関東2連覇を達成した早大の最大の武器である堅守。ことしのディフェンスリーダーを務めるDB山口昴一郎(社4=東京・佼成学園)。下級生の頃から活躍し、今季もLBユニットの中心として期待が懸かるLB田口凌(社4=東京・早大学院)。そして昨年の甲子園ボウルで強烈なインパクトを残したLB中村匠(人3=大阪・豊中)。早大ディフェンスのキーマンとなるであろう三人に、今季のディフェンスユニットの展望、そして早慶戦への意気込みを語ってもらった。
※この取材は3月24日に行われたものです。
「頭が使えるディフェンスにしたい」(山口)
山口はディフェンスの頭脳として活躍が期待される
――まずはアメフトを始めたきっかけから今に至るまでの経緯を教えてください
田口 自分は高校から始めて3年間やって、日本一に3年間なって辞めようかなとも思ったのですが、高校までのレベルでしかアメフトをやっていなかったので、大学の高いレベルで自分を試したいと思って、大学でも続けることを選びました。
山口 僕は中学からやっていました。経緯としては色々な部活を回って一番面白かったのがアメフトだったのでとりあえずやってみようという気持ちで始めて、気付いたら10年やっていて。高校では早大学院が強くて日本一にはなれず、最後はケガをして負けたということで後悔が強かったので、大学でも入りました。
中村匠 僕は中学校までラグビーをやっていて、高校では何か新しいスポーツを始めたいと思っていて、先にアメフトをやろうと決めてからアメフト部のある、大阪府の豊中高校を受験しました。高校の先輩が早大に進学していたので、早大に興味を持ち、受験して今に至るという感じです。
――BIG BEARSに入って、高校との環境やレベルの違いを感じましたか
田口 違いますね。大学1年の時に感じたのが、スピードとパワーの違いです。最初はそれに適応することに悩むこともありましたが、トレーニングでしっかりと補うことで慣れてきて、適応できるようになったと思います。
山口 高校の時から大学の試合をビデオなどで見ていましたが、実際にプレーして、田口も言っていましたが、スピードとパワーが高校とはレベルが全然違うなと思いました。早めの段階でBIG BEARSの練習に参加させてもらって、スピードの違いが僕の中での課題だったので、ウエイトをしてスピードに慣れるようにしました。
中村匠 僕は大学に入ってから細かい部分でのテクニックを教わりました。高校の時は見よう見まねでアメフトをやっていて、コーチもいなかったので荒削りだったのですが、大学に入ると教えてくれる人がいたのでシステマチックにアメフトができる環境になりました。
――ご自身の強みや持ち味はなんですか
中村匠 試合であまり緊張しないことですかね。それと思い切りよくいけて、ちゅうちょしないというところが強みかなと思います。
山口 僕の強みは戦術面というか頭でディフェンスを引っ張っていけることかなと思っています。DBはディフェンス全体を見ることができるポジションであって、下級生の頃から試合に出してもらって、色々な大学のレベルでの経験や、先輩から教わったことを学んでフィールドで出せるアジャスト能力を得られたと思います。自分がまとめなければこのチームのディフェンスは崩壊するという意識を下級生の頃から持っていて、それがことしディフェンスリーダーをやらせてもらえることにつながったと思います。
田口 中村匠とちょっと似ているのですが、大舞台であればあるほど楽しめます。緊張はすることはするのですが、その状況を楽しめるタイプで、その中でビッグプレーを起こすことができることが強みだと思っています。
――山口さんはことしディフェンスリーダーになられましたが、ことしのディフェンスユニットはいかがでしょうか
山口 加藤樹さん(平29商卒=東京・早大学院)というスーパープレーヤーが抜けましたけど、それを埋めてくれる匠(中村)であったり、ケガから復帰した田口であったり、主力が多く残っているので、ことしはオフェンスが抜けた分、ディフェンスのワセダと言われるようなチームに必ずできると思っています。
――早大のディフェンスの強みはどういったところでしょうか
