昨年の強力な投手陣を支えた一人だ。春は救援で7試合に投げ防御率0点台、秋は開幕投手を務めるなどまさにフル回転の活躍だった。東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)開幕まであとわずか。吉野和也(社4=新潟・日本文理)は強い決意を胸に、新シーズンへ挑む。
※この取材は4月1日に行われたものです。
「いろんな経験をさせてもらえた」
――春季リーグ戦開幕が近付き、現在の調子はいかがですか
沖縄キャンプから帰ってきて調子を落としていた時期がありましたが、いまはかなり(状態が)上がってきたのであと1週間でさらに上げてリーグ戦に臨みたいと思っています。
――昨年一年間を振り返っていかがですか
充実したシーズンだったと思います。1、2年生の時よりたくさん投げさせてもらっていろんな経験をさせてもらえたので、すごく良いシーズンだったと思います。
――救援での登板が目立ちました
先発したいという気持ちもあったんですけど、先発は大竹(耕太郎、スポ3=熊本・済々黌)と小島(和哉、スポ2=埼玉・浦和学院)がいて、自分に与えられた役割をしっかりと全うしようと思って投げました。
――救援で登板する際に意識していることはありますか
アウトを積み重ねるというか、ピンチだからといって動じないで平常心で投げるということが一番です。
――その一方で秋は開幕投手を務めました
(リーグ戦)初めての先発で、やはり自分が良い投球をしたらチームが勝つしダメだったら負けるというのが先発投手だと思うので、その点では責任感を感じて投げていました。
――先発と救援で試合の入り方に違いはありますか
先発だとプレーボールがかかった瞬間に自分のモチベーションなど、気持ちも全て持っていかないといけません。その点救援だと試合中に流れを見ながら自分でモチベーションを上げたり気持ちをつくっていけるので、そこが違うかなと思います。
――どちらの方がやりやすいなどはありましたか
やはり救援の方が1年生から何回も経験させてもらっているのでやりやすい部分はあったんですけど、先発もそれはそれで自分にとって良い経験だったし楽しみでもありました。
――一年間投げてきて感じたことはありますか
まだまだ実力も足りていないですし、相手打者のレベルが上がったりした時にもっと自分の力をつけてやっていかないといけないなと思いました。
――自信がついた部分はありますか
ストライク先行でコントロール良く投げて早く追い込んでというところで、打者との駆け引きだったり投球術というところでは普段から頭を使って投げようと思っているので、そういう投球をしっかりできれば抑えられるという手応えがありました。
――頭を使って投げるというのは自身の持ち味でもありますか
そうですね。これというボールがない分、頭を使って投げないと抑えられないので、頭を使うというのは自分の武器にしたいと思っています。
――昨年のシーズン終了後から意識して取り組んでいることはありますか
一番は直球の質を高めるということです。あとはコントロールをさらに良くするということです。
――その手応えはいかがですか
真っすぐは空振りも取れるようになってきました。特に沖縄のトヨタ自動車戦などでは高めの真っすぐで空振りを取れたりしていたので、やはり真っすぐが良くなってきているなと自分では思います。
――沖縄キャンプは振り返っていかがでしたか
雨が降って外で練習できなかったり、試合ができなかったりということもあったんですけど、18日間通して限られたメンバーでも全員で同じ時間を過ごして練習ができました。東京では見えない部分も沖縄で見えたり、課題も見つかったりしたので良かったと思います。
――いつもと違う練習はありましたか
沖縄だと投手は陸上トラックを使えたので、そこで走り込んだり、あとは坂道ダッシュや階段ダッシュをしたりしました。そういう意味では普段と違ったこともやりながら普段必ずやっているような基礎のトレーニングもやって、すごく充実していたと思います。
――最上級生となり心境の変化は感じますか
