【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『逆襲の早稲田』 第3回 檜村篤史×福岡高輝

野球

 東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)の開幕が近付いてきている。春は慶大から勝ち点は奪ったものの、序盤でつまずき同率3位に終わった早大。6季ぶりの優勝に向けて、選手たちの気持ちも高まりつつある。そこで今回は、この夏、六大学選抜にも選出された福岡高輝(スポ3=埼玉・川越東)、檜村篤史(スポ3=千葉・木更津総合)の3年生コンビにお話を伺った。

※この取材は8月31日に行われたものです。

二つの海外遠征

今夏、六大学選抜に選出された檜村(左)と福岡(右)

――春季リーグ戦終了後、お二人は大学日本代表に招集がかかりました。それを聞いた時の率直な感想はいかがでしたか

福岡 素直にすごくうれしかったんですけど、選抜されたのが六大学の選手だけだったので、「ジャパン」と呼んでいいのか分からなかったです。

檜村 六大学だけといっても一応ジャパンっていう日本代表の名目で招集がかかったので、今まで日本代表に呼ばれたことがなかった自分としてはうれしかったです。

――普段は敵同士で戦う選手が仲間として戦ったことは刺激になりましたか

福岡 自分は三塁手なので、明大の森下智之(4年)さんと守らせてもらいました。自分は守備が苦手なので、森下さんを見て学ばせてもらいました。

――森下さんと話したりはしましたか

福岡 アドバイスを求めて話したりもしたんですけど、それよりも自分で見て学ぶことの方が多かったですね。

檜村 自分は明大の越智達矢(4年)さんの打撃がすごくいいと思っていて、打撃練習中の守備で一緒になった時にどうやったら打てるようになるのか聞いたりしました。(越智さんは)振るしかないとおっしゃっていたので、自分もしっかり素振りの練習が大事なんだと思いました。

――スタメンで主に出場していた法大の相馬優人(3年)選手とは交流がありましたか

檜村 野球の話はあまりしなかったんですけど、遠征中は部屋が一緒だったので、日常的な話をしていました。「大学どんな感じ?」とかそういう話ですね。

――遠征中は観光名所に遊びに行ったりすることはありましたか

檜村 観光名所に行く機会はなかったんですけど、他大も含めた3年で集まって近くのステーキ屋に行ったりしました。

――福岡選手は試合にはスタメンで2試合出場しましたが、振り返ってみていかがですか

福岡 自分は台湾に行く前に練習試合で失策してしまって、大事な試合のスタメンで出るってことがなかったので、それが悔しかったです。2試合スタメンで出れたことはうれしかったんですけど、それよりも重要な試合で起用されなかったことの方が悔しかったです。

――台湾遠征で得た収穫というのは

福岡 自分は守備で、普段とは違う慣れない土だったので、腰を落としてやらないといけないというのを改めて感じました。守備の面では他の選手は本当にうまくて、刺激になったというか、いい経験をさせてもらいました。

檜村 他の大学の方は主力の方がたくさんいて、一緒に練習をやっていても意識が高い人が多いな、と感じました。そういったところがいい経験になりました。

――二つ目の遠征としてブラジル遠征がありました。台湾と立て続けにありましたが、疲れなどはありましたか

檜村 そうですね、結構続いて遠征があった感じなので、疲れはあったと思います。

福岡 自分は移動が好きなので、疲れはあったとは思うんですけど、楽しめていました。

――ブラジルへのフライト時間は長かったと思いますが、その間は何をしていましたか

福岡 映画見て、ゲームして、寝て、の繰り返しですね。

――席順は何か決まりがあるのでしょうか

福岡 多分ポジションごとだと思うんですけど。俺山岡さん(仁実、スポ4=東京・早実)だったよ。

檜村 え、俺池田さん(賢将、スポ4=富山・高岡南)だったけどね。

福岡 じゃあ何順で決まってるのかよく分かんないっすね(笑)。

檜村 国内線は多分ポジション別だったと思うんですけどね。

――檜村選手はフライト中何をしていましたか

檜村 映画見て、ゲームして、寝て、ご飯食べて、って感じですかね(笑)。

――映画は何を見ましたか

檜村 自分は『アベンジャーズ』とか、『スパイダーマン』とか、『8年越しの花嫁』とか・・・あとなんだっけな。

福岡 『祈りの幕が下りる時』?