山口 ことし僕がディフェンスリーダーとして特に全員のディフェンスの理解ということを徹底的にやろうと思っています。全員が「このプレーはこう止める」と理解すれば、自ずと皆同じ動きができるので、全員の理解度を重視しています。ウエイトやスピード、細かいテクニックなどは、DBのポジション以外には教えることができないので、ディフェンス全体として教えられることが、システムの理解ということで、僕の強みである頭脳を生かすことができると思うので、ことしは頭が使えるディフェンスにしたいと思います。
――では、日頃からコミュニケーションを大切にしているのでしょうか
山口 そうですね。常に色々なポジションと話し合って、「こういう風に止めていくんだよ」という感じで僕が中心となって色々な人と話すようにしています。
「全員チームを日本一にするための一人」(田口)
昨年を振り返る田口
――昨季は甲子園ボウルまで進出しましたが、どのようなシーズンでしたか
田口 僕はケガで最初の3試合しか出場できず悔しいシーズンだったのですが、その中で早大は結果的にナンバーワンのディフェンスになることができました。序盤の2試合(日体大戦、中大戦)は苦労したのですが自分たちの危機意識が芽生えてそこから這い上がるというか、伸びていくことができたので、毎試合毎試合成長できたシーズンだったのではないかなと思っています。
――具体的に成長できた点はなんですか
田口 ケガをしていたので自分が成長したことは正直ないのですが、山口が言った通り、戦術面の理解度は良くなっていて、全員の危機意識から共通認識が生まれていきました。
山口 昨季は春、幹部として特にパスカバー、DB中心に加藤さんとASの杉田さん(雅仁、神奈川・浅野)と共にディフェンスを構築していくシーズンで、自分自身の理解度もそうですしディフェンスの穴であったり弱点など、プレーヤーには分からないことをスタッフの視点から見られたことが自分の成長につながりました。秋シーズン実際にそれを生かしてプレーをしてみたのはいいのですが、満足したシーズンではなかったです。戦術面はもちろんのこと、特にフィジカル面、体づくりが僕の課題となったのでこのオフシーズンや春シーズンはしっかりそこに取り組んでいきたいと思っています。
中村匠 僕は去年ポジション自体があまり自分にうまくはまらなくて、最後に甲子園の直前でポジションが変わって、甲子園ではそこそこ動けたので、いいとこ取りというか、ごっつぁんゴールというか(笑)。そんなシーズンでした。
――昨年の早大のディフェンスは序盤苦戦し、徐々に良くなっていきましたが、苦戦した原因と良くなっていった要因は何でしょうか
山口 一昨年関東1位になって、昨年は下位チームから当たっていくということで、正直チームとして油断があったのかなと思っています。戦術面でもディフェンス幹部の気の緩みが出たかなと。戦術自体はものすごく悪いわけではなかったのですが、結局気持ちの面での油断がプレーにつながってしまって。特に日体大戦はオーバータイムに突入してしまいましたが、ディフェンスで24点取られたのは他に関学大だけなので気の緩みが出たのかなと、中大戦は我慢の試合だったので、ちょっと時間は使われましたけどディフェンス自体はそれほど悪くなかったです。特に日体大戦は気持ちの油断がああいう試合になった原因だと思います。
――昨季は池田直人選手(法2=東京・早大学院)や杉田直人選手(法2=東京・早大学院)、永井雄太選手(商2=東京・早大学院)などフレッシュな選手が出てきましたがことし期待できる選手は誰でしょうか
山口 LBは高田(健、=早稲田渋谷シンガポール)にする?(笑)
中村匠 LBは高田選手に注目です。
――その理由は
田口 その理由(笑)。チームを盛り上げるムードメーカー的な存在なので盛り上げて欲しいというのと、下級生が伸びてくると上級生の危機意識も生まれて、その相乗効果でいいユニットができると思うので、高田をはじめ、池田や杉田、岸(大介、商2=東京・早大学院)らが伸びてくるといいと思います。
山口 誰にしよう…DBでしょう?
田口 大治郎(伊坂、スポ3=滋賀・膳所)は?
山口 そう思った!伊坂で。
田口 あと渡辺大地(教2=東京・早実)は?
