昨秋、打率、盗塁数共にリーグ2位と躍進を遂げた重信慎之介副将(教4=東京・早実)。オープン戦では不動の1番・右翼手として起用され続けているが、自身は不振に苦しんでいる。春季リーグ戦(リーグ戦)を目前に控え、早大の命運を握る攻守のキーマンは何を思うのか。ラストイヤーに向けての意気込みをうかがった。
※この取材は4月4日に行われたものです。
「自分がキーになる」
オープン戦を振り返る重信
――オープン戦を戦ってきていますが、現在の調子はいかがですか
あまり良くはないですね。
――不調の要因は何だと考えますか
体がちょっと疲れてはいるのかなと思いますが、それ以外は思い当たらないですね。
――不調を脱するために重点を置いている練習はありますか
とにかくスイングですね。1月からそうなのですが、誰よりもバットは振っていると思うので、とにかくバットをスイングすることです。
――その中でもオープン戦ではずっと1番での起用となっています。その点についてはいかがですか
監督さん(高橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)にずっと1番で使っていただいて、本当にそれは結果を残すことでしか監督さんの気持ちに応えられないのでありがたみを感じています。オープン戦を3月からやってきて全く1番としての役割を果たせていないと思うので、あとはリーグ戦ではちゃんと1番として役割を果たしたいと思います。
――コンビを組む2番打者は河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)、川原孝太選手(文構4=静岡・掛川西)、真鍋健太選手(スポ3=東京・早実)など様々ですが、相性などはありますか
誰と相性が悪いなどはありませんが、右京が2番にいるとやりやすいというか、楽しいですね。何が違うのかは分からないですけど、右京のほうが何か違う気持ちはありますね。
――チームの中で1、2番の役割とは何だと考えますか
1番がまず出ることで打つだけでなく、送るだけでなく、2番ができることもかなり増えてくるので、本当に幅が広がると思います。1番が出ることで2番の役割というのがかなり重要なことになると思うので、2人で特に初回に相手を崩していくということが1、2番の役割だと思います。それには1番が出ないと意味がないと思うので、とにかく1、2番という言葉通りですが、そこを意識してやっていきたいと思います。
――1番打者の理想像とは何ですか
ずっと言ってきていますが、相手に嫌がられるような選手。重信を出せば盗塁があるから、打席に入った時点で嫌だなと思われるような1番だったり、その前のネクスト(バッターズサークル)にいる時でも、例えば2アウトで9番バッターの時、9番を(塁に)出せば重信がくるというようにプレッシャーになるような打者というのが理想だと思います。
――オープン戦ではここまで10盗塁決めていますがその点についてはいかがですか
1番というより、1人の選手としてチームに貢献するために走っています。ただ10という数字に関しては全然満足していないですね。というのは全然打っていないので出塁もできていないので、全然まだまだ盗塁の数に関してはできていないというのがあります。オープン戦では牽制死がかなりあったのですが、それに関してはビビらずに走っていこうという点でやっていけたので、それに関してはあまり反省していないというか分かっていてやっているので、リーグ戦では思い切っていければいいと思っているので逆に良かった点かなと思っていますね。盗塁はビビったらいけないので、ビビらずいけたという点では逆に良かったかなと思っています。
――牽制死については納得しているということでしょうか
納得というよりは、刺されても仕方がないというぐらいの感じでやっていたので、そこはあまり気にしていないという感じですね。リーグ戦になればもちろん相手の研究もありますしそこはケアしていくところなので、そんなに簡単にはアウトにならないという自信があります。
――高橋監督から指名を受けたライトのポジションはいかがですか
不満はないですね。やりやすいです。
――沖縄でのNTT東日本戦では守備の乱れもあり、翌日高橋監督から直接ノックを受ける場面もありました。難しさはないですか
あの日は集中を欠いていたかなというのが自分でもあって、特に難しいなとは感じていないですし、本当にあの日はやってしまったなという感じですね。
――高橋監督の野球はチームに浸透してきたと思いますか
