)年7月28日生まれ。175センチ。75キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部2年。内野手。右投左打。中川選手は以前、大切にしている言葉は『乗り越えられない試練はない』だと教えてくださりました。苦しい日々が続く毎日ですが、野球ができる日が1日も早く戻ってくることを願って、今はみんなで辛抱しましょう。コロナウイルスが終息した際には、ガッツ溢れるプレーで日本中の大学野球ファンを元気づけてくれるはずです!