中村 あと文太(渡辺、法3=東京・早大学院)。
山口 渡辺大地、渡辺文太、伊坂、そこら辺かな。文太は1年生から試合に出ていたのですが、彼のスピードとタックルは注目してもらって大丈夫です。大地と伊坂は僕と同じポジションなのですが、未経験ながらフィジカルが強いです。同じポジションなので、この春シーズンで僕の考えている頭脳プレーや戦術面を落とし込んでいきたいです。2人が一番の急成長株かなと思っています。
――ことしから監督が変わりましたがチームの雰囲気はいかがですか
山口 今年はより風通しのいいチームかなと思いますね。昨年までの濱部監督(濱部昇、昭62教卒=東京・早大学院)は学院(早大学院)でも監督をやっていて、日本一も経験して、監督としてチーム作りやチーム運営をどうすべきかしっかりと分かっている人でした。高岡さんは今まで助監督など監督をサポートする立場で、監督としては未熟な面もあるとおっしゃっていました。主に4年生から、こういうチーム運営をすれば良いのではないかと提案できて、高岡監督(高岡勝、平4人卒=静岡聖光学院)もそういうことを求めてくれます。そういった意味でいいチームなのかなと。これは高岡監督が、初めて監督をやるからこそだと思います。
――坂梨陽木主将(政経4=東京・早大学院)に対してはどのような印象ですか
田口 発言して周りに影響させることができる人間で、僕らの代で誰が主将をやるかわからない中で3年間やってきましたが、結局陽木がやることになりました。それは正しい選択だと思っています。彼のように一番正義感のあるひとがやるのがいいのではないかと思います。
山口 主将でありQBであるということでプレッシャーがかかるということは分かった上で、本人も正義感とチームを引っ張っていきたいという思いが強くて主将をやっているので。一人で抱え込み過ぎないように、幹部、副将、特に4年生が中心となって陽木を支えなければこのチームはダメになってしまうのではないかという思いがあります。僕たちが支えて、でも陽木ならやってくれると思うのでついていきます。
中村匠 陽木さんは普段から真面目な人で、発言一つ一つに説得力があるので、僕らはしっかりと付いていこうという気持ちになるので素晴らしい主将だなと思います。
田口 べた褒め(笑)。
一同 (笑)
――ことしの個人としての目標は
田口 試合に出場して、チームの雰囲気を変えられるようなビッグプレーを起こしたいと思います。
――加藤選手が抜けたことで、後輩のLB陣をまとめるなど、田口選手に求められる役割がより重要になってくると思われますが
田口 加藤さんはプレーもすごくて。でも加藤さんのリーダーシップと僕のリーダーシップは違うと思っています。あの人みたいにすごい人は背中で引っ張っていけるでしょうが、自分はまだまだ未熟なので、1年生からしっかりとコミュニケーションを取っていって、下からボトムアップできるユニットにしたいと思います。
――田口選手は高校時代に日本一を経験されましてが、今後早大が日本一になるために必要なことは何でしょうか
田口 僕がケガをしている時に感じたことなのですが、選手スタッフ含めチーム全員がまだ日本一を目指し切れていないと感じています。今まで先頭に立ってリーダーシップを発揮してきましたが、日本一への意識が低い人やチームを第一に考えられていない人もいることに気づいて。そういう人間が全員チームを日本一にするための一人であることを意識して、何か一つでも日本一に貢献しようと全員が思えれば、日本一になれると全員が思っています。
――山口選手の個人の目標は
山口 ことしは目立ちたいなというのがあります。昨季DBでインターセプトをしていないのが僕と洲戸さん(健吾、平29スポ卒=東京・東農大一)だけで、全員インターセプトをしているので。去年は特に何もしていないので、自分がビッグプレーを起こして目立ちたいというのがシンプルですけど個人の目標かなと思います(笑)。
――インターセプトをするために必要なこととはどんなことでしょうか
山口 ビデオを見て相手の傾向であったり、戦術面の準備をすることです。もちろんその場でのアジャスト能力も必要ですが、アメフトは準備のスポーツなので準備を怠るとビッグプレーは絶対に起こせません。あとは意外性ですかね。型にはまったプレーでは絶対にできないので、ちょっとした意外性が必要です。
――中村匠選手の目標は
中村匠 僕も田口さんとちょっと近くて、1プレーで流れをワセダに持ってくるビッグプレーを見せられる選手になりたいと思っています。
