昨季は第1先発に大抜擢され4勝を挙げるなど、大ブレイクを果たした大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)。新体制となった今季も、彼の投球にチームの命運が懸かっていると言っても過言ではない。今回はその好投の秘訣、そしてさらなる活躍が期待される2年目への意気込みを聞いた。
※この取材は4月4日に行われたものです。
「アピールできている」
真剣な表情で質問に答える大竹
――きょうはどのような練習をされましたか
あさってが試合なのでそれに向けて調整というかたちで、あまりハードな練習というよりは軽めに、あとは投げ込みを少しやりました。
――オフの時はどのように過ごされていましたか
オフはしっかりと寝て軽く運動したり、買い物に行ったりしていました。最近自転車を買ったので、サイクリングをしたりしていました。
――自由に過ごされていたのですね
そうですね。
――帰省はされましたか
そうですね。正月は監督が交代してオフがなかったので、帰って練習をしつつ遊びました。
――久々の故郷はいかがでしたか
ずっと住んでいたら分からないのですが、こっち(東京)に来て良さに気付きました。
――家族の方と一緒に過ごされたりしましたか
一緒にドライブに行ったり、自分が運転して父親とドライブに行ったりして楽しみました。
――オフの間も練習は毎日されていましたか
高校に行ってアドバイスをしつつ、自分もしっかりとオフ明けについていけるように体力は保つようにしていました。
――昨季を終えてから重点的に練習してきたことはありますか
投げる量を増やしました。秋は13試合して9試合投げたのですけれども、昨季は連投になった時に2試合目で打たれることが多かったので、そこに気を付けて今回はやっていこうと思いました。
――沖縄キャンプを振り返っていかがですか
きょねんよりも心にゆとりがあって、自分のことばかり考えることができたので、いろいろと試行錯誤しながらできました。また、気候が良く体も動くのでしっかりと調整することができました。
――沖縄ならではの練習はありましたか
球場の左下の奥にとても長い階段があるのですけれども、そこをダッシュしました。日頃やらないのできつかったです。あとは球場の近くの陸上競技場で幼稚園児が体育の授業をやっていたので、一緒に練習をしました(笑)。
――他にやっていた練習はありますか
やはり暖かったので、それをうまく利用していましたね。寒いと投げられないので暖かい所でしっかりと投げるようにして、投げる量は増やしました。
――ここまでのオープン戦を振り返っていかがですか
全体的に見ると安定していて、(投球に)波がないので良いかなと思います。しかし、一つ一つを見ると少しまだ改善点があります。特に社会人相手になると(球が)少し高めに浮いてしまいます。六大学はレベル的に社会人と同じくらいなので、そこに気をつけて(球の)高さを自分で練習して投げればオープン戦はいけるかなと思います。
――調子は良いという感じでしょうか
そうですね。防御率も悪くないので。
――ここまでの仕上がりは順調でしょうか
そうですね。きょねんの秋よりは投げられるようになりました。
――オープン戦で投球の際に意識していたことはありますか
キャッチャーが道端さん(俊輔、スポ4=智弁和歌山)に代わったので、そこで信頼関係や戦術を確かめ合いたいなというところでよく話すようにしました。練習から一緒に考えてやっています。
――オープン戦で新たに試してきたことはありますか
新しい、変化球での攻め方ですね。長いイニングを投げる時は、緩い球やゆっくりな球でカウントを取ると必ず楽に投げられるので、カーブの練習などをしっかりとしています。
――オープン戦を通じて四死球が少ないと感じました
四死球を与えてしまうとヒットを打たれたことと同じになってしまうので、そこは投げる時に気を付けています。やはりファーストストライクは取れるように、極力、ストライクゾーンで勝負できるように考えています。
――三振は積極的に取りにいっていますか
取りにいく場面と取りにいかなくていい場面があるので、そこを使い分けています。
――ここまでの試合で自分の投球をアピールすることができていますか
そうですね。監督が代わって、今までの成績は全く気にしないということをおっしゃっていたので、自分のテーマとなる野球は『0からのスタート』です。監督のお考えは『点をやらない投手が良い投手』ということなので、走者を背負っても点をやらないという点では、今のところ得点圏での走者被安打率は低いのでアピールできていると思います。
――昨季からのご自身の進化を感じる部分はありますか
投げる量は増えてきたのですけれども、疲労が少なくなりました。以前は1日目にたくさん投げたら2日目は肩が筋肉痛になってしまっていたのですけれども、最近は3日連続で投げてもいけるくらい疲労が来なくなりました。
――昨季を終えてから、ここまでで新たに得た武器はありますか
