3年前に甲子園ボウルを経験した代が最上級生となった。もう一度、今度は自らの力で甲子園へと舞い戻るべく奮闘するOL小笠原知也主将(スポ4=東京・戸山)、DB末吉裕一(商4=東京・早大学院)、DL早川翔吾(基理4=大阪・明星)の3人に法大への思いやBIG BEARSでの4年間を振り返っていただいた。
※この取材は11月1日に行われたものです。
「ターンオーバーがカギとなってくる」(末吉)
チーム状況について語る小笠原主将
――今季のリーグ戦の成績についてどう考えていらっしゃいますか
小笠原 リーグ戦のいまの現状は1敗していることがことしのうちのチームの弱さが出てしまっています。皆がリラックスして練習に取り組んでいることはうまくいったのですが、逆に雰囲気が緩くなりがちになってしまっています。それをうまく修正できずに、相手チームの方が勝ちにこだわっていて、それが如実に出てしまったのがこの前の立大戦だと思います。それまでは普段通り、自分たちの実力を出せてうまくいっていたのかなと思います。
早川 僕は立大戦で負けたのは妥当だったのかなと思います。やはり相手のレベルが低ければ、問題なく勝てましたが、相手の立大のようなレベルの上がった相手になると、今まで課題になっていたものが浮き彫りになり、出てしまいました。もちろん流れなどもありますが、今思えば自分たちの実力で負けたと思います。
末吉 同じようなことになってしまいますが、最初の5試合の相手チームとはやはり実力差がありました。オフェンスが点を取ってくれたので差が出たように見えますが、ディフェンスとしては自分たちの課題が潰し切れませんでした。それが立大戦で出てしまい、いいようにやられてしまったと感じています。立大は最初の5試合に比べるとレベルの高いチームなので、自分たちの思うようなフットボールができなかったのも事実です。相手に力負けしたのも実感しています。1対1の勝負でも負けていたので、結果として負けは負けかなと思いました。
――ご自身のプレーに関しては
末吉 僕はポジション的にボールに絡む機会もいくつかありましたが、そのワンチャンスをものにできていなかった場面もありました。そういう意味でもあまり満足できるシーズンではないですね。強豪校と試合をしていく中で、ワンチャンスをものにできるかというところが勝負の分かれ道になってくるので、相手に合わせるのではなく、常に最高のパフォーマンスで満足な結果に持っていけるようにしていかなければならなかったのかなと思います。
早川 リーグ戦が始まる前は、自分が目立って存在感を出せればいいと思っていましたが、全然出せていないので満足いく結果ではありません。ただこれまでずっとケガなく試合に出続けられているということは、評価ができるのかなと思います。
小笠原 立大戦は正直、OLとしてはそんなにやられた印象はありません。しかし、投げるQBやキャッチするレシーバー陣がうまくいかなかったのは、OLの中では非常に悔しかったです。でも逆にもっとできる部分もあったので、OLがカギになるであろう法大戦では勝負して勝てるようにし、自分は法大戦へ向けてどういったアプローチができるかを他のOLと一緒に考え、試合に出ている選手がケガをしたときには誰が出ても、同じような実力で勝てるようにすることが目標です。そして、早川と同様に、ケガなくやってこられているのは、そういった継続性はよかったです。
――やはりケガがないのは非常に大きいことなのでしょうか
小笠原 特に自分はこの部に入ってからの半分以上の練習をケガで潰しているので、ことしは主将という立場もあって、グラウンドにずっと立てているのは、自分でも良いことと感じています。
――これまでのユニットとしての評価はいかがでしょうか
末吉 僕のDBというポジションは大きく分けてSFとCBの二つに分けられ、SFは若い選手が頑張っています。その若いメンツにしては活躍してくれて、非常に助けられています。CBは相手レシーバーとの1対1が多くなってきます。その中で相手レシーバーに負けてしまう部分であったり、ミスを潰し切れてはいません。彼らがレシーバーを抜かさせてしまうと、直接的に点につながってしまう部分が大きいので、今後のCBの成長はカギになってくると思います。
早川 さっきも言った通り、DLは立大戦までは可もなく不可もなといった感じでした。2年生は要所でビッグプレイを見せて目立っていましたが、立大戦を見るとDLが足を引っ張っていた部分が非常に多かったです。総合的に見たら、まだ全然評価できる段階ではないと感じています。
小笠原 OLも下級生が春を通じて成長しました。戦力になってくれたのは良い分、その反面、相手が強豪校のような経験豊富な上級生だとなかなか1対1ではフィジカル面で厳しく、負けてしまうことがあります。そういう粗削りな部分は不安ですし、成長したとはいえ、まだまだ層が厚いわけではありません。一人ひとりにかかる負担が大きいので、疲労の蓄積が心配です。そういう部分も含めて、次の法大戦に万全の体調で臨めるように合わせていきたいです。
――ターンオーバーの奪取数は法大を上回っています。ターンオーバーを狙いにいくことはいつも頭の中に入っていることなのでしょうか
末吉 やはりディフェンスとして毎試合ターンオーバーを+3にすることを目標にしています。インターセプトだったり、ファンブルフォースだったり、相手のミスを必ずこちらの攻撃権に持ってこられるように意識しています。前半の試合でキックを含め、ボールを持ってくることはできていましたが、立大戦など強い相手に対してはボールを持ってこられていません。今後の試合ではターンオーバーはカギになってくると思うので、ボールは意識して狙っていきます。