やはり優勝したいという気持ちがいままでよりもさらに強いということです。昨年4年生の方に優勝させていただいて、自分たちが優勝の経験ができたというのがすごく財産というか、いい思いをさせてもらいました。もちろん自分たちの代でも優勝して同期と喜びを分かち合いたいと思いますし、後輩にも優勝ってこんなにいいことなんだぞというのを教えてあげられたらいいと思います。
――新チームで投手リーダーを務めていますが、どのような経緯だったのでしょうか
明治神宮大会が終わって、新チームのミーティングで監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)に投手リーダーに指名されました。
――具体的にどのような役割がありますか
投手を仕切るというくらいで特別なことはないですね(笑)。とにかく自分が先頭に立ってチームを引っ張れたらいいなと思います。
「ことしにかける思いは強い」
地面すれすれから投げるボールで相手を惑わす
――春季オープン戦の出来はいかがですか
ここ最近はあまり調子が良くなくてこの間も東北福祉大に打たれたんですけど、いい方向に捉えると打たれるイメージを持って、天狗にならないで自分はすごい投手じゃないということをもう一度確認して、実力を確かめた上でリーグ戦に入れるというのは良い経験だったと思います。きのうのHonda戦では試したい球を試せました。そういう部分では手応えがあったというか、こういう投球ができたらいいなという投球ができたので良かったです。
――結果がついてこなくても、得るものは多かったのでしょうか
きのうは結果としては1点取られたんですけど、自分の中で東北福祉大戦でダメだったところをHonda戦ではこういう風に投げようというのを捕手と話してそれがうまくできたので、違うスタイルというか違う配球ができたので良かったと思います。
――具体的にどのような投球でしょうか
高めの直球を使ったり、腕を振ったスライダーと抜いたスライダーとか同じ球種の中でも少しスピード感を変えたりするようにしています。
――春季オープン戦でも高めのストレートで三振を奪う場面がありました
高めのストレートで空振りを取れたり、シンカーで引っかけさせたりという場面があったのでそこは良かったなと思います。
――春季オープン戦では先発、救援どちらもありましたが春季リーグ戦での希望はありますか
どちらも準備はしているので、どちらがいいとかではなくてチームのために与えられたポジションで良い投球ができたらいいと思います。
――投手陣は経験豊富で、周囲からの期待も大きいと思います
きょねん経験させてもらっている投手陣なので、しっかりゲームをつくって試合に勝つというのがベストだと思います。投手がそれだけ責任を持って投げると思いますし「俺たちが抑えないといけないな」という話をしているのでそういう投球ができるようにしたいです。
――投手陣全体の調子はいかがですか
大竹と小島はそんなに調子は良くないんですけど、リーグ戦になったらやってくれると思います。北濱(竣介、人3=石川・金沢桜丘)もあんまり良くないですけど、経験があるのでその三人は問題ないと思います。竹内(諒、スポ4=三重・松阪)はずっと調子が良いのですごく期待しています。
――沖縄キャンプ、春季オープン戦を経て新戦力の台頭はありましたか
3年生の清水(陸生、人3=宮崎大宮)、黒岩(佑丞、スポ3=早稲田佐賀)、奈須(怜斗、社3=宮崎・延岡学園)とかは自分から見ても練習を一生懸命やっていると思います。そういう投手が1軍の試合で投げるようになって結果を出していて、自分たちもいままで投げていたからというように天狗にならないで、下からの底上げがあるので必死になりました。練習をしてそういう投手が出てきたのはうれしいですし、頑張ってくれてお互い切磋琢磨(せっさたくま)して良い雰囲気になっていると思います。
――最上級生となり、チームを引っ張ることも意識していますか
きょねんとかは自分がうまくなるためにと思って練習していたんですけど、いまは自分の実力を上げるためというのもありますけどチームの雰囲気を気にしながらやるようになりました。
――3年生まではあまり意識しなかった部分ですか
3年生までは自分のためにずっとやっていたので、自分がやっていることが一番良いと信じてやってきました。4年生になっていろんな選手の練習とか動きを見ていて、「そういうのがあるんだな」とか「こういうのもいいな」と思ったり、他の人から刺激を受けて自分に取り入れています。他の人の良いところを盗むじゃないですけど、そういうことを気にするようになりました。