檜村 ああ、それだ。

――何が面白かったですか

福岡 『ドクターストレンジ』が面白かったです。

檜村 あ、それも見たな。

――たくさんの映画を消化できるくらい長いフライトだったんですね

福岡 本当に永遠と見てましたね(笑)。

――ブラジルならではの収穫はありましたか

福岡 (野球の収穫は)ブラジルの選手はすごいフルスイングしていたので、そういうところは見習いたいと思いました。生活面は・・・やっぱりトイレじゃないですかね(笑)。

檜村 技術的なこととはズレるんですけど、ブラジルの人たちがフレンドリーだったので、歓迎会とかでも話しかけたりしてくれて、言葉は通じなくても身振り手振りでコミュニケーションが取れて楽しかったです。

――台湾やブラジル遠征を通して、楽しかったエピソードなどはありましたか

福岡 台湾は、檜村と相馬の部屋に行って3年生でたくさん集まって夜騒いだのが楽しかったです。

――どんなことをして遊びましたか

福岡 人狼だったり、ポートナイトっていうスマホアプリのゲームをして盛り上がったので楽しかったです。

――人狼で強かった人はいましたか

福岡 なんか慶大の柳町(達、3年)が荒らしまくって(笑)。柳町が人狼じゃないのに人狼だとか言い出してわけわかんなくなってましたね(笑)。人狼がうまいとかじゃなくて、本当にただの荒らしでした。

――檜村選手は人狼得意ですか

檜村 はい、得意ですね。

福岡 (笑)。彼は顔変わらないので。ポーカーフェイスなので分かんないですね。

「(檜村は)本当に自分に厳しいです」(福岡)

ケガの出遅れを取り戻すべく、鍛錬に励む檜村

――春に比べて成長したと思う点はありますか

福岡 自分は打撃面では逆方向に打つ時に感覚がよくなったと思います。春よりも飛ぶようになりました。守備はハンドリングが自分の中で成長したと思っていて、難しいハーフバンドでもカバーできるようになりました。春が終わってからグローブを大きい物に変えたからっていうのもあると思いますが、その点が自分の中で成長した点だと思っています。

――福岡選手は打撃フォームを変えたと耳にしたのですが、どういう経緯で変わったのでしょうか

福岡 他大の選手をまねしてみたり、自分の中でいろいろもっといいものを求めてやっていく中で、結局春に戻りましたね。

――参考にした他大の選手というのは

福岡 明大の渡辺佳明(4年)さんとか、立大の飯迫恵士(4年)さんとか参考にしていました。

――檜村選手は春から成長したと思う点はありますか

檜村 そうですね・・・台湾遠征中にケガをしてしまってあまり練習ができなかったというのはあるんですが、打撃面では前に突っ込んでしまうことがあったんですけど、それが以前よりはなくなって粘りの打撃ができるようになったんじゃないかと思います。

――ケガの期間はどのような練習メニューをこなしていましたか

檜村 台湾遠征中は練習する場所がとにかくなかったので、練習は全然できなかったです。日本に帰ってきてからは筋トレが中心ですね。ジョギングとかも控えるように言われていたので。

――疲労骨折と耳にしたのですが

檜村 疲労骨折とはまた違くて。自分はよく捻挫をしてしまうのですが、その捻挫が治りにくいものになっていたらしくて。骨が緩んでいて動くと骨同士が当たって痛くなってるみたいです。安静にしていれば治ります。

――檜村選手が試合に出れない期間、真中直樹選手(教2=埼玉・早大本庄)がスタメンでした。彼の守備はいかがですか

檜村 すごく動きがよくて。あと体が小さいのにも関わらず肩が強いので守備はうまいと思います。

――真中選手が試合に出ている期間はプレッシャーも感じていましたか

檜村 そうですね、真中は守備もうまいし、自分は打撃で打てていないので、やばいんじゃないかなって思ってました。

福岡 めっちゃマイナス思考じゃないか(笑)。

――檜村選手は自分にストイックですね

福岡 本当に自分に厳しいです。

――不安をあまり同期に打ち明けることもないですか

檜村 同期にそういう話はしないですね。自分で解決できてるのかはわかんないですけど、「やべぇーやべぇー」と思いながら、夜練習したりしてます。

――その時にアドバイスを求める人はいますか

檜村 アドバイスというよりかは、自分が今どういうスイングをしているのかとか、自分の状況を周りから聞いて、それをもとに「じゃあこうしてみよう」っていうふうに課題を克服していく感じですかね。