早川 リーグ戦前半はボールを持ってこられていましたが、それは相手のミスによるものが多かったです。自分たちの実力でボールをとれたのはあまり多くはなかったと思います。法大に数では勝っているかもしれませんが、法大戦では自分たちの実力でDLがプレッシャーをかけ、インターセプトやサックを狙っていきたいです。
――特にDLは現時点でDL庭田和幸(創理2=東京・早大学院)がサック王です。下級生の存在は大きいですか
早川 それはめちゃくちゃ大きいですね。庭田、DL村橋(洋祐、スポ2=大阪・豊中)と彼ら2人がいなかったらいまのDLは成り立っていないので。下級生には助けられていますね。
――小笠原主将にお聞きします。キャプテンの難しさ、いま意識していることを教えてください
小笠原 練習外で非常に苦労したのは、常に外部から不祥事を起こした団体と、特に関係者に見られることが当たり前だったことです。だからより礼儀正しく、節度を持った行動を取らなければならないし、取らせなければいけないというところに自分自身は重きを置きました。たとえば春に遠征に行くときも新幹線の中でだらだらとした格好を見せないとか、邪魔にならないようにするなどを150人に対して指示したりするのは難しく、どっかでミスや大事が起こってしまうのではないかと不安になり、それがストレスになりました。ただ夏合宿は集中して臨めて、秋は春と同じようなサイクルだったので、いまは一人ひとりが自分で考えて動けていると見て取れています。そういったところはことしのメンバーは頼もしいです。練習では、現在まさにそうですが、後がない中で緊張感を持ってやれています。正直今までは、リラックスし過ぎてヘラヘラしている下級生も見受けられましたが、そういったこともなくなりました。その分練習の質も上がったと思います。ただ自分としては、立大戦前にそういった空気を作れなかったのが反省です。立大が(法大戦で負った)35点のビハインド以上の点差をつけて勝たないと後がないということを果たしてどれだけの下級生が知っていたか、そしてそれを伝える機会を設けなかったことを反省しています。春は監督代行(濱部昇監督代行、昭62教卒=東京・早大学院)が怒ったり、嫌われ役になるなどしてチームをコントロールしてくれていましたが、濱部監督代行の掲げた「学生主体のチーム」となるためには、濱部監督代行が求めるものを僕が同じように指揮し、選手に求めていかなければなりません。後がない状況になってやっとですが、いまできていることをもっと早くからできていれば良かったと思っています。
「自分の力で甲子園へ行きたい」(早川)
未経験者ながらスターターに定着した早川
――現在のチームの雰囲気は
小笠原 夏合宿で法大戦に向けた練習をしていたので、夏の時点で11月10日を意識していたことになります。下級生も含めて法大への意欲があり、練習に集中できているので良いのかなと。ただ、ことしは毎日フィールドトレーニングにプラスして防具を付ける練習がありすごく疲弊しやすい状況なんです。そのため集中力が切れたり、練習に臨むときにどうしてもネガティブな方向に行ってしまうなど練習が雑にならないか不安です。
――末吉選手と早川選手から見た小笠原主将の印象は
末吉 見ての通り誰にでも優しいですし、熱いものを持っています。苦労はしていると思うんですが、それを表に出さずにやってくれています。引っ張るのに適した存在だと思いますね。
早川 僕らの代はずっとだめな代だって言われてしまっていたんですが、そういうときに小笠原が助けになっていたと思いますし、4年になってからも主将としてちゃんと引っ張ってくれています。頑張ってくれていると思います。
――小笠原主将から見たお二人の印象は
小笠原 自分は高校のときにフットボールを始めているんですけど、ワセダの付属高校ではなかったんです。それに対して末吉は付属でやっていて、早川は大学から始めているということで全員がフットボールへの関わり方が違います。早川とは大学からの付き合いで、OL、DLという関係もあるので、俺のことももっとこうした方がいいとか思っている点もあると思うんです。過去のこと関係なく今の自分で対等に話せるといった面で早川のことは信頼しています。末吉とは高校の時対戦したこともありますし、フットボールを続けてきた間柄です。昔の自分を知ってくれているというのもありますし、また末吉は高校の時キャプテンをやっていたのでよく相談もします。二人とも頼りになる存在です。
――いまの4年生はどんな学年ですか
末吉 僕と早川は紺碧寮に住ませてもらっているんですけど、私生活を見ると本当に人それぞれだなと感じます。みんな優しい?何も考えてない?それは違うか(笑)。他の代も見てきて思うのは、もっと気持ちを出してもいいのではないかなと。もっと意見を言い合ったりしてもいいかもしれないですね。
早川 この代はポジション関係なく仲良くできていると思います。
小笠原 他の代と比べると、おとなしい、まじめという方にバランスが傾いているかなと。
――4年生の中でムードメーカーは
末吉(早川選手を指す)
早川 僕はムードメーカーでありたいですけど、WR福島(健太、商4=京都・東山)とかがふざけて…
末吉 そこに早川が入って、WR脇屋(慶、政経4=東京・早大学院)が締めるって感じです(笑)。早川、福島などはやっぱり関西人ですね。ムードメーカーになろうと頑張っています(笑)。
早川 なれているかはわかりませんが(笑)。常にミーティングでは笑いを入れようと考えています!
