東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)開幕前に、抑えの大役を言い渡された小島和哉(スポ2=埼玉・浦和学院)。昨年活躍した投手陣を中心に、最後は自分が試合を締めて勝つ。それが理想とする今季の戦い方であった。しかし、投打が共にかみ合わず、チーム成績は低迷。小島は当初予定していた抑えだけではなく、先発に回るなど、不調のチームの穴を埋めるために様々な場面で登板している。早慶戦では、どのような投球を披露し、存在感を発揮するのか――。伝統の一戦が直線に迫る中、その胸中に迫る。
※この取材は5月19日に行われたものです。
「内容は良くない」
先発や抑えなど、活躍できる幅を広げる小島
――今季のご自身の投球をどのように評価されますか
内容は良くないですけど、それに伴ってチームも勝てていないので。最悪(自分の)内容が悪くてもチームが勝てていればいいと思うんですけど、どちらもあまり調子が良くないので。
――内容が良くなかった試合はどの試合になりますか
土曜日(5月14日)の明大1回戦もそうでしたけど、後ろで投げることはずっと言われていて、ピンチの場面で1点取られてしまえば負けてしまうので。そこで点を取られてしまうようであれば自分はまだまだ甘いのかなと思いました。
――明大1回戦でしたが、投球自体の調子はいかがでしたか
実際のところ、法大戦の週が終わってから腰が少し痛くて、ピッチングをほとんどしないまま明大戦に入って。(ベンチに)入るのが決まったのも木曜か金曜くらいでした。それまではずっとキャッチボールを軽くするくらいしかできなかったので。それでもベンチに入れてくださったので、その点では技術とかではなく、気持ちで抑えるというのを一番に思って投げていました。
――11回裏にサヨナラ本塁打を浴びましたが、打たれた球は
真っすぐが少し高めに入りましたね。
――打たれた時はどんな気持ちでしたか
自分の失投でもあったので、「ああ…」という後悔の気持ちがありました。
――直近の3試合では失点されていましたが、練習不足が響いたのでしょうか
相手が去年優勝しているワセダを倒そうという気持ちでやってきている中、今季はそこの差が出てしまったのかなと思います。自分の中でも気の緩みではないですけど、相手の気迫に押されてしまった部分もあったのかなと思います。
――法大戦では3連投となりましたが、3戦目の試合前の状態はいかがでしたか
日曜の夜に先発が決まって、3戦目にいったら(先発が)あるかもと多少は思っていたので、準備不足というほど準備不足ではなかったとは思いますけど。やはり初回に点を取られてしまったのが一番の誤算というか、チームに勢いをつけさせるような投球ができれば良かったですけど、一歩目でつまずいてしまいましたね。
――先発をするにあたってどのように相手を抑えようとしましたか
万全な状態ではなくても初回から全力で抑えるというか、後のことを考えても仕方ないと思うので。初回を3人できっちり切れれば流れも来たと思いますし、その後の試合展開も変わってきたと思います。そこが少し足りなかったのかなと考えています。
――3連投をした後の疲労感は
投げているイニング自体はそれほど多くはないですけど、ピンチの場面の登板と、1試合投げ切った時の感覚はあまり変わらないです。1試合投げても、ピンチの場面だけ投げても疲れるというか。逆にいい経験になったといえばいい経験になりましたね。体力的にもまだまだだったかなと思いました。
自分の球を信じて投げるしかない
――2年目になって相手から研究されていると感じる部分はありますか
まだ自分の投げたい所に投げ切れていない部分が多少あるので、そこを投げ切ることから始めていかないといけないですね。研究は毎年されて、それをちゃんと自分が上回っていかないと結果を残せないと思うので。まずは自分の投げたい球をしっかり投げたい所に投げられるようにすることですね。
――そのあたりが今季の課題になるのでしょうか
そうですね。ピンチの場面で投げることが多いので、一球の失投で安打を1本打たれただけでも点が入ってしまうので、そこが自分の課題かなと思います。