――先ほど檜村選手は打撃に粘りが出てきたとおっしゃっていました。先日の楽天2軍戦の第1打席もそれが顕著に出た場面だったと思いますが、あの打席を振り返ってみていかがですか

檜村 そうですね、あの打席は初球から振りにいくことができていたし、追い込まれてからも粘ってボール球を見極めることができていたのでよかったかなとは思っています。

――福岡選手はオープン戦では安打が出ない期間もありましたが、その時はどう感じていましたか

福岡 結果が出ない時期は悔しいっていう思いはあったんですけど、やっぱり目指すところはリーグ戦なので、そこにしっかり調整できれば大丈夫だと自分の中で切り替えてやってました。

――ここ最近で状態が上がってきましたが、きっかけなどはありますか

福岡 加藤(雅樹、社3=東京・早実)と練習していて、いろいろ聞いたり相談して、加藤に言われたことを実践したりしていました。最近は自分の中でもしっくりくるようなスイングができているので、結果につながっているのかなと思います。

――加藤選手からはどのようなアドバイスがありましたか

福岡 すごく自分は打撃の構えを意識してしまう人で、構えをどうしたらいいのか聞いたりしました。構えについては「自分がしっくりくる構えでいいんじゃない」と言われました。それから自然体で構えるようにしてからしっくりくるようになりました。

――例年よりもオープン戦が少ないことに関してはどう思いますか

檜村 自分はケガもあって、試合に出れずに実戦が少なかったので不安があります。

福岡 自分は試合が好きで、試合で出た課題を練習でつぶしていくスタイルなので、オープン戦が少ないっていうのは物足りなさがあります。

――ここまでの実戦を振り返ってみていかがですか

福岡 個人的にはしっくりくるスイングができてきているので、開幕までの一週間調整できればいいなと思っています。チームとしては塁に出た走者を安打ではないにしろしっかり返せているので、やろうとしていることはできているのかなと思います。

檜村 チームとしてはここ最近は内野ゴロとかで挙げた1点とかしか入っていなくてあまり得点が伸びてない印象があります。投手が頑張っても勝てない試合もあるし、もう少し打撃陣が頑張らないといけないなと思います。その中で一塁走者が出たら盗塁をするとか、そういった課題が出ているので、開幕まで残り少ないですけど、リーグ戦でできるようにしていかないと、と思います。個人としてはまだまだスイングのキレが足りないなと思っています。復帰したての頃よりはできてると思うんですけど、もっといけると思うのでリーグ戦までに間に合わせていきたいと思います。

――福岡選手は課題はありますか

福岡 まだ打ち損じが多いですね。楽天戦でも捉えた打球ではあったんですけど、それがゴロになってライナーで打てなかったりしました。しっかり捉えて自分が思うような打球にするというのをあとの一週間で詰めていけたらいいなと思います。

「(福岡)には首位打者を獲ってほしい」(檜村)

今季は1番起用も予想される福岡

――リーグ戦開幕が迫っていますが今の心境はいかがですか

福岡 楽しみです!

檜村 春はキャンプなどもあって準備期間があったんですけど、秋はイベントが多くて。すぐ来ちゃう感じですね。

――福岡選手は開幕戦はお誕生日ですが本塁打は期待できますか

福岡 応援の後押しがあれば打てるかもしれないですね(笑)。自分は本塁打を打つようなバッターではないのですが、3安打くらい打ってチームに貢献できればいいなと思います。