実際に(試合を)やっていく中で、コントロールを意識して左下に集めるというところが昨シーズンよりは安定してきました。それが自分の武器かなと思います。
――前回の特集取材で「冬や春のキャンプでテーマが明確になってくると思う」とおっしゃっていましたが、ご自身のテーマは見えてきましたか
キャンプ、オープン戦と続いてきて分かってきたのは、球の高さの重要性です。あとはフォームです。自分で投げていてぎこちなくではなく気持ち良く投げられるフォーム、自分が投げていて気持ち良い投げ方で投げられるところが大事かなと思います。一番は、高さを間違えないことと、自分のしっくりくるフォームで投げることに気を付けていきたいです。
――投球を見ていると制球・変化球のキレに魅力を感じます
それがなくなったらただのピッチャーになってしまうので、その取り柄をしっかりと生かすピッチングをしていきたいです。制球はそんなに上げようと思って上げられるものではないので、しっかりと持って生まれたものは大事にしていきたいです。
――ご自身で心掛けている投球スタイルはありますか
監督は点を取られなければいいという考え方なので、例えば2死走者なしからヒットを打たれても点は入りにくいので、無駄なボール球を使わない、というようなメリハリをつけるようにしています。ピンチでは打たせない投球を、打たれていいところでは打たせる投球をという使い分けをしてギアを上げていくことを高校から気を付けてやってきているので、そこは見てほしいところではあります。
――ご自身の変化球に対する思い入れがあれば教えてください
よく変化球、変化球と言われるのですけれども、自分の中では真っすぐがないと(変化球は)生きてこないと思っています。真っすぐのキレは負けたくないところで、大事にしています。それがないと変化球も簡単にボール球に見送られてしまうので、そこの調整は気を付けています。変化球は自分の中ではカウントを取るための道具、真っすぐをよく生かすための道具という意識です。
――3月初旬のオープン戦の試合後に「一番良いフォームで投げられていると感じている」とおっしゃっていましたが、そのフォームとは具体的にどういったものですか
見た目的にはどの試合も変わらないと思うので、それは自分の中でしか分からないので表現できないのですが…。下半身でしっかりと投げられる、自分の中で上と下でしっかりとタイミングが合って投げられるといったものです。
――そのフォームは現在も維持できていますか
そうですね。自分は(フォームを)崩してしまうことが多かったのですが、今季はほとんどないです。きょうも良かったですし。そういった意味では冬場にしっかりと数をこなして、連動性を意識して基礎を高めるということができたのが良かったと思います。
「先発にこだわって投げたい」
昨季は先発として有原不在のチームを支えた
――高橋広新監督(昭52教卒=愛媛・西条)、河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)と新体制になりましたが、チームの雰囲気は変わりましたか
練習の雰囲気はさらに引き締まったように思います。監督が見た目も威厳のある方なので(笑)、風格があり監督がグラウンドに入ってきた瞬間に雰囲気ががらっと変わるというような、今までにない引き締まった雰囲気でできているように感じます。
――監督とは個人的にコミュニケーションは取られていますか
あまりよくしゃべる方でもないのですが、自分のピッチングについて何か意見が欲しいときは自分から「きょうのピッチングについてお聞きしてもいいでしょうか」と聞いたりもします。
――投手陣の中にも競争があると思いますが、雰囲気はいかがですか
昨シーズンは有原さん(航平選手、現プロ野球・日本ハム)がいて、その後ろでやっていたのですが、今は1人だけ抜きんでているという人がいないので、全員で一戦一戦やっていこうという感じです。
――先発の吉永健太朗投手(スポ4=東京・日大三)もオープン戦で好投を続けていますが、ライバル心はありますか
ないと言ったら嘘になります。自分も先発にこだわって投げたいですし、基本的に土日のどちらかに組み込みたいというのはあります。先発争いは今だったら、自分と竹内さん(諒、スポ3=三重・松阪)と吉永さんの3人の中から2人なので。まだオープン戦で投げるので、そこでしっかりと結果を出さないと思います。
――新たにバッテリーを組んでいる道端捕手とはいかがですか
入ってきてすぐはとても怖くて話しかけることすらできなかったのですけれども、今は寮も一緒になったのでよくしゃべったりして、一番公私共に仲が良いです。
――しっかりとコミュニケーションを図ることができているという感じでしょうか
そうですね。試合中であっても試合前であっても、今の自分の調子をしっかりと話して、自分はこういうピッチングがしたいということを場面場面でよく話し合うようにしています。監督も織り交ぜて、3人でこういう時はこうした方がいいのではないかということを話したりします。