――4年間を振り返ってどうですか
末吉 兄の影響がすごくありました。兄が周りから高い評価をもらっていたので僕も期待されていた部分はありました。1年の時はただがむしゃらにやってそれなりの評価はもらえたと思うんですが、それ以降スタメンとしてプレーする中で自分の課題が浮き彫りとなってきました。改善されていない部分もあるのでまだまだだと思います。アメフトは何かがすごくできる人間が評価されるんですが、自分としては何かを持っているというよりは全てが平均点くらいだったので、チームにビックプレーを持ってこられるような選手になりたいですね。
早川 1年のときに先輩たちに甲子園ボウルに連れて行ってもらって、今度は自分の力で甲子園に行きたいと思い練習していました。2年、3年とその夢は叶わなかったんですが、ことしはもう1回行きたいです。まだ終わっていないので、とにかくこの法大戦を乗り越えて次につなげられるようにしていくことが4年間で自分がやってきたことの成果となると思います。
小笠原 4年間で体重が20キロ以上増えたり、膝を手術したり、いろいろなことを経験しました。2年の頃から一つの単位のリーダーをやっていて、4年時にはキャプテンもやりました。自分の中ではこの部に入って自立したいという思いがあったので、多くの経験ができたことは良かったです。逃げたくなった時もありましたが、それも乗り越えてこの部を好きになりました。社会人になってからもいろいろなことを乗り越える力がついたのかなと自信になりました。
「チームはまだまだ変われる」(小笠原主将)
ワセダディフェンスの要である末吉
――法大の印象について聞かせてください
末吉 法大の選手は経験者が揃っていて、特にスキル陣は足も速く、パスキャッチの能力が高いのに加えて競り合いも強いので、そういった面を含めてスピードのあるチームだと思います。
早川 法大は強いというよりもうまいチームだという印象があります。彼らの術中にはまってしまうと、勝つのはかなり難しいと思います。
小笠原 戦術やスキル面は二人が言った通りです。自分は主将という立場もあって相手チームも主将の視点で見ているのですが、そういった視点で見るとことしの法大はプレー面だけでなく、サイドラインで下級生を含め全員で声を出していたり、移動の際にも一つの号令で素早く動いていたりと細かい部分がしっかりと徹底されています。そうした面をみると感心するのですが、自分たちも同じようなことを大切にしているので、プレー以外の面も含めて絶対に負けたくないという気持ちになります。
――法大戦に特別な思いはありますか
末吉 僕は高校時代からアメフトを続けているのですが、高校3年生の秋シーズンの関東大会で負けたのが法政二高でした。その時のメンバーが現在法大の4年生となってプレーしているのですが、当時の借りを返すという意味でも絶対に勝ちたいという気持ちはありますね。
早川 僕は大学からアメフトを始めたので、法大に対して特に強い思いがあるわけではないのですが、やはり毎年毎年ポイントとなるのが法大との試合だと思うので、重要な試合だと思います。
小笠原 僕も高校時代に関東大会の準決勝で法政二高に負けた経験があって、末吉と同じように法大は個人的にも勝ちたい相手ですね。またそれとは別に、僕が一年の時には法大に勝っているのですが、下級生と一緒に勝った経験はないので、その意味で一緒に勝ちたい、勝たせてあげたいという思いが強いです。特に来年からは1ブロック制になって上位校が集まってくるので、法大に勝ったという経験はものすごく大きなものになると思います。今回は下級生のためにも絶対に勝ちたいですね。
――法大戦に向けて、オフェンスとしてはどういった部分がポイントになってくると考えていますか
小笠原 まず前提として、絶対に25点差をつけて勝つという意識をチーム全体の目標として浸透させたいと思います。その上でオフェンスとしては、まずオフェンスの機会をより増やすということ、そしてその機会を必ず得点に結びつけるということを意識していきたいです。
――ディフェンスとしてはいかがですか