浸透していると思います。自分が感じるのはバントですね。バントを一発で決めるというのはゲームの流れに影響してきますし、オープン戦ではそれが実際にうまくいっていないので、それに関してはかなり選手も意識的にバントを一発で、というのはありますし、隙あらば次の塁を狙うとか、細かいところで監督さんのそういった意識というのは浸透していると思います。
――監督は厳しい方だという話も聞きますがいかがですか
厳しくないと言ったら監督に怒られるかもしれないですけど(笑)、自分は厳しい人だなというのは感じていないですね。ただ細かいところだったり、人としてこうだというのをおっしゃられる方なので、言われるとグサッとくるというか、図星なところがあるので、嫌だなと言う気持ちから厳しいという言葉になるのかもしれないですね。厳しいとは思わないです。
――以前「一から自分たちでスタイルをつくっていかないといけない」とおっしゃっていましたが、オープン戦を戦ってきてそのスタイルというのはどんなものだと思いますか
どう考えても猛打のチームではないと思います。ただオープン戦では丸子(達也、スポ4=広島・広陵)がかなり調子が良かったり、中盤の選手の調子もかなりいいので、自分になってきますが上位(打線)の選手が(塁に)出れば流れに乗って来られると思うので、打撃面では正直自分がキーになると思っていますね。自分が出るか出ないかで回が浅い時に得点できるかというのが変わってきますし、上位がどうでるかというのがキーになりますね。守備はとにかく守るということ。バッテリーと協力してとにかく最少スコアで乗り切るというのがうちのスタイルです。攻撃と守備どちらでリズムをつくるというよりは、どちらでも流れを持って来られるチームだと思うので、どちらでも取っていこうというのがスタイルだと思います。でも基本的には守備だと思いますね。
――沖縄キャンプでは以前の背番号『21』と新しい背番号『24』は「どっちでも良い」とおっしゃっていましたが、愛着は湧いてきましたか
湧いてます!『24』というのはワセダではいい番号なので、それ相応の活躍はしないとなというのはあります。
――新入生が入ってきて、チームの雰囲気はいかがですか
正直なところ活気づいたとか、入ってきたから変わったなというのはないですね。
――新体制になってにぎやかになったという話も聞きましたが
にぎやかになったというか、緩くなったのかもしれないですね。決してにぎやかではないと思います。
――その緩くなったという点をどのように捉えますか
意味合いは変わってくるかもしれないですけど、下の学年の意見が通るとか、後輩がやりやすい環境という意味での緩くなったというのは風通しがいいということで良いことだと思うのですが、ただメリハリは必要だと思うので、そこを履き違えないように一線を置くというのは大事だなと思っています。
――不調の中でもチームを盛り上げていかないといけないなどといった、副将と選手との両立で難しい面はありますか
ありますね。やっぱり1番バッターが倒れると、どうしたってチームは乗れませんし、かといって自分が気持ちの面で落ちていても絶対にチームにとって絶対にプラスにはなりませんし。ただそこで上げよう、上げようとするのもかなり難しいというか、なかなかできることではないですし。ただそれはしなければいけないことなので、かなり難しいと感じています。
――副将としてよりも1番打者としてということでしょうか
両方ですかね。
――内田聖人副将(教4=東京・早実)との副将コンビの良い連携は取れていますか
いやー連携は取れてないですかね(笑)。
――お二人で話し合ったりはしないのですか
副将としてどうしていこうという話はしないですね。そこはお互い分かっていることなので、個人で考えて自分のできることを探してということなので、連携はしていないですね(笑)。
――昨年、「4年生は精神的にもかなり大きな存在」とおっしゃっていましたが、最上級生としてどのような先輩になりたいですか
やっぱり頼られる存在になりたいと思いますね。だからといって自分のいままでの後輩に対する接し方は変えたりしないです。
――後輩と一緒にご飯に行ったりもするのですか
しますね。そこに良く思われたいとかいうのはないですけど(笑)、行きますね。
――中村奨吾前主将(平27スポ卒=現プロ野球・千葉ロッテ)のプロでの活躍は刺激になりますか
やっぱりなりますね。本当にこの間なんですけど、練習に来られて。そこで「飲もうよ」と言われて飲んで、お話を聞かせていただいて。やっぱり刺激にはなりますよね。あまり自分は人の結果をチェックしたりするタイプではないのですが、中村さんだったり有原さん(航平、平27スポ卒=現プロ野球・北海道日本ハム)の登板というのはチェックしていますし、かなり刺激にはなります。
