――今シーズンの入りについて伺います。昨シーズンを踏まえて、どのような意識でシーズンに臨みましたか
昨シーズンは、大学に入ってから初めて継続的に試合に出られて、自分のプレーを見せることができました。今年はそれを土台にして、「チームの中でどう自分の存在価値を出していけるか」というところを意識してシーズンに入りました。
――選抜の活動もありましたが、どのように感じましたか
選抜活動では、自分たちよりフィジカルや技術に優れた選手とプレーする機会があり、自分の課題が多く見えた時間でもありました。「自分の強みをどこで出せるのか」「どうやって相手に通用させるか」などを突き詰めて考えるきっかけになりました。
――個人として、ここまでのプレーを振り返っていかがですか
昨年は、4年生がしっかりと引っ張ってくれる中で、ある意味自由にやれる環境がありました。でも今年は、自分がどうチームに貢献できるかを強く意識しなければならず、プレーがどこか消極的になってしまった部分があったと思います。特にミスをしないようにと考えるあまり、プレーの選択肢が弱気になってしまいました。
――最上級生・副将としての意識についてはどうですか
まずは、「どんな練習日でもピッチに必ず立つ」という覚悟を持って臨んでいます。また、自分が所属するカテゴリーの練習が終わった後でも、下の代の練習を見るようにしていますし、積極的に下級生とのコミュニケーションも意識しています。カテゴリーが分かれると、どうしても小さなコミュニティになってしまいます。その中で、自分たちの代が「応援したくなるチーム」だと言われるようにしたいという想いはあります。
――そうした意識は、高校時代の経験から来ているのでしょうか
そうですね。高校時代は、3年生が1・2年生の面倒をしっかり見る文化がありました。一般的には下級生が上級生に合わせるものですが、試合に出ている上級生が率先してサポートすることで、チームに一体感が生まれていました。今もその意識は強く持っています。
――副将に就任した経緯を教えてください
主に、キャプテンの山市から声をかけてもらったのがきっかけです。彼を支える存在として、チームを支えていきたいという想いがありました。
――主将の山市選手や副将の谷村選手への想いはありますか
山市選手は、今も先頭に立ってチームを引っ張ってくれていて、本当に信頼できる存在です。彼にしかできないことをやってくれていると思っています。谷村選手については、人前に立って引っ張るタイプではないかもしれませんが、ピッチ内外での細かい行動一つひとつが、下級生にも大きな影響を与えてくれていると思います。違ったキャラクターで主将と副将がいることはチームにとってプラスだと思っています。

駒大戦でクロスを上げる佐々木
――プレシーズンやシーズン立ち上がりについて振り返ってみていかがですか
プレシーズンは苦しいスタートでした。天皇杯の敗戦は大きく、例年とは違う感覚でシーズンに入ることになりました。その影響もあって、リーグ開幕からも勝ち切れない試合が続きましたが、その中でも自分たちでアクションを起こし、話し合って改善しようとした結果が、徐々に形になってきたと思っています。
――中盤以降、勝ち星が伸ばせなかった要因は
開幕から勝ち点を積み上げられたことで、「これぐらいでいいか」といった気の緩みが、チーム内に少なからずあったのかもしれません。調子を崩したときに立ち返る基準が曖昧だったのは課題だと感じています。
――ここまでのチームをどう評価していますか
良かった点は、連動した攻撃の部分や、チャレンジの姿勢が見えたところ。逆に、終盤での失点が増えたり、ゼロに抑えられなかったりと、守備面では改善すべき点が多くあります。そこは後期に向けて修正していきたいです。
――リーグ後期に向けて、どんな成長が必要だと感じていますか
まず結果の面では、後期は「負けなし」で進むことが絶対条件です。そのために、今の中断期間でどれだけ個人として、そしてチームとして成長できるかが鍵になると思います。
――後期に向けて中断期間で個人としてのこだわりや目標はありますか
