【連載】『第61回早慶戦特集』 第7回 DB末吉裕一×DB/K/P森翔平

米式蹴球

 ディフェンスの一番後ろからすべてを見渡すのがDB。まさに最後の砦と呼ぶに相応しいポジションだ。一つでもミスがあれば失点につながるため、相手を逃さない正確なタックルやレシーバーに抜かれないスピードが必要とされる。ことしワセダの砦となる、DB末吉裕一(商4=東京・早大学院)、DB/K/P森翔平(文構4=愛知・豊橋東)に早慶戦への意気込みを語ってもらった。

笑顔で質問に答える二人

最後の砦

――アメフトを始めようと思ったのは

 住む所を決めて、隣の人に挨拶しようと思ったら大きい人が住んでいて。それが2つ上の鎌田さん(実築、平24教卒=東京・早大学院)という方でした。連絡先を交換して、学校のわからないこと聞いたりしていたらフェスタに呼ばれたらそこで優勝してしまって(笑)勧誘が止まらなくなりました。

末吉 高校から始めたんですけど、兄が早大学院でアメフトをしていたので誘われて。早大学院に入ったらアメフトをやろうと思っていました。

――末吉さんはなぜ大学でも続けられたのですか

末吉 最初は入る気は全くなかったです。大学の先輩に勧誘されて、お話を聞く機会があって、「良い経験ができる」とおっしゃっていたのでやってみようと思いました。

――DBとはどのようなポジションでしょうか

末吉 最後の要というか砦ですね。DBが抜かれることがあれば、相手に得点を与えてしまうことになるので、どんな状況でも守るところです。

 あとは一つのミスで得点に繋がってしまうのでミスはしてはいけません。あと自分が目立っているということは攻められていることなので、目立たない方がいいですね。

――どんな人が向いていますか

末吉 常に冷静でいられる人ですね。

 確かに。冷静さも大事だね。あとは…おちゃらけている人(笑)人をいじれるような人でないとダメです。すぐカッとなってしまう人は突っ込んでしまうので。

末吉 あとは割り切れる人です。

――身体能力などは

末吉 本場のNFLなどではCBは一番身体能力の高い人を置いているので。基本的にDBというポジションは身体能力が高い人が必要です。

――ワセダのDB陣の中で一番身体能力が高いのは

 やっぱり…

末吉 3年の未経験で入ったDB田中慶行(政経3=東京・早大学院)かな。ボディーバランスというよりはクイックネスがすごいです。

 僕が思うのは一歩の爆発力が違うなと。良い筋肉しています。

――お互いのすごいと思う所は

末吉 能力というよりは考え方ですね。すごくストイックで、どこまでやったら日本一に辿りつけるかを考えているところです。

 きっちりしているところです。私生活はそんなでもないんですけど(笑)グラウンド上やトレーニングをしていても手を抜かないです。生真面目です。真面目。お堅い人ですね(笑)

――DBユニットはどのような雰囲気ですか

末吉 楽しいポジションです。皆が楽しめるという所ですけど、悪く言えばメリハリが無くなってしまうことにも繋がるので。

 皆楽しくやっています(笑)自分は末吉に色々言うタイプですが、それが周りにも伝わってしまうことがあるので、もっと締めていきたいです。

――練習中などに話をしている後輩は

末吉 2年のDB寺中(健悟、教2=東京・早大学院)ですね。彼は自分の考えを持っていて、経験も豊富なので、自分の軸通りの発言は多いですね。

 あとは瑛二郎(DB石川瑛二郎、人3=東京・早大学院)です。

末吉 彼は3年生になって上級生の自覚が出てきていると思います。

――DBの魅力は

末吉 DLやLBの漏れをサポートするのがDBなので、そこを守り切ったときは楽しいです。あとは後ろから全てを見られるのでハードにプレーできますし、キャリア―に勢い良くタックルできたりと爽快感はあります。

 自分はレシーバーと1対1の場面が多いので、そこで圧倒できたら楽しいですし。あとはインターセプトできたら嬉しい気持ちになります。

――オフェンスでやってみたいポジションは

末吉 高校時代や大学の最初はRBもやっていたのでRBをまたやってみたいです。

 僕はWRです。目立つというのもあり、ボール持って走りたいです(笑)

――新入生に一言

末吉 DBというポジションはすごく楽しいポジションなので、最初アメフトを始めると自分に合っているのかと思うかもしれないですけど、DBなら楽しくできるので是非一緒にアメフトをやりましょう。

 DBはチームの中でもアスリートのポジションなので、良い体を作りを目的でもいいので(笑)

ワセダ守備の砦となる末吉

チームを背負う気持ち

――昨シーズンの自身に点数をつけるとしたら

末吉 60点ぐらいです。理由としては、試合勘がなく中大戦にいきなり出たので戸惑いがあって。法大戦の途中からは少しずつ上がっていきましたけど、中大戦は自分の中で納得できるプレーではなかったからです。

 僕は50点ぐらいだと思います。2年生の時からの課題でもある、姿勢が高い所やタックルがなかなか決まらなかったりして。売りのスピードを生かすためのテクニックもあまり習得できない状況で。なにより「このチームを勝たせる」という気持ちが足りなかったと思います。チームを背負う気持ちが足りなかったのかなと。それで田中さん(友基、平25商卒=東京・早大学院)や芹澤さん(暁良、平25人卒=群馬・高崎)も抜けなかったですし。もっとチームに貢献できたのにと思います。