「春からエンジン全開で圧倒したい」(中村匠)
物静かに語る中村匠
――1ヶ月後の早慶戦に向けて、慶大の印象は
田口 慶大は李卓選手が抜けて、昨年よりはオフェンスは弱くなると思いますが、彼らも李卓選手に頼らずに勝てるように変わろうと必死にやっていると思います。そこは侮らず、早慶のプライドが懸かっていて、何が起こるかわからないので本気でぶつかって、慶大には絶対に勝つという気持ちで練習しています。
山口 田口が言ったように李卓選手という日本を代表する選手の抜けた穴は大きいと思いますが、それを補うくらいの力があるので、そこは僕たちも危機感を持ってやらないといけないなと思います。
中村匠 李卓選手が抜けて、成長してきた慶大を上回って成長してきたワセダを駒澤で見せれたらなと。
――早慶戦に対して特別な思いはありますか
田口 もちろんワセダなので、慶大だけには負けたくないです。
――それは早大学院時代から変わりませんか
田口 学院だからワセダへの愛が強いというのは、他の高校から入ってきた人よりはあると思います。
山口 もちろん負けるつもりはないです。両親もワセダですし、必ず勝ちます。
一同 (笑)
中村匠 僕は元々、慶大に対して特別な思いはなかったのですが、徐々に洗脳されて…
一同 (笑)
中村匠 ワセダに入ってから慶大を意識するようになって、完全にワセダ脳になりました(笑)。
――ディフェンスから見て、特に警戒する慶大の選手は
田口 去年早慶イケメン対決で慶大の柴田源太選手に完敗しているので。
一同 (笑)
田口 今年こそは試合で勝ちます!
山口 RBの國府谷選手(嘉盛)ですかね。去年は李卓選手との二枚看板で、李卓選手の存在がすごすぎて陰に隠れていましたけど、本人はスピードもフィジカルもあっていいRBなので。
中村 慶大はあまり知り合いがいないですね…。あ、松岡拓希選手で。唯一名前を知っているので(笑)。
――早大のキーマンになりそうな選手は
田口 やっぱり山口じゃないですか。
山口 絶対違う(笑)。自分て言おうとしたけど俺じゃないなと思った。
田口 自分で言おうとしたの?(笑)
山口 うん。そんな言えるような人間じゃないので(笑)。
中村匠 僕はDL斉川(尚之、スポ3=東京・独協)で。
山口 僕はWRブレナン翼君(国教2=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)で。彼は天才なので。
田口 DB小野寺(郁朗、社3=東京・早大学院)じゃないですか。あいつはすごいです。先輩の自分から見ても頑張っているなと。
――小野寺選手の特にすごいところは、どういったところですか
田口 ひたむきに頑張るタイプで、自分が一番やればそれが周りに波及すると考えている人だと思うので。そういう考えができるのはすごいなと純粋に思っています。
――最後に早慶戦に向けての意気込みを
中村匠 ここ最近秋は慶大に負けているので、ことしはもちろん、春も秋も勝てるように、春からエンジン全開で圧倒したいと思います。
山口 特にラストイヤーの早慶戦は負けたくないし、負けるわけがないと思っています。必ず勝ちます。ディフェンスで勝ちます。
田口 ちょっと被るのですが、僕たちがよくLBのコーチに言われるのが、ラストイヤーの早慶戦だけは勝てと。『だけ』っていうのは極論ですが。自分のラストイヤーの早慶戦は絶対に勝ちます。
――ありがとうございました!
(取材・編集 新津利征、成瀬允)
ディフェンスの中心でプレーする三人に期待です
◆田口凌(たぐち・りょう)(※写真左)
1995(平7)年7月25日生まれ。170センチ、85キロ。LB。東京・早大学院高出身。社会科学部4年。ワセダや日本一への熱い思いを語ってくれた田口選手。言葉の節々にLBユニットを引っ張る存在としての覚悟が伝わってきました!最後の早慶戦での、試合の雰囲気を変えるプレーに注目です!
◆山口昴一郎(やまぐち・こういちろう)(※写真中央)
1994(平6)年9月9日生まれ。178センチ、68キロ。DB。東京・佼成学園高出身。社会科学部4年。戦術面について詳しく、分かりやすく語ってくださった山口選手。早慶戦では、早大の『頭脳』としての活躍、そしてインターセプトにも期待です!
◆中村匠(なかむら・たくみ)(※写真右)
1996(平8)年4月16日生まれ。174センチ、83キロ。LB。大阪・豊中高出身。人間科学部3年。甲子園ボウルで大活躍を見せたように、大舞台に強いという中村選手。早慶戦でもビッグプレーを起こしてくれることでしょう!