――互いに技術面の話をされるのですか
そうですね。自分もそうですけど他の人も変化球の投げ方とか、フィールディングも大竹とか結構うまいので、どうやって足を運んだり球に入っていくとかを話しています。試合でも大竹は投球術がすごいので、そういう部分は話を聞いて参考にしたりしています。
――特に参考にしている投手はいますか
みんな良いですね(笑)。竹内や小島はすごい球を投げますし。でもどちらかというと自分はボール(の勢い)で抑える投手ではなくて打者との駆け引きとかで抑える方なので、そういう部分では大竹の投球は自分の目指すべきかたちというか、あのような打者との駆け引きのうまさというのは勉強になります。
――ライバル意識もありますか
竹内、大竹、小島、北濱、自分のきょねん経験した投手は試合で誰が1戦目投げるか2戦目投げるかとかは、みんな意識しながらやっていました。逆に6、7人目の枠を争って他の投手もライバル意識を持ってやっていたので、そういう意味では本当に切磋琢磨(せっさたくま)してこの冬やってくることができたと思っています。
――春季リーグ戦開幕前、現在の心境はいかがですか
もう4年生でラストシーズンになるので、優勝したいというのが一番です。自分の成績どうとかよりもチームが優勝すればいいと思っているので、そのための働きをベンチでもしたいですし試合になっても活躍ができたらと思っています。
――ことしこそ四冠という思いも強いですか
本当にそれが強いです。自分が最後に決勝点を与えて明治神宮大会では負けてしまって、(当時の)4年生に申し訳ない気持ちだったり、ふがいなさを感じていました。4年生のいろんな人に「この経験をお前らの代で生かして頑張ってくれ」と言われたので、ことしに懸ける思いは強いです。
――自身の注目してほしい点はありますか
投げ方がアンダースローで他の投手にない部分なので、そこは分かりやすいというか「あ、吉野だ」と思ってもらえると思います。
――やはりアンダースローというのは自信を持っている部分ですか
アンダースローというだけでも見てくれたりする人がいますが、投げ方だけではなく実力も伴わないとなと思いますし、六大学でも東大にいますし他のリーグでもアンダースローの変則投手がいるので負けたくないです。自分がナンバーワンのアンダースローになれるようにと思ってやっています。
――チームではどのような役割を求められていると思いますか
きょねん経験している分、投手陣全体で試合をつくって勝ちにつなげるのが大事だと思います。大竹、小島がきょねんは柱になってやっていましたが、ことしは自分とか竹内が最上級生として投手を引っ張りたいと思います。
――4年生の働きはカギになりますか
4年生がやらないで下級生の力に頼っているようじゃダメだと思うので、自分たちがやってやるという気持ちでいます。
――最終学年の目標は何でしょうか
まず春に優勝するのが最初ですけど、きょねんできなかった四冠というのはもちろん目指したいです。それと明治神宮大会の決勝で負けた悔しさというのは全国でしか晴らせないと思うので、まず春優勝して全国(全日本大学選手権)の切符をつかみたいと思います。
――個人としてはどのような投球をしたいですか
個人としては、春は防御率0.00です。相手に一点も与えないというのを目標にやりたいと思います。
――最後に改めて春季リーグ戦に向けて意気込みをお願いします
優勝できるように部員全員で頑張りたいと思うので、ワセダの学生には神宮に足を運んでいただきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 石川諒)
吉野選手の今季の目標は『一球入魂』
◆吉野和也(よしの・かずや)
1994(平6)年10月27日生まれ。187センチ、72キロ。新潟・日本文理高出身。社会科学部4年。投手。右投右打。球界では珍しい下手投げの吉野選手。参考にしている投手は渡辺俊介選手(新日鐵住金かずさマジック)だそう。その変則フォームはもちろんですが、磨きがかかった投球術で打者を翻弄(ほんろう)する姿にも注目です!