昨年は代打での出場が多く、悔しい思いをした石井一成選手(スポ3=栃木・作新学院)。ひたむきな努力は実を結び、春季オープン戦(オープン戦)ではスタメンに定着。今季こそ『日本一』奪還へ――。勝負の3年目に向け、闘志を燃やす石井選手にお話を伺った。
※この取材は4月4日に行われたものです。
現状に満足せず、成長遂げる
言葉を選びながら取材に応じる石井
――きょうの練習はいかがでしたか
きょうはノックをやって、シートバッティングを行っていました。基本の見直しと言いますか、やってきたことをもう一度しっかりと見直そうということに重きを置いて取り組んでいました。
――最近の普段の練習内容は
普段もノックなど基本的な練習が多いですね。実践練習としてはシートバッティングであったり、オープン戦などで行うといった感じです。
――少し入学前のことをお伺いしたいのですが、ご自身の野球の出会いを教えてください
父親が野球をやっていて、そのやっている姿を見に行った際に自分もやってみたいという気持ちから学童野球に入り、小学1年生のときに野球を始めました。
――他に何かスポーツをやられたりしましたか
最初はサッカーや水泳をやっていましたが、続かなくなりやめてしまいました。
――その間にも野球は続けられていたのですか
はい。野球の練習がないときにそういったスポーツをしていました。結局は野球だけになりました。
――全国でも強豪である作新学院高での三年間は振り返ってみていかがでしたか
もともとは県立高校に入学するつもりでした。ただ、作新学院の練習会に参加する機会があって、皆レベルが高くてそこで野球ができたらとても楽しいだろうなと思うようになりました。親に駄目だろうと思いながらも相談してみると、好きなところに行けと言ってもらえて。つらいことは分かっていましたが、甲子園に一番近い高校だと思っていたので行こうと決意しました。自分の中で作新学院に行くことは大きな人生の選択だったと思います。
――甲子園にも三度出場されました
運良く、周りにも助けられながら甲子園に行くことができて、貴重な体験ができたと思います。
――3年時には主将としてチームをまとめる立場となりました
いい仲間たちに恵まれて、監督も気を遣ってくださり、キャプテンとして何かしたということは特にありませんね(笑)。周りの支えのおかげでここまでやってきました。
――甲子園や高校時代での経験はいまに生かされていますか
中学校まで軟式野球をやっていたのですが、そこまで本気で野球に向き合っていなかったなと思います。作新学院に入って、野球のさまざまなことを監督さんなどから徹底的に教え込まれたり、野球以外にも人間性などもご指導いただいたりしました。野球だけをやっていれば良いのではなく、すべての生活が野球のプレーにもつながると言うことを学ばせてもらい、それが大きな財産となりました。
――早大に入った動機を教えてください
早慶戦を見に行った際に、場の雰囲気であったり、応援のすごさなどに圧倒されて、ここでプレーできたらいいなと憧れ、行きたいと思うようになりました。
――プロへの気持ちはありましたか
もちろんプロに行きたいという気持ちはありましたが、高校生でプロに行くということは相当の技術が無ければいけないと思っていました。なので、大学でしっかりと土台を作ってからチャレンジしたいと考えて大学に行こうと決めました。
――早大に入学してみて、野球部はいかがでしたか
入学前から思っていたのですが、堅実で確実な野球を目指しているな、という印象を受けました。
――それは岡村猛前監督(昭53二文卒=佐賀西)の指導によるものですか
そうですね。
――石井選手にとって岡村監督はどのような存在でしたか
1年生のときから細かいところまでご指導いただいたり、不明な点を聞かせていただいた際にも、丁寧に答えてくださったり、本当に良い監督でした。
――リーグ戦では岡村監督に代打の場面でよく起用されていました
先輩がたくさんいる中で、使っていただけたのはとてもうれしかったです。結果を出すべきでしたが、まずは使っていただけたことに感謝しています。
――その経験は今後生かすことができそうですか
試合の場数を踏むことができたので、その点で生かすことができると思います。
――今季を迎えるにあたり、これまでの早大野球部での活躍を振り返っていただきたいのですが、1年生の頃は代打、スタメンでの出場がありました
こんなに使っていただけるとは思っていなかったので、うれしかったです。ただ結果を思うように出せなかったので申し訳なさもありました。
――1年生にしてスタメンという機会もあり、プレッシャーなどはありましたか
プレッシャーはありましたが、それを言い訳にはできないです。それをしっかり打ち返すだけの実力が無かったと考えています。
――2年目は春季リーグ戦の開幕カードである法大戦以来長い間スタメン起用はかないませんでした
技術的な面はもちろんですが、まだ信頼されていないという部分もあったと思います。普段の練習などで信頼を勝ち得ていかないと試合には出してもらえないので、普段からの行動であったり実践であったりすべての場面で気を引き締めていかなければいけないと思いました。