末吉 法大はスピードがあるチームで、オフェンスの印象としてフィールドを広く使ってくるという印象があるので、まずは僕たちがスピード負けしないこと、それから走り負けしないことがとても重要になってきます。そうしたことを練習の中で徹底するとともに、一つ一つのタックルにこだわったり、ディフェンス全員で集まったりということも意識していきたいです。
早川 法大は色々なことをしてくるチームなので、まずは慌てず対応することが大切だと思います。自分たちが焦って自滅することのないように、相手のプレーに対応したいと思います。
――法大で注意したい選手はいますか
小笠原 オフェンスからすればLB田中喜貴主将(4年)です。プレーの指示も彼が出していますし、ほとんどのタックルを彼が決めています。逆に言えば、彼を動けなくすることができればこちらの得点にもつながるのではないかと思います。
早川 スキル陣は皆強い選手なので選ぶのは難しいのですが、自分はDLなのでOL王野志宏選手(4年)などは特に注意したいです。
末吉 正直に言って法大のスキル陣の中から一人選ぶというのは難しいですね。法大のスキル陣は本当に皆レベルの高い選手たちなので、意識して止めるということであればWR、QB、RB問わず全員しっかり注意しておかなければいけないと思います。
――法大戦に向けて一言お願いします
末吉 25点差をつけて勝たなければ自分たちは引退になってしまうので、とにかくやりきるしかないというのは立大戦で負けてから感じています。何が何でも勝つしかないので、一つ一つのこと、質にこだわってやりきることが最終的に結果となってついてきてくれればと思います。点差を意識するというよりは、自分たちの力を出しきるということをこれからも継続していきたいです。
早川 ディフェンスがやることは、結局25点差という条件があろうとなかろうと変わらないので、とにかく自分たちのやるべきことを全力でぶつけて、法大を驚かすようなディフェンスをして良い結果を出したいです。
小笠原 春から練習してきて洗練されてきた部分やそうでない部分を含め、ここから10日間でもチームはまだまだ変われると思います。そのためにもまずはチームのやるべきことを徹底していきたいと思います。そうした上で法大に勝つことができると思うし、法大に勝つことがことしのチームが完成に近づくための大きな一歩になると感じているので、僕は選手一人一人が法大戦に向けて自立して、人として成長してくれた上で11月10日を迎えてくれれば、あとはやりきるだけなので結果はついてくるのではないかと思います。そこまでを率いるのが自分の役目だと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 鈴木皓、依田萌、井上義之)
集合写真
★BIG BEARSを応援しよう!
早大生は早稲田側の窓口で学生証を提示すると先着50人は入場無料!
みんなで横浜スタジアムに駆けつけてBIG BEARSに声援を送ろう!
日時:11月10日(日) 13:45キックオフ
会場:横浜スタジアム(JR根岸線関内駅より徒歩1分)
料金:大人¥1,200 高校生¥500 中学生以下は無料
◆小笠原知也(おがさわら・ともや)(※写真右)
1990(平2)年7月6日生まれ。180センチ、97キロ。東京・戸山高出身。スポーツ科学部4年。普段はあまり本を読まないと語った小笠原主将でしたが、小説家の石田衣良さんの本は必ず買うようにしているそうです。取材時にはいつも丁寧な言葉で対応してくださるのは、石田さんの本の影響があるのでしょうか。
◆早川翔吾(はやかわ・しょうご)(※写真中央)
1991(平3)年9月2日生まれ。174センチ、99キロ。大阪・明星高出身。基幹理工学部4年。最近、寮ではなぜかお茶漬けが流行しているとのこと。早川選手も流れに乗って、締めには必ず食べていると語ってくれました。あふれるパワーの源はお茶漬けなのでしょうか。
◆末吉裕一(すえよし・ひろかず)(※写真左)
1991(平3)年4月9日生まれ。170センチ、83キロ。東京・早大学院出身。商学部4年。自らをインドア派と語った末吉選手。オフの日には映画やドラマを見ていて、最近では「あまちゃん」や「プリズン・ブレイク」を見ていたそう。法大戦では相手選手を「ブレイク」するほどの激しいタックルを期待しています!