大竹がソフトバンクへ入団合意に「実感が湧いてきた」

野球

 10月26日のプロ野球ドラフト会議で、福岡ソフトバンクホークス(ソフトバンク)から育成4位指名を受けた大竹耕太郎(スポ4=熊本・済々黌)。この日、リーガロイヤルホテル東京にて契約交渉に応じ、支度金300万円、年俸400万円(推定)で合意した。その後は大隈会館に場所を移し、訪れたソフトバンクの永山勝アマスカウトチーフ、山本省吾担当スカウトと共に会見に臨んだ。

同期の応援団から記念品を受け取った大竹

 

(記事、写真 郡司幸耀)

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コメント

大竹耕太郎(スポ4=熊本・済々黌)

――最初に大竹選手から一言ごあいさつをお願いします

 福岡ソフトバンクホークスから育成4位で指名していただきました、早稲田大学の大竹耕太郎です。育成指名ということで厳しいスタートとなりますが、ホークスの方は育成面も環境面も整っていると思うので、恵まれた環境の中で自分自身軸をぶらさずにしっかりがんばっていきたいと思います。まずは支配下登録に向けて全力で泥臭くやっていきたいと思います。

――ソフトバンクのユニホームに袖を通してみて率直なお気持ちはいかがですか

 まだ実感がなかったんですけど、きょうこのようなかたちでやっていただいて実感が湧いてきました。

――あらためてプロではどんな投手を目指していきますか

 スカウトの方にも「他にないタイプのピッチャー」ということで評価をいただいたので、自分の長所というか、何で勝負していくのかというのを入団にあたって再考して、自分の理想像というのを今から一つずつ考えていきたいと思います。

――何で勝負していきたいとお考えですか

 150キロ投げるピッチャーがたくさんいる中で自分に求められるものは150キロを投げることではないので、緩急やピッチングの上手さで相手を抑えていくタイプだと思うので、そういう部分でもっと磨けたらなと思います。

――ソフトバンクは千賀滉大投手や石川柊太投手といった育成出身の投手が活躍されていますが、ご自身ではどんなプランでどんなところを磨いて支配下登録を目指していきたいとお考えですか

 まずはケガをしない体づくりということで。大学は2年ですごく投げて3年の時にもたなくてケガをしてしまったので、プロは一度ケガをしたらそこから上がっていくのは難しいと思うので、しっかり土台づくりとして一年目はケガしない体づくり、ケガをしない体の使い方を覚えていきたいなと思います。シーズン通してケガのない体で投げられるようにやっていきたいと思います。

――大卒というと石川投手のようなかたちが理想かと思われますが、聞いてみたいことや支配下登録されるにあたって参考にしたいことはありますか

 アマチュアとプロ野球ではレベルも違うでしょうし、環境面でも日々の生活は変わってくると思うので、そこらへんでのアドバイスなどお聞きしてみたいというのはありますし、正直積極的に周りの先輩方に声を掛けるタイプではなかったのですが、この世界に入った以上は積極性も見せていかないといけないと思っているので、先輩方にはアドバイスを求めていきたいと思います。

――一番の目標は和田毅投手(平15人卒=島根・浜田)になるでしょうか

 そうですね。小さいころから見ていたのと、やはり野球に対する姿勢というか。ピッチング以外でも見習いたいと思います。

――これまでは和田投手のどういった部分を参考にしてきましたか

 全力で投げる感じではなくて、リリースの瞬間だけに力を100にするというか。そういうイメージを持って自分もやってきましたし、まだまだ和田さんに比べれば劣りますけれどそういうところを磨いていけたらなと思います。

――工藤公康監督も左投手であり、シーズンオフなどは育成・支配下関係なく若手の指導にあたっていますけど、何か聞いてみたいことはありますか

 具体的な話になるんですけど、軸足が少し折れながら投げてしまうので、それをもっとホームベース方向に真っすぐ踏み出すにはどういうトレーニングをすればいいのかというのは気になりますし、野球やスポーツに関してもすごく研究されていると思いますので、聞いてみたいことは山ほどあります。熱闘甲子園のキャスターをされていた時に自分甲子園に出ていたのですが、何日目が終わったときに工藤監督からその日の選手だれか一人にメッセージがありまして、それがたまたま自分で。メッセージをもらったので、それはすごく印象に残っています。