――ピンチの場面では相手打者に対してどのように攻めていこうと心掛けていますか
やはり先発の時と考え方も変わるので。例えば先発だったら、単打を4本打たれて1点、3本打たれても点が入らない場面もありますけど、後ろだと1本打たれるだけで1点入る可能性もあるので。だからこそ勝負を急がないようにするのも大事ですけど、カウントを悪くしてしまうと走者をためることにもつながってしまいます。そこはもう駆け引きで、自分の球を信じて投げるしかないですね。
――いまの役割で投げることの難しさはどのあたりですか
去年も後ろで経験はさせてもらっていましたけど、ことしは野手もそれほど点を取れていないので。1点の重みというか、去年だったら1点取られたとしても取り返してくれるという気持ちのゆとりではないですけど、1点取られても次の1点を抑えれば何とかしてくれるという気持ちだったので。打撃陣もあまり調子が上がってきていなくて、1点取るのも大変だし、1点抑えるのも大変な状態なので、そういう部分で自分の気持ちもまだまだ弱いかなと思います。
――いまの役割に対してやりがいを感じる時はありますか
抑えた時はうれしい気持ちになります。去年自分が経験したことが後ろで生かせるとうれしい気持ちにはなりますね。
――ゆくゆくは先発をやりたい気持ちはありますか
先発で投げたいというのもありますけど、チームの勝ちに貢献できるところであればいいのかなと思います。
チームに貢献できるような活躍をしたい
――昨年の対談からも、マウンドに上がると緊張しなくなるということでしたが、それは昔からそうなのですか
高校の時はずっと先発で、得点圏に走者を背負った時は、「このバッター抑えよう」、「ここ一本抑えよう」という気持ちになれていました。あまり緊張するということはなかったですね。
――野球の場面に限らず緊張はされないのですか
いや、野球以外ではいつも緊張します(笑)。
――スイッチが入る感じですか
抑えることだけを考えて、他のことはなくしているので。いい意味で集中できていると思います。
――マウンドに立っている時は、周りからのさまざまな声がある中でも集中できるのですか
マウンドなので全員の視線はありますけど、それを見られているというよりは、逆に(自分を)見せているという気持ちで考えると、気持ち的にも受けているより自分から出している感じになれます。周りを見渡して、打者に集中をしています。でも、打者だけを見過ぎても周りが見えなくなってしまうので。そういう面では、うまく言えば神経を研ぎ澄ますというか、いろんなところに神経を張っています。
――特に抑えを務めるにあたってはそれが大事なことになりますか
一球一球が先発の時と投げている感じが違いますね。しっかり集中することは考えています。
――ブルペンでの準備の際に意識している点はありますか
終盤に投げることが多いので、連投になることを頭に入れて、球数は20~30球くらいにして、あまり疲労が残らないようにして投げられるように、走ったりインナーをやったりしています。
――試合のどのあたりから準備はされていますか
試合の状況にもよりますけど、5、6回くらいからですね。
――登板するのがいつになるか分からない状態が続きますが、気持ちの維持は難しいですか
チーム的な考えからしたら良くないですが、打たれる前提で準備をしている感覚です。投げている人を疑っているわけではないですけど、この回ピンチ来そうだな、点取られそうだなと自分の中で思って(気持ちを)奮い立たせています。逆に抑えたら抑えたでOKなんですけど。最悪の状況をできるだけ考えるようにはしています。
――そういった考えは誰かからのアドバイスですか
気持ちの部分では高校の時の監督からかなり教わった部分があったので、それがいまにすごく生きています。
――ブルペンの内容がいいと、実際のマウンドでの投球もいいのですか
いや、自分はけっこう逆ですね。ブルペンで調子がいいと少し心配な気持ちがあって。ブルペンで調子悪いといつも通りというか、気楽にマウンドに上がれる感覚があります。そこは自分でもよく分からないんですけど(笑)。気持ち的にも(ブルペンで)いい球がいっていたら安心感が出てしまうのかもしれないです。だからといって、ブルペンの準備を悪くしているわけではないですけど。ブルペンで調子がいい時こそ、気を緩めないようにしています。