――実践という話もありましたが、試合で何か気に留めていたことなどありましたか
三塁手を務めているのですが、流れが悪いときには流れを切ったり、反対に流れを引き寄せたりと、そういったプレーをすることでチームを活気付けられるようにと心掛けました。
――秋季リーグ戦も代打での出場が多かったですが、その中で規定打数には足りませんが5割という高い打率をマークしました
多少は結果が出てきているのかなと感じ取ることができました。ただあくまで代打ですし、現状に満足せず、さらに上を目指すことができるように頑張っていきたいです。
――学校も終わり長期休暇の間にご自身として取り組まれていたことは
基礎基本の徹底ですね。
――具体的には
守備だったらボール捕りであったり、打撃だったら素振りといった基本動作を重点的に体に覚えさせています。それが実践につながれば一番かなと考えています。
――以前に、この冬が勝負とご自身でおっしゃられていましたが
特別に何か取り組んでいたことはありませんが、シーズンの悔しさからやり切ろうと思って練習していました。
――練習自体は自主練習を含めて増えたりしていますか
寮に入れていただいて、環境が良くなりいつでも練習ができる環境になっているので確実に増えています。
――オープン戦が3月から始まりましたが、それ以前に取り組まれていたことは何かありますか
実践に入ってくるので、打撃練習においてもピッチャーをイメージしたり、守備練習でも試合でのケースを意識して練習に臨んでいました。
――オープン戦に対しての意気込みはありましたか
あくまでリーグ戦で結果を出すことが最重要なので、春季リーグ戦前のオープン戦はいままでの確認というつもりで試合をしていました。徐々に結果として出すことだけは考えていました。
――オープン戦初戦が沖縄でのキャンプでありましたが沖縄キャンプはご自身としてどのようなものになりましたか
天候にあまり恵まれなかったのですが、しっかりと練習をすることができました。気温が暖かかったので体をより動かすことができたかなと思います。東京は寒いので(笑)。
――沖縄から京都と長期間のキャンプとなりました
移動は大変でしたが、良いキャンプができたと思います。練習量であったり、普段とは別の環境での練習、試合は学ぶことが多かったです。
――収穫はありましたか
練習量ももちろんですが、守備であったりバットスイングであったり基礎の見直しもできたりととても充実したものになりました。
――打撃面で意識して練習したことは
実践のピッチャーを打つことが何よりも必要なことなので、映像を見たりしてスイングの改善であったり、バッティング練習を行いました。
――守備面ではいかがですか
守備も同じように映像を見たり、「ここはこうした方が良い」などとアドバイスしてもらったり、相談しながら修正しました。
――お互いに声を掛け合ったりする機会も多くなりましたか
はい。「足が動いてない」と互いに鼓舞したり、フライのときだったら声を掛け合って捕るということであったり。基本的なことではありますが、小さなことから意識して行っていました。
――オープン戦では打率も3割を超えました。振り返っていかがですか
ボールは見えていると思うのですが、あくまでリーグ戦で結果を出すことが全てなので、いまは確認の延長という感じです。あまり打率は気にしないですが、リーグ戦では勝負強い打撃ができるようにしたいと思います。
――ボールが見えているということで手応えはありますか
手応えは徐々に感じていますが、まだ確実な手応えという感じではありません。
――勝負強さと先ほどおっしゃられていましたが、意識されていることは
もし自分がアウトになったとしても、ランナーが三塁にいたときに高いバウンドのバッティングができたら(ランナーが生還できるので)それもまた良い打撃だと思うので、ランナーを返すということを意識しています。
――昨年夏にはホームラン競争に出場されたり、実践では亜大戦で本塁打も放つなど、長距離打者に向けて着実にステップを踏んでいると感じます
あれはあくまで結果ではありますが、短打だけでは魅力がないと思います。自分のスイングができれば長打に結びつくことも分かったので素振りをしっかりしていきたいです。また飛ばす練習もすることで、実践につなげられればいいと思います。
――一方、守備面では失策を記録する場面もありました
足が動いていませんでした。試合の中で集中力が切れてしまわないように、普段の練習から意識していきたいと思います。
――何か具体的に守備面で取り組まれていることは
基本的なかたちがまだまだできていないので、そこから見直して改善しています。
――オープン戦では全試合スタメン出場を果たしました
使っていただけることはありがたいことですが、結果を出さなければ話にならないと思います。なので、改善できる部分もあると思うのでさらに成長していきたいです。
――課題は見つかりましたか
