武藤風行(スポ4=石川・金沢泉丘)や小野田俊介(社4=東京・早実)など、打撃の中軸を担っていた4年生が卒業する来季。カギとなるのは、下級生野手陣の奮起だ。今回対談していただくのは、1年生ながら神宮球場の打席を経験した八木健太郎(スポ1=東京・早実)と、高校時代は投手としても活躍し、卓抜した野球センスを誇る三倉進(スポ1=愛知・東邦)。未来の主軸として大きな期待が集まるお二人に、お話を伺った。
※この取材は12月13日に行われたものです。
「日々だんだんと進化している」(三倉)
笑顔で質問に答える八木(左)と三倉(右)
――現在はオフシーズンですが、どのような練習をなさっていますか
三倉
ノックと守備の基礎練習、捕り込みなど、基本的な練習をしています。
八木
そうですね。他には走塁なども練習しています。
――基本的な練習が多いのでしょうか
三倉
そうですね。反復練習を繰り返すというのが、この冬のテーマです。
――岡田稔基新人監督(スポ3=埼玉・川越東)の下、新チームの雰囲気はいかがでしょうか
三倉
まだつい最近始まった新チームと言うことで、新人監督も選手もお互い探りあっているような、いい意味で日々だんだんと進化しているような感じです。
八木
直原さん(大典前新人監督、人4=高知・土佐)はどちらかというと盛り上げるというタイプの新人監督でした。岡田さんはクールで真面目という、また違った印象を受けましたね。
――現在それぞれ取り組んでいる課題はありますか
三倉
自分ではパワー不足だと思っているので、振り込みや筋トレをするようにしています。
八木
身体が高校のときに比べて大きくなったのですが、それをさらに大きくしたいと思っています。技術面に関しても、バッティングでは逆方向に強い打球を大きく飛ばせるようになることが、守備では送球をしっかりと投げられるようになることが目標ですね。
――それは現時点でどれくらい達成できていると思いますか
三倉
身体を大きくするということ関してはできていると思うのですが、守備と打撃に関してはもっとレベルアップできると思っています。送球に関してはまだ納得していません。打撃についてはできている点もありますが、さらに腕を磨いていきたいです。
八木
自分も送球がまだ安定していないので、そこが課題ですね。きょうはシートノックをしたのですが、どれくらいの力で投げればいいか理解しきれていませんでした。そこをきちんと身につけようと思います。打撃に関しては、打率というよりもこの冬はパワーをつけたいです。暖かくなってからフォームや打率についても磨いていきたいと思っています。
――ことしのシーズンについて、八木選手はリーグ戦で打席に立ちましたが、感想はいかがでしょうか
八木
高校のときに比べて、良い投手が揃っているという印象でした。四球も少なくコントロールも良くて、キレもスピードもある。その投手を相手に結果を残すこともできませんでした。貴重な経験にはなりましたが、その悔しさを忘れず、この冬の練習でしっかりと乗り越えたいと思います。
――緊張はありましたか
八木
最初の打席は明大の山崎福也投手が相手ということで緊張はありました。それでも初球から振っていこうと思っていました。結果、初球はファールだったのですが、大きくスイングしたら緊張も抜けて、それ以降は大丈夫でした。
――先発出場する機会もありましたが
八木
1年生らしく、思い切りプレーしようと思いました。
――三倉選手はことしを振り返っていかがでしょうか
三倉
紅白戦は比較的納得できる結果を出すことができました。安打は打てていないのですが、出塁率としては良かった。そして、出塁したら盗塁をしていたので、そういう面では期待に応えることができたのかなと思います。しかし、実際に結果を残すことができなかったので、しっかり試合でも見せていかなければならないと思いました。
――秋季新人戦では優勝という結果になりました
三倉
自分は打撃面ではあまり貢献できず、迷惑をかけてしまったと思っています。ただ、守備に関してはしっかり毎試合やっていたので、自信になりましたね。チームとしてしっかり優勝できたということは、運も実力もあるということだと思います。雰囲気もにぎやかで良かったですし。
――お二人は1年生ですが、ワセダを選んだ経緯はどのようなものでしたか。三倉選手はお兄さん(三倉健、教4=徳島・鳴門工)の影響もあったのでしょうか
三倉
自分は高校2年生のときまではプロ野球に入ることを目標にしていて、大学に対しては全く興味がありませんでした。ただ、兄が大学野球の伝統を感じていて、是非弟にもそういう環境で野球をやってほしいと言われるようになりました。それで、高校2年生くらいから大学について考えはじめて。大学野球の中でも早慶は特別な位置にあると(兄に)伝えられたので、もう他の大学は全く考えずに、ワセダだけを考えていました。
――当時、お兄さんとはよくお話をなさったのでしょうか
三倉
その頃は頻繁に連絡をしていましたね。それまではお互い忙しかったのでほとんど話しませんでしたが。たまに野球の技術のアドバイスをしてもらうくらいで。