個人としては、この先プロというところを見据えて体をプロ仕様にしていかないといけないと思っています。また、自分のプレースタイルをより明確に出すことも大事なことだと思っています。スピードを活かした突破は自分の強みなので、そこはもっとこだわっていきたいです。チームとしては、もっとチーム内のコミュニケーションを増やして、ピッチ内での意思疎通を深められるようにしていきたいと思っています。
――印象に残っている試合はありますか
第一節の神大戦の逆転です。負けていた展開でこれまでだったら流れが悪いとそのままズルズルいってしまっていたかもしれませんが、あの試合では前半のうちに追いつけたし逆転できたことでチームとしても良いシーズンのスタートを切れたと思っています。
ーー後半にチームの火がつくケースはア式だと多いと思うのですが、あの試合は前半で追いつくことができましたよね。ピッチ内でどういう動きがあったのでしょうか
開幕戦だったので、難しい試合になるということが予想できていたし、共有もされていました。だからこそ、失点しても引きづらないようにというところが全体で意識されていました。個人としては、前へのアクションを増やして行けたのは良い試合展開に持ち込めた要因だと考えます。

昨年の早慶クラシコに出場した佐々木
――ここからは、早慶戦に関しての質問に移らせていただきます。慶應大学の印象はいかがですか
昨季、何度か慶大と試合をすることがあったのでその時の印象としては組織的で、やるべきことが徹底されているチームだという印象を持っています。
ーー去年の早慶戦を振り返って、どんな想いがありますか
国立の舞台はやっぱり特別でした。観客数も大学サッカーでは最大級で、その中で勝たなければいけないプレッシャーもある。「ただの一戦」と言ってしまえばそれまでですが、そこに関わる多くの人たちの想いを感じられる場です。
――1年生の時と比べて、早慶戦への意識に変化はありましたか
1年生の時は「すごい舞台だな」と、まだ観客目線で見ていた部分もありました。でも運営にも関わるようになって、企業やOBの方々、多くの支援の上で成り立っていると知ってからは、「責任を持って戦う場」だという意識が強くなりました。
――自分のプレーで注目してほしいポイントはありますか
スピードです。観ている人がワクワクするようなプレーを届けたいです。
――チームで注目してほしい選手や注目ポイントがあれば教えてください。
注目ポイントとしては、慶大はパスをつないでくるチームだと思いますが、早稲田も自分たちの形をしっかり出していきたいと思っています。注目選手は、4年生全員です。今季4年生が出場できていない中で、ピッチ外からも支えてくれている選手たちが多くいます。そういう選手たちのピッチ外での振る舞いや試合に出場した際のプライドに注目して欲しいです。
――残り半年を切った大学サッカー生活ですが、同期への想いを聞かせてください
自分たちの代は、ピッチ内外問わず仲が良くて刺激しあえる仲間が多いです。この代で、必ずタイトルを取るという思いが強いです。
――残りの大学生活で個人として、そしてチームとして残りで成し遂げたいことはありますか
チームとしては絶対に「関東リーグ2部優勝」を目指します。個人としては、副将としてこのチームに何を残せるかを常に考えながら行動したいです。結果ももちろんですが、来年以降に続く良い流れを作れるよう、責任を持って取り組んでいきたいです。
――最後に、早慶戦と後期のリーグ戦に向けての意気込みをお願いします
自分が入学してから、早慶戦では3年間無敗です。その流れをしっかりと継続して、全力で勝利を目指したいと思います。後期のリーグ戦に関しては、集大成ということで自分の力を全て出し切りたいと思っています。
◆佐々木奈琉(ささき・なる)
2003(平15)年7月13日生まれ。帝京長岡高校出身。社会科学部4年。先日Vファーレン長崎加入内定が発表された佐々木選手。最後の早慶戦でも持ち味のスピードで宿敵を引き裂きます!
(取材 和田昇也 編集 本多鼓瑚)