社会人とやらせていただく機会が多くあり、社会人との対戦では自分の思うようなプレーができない場面もありました。その中で、どのようにしたら自分のバッティングができるかを考えたり、なかなか点数が奪えないという状況での守備でのミスなどは命取りになると感じることができました。そこから、自分の守備であったりバッティングを見直すきっかけになりました。
――大学生と社会人の差は大きいですか
打撃面ではピッチャーの勝負球は振らないといった見極める力もあります。走力においても隙があればすぐ狙われてしまうので、守備の面でもいつも以上に苦労しました。
――オープン戦での収穫は
社会人の良いところを盗むことができたのが何よりの収穫です。
――打撃の面では3、5番の中軸であったり、6番を打つ場面がありました
チャンスの場面で回ってきたときに、いかに点数を取れるかが求められてくると思います。打撃の確実性を上げていきたいです。
――何番で打ちたいなどの気持ちはありますか
特にありません。まずは自分の仕事をするだけです。
――監督が代わり、高橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)が就任されましたが印象は
真面目な方で、野球だけでなく野球に取り組む姿勢も大事にしている方なので自分を見直すところもたくさんありました。
――何かお話することはありましたか
アドバイスいただいたりします。
――具体的にはどのようなアドバイスをされましたか
打撃面では無理に引っ張りにいくのではなく、素直にショートの頭を狙う打撃であったり、転がす打撃など技術に応じた打撃をしていった方が良いとアドバイスをいただきました。自分も考えて動いていますが、客観的な姿はどうしても見えないのでそういったアドバイスはとても参考になります。
――打撃面以外で言われたことなどは
守備面ではとにかく前でプレーするように言われました。後ろに下がってプレーすると悪送球などにもつながるので。精神面でもこれはチームにですが、常に攻める気持ちを持つということを再確認するようアドバイスいただきました。
自分の活躍で『日本一』へ
そのパワフルな打撃に期待がかかる
――リーグ戦についてお聞きしていきます。中村奨吾選手(平27スポ卒=現プロ野球・千葉ロッテ)、有原航平選手(平27スポ卒=現プロ野球・北海道日本ハム)ら主力の4年生が抜けてしまいました
大きな戦力ダウンにはなってしまうかと思います。ですが、そこはチーム全体でカバーできると思うので問題はないです。
――新主将になった河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)はどのような方ですか
面白い方なので、チームを明るくしてくださります。また、キャプテンとして行動でチームを引っ張ってくださるので、とても心強いです。
――ご自身も3年生となり、上級生としての役割も増えると思います
自覚と責任もより求められてくると思うので、意識して行動していきたいです。
――新チームの雰囲気はいかがですか
良い状態だと思います。うまく切り替えができていて、試合で見つけた課題もつぶすことができています。
――チームの課題は
たくさん点を取れるチームではないと思うので、短打であったり自分がアウトになったとしても塁を進められるような堅実な野球をしていければいいかなと思います。
――リーグ戦への準備はどのような状況ですか
実践をやっていく中で、連携プレーであったりチームとしてやるべきことも見えてきたので、しっかりと課題に取り組んでいる状況です。個人としても個々のレベルアップを図っています。
――ご自身のいまの調子は
まだまだ自分の思う調子ではないです。なので、試合までに練習を重ね整えていきたいです。
――今季はどのようなシーズンにしたいですか
昨年は優勝を勝ち取れず悔しい思いもしました。優勝することが楽しい野球に結びつくと思うので、優勝し日本一を取りさらなる高みを目指したいです。
――個人としての目標は
チームに貢献できるように、監督や右京さんとうまく連携を取りながら試合に臨みたいです。自分の活躍でチームを日本一にすることができればいいと思います。
――最後に意気込みをお願いします
周りから、ことしのワセダは弱いと言われているという話を聞いたりします。ですが、そのようなことは気にせず、自分たちのできる野球をチーム一丸となって、日本一を取ります!
――ありがとうございました!
(取材・編集 三上雄大)
意気込みを書いていただきました!
◆石井一成(いしい・かずなり)
1994年(平6)5月6日生まれ。181センチ、76キロ。栃木・作新学院高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投左打。もうすぐ新学期が始まるということで意気込みはとの問いに「友達をたくさん作りたい」という石井選手。学ランを着ていると周りから怖がられてしまうそう。「全く怖くないので、友達になってください(笑)」と少し照れながら答えてくださいました。ぜひ野球とともに友達づくりも充実させてください!