――仲は良いほうですか
三倉
そうですね、良いと思います(笑)。
――実際にワセダの野球部に入ってみていかがですか
三倉
自分の兄は4年生だったので、普通は新入生と4年生はほとんど話さないのですが、中村さん(奨吾前主将、スポ4=奈良・天理)や有原さん(航平、スポ4=広島・広陵)に気軽に話していただきました。そのため、やりにくい感じはありませんでしたね。野球部の雰囲気としては、気が引き締まる、しっかりやらないといけないという責任が感じられるような印象を受けました。
――八木選手は高校から1年のブランクを経ての入部となりました
八木
そうですね、1年間あまり野球をすることができませんでした。練習に参加し始めたときも、最初はやはり走れないですし、すぐ息があがって足がつりますし(笑)。もう少し練習しておけば良かったなと思いました。2月くらいから先輩と一緒の練習に入れてもらったのですが、そこでも全然打てない。練習していないことに加えて、大学では野球のレベルが上がりますし、なかなかすぐに結果を出すことができませんでしたね。
「普段から野球部という看板を背負って生活している」(三倉)
秋季新人戦では全試合にスタメンとして出場した三倉
――オフの日の過ごし方はどうされていますか
八木
友達と遊びに行ったり、本当に疲れたときは温泉に行ったりしています。野球部の友達と遊んで、飯食って、ゆっくりして、温泉に行って疲れを癒やしています(笑)。
三倉
前期も後期も授業がたくさん入っていたので、平日の授業が終わった後はとにかく練習していました。オフの日は東伏見以外のところでリフレッシュして、野球から離れたいという思いがあって。オフを満喫したら、また平日に練習を頑張ることができるので、いろいろな町に行っています。
――特にどこに行くことが多いですか
三倉
表参道は外国の方が結構多いですよね。そういう雰囲気が自由で好きなので、よく行っています。
――今は一人暮らしですか
今は兄と二人暮らしで、安部寮の目の前に住んでいます。でも、兄が引退してからは自分の練習と兄のバイトのタイミングが合わないので、すれ違いのような感じですね。
――同期で仲の良い選手は誰ですか。
三倉
八木って言ってあげようかな(笑)。他には、春先までピッチャーをやっていたので、小宮山(将、教1=東京・早実)、奈須(怜斗、社1=宮崎・延岡学園)と仲が良いですね。野手だと宇都口(滉、人1=兵庫・滝川)。自分は関西出身なので、接している人が関西出身の人が多くなっている気はします。
八木
自分はメンバーに入っていた大竹(耕太郎、スポ1=熊本・済々黌)、北濱(竣介、人1=石川・金沢桜丘)、キャッチャーをやっている中川(力輝、スポ1=新潟・長岡)と仲が良いですね。筋トレも中川と一緒にやっています。
――お互いに初めて会ったときの印象はいかがでしたか
八木
無口、ですね。クールな印象を受けました。
三倉
1つ年上だということを知らなかったので(笑)。早実出身の選手たちが先に練習に参加していたのですが、そこに加わったときに一部の早実の選手が気を遣っていて。どういう選手なのかな、と疑問に思ったのが最初の印象ですね。
――入学されてから1年が経とうとしていますが、学業面ではいかがでしょうか
八木
高校のときは文武両道が大変で、夜遅くまで勉強してから朝早く学校に行って、部活に行って帰って勉強、という生活でした。今はそれに比べれば負担も少なくなったかなと思います。
三倉
難しい授業もあるのですが、その分ためになりますね。学校自体が楽しいです。
――お気に入りの授業はありますか
八木
バスケですね。とっても楽しいですよ。
三倉
エスニックスポーツという授業です。オリンピック競技のような有名なスポーツではなく、民族的なスポーツを扱うのですが、授業の中でも自分が小さいころにやったような鬼ごっこをしたりして。大学生になってそういう鬼ごっこをすることが新鮮だったので楽しかったですね。
――早稲田大学の野球部に入部した最初の印象を教えてください
三倉
各選手が責任を持って、普段から野球部という看板を背負って生活しているなという印象を持っていました。その緊張感は継続していかないといけないと思います。
八木
早実出身なので先輩がたくさんいるのですが、「1年生のうちは頑張って耐えろ」と言われて。最初はきつかったですが、だんだん慣れてきました。つらいことは乗り越えつつあるかな、と感じています。
――1年目はかなり練習も雰囲気も厳しいと聞きますが
八木
そうですね。他の大学がどうなのかはわからないのですが、おそらく厳しいほうだと思いますね。
――チームのムードメーカーは誰ですか
八木
大島(俊輝、人1=栃木・大田原)ですかね。面白くて、学年でのイベントをまとめてくれたりしています。
――プレー面や私生活でご自身の役割は何だと思いますか
三倉
プレー面では言葉よりも姿勢で見せるタイプだと思っています。外野から声をかけるのでも、内野まで反応してくれるような声の出し方を心がけていました。私生活では、意見を言うだけでなく、相手の意見を聞くということができるタイプだと思っています。話し合いでも仲介役になるような立場にはいます。