――前回の特集では「キャッチャーが変わるということはピッチャーとしては大きい」とおっしゃっていましたが、既に信頼関係は築けていますか
監督がキャッチャー出身ということもあり、監督がいらしてから道端さんの送球も土屋さんに負けないくらい伸びていて。上から目線で言ってしまう感じになるのですけれども、すごく成長なさっているので投げやすいです。
――投げやすい部分があるのですね
そうですね。やはりワンバウンドをしっかりと止めてくれることは大きいです。ワンバウンドを投げていいという場面で、キャッチャーが反らすかもしれないと思うと、投げられなくなってしまうので。そういう心配は今はないです。
――1年生が入ってきましたが、1年生ともコミュニケーションは取っていますか
そうですね。高校は上下関係が厳しいところだったのですけれども、自分自身あまりそういうのは好きではないので、相談しやすい先輩になりたいなと思っていて。家の相談や授業の組み方などについて向こうから聞いてくれるので、そういう意味では親しみやすいのかなと思います。
――後輩が入ってきて心境の変化はありますか
後輩が入ってきたからといって、そこまで自分自身の変化はないです。唯一変わったことを挙げると、やはり練習中に下の学年がやらないといけない仕事に気を遣わなくてよくなったので、さらに自分自身の練習に集中できるようにはなりました。
――いよいよ春季リーグ戦の開幕が近づいていますが、今どのようなお気持ちですか
昨季は自分のせいでチームが優勝を逃してしまって、そこから本当にあっという間に時間が過ぎてしまいました。しかし、しっかりと自分の力を出せれば抑えられるという自信もこのオープン戦でつきましたし、やらなければいけないことを自分が持っている力以上を出さないと勝てないと思いますので、レベルを意識したプレ—をしたいです。そうすれば、リーグ戦が迫ってきたからといってそこまで焦ることはありません。やれることをしっかりとやるだけです。
――昨季は1年生ながらも4勝を挙げ、エース不在の穴を埋める大活躍でした。今季はさらに周囲からの期待が高まると思います
正直、昨シーズンは相手に研究をされていなかったですし、マークもされていなかったので、投げやすかったですが、高校の時も同じように2年で研究をほとんどされずに投げて甲子園に行って、そこからだいぶ研究されて苦労しました。それと同じく、大学も秋にある程度活躍したので絶対に今シーズンはマークされると思いますが、その上を行くピッチングができれば問題ないと思います。
――他大学からのマークも厳しくなるとは思います
自分がバッターだったら1回見たことのある球を打つのと初めて見る球を打つのでは全然違うので、昨季と違う感じを出したいと思います。より厳しいコースに来るような印象を与えたいです。開幕戦、というか、1週目の試合は大事にしたいと思います。
――また、投手陣の大黒柱として先発で長いイニングを任されることになると思いますが
できるだけ長く投げたいですし、リリーフ陣に負担がかからないようにしたいです。昨シーズンは4イニングや5イニングで変わる試合が何試合かあったので、そこをできるだけのばしていきたいですし、3戦目になったときも3戦目にまだ余力を残しているピッチャーが沢山いるような状況を作りたいなと思います。
――ことしはチームの中でどのような役割を担っていきたいですか
先発で試合を任せてもらえるように、それ相応のピッチングをして優勝したいです。やはり先発にこだわってやりたいです。
――リーグ戦で自分のここに注目してほしいというところはありますか
走者を背負ってからの投球に注目してほしいです。
――2年目としての目標は
もちろん優勝です。自分が入ってきてから優勝を見ていないので、一つ上の代から優勝していないので、優勝したいです。結果として個人的にたくさん勝利を挙げてチームとしての目標に向かった結果、個人的な目標も達成しているというような、自分の目標のためにだけ頑張るというよりもチームの優勝のためにできることをしっかりとやっていきたいです。
――最後にリーグ戦に向けての意気込みをお願いします
昨シーズンはとても悔しい思いをしました。チームに迷惑をかけてしまって。部屋で(ビデオで)負けた試合を何回も見ましたし、その悔しさをはらしたいです。自分の持ち味を出して、春はチームの優勝のために頑張りたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 河野美樹、芝原健輔)
◆大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)
1995(平7)年6月29日生まれ。182センチ。74キロ。熊本・済々黌高出身。スポーツ科学部2年。色紙に字を書く前に、練習用の紙をわざわざ取りに行ってくださった大竹選手。周りの選手にも紙を配り、とても感謝されていました。試合以外でも、今季の目標として掲げた『頼れる存在に』となっていくことに期待十分です!