――誕生日ということで特別に意識はしますか

福岡 意識してしまいますね(笑)。

――今のチームの雰囲気はいかがですか

檜村 普通ですね。

福岡 みんなで話し合って、勝つためにやる方向性は決めたりして、一丸にはなれていると思います。

――リーグ戦での個人目標を教えてください

福岡 自分は打順はどこを打つか分からないんですけど、出塁率にはこだわって首位打者獲れたらいいですね。獲れなくても出塁率でチームに貢献したいです。

檜村 3割まだ打ててないのでそこに乗せるのが目標ですね。

――春から背番号が『1』でプレッシャーがあるとおっしゃっていましたが、今はどうですか

檜村 今はあまり考えずにやっていますね。

――『1』をもらったときはプレッシャーでしたか

檜村 そうですね。やはり初めてだったので。今は気にせずできています。

――お互いにどのようなプレーに期待していますか

福岡 檜村は三遊間を一緒にやっていて自分は守備範囲が狭いので、三遊間檜村にしっかりさばいてもらいたいですね。

檜村 春とは違って自分は足をやってしまったので…。

一同 ばらばらですね(笑)。

――打撃の面でお互い期待することはありますか

福岡 檜村も言ってるんですけど、3割打ってもらってところどころで一発打ってもらえればありがたいです。

檜村 毎試合2安打くらい打ってもらって首位打者獲ってほしいです。

――4年生の選手とプレーするのも最後になりますが、いかがですか

福岡 ことしは自分たちの代が中心にやらせてもらっていて。4年生がやりやすい環境をつくってくれてサポートしてもらっているので、しっかり恩返ししたいと思います。

檜村 自分たちの代は迷惑を掛けることが多かったり、文句を言う人が多い中でも自分たちの意見を聞いて今までやってきてくれたので、最後優勝して4年生を卒業させてあげたいです。

――3年生は元気な選手が多いんですか

福岡 本当にみんなが我が強くてそれぞれ変わっているので4年生はやりづらいと思います。

――エースで主将の小島選手(和哉主将、スポ4=埼玉・浦和学院)についてはいかがですか

福岡 ほんとに小島さんは守っていて点を取られる気がしないというか。ピンチでも小島さんなら抑えてくれるだろうという安心感があるのですごくかっこいいですね。

檜村 早慶戦で2連投したり、チームに尽くしてくれていると思います。調子のいい小島さんは打たれる気がしなくて、リーグ戦でも投げてくれると思うのでバッター陣で頑張りたいです。

――開幕カードの法大にはどのような印象を持っていますか

福岡 個々の力がすごいスター軍団という印象です。

檜村 個々の力があるんですけど、勝ててないということは何か欠点があると思うので初戦、勝ち点取りたいです。

――菅野秀哉投手(法大4年)に関してはいかがですか

福岡 真っすぐがやはり速いので、それに負けないようにしっかりバット振っていきたいです。

檜村 インコースにボールがくるので、自分はボール球を振ってしまうことが多いんですけど、そこは見極めていきたいです。

――カギとなるカードはどこでしょうか

福岡 やはり最初の法大戦で勝ち点を取れればいい流れで入っていけると思います。

檜村 同じですね。

――チーム内でのキーマンはどなたでしょう

福岡 自分は瀧澤(虎太朗、スポ2=山梨学院)です。すごくバッティングが良くて本塁打も打てる選手なので。彼か自分が1、3番打つかまだ分からないんですけど、本当に彼のバッティングはレベルが違うので、そこをリーグ戦でも発揮してくれれば、勝利に近付けると思います。

檜村 西垣(雅矢、スポ1=兵庫・報徳学園)ですね。1年生であれだけのピッチングができているので、投げる機会も増えると思うのでしっかり投げてほしいなと思います。

――西垣投手が先発をするときはどのような声を掛けていきたいですか

福岡 西垣は気持ちが強いので、心配ないんですけど、ピンチになったら周りで盛り上げられればと思います。

――最後にリーグ戦に向けての意気込みをお願いします。

檜村 まだ優勝できてないので、早慶戦で勝ってリーグ優勝できるよう頑張りたいです。

福岡 早慶戦を勝つのが第一なんですけど、リーグ戦で勝つには1カード目が大事になると思うので、そこに向けてチームで戦いたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 中澤紅里、岡田静穂)

入学から6シーズン目。悲願の初優勝を目指します!

◆福岡高輝(ふくおか・こうき)(※写真左)

1997(平9)年9月8日生まれ。174センチ、80キロ。埼玉・川越東高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投左打。開幕戦の9月8日は福岡選手のお誕生日。21歳のバースデーを自らの活躍で祝い、『首位打者』へと駆け上がる姿に期待しましょう!

◆檜村篤史(ひむら・あつし)(※写真右)

1997(平9)年11月6日生まれ。182センチ、81キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投右打。7月に負ったケガから徐々に本調子に近づいている檜村選手。今回、色紙に書いてくださった言葉は『粘り打ち』でした。粘りの打撃で下位打線からでもチームに得点機をもたらしてくれることでしょう!