――見つかった課題などは

末吉 やっぱり試合勘は大事だなと思いました。試合に出続けることは重要で、いかに練習を試合に近づけても全く同じものを作るのは難しいので。レギュラーとして出続けることは重要だと思いました。

 1年の時からある課題がまだあるということが課題かなと。タックルが弱かったり重心が高かったり。あとは気持ちの面でもっと準備して、試合に勝つんだという気持ちが足りなかったと思います。

――今シーズンの目標は

末吉 もちろん日本一のDBユニットを作ることが目標ですけど、DBの中から代表などに選ばれるような成績を残したいです。

 個人的には、シーズンが終わってコーチに言われたのが「森を出しておけばなんとかなるけど、なんとかしてくれる選手ではなかった」という言葉で。今年はなんとかできるように取り組んでいます。

――具体的にはどのような取り組みを

春はずっと引きずっていた課題を意識してやっています。なかなか上手くいかないんですけど(笑)

末吉 僕はこの時期は身体を作ることをメインにしています。シーズンにはいってくるとウエイトの量も少なくなってしまうので、春の段階で動きやすい身体を作ってシーズンに入りたいので。あと今フィールドの中で意識しているのはとにかく競ることです。ブロッカーやOL、FBとぶつかることが多いので、しっかり接点で負けないよう意識してやっています。

――森選手はキッカーも兼任されていますが

 なかなか就職活動と両立してするのが難しいですけど、時間のある時に蹴るようにしていますが、まだ本調子ではないです。

――蹴る時に緊張はされますか

 そうですね。めちゃくちゃ練習して、絶対に成功すると思ってフィールドに立つ時は大丈夫です。でもやっぱり練習できていなかったり不安があったりすると集中力が削がれて、そういう時は緊張します。

――先ほども話がでましたが、注目している後輩などはいますか

末吉 自分はSFなので、今シーズン注目しているのは3年のDB三好(邦英、スポ3=大阪・高槻)です。最近の練習で頭角を現してきています。もともとポテンシャルは高かったので、ことしになって1本目になりたいという意識が見られてきています。指導としては、理解度がまだ足りないのでどういうプレーをしたらよいのか、周りとのコミュニケーションの取り方を指導しています。

 僕はやっぱり石川と田中には期待しています。ことし3年目で、「スタメンをとってやる」という自覚が見えるので、自分も負けないようにしたいです。彼らと組むなら日本一になる可能性が見えてくると思っているので期待しています。

Kとしても活躍する森(右)

慶大には負けたくない

――早慶戦を前に今の心境は

末吉 きょねんは秋は勝ちましたが、春の早慶戦は負けているので。ワセダに入ったからには慶大には負けたくないです。

 僕もとにかく絶対に勝つという気持ちです。きょねんは僕のミスで10点差になってしまって。その時にお客さんが静まり返ってしまって…。「やってしまった」と思いました。悔しい思いをしたので、ことしは逆にインターセプトできるように頑張るだけです。

――早慶戦の雰囲気は

末吉 やっぱり会場が違うので盛り上がるという感じです。OBの方々や大きな試合ということで観客の熱気もすごいですし。緊張はやっぱりします。でも、あの場でできるというのはすごく楽しいので。緊張もしつつ楽しみたいです。

 1万人も入るので、良いプレーをすれば盛り上がりますし、逆に点差が開いたり悪いプレーをすれば静まり返りますし。いかにお客さんのモメンタムを持って来れるかが大切だと思います。

――大学の試合の前に行われる高校の早慶戦とは違いますか

末吉 まず観客の人数が違うので。自分も高校の時よりも大学の時の方が緊張します。

――ワセダのディフェンスで注目選手は

末吉 やはりLBコグラン・ケビン(商2=東京・早大学院)ですね。彼は高いポテンシャルを持っているので、将来ワセダのディフェンスを引っ張る存在になると思うので。

 誰だろう…

末吉 自分って言えば?(笑)

 いや、いいや(笑)やっぱりDL庭田(和幸、創理2=東京・早大学院)かな。去年から試合に出ていて、ことしも動きがいいので。彼がQBサックしてくれれば、僕らも動く必要がないので。頑張ってほしいです。

――慶大のオフェンスの印象は

末吉 とにかくパスが強く、QBも経験者で、WR吉田はすごい技術がある選手ですね。高校時代から常に戦っている相手なので意識はします。

 ほとんど一緒ですね。吉田にはきょねん取られたので。慶大はキャッチが上手いと思います。ことしはなんとしても止めて勝ちたいです。

――早慶戦をどのような試合にしていきたいですか

末吉 勝ちたいということと、最後の早慶戦なので楽しんでやりたいと思います。

 お客さんもたくさんくるので、接戦を演じながらも最後は僕のFGでうちが勝つというのを去年から描いています(笑)

――ありがとうございました!

(取材、編集 田中竣)

◆末吉裕一(すえよし・ひろかず)

 1991年(平3)4月9日生まれ。170センチ、83キロ。東京・早大学院出身。商学部4年。DB。取材中も冷静な受け答えが印象的だった末吉選手。ワセダ生活7年目となることし、最後の早慶戦で有終の美を飾ることができるか

◆森翔平(もり・しょうへい)

 1991年(平3)9月12日生まれ。174センチ、78キロ。愛知。豊橋東高出身。文化構想学部4年。DB/K/P。きょねんの早慶戦はミスで失点してしまったことを悔いていた森選手。ことしは取材中の宣言通り、自らのFGで試合を決めることができるか