――どんなメッセージだったか覚えていますか

 えー(笑)。そのときは大阪桐蔭に負けたんですけど、何だったかな(笑)。「負けたけど善戦だった。投げる姿が良かったです」みたいな内容だったと思います。

――それはまだ実家に

 そうですね、最近は見てないです(笑)。

――指導者としての工藤監督の印象はいかがですか

 選手一人ひとり、それぞれに着眼してしっかり見てらっしゃるなと。You Tubeなどでトレーニング中の動画を見たんですが、自分自身も積極的に参加してやられていて、すごく選手としてはやりやすいというか。ついていきたくなる監督さんだなと思います。まだ会ったことも全くないんですけど(笑)。

――パ・リーグには石井一成選手(平29スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)、茂木栄五郎選手(平28文構卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)、中村奨吾選手(平27スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)など早大で一緒にプレーした選手が多く在籍しますが、その中で対戦してみたい選手はいますか

 茂木さん。茂木さん僕のこと苦手なので(笑)、やりたいですね。

――そういった先にプロの世界へ進んだ先輩方からお話はありましたか

 連絡は中村さん、有原さん(航平、平27スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)、高梨さん(雄平、平27スポ卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)などからいただきました。「おめでとう」というのと、「育成で厳しいとは思うけど、頑張っていつか対戦できるように」と言われました。

――「育成で厳しいと思うけど」というお話ですが、進路については社会人野球という選択肢もあったと思います。その中であえて育成で行くと決意した理由は何ですか

 正直、ホークス以外だったら育成で行く気はなかったんですけど、やはりホークスの強みというか、育成でもはい上がっている選手がいらっしゃいますし、3軍制を敷いていられるので、試合に出るチャンスも多いと思います。あとは、社会人野球に行くのは自分の中で逃げのような感じがあって、厳しい選択をする方が自分のためになると思ったので決断しました。

――ソフトバンクは2軍施設もかなり充実していると思いますが、その環境面はどのように捉えていますか

 寮の部屋もすごく広くて野球をするには何の支障もないというか。すごい環境でありがたいんですけど、そういう環境だからと言って、そういう環境でハングリー精神を忘れてしまうこともあると思うので、そこは勘違いしないように。育成という立場を忘れずに、一日でも早くはい上がるという気持ちでやりたいなと思います。

――ソフトバンクというチームの印象はいかがですか

 今回も日本一になりましたし、常に優勝争いをされているチームだなというのと、福岡のファンが熱狂的というか。先日実家に帰ったんですけど、熊本ですらホークスのユニホームを着て大型ショッピングセンターが営業されていて。九州全体としてホークスを応援しようという雰囲気があるので、そういった中でやれるのはうれしく思います。

――日本シリーズはかなり見ていましたか

 見てました。やはり層の厚さですね。野手にしても投手にしても。外野でも代わった選手が他球団では絶対にスタメンだろうという選手が多かったり、中継ぎの投手もどんどんいい投手が出てくるので、そこで投げられるようになりたいなと。あらためて思いました。

――早大で一番の思い出は何ですか

 やはり日本一になったシーズン(2年春)ですかね。優勝パレードもして、そのお立ち台にも立たせていただいて。夢の中にいるような気持ちでした。

――指名をご両親に報告された後はどういう反応をされましたか

 半ばあきらめていたらしいので。電話した時は泣いて「良かったね」と言われました。

――ご自身はドラフト当日にどういう気持ちで過ごしていましたか

 あまり意識せずに。普段通りに練習して、早慶戦の前々日だったので、意識しないように、しようと思ってたんですけど、ノックでは人生で一番ミスしたり、しょうゆとソースを間違えてかけたり。「あ、緊張してるんだな」と思いました。ドラフト自体は寮のラウンジで、同級生のみんなと見ていました。

――これまで大舞台を経験してきましたが、その時よりも緊張しましたか

 自覚はないです(笑)。緊張しているという自覚はないですけど、いろいろ生活に出てましたね。バットの滑り止めスプレーを自分の手に向かってかけてました(笑)。

――先ほど日本一や優勝パレードのお話がありましたが、3年以降は苦しんだ部分もたくさんあったと思います。大竹選手にとって早大でも四年間はどんな時間でしたか

 人間として成長できたなと。大学にはいろんな分野のいろんなすごい人がたくさんいて、それはOB、現役関係なく。そういう方たちと接することができて、熊本という小さいコニュニティーの中だけで生活していた自分が東京に出て四年間やらせていただいて、人間として幅広さというか、教養も含めすごくつきました。それが一番かなと思います。