八木
プレーでは声を出して、チームを盛り上げることですかね。打順が回ってこなくても、ベンチでチームを盛り上げる選手。私生活では天然ボケだと言われることが多いです(笑)。
――何か天然ボケのエピソードはありますか
三倉
前の日に言われたことを覚えていない、と兄(三倉健)がよく言っていました(笑)。
八木
三倉(健)さんには本当にお世話になりました。お食事にも連れて行っていただいて、礼儀面などもいろいろ教えていただきました。
――学年全体で遊びに行くことはありますか
八木
全員で遊びにいくことは、まだありません。大島が企画してくれた忘年会がこれからあるのですが、それが初めてですね。何人かのグループに分かれて遊んだことはあります。
三倉
夏は川に行ったね。
八木
夏は自分の家に皆が来て、川に行ってバーベキューをしたりして。人数が多いので、分かれて遊びに行くことが多いですね。
「昨日の自分よりも上回りたい」(八木)
昨季はリーグ戦にも出場した八木
――新チームの雰囲気はいかがでしょうか
三倉
いくつか(スタメンが)決まっているポジションはあるとは思うのですが、競えば誰もにチャンスがあるチームだと思います。試合ごとにレベルアップしようとしている雰囲気がありますね。
八木
同じです。
――それぞれご自身の持ち味は何だと思いますか
三倉
コントロールが良くないのであまり生かせていませんが、肩が強いこと。そして、走力とパワーはある程度あるので、そこはポイントだと思っています。
八木 足が速いことです。あとは、守備より打撃ですね。そこまで肩が強い方ではないので、コントロールを意識するようにしています。
――苦手なことはありますか
三倉
ラダーを使ったフットワークの練習など、小刻みに動かす運動が苦手かもしれません。すばしっこい動きが苦手なのかなと。
八木
走塁ですかね。打席よりも、塁に出てからが緊張してしまいます。何塁まで狙うかという判断が難しくて、そこが苦手ですね。
――プロや部内で目標とする選手はいますか
八木
武藤さんです。1、2年生のときはベンチに入っていなくても、諦めずに練習をしてあれだけ結果を残したという。頑張れば最後に結果が出るというお手本なので、武藤さんのことを思い出して頑張っています。軽井沢合宿では武藤さんから直接打撃を教えていただく機会もありました。
三倉
一人にしぼって誰、という選手はいません。打撃はこの選手、守備はこの選手、走塁はこの選手、と練習姿勢はこの選手、と。野球にとどまらず、いろいろな競技のアスリートを見て、自分のやる気を高めています。この人だけ、という選手はいないですね。
――お互いを評価していかがですか
八木
(三倉選手は)肩が本当に強いですね。また、野球に関していろいろ考えている。自分もそれをたまに教わったりします。知識や練習方法など、野球に詳しいですね。
三倉
(八木選手は)1年生のときからベンチに入って試合も出ていて。尊敬しています。センスがすごく優れている選手だと感じます。
――ライバル意識はありますか
八木
三倉以外にも上級生の選手がいるので、お互いにそんなに意識はしていないですね。昨日の自分よりも上回りたい、という意識で練習していて。
三倉
ライバル意識が無いと言ったら嘘になりますが、今の時点では八木の方が結果を残しているので、ライバルというよりは上だなと考えています。
――来年の目標を教えてください
八木
試合に出た上で、ここぞという時に打てる選手になりたいですね。勝負強い選手になりたいです。
三倉
ケガなく来年を終えるというのは絶対の目標です。さらに言えば、高校時代の感覚を早く戻すということ。そうすればレギュラー争いにも食い込めるかなと思っています。とりあえず早く感覚を戻すことと、ケガをしないことが目標です。
――大学野球生活全体を見据えての目標を教えてください
三倉
チームとしては日本一になるということ。個人的には日本代表に選ばれること、最終的にはプロ野球に入ることです。
八木
同じですね。プロや社会人で野球を続けられるような選手になりたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 三尾和寛、山形真代)
来季に向け、気合は十分です!
◆三倉進(みくら・しん)(※写真右)
1995年(平7)7月26日生まれ。178センチ。85キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部1年。取材中の受け答えもクールな印象の三倉選手ですが、お香を焚くことにはまっているという繊細な一面も。お兄さんと二人暮らしのお部屋で、いろいろな香りを楽しんでいらっしゃるそうです。
◆八木健太郎(やぎ・けんたろう)(※写真左)
1994年(平6)6月29日生まれ。176センチ。77キロ。東京・早実高出身。スポーツ科学部1年。バイクが好きで、大型自動二輪の免許もお持ちだという八木選手。休日にはインターネットでバイクの動画を見て、どこかツーリングに行きたいと思いを馳せるそうです。