――同じく終盤からの登場が多い、加藤雅樹選手(社1=東京・早実)の印象は、あらためて春季リーグ戦が始まってからいかがですか
上級生にも好かれていて、あんなに体がでかいのにけっこうかわいらしいところもあるので(笑)。1年生ながら負けていたり、同点だったり、試合の終盤に出てくるというのは、監督(髙橋広、昭52教卒=愛媛・西条)も期待しているからだと思います。本人的にもいい経験になると思うので、期待しています。
――かわいらしいというのは、何かエピソードがあるのですか
笑い方が顔をくしゃっとした感じで(笑)。好感を得る、いいイメージを持たれる感じです。先輩からもけっこうかわいがってもらっているので(笑)。
――よくいじる先輩はどなたでしょうか
中澤さん(彰太副将、スポ4=静岡)ですかね(笑)。よく野手の3、4年生は話しかけています。先輩が後輩のことを心配して声を掛けるというのが、ワセダのいいところでありますね。自分が1年の時も4年生にけっこう声を掛けてもらったので、上級生の優しさがあるのがいいところです。
――昨年は早慶戦で、春、秋ともに勝利を挙げられましたが、他大学との試合の雰囲気に違いはありますか
去年は優勝も懸かっていたので、やるぞという意気込みになっていました。優勝が懸かっていなくても、OBの人たちからも「慶大だけには負けるな」という声もよく聞くので、リーグ戦の一つというより、対校戦だということはずっと言われています。自分も優勝が懸かっていない早慶戦は初めてですけど、去年の雰囲気的にもやるぞという気持ちにはなります。
――慶大の注目選手に沓掛祥和選手(4年)を挙げていましたが、どのあたりが警戒すべき部分でしょうか
去年対戦して、ことしの動画を見ると去年と全然違いますね。一発で仕留めるというか、安打にしろ本塁打にしろ、前まではけっこうファールが多かったですが、それを一球で打てるところと、追い込まれても三振せずにうまくバットに当ててくるのがすごいなと思います。
――他には注目選手はいますか
柳町くん(達、1年)ですね。1年生であれだけ打てるのはすごいなと思います。
――初めて早慶戦を見たのはいつですか
高3の秋でした。スタンドがすごくたくさんの人で埋まっていて、それを初めて見てすごいなと思いました。その時の試合もシーソーゲームで、自分もあそこで投げてみたいなと思いましたね。
――慶大に仲のいい選手はいますか
自分が小学校の時に同じ地区にいた、吉田将大(2年)ですね。小学校の時によく対戦していました。向こうは西武ライオンズジュニアに入っていて、自分は何もそういうのには入っていなかったんですけど。自分は彼を抑えようと、ずっと練習していましたね。この間、大学に入ってから向こうから話しかけられて、「慶大行ったんだ」となって。連絡を取り合ってはいないですけど、会ったら普通に話はします。
――それでは早慶戦まではあと1週間ほどになりましたが、どのように調子を整えていきたいですか
今まではあまり調子が良くなかったので、残り2週間弱でしっかりと調整をして、自分の出せる最高のものを早慶戦に持っていけたらと思います。
――最後にあらためて、早慶戦に向けた意気込みをお願いします
どこで投げるにしても、チームに貢献できるような活躍をして、チームが2勝して勝ち点が取れるようにしたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井口裕太)
どんなに苦しい状況でも、無失点で切り抜ける投球が求められる
◆小島和哉(おじま・かずや)
1996(平8)年7月7日生まれ。177センチ、80キロ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部2年。投手。左投左打。この対談で、「チーム」という言葉を何度も口にしていた小島選手。投手陣の中心である自覚をそこから感じ取ることができました。早慶戦での投球にも期待が高まります!