――OBの方から言われた言葉で特に印象に残っている言葉はなんですか

 常日頃言われていたのは「ワセダであることに自覚を持て」ということで。今まで先輩方が築いてこられた上に自分たちがいるということを常日頃言われていたので、これからも変わりませんし、ワセダのOBとして周りの手本になるような選手、人間にならなければいけないと思います。

――同じアスリートとして、野球以外の競技の方から刺激もありましたか

 クラスメートにテニスの細沼選手(千紗、スポ4=東京・富士見丘)がいて、女子のチャンピオンなんですけど、彼女も一度どん底を味わってそれでも最後に優勝して。苦しい時はお互いに声を掛け合っていました。みんなそのスポーツ界ではトップレベルの選手たちなので、競技に向かう姿勢を吸収できました。

――プロの入ってどんな投手を目指していきたいですか

 具体的に言うと石川投手(雅規、東京ヤクルトスワローズ)や成瀬投手(善久、同)のような、球速は140キロぐらいでもストレートのキレや変化球のコントロールで抑えていくのが理想かなと思います。

――他の指名選手とは何か接触はありましたか

 ドラフト2位の高橋くん(礼、専大)とは専修に熊本の後輩がいたので連絡先を交換して「よろしく」と伝えました。

――その他の同期入団の選手で気になる選手はいますか

 田浦くん(文丸、秀岳館高)ですかね。熊本の選手だからというのもありますけど、チェンジアップがすごいなと思うので、投げ方とか聞いてみたいですね。

山本担当スカウトと記念撮影に応じる

山本省吾担当スカウト

――まず、大竹選手のどういった点を評価されての指名でしたか

 貴重な左腕ですし、本当に緩急とコーナーワークと大胆に生かした繊細なピッチングのできる非常にクレバーな選手でもあります。ホークスにもたくさん左ピッチャーいますけれど、彼みたいな技巧派のクレバーなピッチャーはいないタイプなので、そういう意味でチームにバリエーションが加えられるんではないかなと思いました。

――指名は育成4位というかたちとなりました

 ニュアンスの中で本人の強いプロ志望は感じていて。春先から有力企業のオファーを数多くいただいている中でプロ志望届を出して退路を断ってプロ一本で勝負したいという彼の意志を買ってですね。

――他球団に比べソフトバンクは大竹選手を熱心に、練習からご覧になっていたとお聞きしました

 そうですね。高校時代から九州担当が済々黌の大竹くんをずっと追い掛けてきましたし、人間性を含めホークスにとって貴重なプレイヤー、財産として評価は高校時代からずっとしてきた選手ですね。

――そうして追い掛けてきた選手を獲得した瞬間の心境はいかがでしたか

 本当に地元・熊本のスーパースターですし、彼が九州のマウンドに上がればきっと熱い応援があると思いますし、そうなる時を僕らは指名の瞬間に描いたというか。また心機一転、九州に戻って伸び伸びと大胆に投げてほしいと思います。

――安部寮での指名あいさつでは大竹選手とどのようなお話をされましたか

 本人も心に期するものがあったと思います。プロがどのくらいの世界かとか。憧れだけではなく、身の引き締まる、勝負の世界に行くという認識をしっかり持っていてくれたので、心強いなと。地に足を付けてやってほしいなと思います。

――担当スカウトとして、球団の上層部に大竹選手についてお話されることありましたか

  もちろんそれは継続して。安部球場の練習にもお邪魔していますし、常にいろんな所作、振る舞いから練習に向かう姿勢も含めて。もちろんいい時と悪い時とありますけど、悪い時も自分と向き合ってやる姿は見てきましたので、彼だったらきっとやってくれると思います。

――迎え入れる立場として、ソフトバンクという環境が本人にとっていいと思う点はありますか

 環境面、設備に関してはトップだと思ってますし、チーム自体も日本一になりましたけど、良いライバルもいます。最大の見本である和田選手というメジャーまで行って帰ってきた、生きる見本がいますから、そういう時に迎え入れることができたのは縁があると思うし、彼も飛び込んでいって、先輩からいろんなものを盗んでほしいなと思います。

――山本スカウトご自身は慶大卒ということで、同じ早慶の選手を獲得できたことへの思い入れはありますか

 そうですね。もちろん早稲田大学さんの選手とご縁があったことは個人的にはうれしいことです。そういう意味で最後の早慶戦で彼のドラフト後の思いのこもったピッチングを見て感動しましたし、それを見てまたプロの世界に飛び込んでもらえればと強く思いました。