――中村選手からはアドバイスを受けたりするのですか
この間に関してはなかったですね。自分も相談していないですし。プロ野球はどんなもんなんですかとか、他の選手とのおもしろいやりとりとかそういう話を聞いて、ただただ楽しかったです。
――仲が良いのですね
はい。1年生の時僕はセカンドだったので、中村さんの後ろでずっと守っていて、打撃練習とかも中村さんの後ろでずっと順番待ちしてやっていたので、ずっと中村さんの背中を見てやってきたというのはありますし、かなり可愛がってもらいましたね。
――では、そういったことを後輩に返していくということですね
そうですね。中村さんだけじゃなくて先輩には可愛がってもらったので、先輩から吸収できるものはかなり大きいですし、やっぱり残していきたいものなので、自分が何を伝えられるか分からないですけどそういうことはしていきたいですね。
自らのスタイルでチームを頂点へ
その俊足でも相手を翻弄(ほんろう)する
――リーグ戦の開幕も迫っていますが、どのような戦いを予想されますか
負けないチームになることですかね。勝つチームではなく、負けないチームに。とにかく負けない、粘るというのを掲げてやっていきたいです。
――負けないチームづくりは進んでいますか
そうですね。高橋監督の細かいところは粘りにつながってくるので、そういう面では着々と進んでいると思います。
――開幕が近づくにつれ気持ちの高まりなど変化はありますか
個人的には調子が悪いので、正直焦りがないかと言われたら、なくはないです。でもずっと沖縄のあたりから大丈夫だろうという感じではきていて、いまも残りオープン戦は2戦になっていますが、気持ちの高まりというか後はやるだけだという感じで気持ちは据わっているという感じですね。
――以前目標は盗塁王だとおっしゃっていましたが、首位打者よりも盗塁王を意識しますか
もちろんそれが自分の特徴ですし、たとえヒットではなくてもエラーでも打率は下がりますけど塁には出られるのでそこで盗塁はできますし、自分の価値はそこにあると思うので、そういう意味でもそこに重点を置きます。
――昨秋は最終週まで首位打者争いを繰り広げていましたが、他の選手の打率などは気にしていたのですか
それは気にしないと言ったら嘘になりますけど、打席で(結果を)出すだけなので、気にするのは試合が終わってからですね(笑)。その試合中にいちいち「あーあいつ打ったよ」みたいなのはないです。相手どうこうというよりは、「俺2本(ヒットを)打ったから打率何々だ」くらいですかね。あんまり人のは見ないです。自分の打率はすごく気にしますけど。
――首位打者を取った茂木栄五郎選手(文構4=神奈川・桐蔭)が規定打席に乗った時はどのような気持ちだったのですか
規定打席到達は(立大)3戦目に入る前に4打席というのは分かっていたことで、どう考えたって4打席というのは回るので、そこは俺が打つしかないなというので。乗るか乗らないかというのは気にはしていなかったです。それこそ俺がやるだけだという感じであまり気にはしていなかったです。
――1年生の頃「自分のスタイルでチームの力になって、ワセダの伝統をつくっていきたい」とおっしゃっていましいたが、いまのところその抱負は実現できていると思いますか
自分のできることが何かということを探してやってきましたし、自分のできることというのはやっぱり足を生かすことであって、自分のできることを100パーセントやっていればチームには確実にプラスにはなると思っています。なのでそういう面では1年生に言った自分のスタイルを貫いてというのはできていると思いますね。
――リーグ戦で俺のここを見ろというアピールポイントはありますか
もちろん足ですね。足を見てくれと思います。
――最後にリーグ戦に向けての意気込みをお願いします
見てろよという感じですかね。優勝とかそういうのを全部含めて、見ていてくれという感じですね。
――ありがとうございました!
(取材・編集 谷田部友香)
◆重信慎之介(しげのぶ・しんのすけ)
1993年(平5)4月17日生まれ。身長173センチ、体重67キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。外野手。右投左打。重信選手がこの日着用していたのは、新背番号『24』、新ポジションの『RF(右翼手)』と書かれたTシャツ。これは沖縄キャンプ時に作成したものだそう。服装からもリーグ戦へのやる気がうかがえますね!